エネルギーフローアプローチで見直す省エネ エネルギーと賢く,仲良く,上手に付き合う

シリーズ 21世紀のエネルギー 15

エネルギーフローアプローチで見直す省エネ - エネルギーと賢く,仲良く,上手に付き合う -

従来から知られている様々な省エネの方法論をエネルギーフローの観点で整理。参考例として省エネ法やISO 50001の説明もした。

ジャンル
発行年月日
2019/06/07
判型
A5
ページ数
174ページ
ISBN
978-4-339-06835-1
エネルギーフローアプローチで見直す省エネ エネルギーと賢く,仲良く,上手に付き合う
在庫あり

定価

2,640(本体2,400円+税)

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  • 著者紹介

従来から知られているさまざまな省エネの方法論をエネルギーフローからのアプローチという考え方で整理し,できるだけ具体例による説明をした。エネルギーフローに関連する参考例として,省エネ法やISO 50001の説明もした。

本書では,省エネルギー(以下,省エネ)についてエネルギーフローからアプローチする。エネルギーフローとはエネルギーの流れのこと示す一般的な用語だが,本書では少し広く,例えばエネルギーの入力の結果得られた種々の便益の流れなども含めてこう呼ぶことにする。したがって,本来は拡張エネルギーフローとでも呼ぶべきものかもしれないが,内容自体は別に新規なものではない。従来から知られているさまざまな省エネの方法論を,エネルギーフローからのアプローチという考え方で整理してみたものとお考えいただきたい。

著者が省エネに携わるようになって,いつの間にか15年以上となる。省エネルギーセンターに約10年奉職し,省エネ大賞,省エネ技術戦略,省エネ法判断基準改正,省エネ国際規格(ISO 50001)などのさまざまな事業に参加し,多くの経験をさせていただいた。2011年3月,折しも年間約1000件の省エネ診断,数百件の温暖化ガス国内排出権取引などのとりまとめに奔走していたさなかに東日本大震災に遭遇し,省エネをゼロから見直す貴重な体験もした。

省エネルギーセンター退職後は,出身企業に非常勤研究員として奉職の傍ら,省エネ規格の国際検討チームへの参加,省エネ講座講師,工場等の省エネ実状調査や支援などを通じ,工場等の省エネの最前線で実務に取り組んでおられる多くの方々との交流の機会を得,幾度となく目から鱗の落ちる思いをしている。 

元来著者は民間企業で研究開発設計をやっていたエンジニアである。たまたま1970年代の石油危機にリアルタイムで直面した。以来今日に至るまで,大半がエネルギー関連の研究開発,プロジェクト業務,技術企画などに関わることになったが,省エネの専門家というわけではなかった。省エネに携わるようになってから,省エネとは何かがわからなくなってしまったことが何度もある。

省エネが大切だといわれて反対する人はまずいない。だが,これ以上の省エネは難しいという人が多い。具体的に何をすればよいかわからないという人も多い。省エネというと,その効果は限定的で地味なものという印象が強いようだ。また,我慢とか,節約と結びつけられて,後ろ向きのイメージをもたれることも多い。

なかには表だって省エネに異論は唱えないものの,「もっと省エネ効果の大きい別の何か」を優先すべきだと考えている人も多いように思われる。一方で,省エネを専門としている人の中には,「もっと省エネ効果の大きい別の何か」は省エネとは別物だと,自ら守備範囲を狭めてしまっている人も多い。

歴史を振り返れば,石油危機の国難を克服するなど,省エネが果たした役割は非常に大きい。そしてこれからも,地球温暖化対策,パリ協定への対応などに対し,最も大きな貢献が期待されるのは省エネである。省エネを小さな殻に閉じ込めてはいけない。もっと前向きで,発展的で,広い省エネに向けて,できるだけ多くの人々に積極的に参加していただかなければならない。

近年は,省エネからエネルギーのことが次第に忘れられてきている。単にエネルギーを節約するだけではなく,エネルギーを上手に活用することが省エネの原点だったはずだ。このためには,エネルギーのことをよく理解し,エネルギーの流れを把握し,エネルギーと上手に付き合うという知恵と工夫の賢い省エネを今一度思い出すことが必要だと思う。

そもそもわれわれがエネルギーを消費するのは何らかの便益を獲得するためのはずである。必要以上の便益のためにエネルギーを浪費すべきではないだろうが,必要な便益まで諦めるような我慢の省エネは無理もあり,長続きしない。このため,エネルギーフローをエネルギーの流れだけで終わらせずに,最終的に真に必要な便益の確保に至るまでの流れとして把握し,損失エネルギーや無駄の削減を検討していく方法論を整理してみた。

省エネは一人でやっても進まない。多くの人々の参加が重要である。このためには,エネルギーの流れだけ考えていては不十分である。人々が連携,協力する仕組みづくり,省エネ推進のモチベーションの確保,人々の多様な価値観や行動様式などの検討のように,工学技術では対応の難しい多くの重要な課題がある。しかし,それでもなおエネルギーそのものを忘れるべきではないと思う。 

じつは,省エネという工学技術はない。あるとすればさまざまな工学分野からの借り物の雑学である。聞こえよくいうならば,エネルギーに関する広汎な工学技術のほとんどすべてが関係する総合工学ということになるかもしれない。だが省エネは実学でなければならない。高尚な抽象的一般論だけでは役に立たない。多くの関係者の誰もが理解し,協力して省エネを進めることができるような,具体的で単純明快なものが求められる。

じつは本書も当初はこれを目指し試行錯誤を繰り返した。だが著者の非力もあって,残念ながら中途半端な部分が残っていることは否めない。レディメイド型の豊富な省エネノウハウ集が多くの読者のご期待とすると,かなり遠いものになってしまった。願わくは,読者ご自身がカスタムメイド型の省エネを検討される際の気づき,ヒントなどとして少しでも役立てていただければありがたい。

実学としての観点からできるだけ具体例による説明を考えたが,盛り込める数には限りがあり,また内容に偏りも生じてしまった。各部分の一般論をご理解いただくための例示とお考えいただければ幸いである。省エネ法やISO 50001に関してはエネルギーフローに関連する参考例としての説明であり,関心をもっていただけたらそれぞれの専門書を参照いただきたい。

できるだけ多くの方々にご理解いただけるよう平易な説明に努めようとしたが,読者の方々それぞれのご専門の部分に関しては何を今さらくどくどと感じられ,そうでない部分は小難しいことをくだくだいわれてもわからないといわれそうである。ご批判はありがたくお受けしたい。

また本書では,冒頭に触れた「エネルギーフロー」をはじめ種々の用語について,説明の冗長化を避けるため独自の定義を行った。具体的内容は各用語が特に関連する各章に「用語の定義」と称するいくつかの図を設けて整理したので参照いただきたい。ただし,まだ便宜的なものであり,完全な用語体系とはいえないかもしれない。これについてもご批判は歓迎したい。もし本書が一つのたたき台となって,誰にもわかりやすい明快な省エネの方法論の発展に少しでも貢献できれば,望外の喜びである。

終わりに,本書をシリーズの1冊として執筆することをご支援いただいた前編集委員長 小島紀徳先生,現編集委員長 八木田浩史先生,コロナ社に謝意を表したい。編集委員会の本藤祐樹副委員長,永富悠委員,木方真理子委員には草稿全文を丁寧に精読いただき,多くの貴重な助言をいただいた。また,日本エネルギー学会,省エネルギーセンターをはじめとする多くの省エネ関係者からは,種々の活動を通じ,本書の執筆内容の着想に関し多くの示唆や触発を受けたことも付言しておきたい。

2019年4月 駒井啓一

1. エネルギーフローから省エネを考えよう
1.1 ますます広がる省エネの役割
1.2 省エネが少しわかりにくくなってきた
1.3 エネルギーフローアプローチとは
1.4 本書の構成

2. 日本型省エネ手法に見るエネルギーフローアプローチの源流
2.1 日本型省エネの背景を見ておこう
 2.1.1 省エネは資源小国の宿命だった
 2.1.2 日本のエネルギー供給構造
 2.1.3 石油危機を克服した日本型省エネ手法
2.2 省エネ法の概要
 2.2.1 省エネ法の基本的な視点
 2.2.2 省エネ法の基本構成
 2.2.3 省エネ効果のとらえ方
 2.2.4 エネルギー量のとらえ方
2.3 省エネ推進の方法
 2.3.1 省エネ推進手法の体系
 2.3.2 工場等判断基準の基本構成
 2.3.3 判断基準に基づく省エネの進め方

3. 変化する省エネとエネルギーマネジメント
3.1 省エネを取り巻く諸情勢の変化
 3.1.1 エネルギー消費構造の変化
 3.1.2 技術進歩と省エネ
 3.1.3 地球温暖化対策と省エネ
 3.1.4 グローバル化する省エネ
3.2 エネルギーフローのとらえ方の変化
 3.2.1 エネマネとエネルギーフロー
 3.2.2 エネルギーフローを下流からとらえる
 3.2.3 システムを多変数関数モデルでとらえる
 3.2.4 原単位の重要性がむしろ増大
 3.2.5 マクロにとらえるエネルギーフロー
3.3 ISO 50001エネルギーマネジメントシステムの概要と特徴
 3.3.1 マネジメントシステム
 3.3.2 エネルギー方針とマネジメントレビュー
 3.3.3 エネルギーパフォーマンス指標
 3.3.4 エネルギーベースラインと正規化
 3.3.5 日本型省エネ手法との整合

4. エネルギーフローの現状把握
4.1 把握すべきエネルギーフローとは
 4.1.1 エネルギーネットワークとエネルギーチェーン
 4.1.2 システムとは
 4.1.3 エネルギーと便益
4.2 エネルギーの定量的な把握
 4.2.1 把握するのは見掛エネルギー量
 4.2.2 エネルギーフローのチェーン化
 4.2.3 システムとバウンダリー
 4.2.4 購入エネルギーと内製エネルギー
4.3 現状把握の方法
 4.3.1 現状把握の手順
 4.3.2 全体把握
 4.3.3 システムの分割
 4.3.4 モデル工場の設定とエネルギーフローの整理
 4.3.5 モデル工場のバリューフローの整理
 4.3.6 モデル工場のバリューフローのチェーン化

5. 損失発見のエネルギーフロー
5.1 エネルギーバランスフローと省エネ
 5.1.1 損失発見のためのエネルギーフロー
 5.1.2 エネルギーバランスフローのチェーン化と特徴
 5.1.3 エネルギーチェーンにおける効率の乗算則の応用
 5.1.4 エネルギーチェーンにおける損失の加算則の応用
5.2 エネルギーの有効活用と損失
 5.2.1 損失の分類と発生パターン
 5.2.2 見掛エネルギーと本質エネルギー
 5.2.3 本質エネルギーの量と質
5.3 損失発見の着眼点
 5.3.1 便益の活用の無駄
 5.3.2 エネルギー利用の無駄
 5.3.3 エネルギー変換損失
5.4 例題の損失の検討
 5.4.1 原料処理工程の損失の検討
 5.4.2 加工組立工程の損失の検討
 5.4.3 事務所の空調の損失の検討

6. エネルギーフローで省エネを推進
6.1 省エネ推進の概要
 6.1.1 PDCAサイクルとエネルギーフロー
 6.1.2 省エネ対策立案手順の概要
 6.1.3 省エネ対策効果確認手順の概要
6.2 省エネ対策立案の方法
 6.2.1 課題選定
 6.2.2 方針設定
 6.2.3 省エネ対策立案のシステム設定
 6.2.4 エネルギーフローによる省エネ対策の影響評価
 6.2.5 関係者の連携と影響評価
 6.2.6 省エネ対策立案のまとめと費用対効果の検討
6.3 省エネ効果の把握と評価の方法
 6.3.1 省エネ量と原単位
 6.3.2 便益変動の影響を考慮した省エネ効果の見積
 6.3.3 エネルギー消費量の特性関数
 6.3.4 省エネ対策効果の実績評価

7. これからの省エネを考える
7.1 多面的,総合的な省エネが必要
7.2 スタティックな省エネからダイナミックな省エネへ
7.3 再エネを含めたグローバルな省エネ

引用・参考文献

amazonレビュー

駒井 啓一(コマイ ケイイチ)