異種接合材の材料力学と応力集中

異種接合材の材料力学と応力集中

異なる材料を組み合わせた異種接合材について,材料力学的な問題を縦弾性係数・応力集中・接着構造の強度の3つの観点から解説。

ジャンル
発行年月日
2017/05/17
判型
A5
ページ数
186ページ
ISBN
978-4-339-04652-6
異種接合材の材料力学と応力集中
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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最近,盛んに構造物の構成に用いられている,異なる材料を組み合わせた異種接合材について,材料力学的な問題を縦弾性係数・応力集中・接着構造の強度といった大きく3つの観点から取り上げた。有限要素法の活用についても解説した。

安全と安心を求める社会的潮流の中にあって,最近の構造物には高機能,高強度,軽量化という本来は相反する性質が要求されている。この目的に沿うために,最近では,異なる材料を組み合わせた異種接合材によって多くの構造物が構成されている。特に,自動車や電子・電機分野において,異材接合技術が積極的に利用されており,企業の技術者の関心が高まっている。例えば,金属と樹脂との接合のように,従来では困難とされた異種材料の接合技術の革新は目覚ましいものがある。このように,新たな材料を組み合わせることで,製品の軽量化や機能・性能の向上,コスト削減に寄与するものと期待されている。しかし,接合界面では異なる材料の性質に起因する応力集中を生じることに技術者はつねに留意する必要がある。

本書においては,このような異種接合材の材料力学的な問題を,大きく三つの観点から取り上げて説明したい。具体的には,異種材料を組み合わせた際の,(1)平均的弾性係数(等価弾性係数という),(2)応力集中,(3)接着構造の強度,の異なる三つの観点を対象とする。これらは,いずれも異種接合材の力学の基礎となるものである。本書ではそれぞれの基本的な考え方を説明することから始めて,従前の書物には見られない新しい研究成果についてまで紹介する。

一つめの観点は,異なる材料を組み合わせた複合材料としての弾性係数に関するものである。それぞれの構成材料に分担される外力の割合を考える上で,通常,構成材料の体積率をおもなパラメータとして計算されることが多いが,全体の弾性係数を支配するパラメータとして必ずしも十分ではない。そこで,本書では構成材料の投影面積率という新たな考え方を導入し,これら二つのパラメータの導入によって,全体の平均的な縦弾性係数(等価縦弾性係数)を評価する方法を紹介する。このような手法を理解すれば,どのような構成材料をどのように配置すれば要求される性質が得られるかをシミュレーションによって求めることができて,異材接合材料をニーズに合うように設計することが可能であり,その新しい応用が期待できる。

二つめの観点は,母材中にだ円形ならびに回転だ円体状介在物が分散されて存在するときの応力集中の考え方に関するものである。応力集中として,例えば円孔を有する広い板では応力集中が3となることは設計技術者にはよく知られている。それに比べて,母材と比べて剛性の大きな介在物の応力集中は1以下であるといった誤った見方がなされてきた。確かに,荷重軸と直角をなす主軸端(赤道上)の応力集中は1以下となるが,荷重軸と一致する軸端(極点)の応力集中は1以上となることに注意する必要がある。特に,介在物の応力集中問題は介在物と母材の弾性係数が影響するので,より複雑な問題となる。そこで,本書では,2 次元の円形介在物と3 次元の球状介在物のような基本的な場合から複数個の介在物の干渉問題まで含めて,厳密な解法が可能である体積力法の結果に基づいて統一的に説明を行う。これらは異種材料接合により生じる応力集中を理解するため,まず学ぶべき基本問題であり,例えば,高強度鋼の疲労破壊起点となる介在物の影響を考える上でも必要となる。この例のように,あらゆる実用材料は複合材としての性質をある程度有するので,その応用範囲は広い。

三つめの観点は,接着構造材の強度評価に関するものである。接着技術の進歩は機械や構造物をはじめ,最近の新規製品や軽量化・コンパクト製品などの開発を支える基盤技術として重要な役割を果たしている。また,接着技術の発展に依存している産業分野は大変広く,その技術開発には多くの研究者,技術者が関心を寄せている。しかし,一方で,形状が変化しない単純な長方形状板の引張りでも,それに接着部があると接着剤が異種材料とみなされるため,接合界面端部に大きな応力集中が生じる。このことは現在でもしばしば見逃されるので技術者は十分に注意する必要がある。特に,本書ではその無限大となる応力集中の強さを有限要素法で正確に評価する方法を提案するとともに,その接着接合板の強度評価方法の有用性を示す。

以上述べたように,本書は異種材料接合材に関連するすべてを網羅するものではないが,その材料力学問題を三つの観点から説明し,新しい研究成果も紹介することで全般的な理解を深める構成となっている。本書が異種材料接合構造の設計や材料開発に携わる技術者や研究者の理解の助けになることを願っている。本書の基となる研究成果は,1980年から九州工業大学野田研究室で行ってきた研究論文に基づいている。これらの論文を野田,佐野,堀田,髙瀨の著者等が編集し,技術者向け連載講座(機械設計(日刊工業新聞社),2012年11月号~2015年12月号)に掲載してきた。本書はこれらの原稿をベースにして再編集して,まとめたものである。
本書の骨子となる論文作成に携わっていただいた以下の研究室メンバーに心から感謝する。

武内健一郎君(三菱化学株式会社)と和田高志君(大和ハウス工業株式会社)には,異なる材料を組み合わせた際の平均的弾性係数の研究に協力いただいた。今橋智則君(株式会社ヤマナカゴーキン),松尾忠利君(福島工業高等専門学校准教授),金子 尊君(MHI下関エンジニアリング株式会社),藤田淳也君(日本精工株式会社),林田一志君(日之出水道機器株式会社),泊 賢治君(三菱化学株式会社),川島裕二君(パナソニック株式会社),森山伸也君(九州大学),小田和広君(大分大学教授),井上隆行君(福徳長酒類株式会社)には,介在物の応力集中の解析を担当いただいた。張 玉君(中国石油大学副教授),高石謙太郎君(東芝三菱電機産業システム株式会社),蘭 欣君(山東大学副教授)は接着構造の応力集中の解析に協力いただいた。深くお礼申し上げます。

2017年3月 著者

1. 異種接合材料の材料力学
1.1 複合則と異種接合材の弾性係数の計算  
 1.1.1 材料力学に登場する複合材料に関する計算  
 1.1.2 複合材料の複合則と縦弾性係数,ポアソン比,横弾性係数  
1.2 有限要素法による等価縦弾性係数の計算  
 1.2.1 周期的な介在物を有する複合材料の等価縦弾性係数  
 1.2.2 有限要素法による複合材料の等価縦弾性係数の計算  
 1.2.3 形状の異なる周期介在物を有する複合材料の等価縦弾性係数が等しくなる条件  
1.3 介在物の配列が不規則であることの影響について  
 1.3.1 配列が不規則であることのモデリング  
 1.3.2 2重周期介在物モデルの解析方法  
 1.3.3 2重周期介在物モデルの解析結果  
1.4 3次元周期配列を有する複合材料の等価縦弾性係数  
1.5 介在物の2次元周期配列と3次元周期配列の等価縦弾性係数の関係  

2. 母材中に存在する介在物により生じる応力集中(無限板,無限体)
2.1 介在物による応力集中  
 2.1.1 円形,球状介在物  
 2.1.2 だ円形介在物,回転だ円体状介在物  
2.2 2個の介在物による応力集中の干渉  
 2.2.1 だ円孔やだ円孔球かが列方向引張りを受ける場合  
 2.2.2 だ円孔やだ円体状球かが列直角方向引張りを受ける場合  
 2.2.3 だ円形や剛体だ円体状介在物が列方向引張りを受ける場合  
 2.2.4 だ円形や剛体だ円体状介在物が列直角方向引張りを受ける場合  
 2.2.5 2個の介在物による干渉の総括  
2.3 一列に並んだ任意個の介在物による応力集中の干渉  
 2.3.1 だ円形介在物が列方向または列直角方向引張りを受ける場合  
 2.3.2 回転だ円体状介在物が列方向または列直角方向引張りを受ける場合  
 2.3.3 菱形介在物が列方向または列直角方向引張りを受ける場合  

3. 接着接合部に生じる応力集中と接合強度の評価法
3.1 応力集中を支配する弾性パラメータについて  
3.2 接着接合材の接合界面における応力分布  
 3.2.1 接合端部における特異応力場の強さISSFとはなにか?  
 3.2.2 接合板の接合界面の応力分布  
3.3 引張りを受ける接着接合板の特異応力場の強さ  
 3.3.1 引張りにおける特異応力場の強さ  
 3.3.2 接着層厚さが特異応力場の強さに与える影響  
3.4 面内曲げを受ける接着接合板の特異応力場の強さ  
 3.4.1 面内曲げにおける特異応力場の強さ  
 3.4.2 異材接合板の引張りと曲げの解  
 3.4.3 無次元化応力拡大係数の比の接着層厚さによる影響  
 3.4.4 引張りと曲げにおける特異応力場の強さの比較  
3.5 接着強度の簡便な評価方法  
 3.5.1 接着強度評価への特異応力場の強さISSFの限界値Kvcの導入(突合せ継手の場合)  
 3.5.2 接着強度評価への特異応力場の強さISSFの限界値Kvcの導入(単純重ね合わせ継手の場合)  

4. 異種材料接合設計の応用と展望
4.1 複合材料の特徴  
 4.1.1 複合材料の種類と応用  
 4.1.2 複合材料の力学的な特徴  
 4.1.3 複合材料の歴史的展開  
4.2 今後の設計と複合材料  

付録 有限要素法と体積力法
A.1 有限要素法  
 A.1.1 各要素と構造全体のバネ定数(各要素と構造全体の剛性マトリックス)  
 A.1.2 三角形平板要素の剛性マトリックス  
A.2 体積力法  

引用・参考文献  
索引  

堀田 源治(ホッタ ゲンジ)

佐野 義一(サノ ヨシカズ)

高瀬 康(タカセ ヤスシ)