材料力学 (増補)- 機械設計の基礎 -
材料の変形特性評価法や応力解析の考え方,はりとたわみ,ねじり,ひずみエネルギー,最大せん断応力,強度特性などを解説した。
- 発行年月日
- 2020/11/05
- 判型
- A5
- ページ数
- 300ページ
- ISBN
- 978-4-339-04668-7
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
【書籍の紹介】
材料力学は,機械要素の設計において基礎となる重要な学問である。本書では,大学での教育・研究および企業における実務経験に基づき,材料力学で重要な基本的な内容をわかりやすく解説しながら,機械要素の設計で必要な課題を解決するための内容も取り上げ,以下の15章構成とした。
第1章「応力とひずみ」,第2章「応力解析」では,機械の強度設計に必要な材料の変形特性の評価方法と応力解析の考え方,および強度評価の方法に関する基本事項を解説した。第3章「はりのせん断力と曲げモーメント」,第4章「はりの応力」,第5章「はりのたわみ」では,機械要素の設計で最も重要な,曲げを受けるはりのたわみと応力解析の方法を解説した。
第6章「ねじり」では,回転を伝える軸やコイルばねの設計で必要なねじりの問題を取り扱い,解析が複雑になる楕円形断面と長方形断面を持つ棒については6.5節で最大ねじり応力を示した。
第7章「円筒および球殻」では,圧力を受ける容器の応力解析の方法を薄肉円筒と薄肉球殻,厚肉円筒について,解説した。
第8章「ひずみエネルギー」では,ひずみエネルギーに関連する定理と応力解析への応用を解説した。
第9章「組合せ応力」では,複雑な荷重が組み合わさって作用する場合の応力解析の方法と,主応力および最大せん断応力の求め方,モールの応力円による応力状態の図的表示方法について,解説した。
第10章「柱の座屈」では,圧縮を受ける細長い部材で大切な座屈などの安定性の問題を解説した。
第11章「熱応力」では,温度変化を伴う機械要素において重要な熱力学について,例題を中心に解説した。
第12章「破損の法則」では,機械要素の強度設計で重要な材料の強度特性を定める破損の法則を解説した。
第13章「疲労」では,機械の破壊の中で最も基本的で重要な疲労を解説した。
第14章「高温における変形と強度」では,エンジンやガスタービンなどの高温機器の設計で重要である材料の高温における強度特性を解説した。
第15章「機械材料の力学的性質」では,機械設計において重要な弾性と塑性,粘弾性,硬さ,残留応力および複合材料,傾斜機能材料,インテリジェント材料,多孔質材料の力学的機能特性について解説した。
【読者へのメッセージ】
材料力学の内容を理解し応用力を身に付けるためには,演習問題を解くことが大切である。そのために,本書では基本的で重要な例題を提示し,その解答も示した。特に,応力の概念を理解し,使用する仮定や法則の成立する範囲や条件を明確にすることは重要である。また,数値計算の例題を解くことにより,応力解析の手法を学び,単位の大切さを理解することができる。したがって,例題を積極的に解いて内容の理解を深めることを勧める。
増補にあたって
本書は多くの大学で材料力学の教科書として使用されてきた。初版では材料力学の基礎に重点を置いて説明したが,機械要素の設計で必要なより多くの課題を解決するための内容を補充するために,増補版ではつぎの項目を追加した。
まず,円形でない断面を持つ棒をねじる場合,横断面は平面を保つことができず,軸方向にもゆがみが生じるため,円形断面の丸軸をねじる場合に用いた仮定は成立せず,解析は複雑になる。6.5節において,楕円形断面と長方形断面を持つ棒について,最大ねじり応力を示す。
つぎに,外径と内径の比が大きい厚肉円筒の場合,応力は半径方向の位置に依存して変化する。7.3節において,厚肉円筒に内圧が作用する場合についての応力分布を示す。
一方,機械では円柱や円筒の形状をした要素が多く使用される。これらの要素の強度を考える場合に必要な円柱座標での応力成分を9.4節において示す。
さらに,機械設計において重要な弾性と塑性,粘弾性,硬さ,残留応力および複合材料,傾斜機能材料,インテリジェント材料,多孔質材料の力学的機能特性について15章において説明する。
なお,追加したこれらの項目の執筆はおもに戸伏と松井が担当した。
増補版が学生および技術者の学習に役立ち,新しい機械の開発に貢献することを期待する。
2020年9月 著者一同
はじめに
機械や構造物などを設計するためには,それらが使用期間中に破損せずに安全に使用できるように考慮する必要がある。このために,強度設計の方法を与える学問として材料力学は発展してきた。人類は,近年,資源・エネルギー問題,地球環境問題など重要な問題に直面している。このような問題に対しても,省資源・省エネルギーや排気ガスの対策などを行う機械を開発するために材料力学の果たす役割は大きい。このようなマクロな課題の解決から,電子機器で使用されるICチップの熱応力による疲労破壊防止などミクロな要素の開発まで,広範囲の分野にわたり材料力学は重要な役割を果たしている。さらに,食品,生物,医療などの分野においても,健康や安全性を考慮した機械や機器を開発するための基礎を材料力学は担っている。
機械設計や,ものづくりにおいて最も基本的で重要な強度設計に必要な情報を材料力学は提供する。したがって,材料力学は新しい機械を創造するために必須の学問である。安全な機械を設計するためには,機械要素の変形解析と応力解析が必要である。
本書は,著者らが大学での教育・研究および企業における実務経験に基づき,材料力学で重要な基本的な内容をわかりやすく解説するように工夫している。このために,本書では,機械の強度設計に必要な材料の変形特性の評価方法と応力解析の考え方,および強度評価の方法に関する基本事項を1章と2章で説明している。機械要素の設計で最も重要な,曲げを受けるはりのたわみと応力解析の方法を3章,4章および5章で詳しく解説している。回転を伝える軸やコイルばねの設計で必要なねじりの問題は,6章で取り扱っている。圧力を受ける容器の応力解析の方法を薄肉円管と薄肉球殻について,7章で紹介している。ひずみエネルギーに関連する定理と応力解析への応用は8章で解説している。複雑な荷重が組み合わさって作用する場合の応力解析の方法と,主応力および最大せん断応力の求め方を9章で説明している。圧縮を受ける細長い部材で大切な座屈などの安定性の問題は,10章で説明している。温度変化を伴う機械要素において重要な熱応力は11章で紹介している。機械要素の強度設計で重要な材料の強度特性を定める破損の法則は12章で説明している。
材料力学の内容を理解し応用力を身に付けるためには,演習問題を解くことが大切である。このために,本書では基本的で重要な例題を提示し,その解答も示した。特に,応力の概念を理解し,使用する仮定や法則の成立する範囲や条件を明確にすることは重要である。また,数値計算の例題を解くことにより,応力解析の手法を学び,単位の大切さを理解することができる。したがって,例題を積極的に解いて内容の理解を深めることを勧める。
本書では,機械設計の応力解析において基本的に重要な弾性変形の問題をおもに取り扱っている。しかし,近年,機械の使用条件はますます過酷になっており,目的の条件を達成するために,非弾性変形の解析が重要になっている。このために,本書では機械の破壊の中で最も基本的で重要な疲労を13章で解説している。さらに,エンジンやガスタービンなどの高温機器の設計で重要である材料の高温における強度特性を,14章で説明している。
本書は高専および大学の教科書としてのみでなく,企業の強度設計においても有用である。本書により材料力学の基礎を学び,さらに先進の材料力学を修得し,これらを応用して人類の発展に貢献する有用な機械や構造物を開発できるように,学生および若い技術者の将来の活躍を期待する。
本書の執筆において各著者がおもに担当した章は,つぎのとおりである。松井:1章と2章,竹市:3章,4章および5章,戸伏:6章と14章,稲葉:7章と12章,池田:8章,10章および11章,小野:9章と13章である。この中で,8章,10章および11章の例題の作成には,名古屋大学の仙場淳彦助教にご協力いただいたことを記して感謝の意を表す。
終りに,本書の出版を快諾され種々のご高配をいただいた株式会社コロナ社の各位に深く感謝申し上げる。
2014年2月 著者一同
1.応力とひずみ
1.1 材料力学と機械設計
1.2 切断法
1.3 応力
1.3.1 垂直応力
1.3.2 せん断応力
1.4 ひずみ
1.4.1 垂直ひずみ
1.4.2 横ひずみとポアソン比
1.4.3 せん断ひずみ
2.応力解析
2.1 機械材料の変形特性
2.2 フックの法則
2.3 許容応力と安全率
2.4 応力集中
引用・参考文献
3.はりのせん断力と曲げモーメント
3.1 はりの支持と外力
3.2 せん断力と曲げモーメント
3.3 片持ちはり
3.3.1 はりの先端に集中荷重が加わる場合
3.3.2 はりの途中に集中荷重が加わる場合
3.3.3 分布荷重が加わる場合
3.3.4 座標軸のとり方
3.4 両端支持はり(単純支持はり)
3.4.1 集中荷重が加わる場合
3.4.2 複数の集中荷重が加わる場合
3.4.3 分布荷重が加わる場合
3.4.4 集中モーメントが加わる場合
3.5 移動荷重が作用するはり
3.6 せん断力と曲げモーメントの関係
4.はりの応力
4.1 曲げ応力
4.2 断面モーメントと断面係数
4.2.1 図心と断面一次モーメント
4.2.2 平行軸の定理
4.2.3 直交軸の定理
4.2.4 加法定理(減法定理)
4.2.5 いろいろな断面形状の断面二次モーメントと断面係数
4.3 せん断応力
引用・参考文献
5.はりのたわみ
5.1 たわみ曲線
5.2 片持ちはり
5.2.1 集中荷重が加わる場合
5.2.2 分布荷重が加わる場合
5.3 両端支持はり(単純支持はり)
5.3.1 集中荷重が加わる場合
5.3.2 分布荷重が加わる場合
5.4 不静定はり
5.4.1 両端が固定支持されたはり
5.4.2 固定支持端と単純支持端を有するはり
5.4.3 不静定はりを重ね合わせの原理で考える
5.5 平等強さのはり
6.ねじり
6.1 丸軸のねじり
6.1.1 ねじり応力の分布
6.1.2 ねじれ角と軸の強度
6.2 中空丸軸のねじり
6.3 伝動軸
6.3.1 ねじり応力
6.3.2 設計で考慮する項目
6.4 密巻コイルばね
6.4.1 ばねの応力
6.4.2 ばねの変形
6.5 円形でない断面を持つ棒のねじり
6.5.1 楕円形断面の棒のねじり
6.5.2 長方形断面の棒のねじり
引用・参考文献
7.円筒および球殻
7.1 薄肉円筒
7.2 薄肉球殻
7.3 厚肉円筒
8.ひずみエネルギー
8.1 仕事とひずみエネルギー
8.2 引張りと圧縮によるひずみエネルギー
8.3 せん断によるひずみエネルギー
8.4 一般化力によるひずみエネルギー
8.4.1 曲げによるひずみエネルギー
8.4.2 ねじりによるひずみエネルギー
8.5 相反定理
8.6 カスチリアノの定理
8.7 衝撃荷重
9.組合せ応力
9.1 3次元における応力とひずみ
9.1.1 3次元の応力成分
9.1.2 応力とひずみの関係
9.1.3 3次元問題の2次元化
9.2 傾斜面上の応力
9.2.1 垂直応力とせん断応力
9.2.2 主応力
9.2.3 主せん断応力
9.2.4 モールの応力円
9.2.5 曲げとねじりの組合せ
9.3 弾性定数間の関係と体積弾性係数
9.3.1 弾性定数間の関係
9.3.2 体積弾性係数
9.4 円柱座標における応力
10.柱の座屈
10.1 安定と不安定
10.2 座屈荷重
10.3 種々の端末条件をもつ柱の座屈
10.4 荷重の偏心や初期たわみを有する柱の座屈
10.4.1 偏心の影響
10.4.2 初期たわみの影響
10.5 座屈の設計公式
10.5.1 ゴールドン・ランキンの式
10.5.2 テトマイヤーの式
11.熱応力
11.1 棒の熱応力
11.2 熱応力に関する例題
12.破損の法則
12.1 破損基準
12.2 最大主応力説
12.3 最大せん断応力説
12.4 せん断ひずみエネルギー説
13.疲労
13.1 S-N曲線
13.1.1 疲労破壊の過程
13.1.2 疲労試験
13.1.3 S-N曲線
13.1.4 S-N曲線に影響を及ぼす因子
13.2 f-N曲線
13.2.1 高サイクル疲労と低サイクル疲労
13.2.2 f-N曲線
13.3 疲労破壊への破壊力学の適用
13.3.1 き裂先端の応力
13.3.2 応力拡大係数
13.3.3 き裂先端塑性域
13.3.4 その他の破壊力学パラメータ
13.3.5 疲労き裂進展寿命の評価
引用・参考文献
14.高温における変形と強度
14.1 高温における変形
14.2 クリープ
14.2.1 クリープ変形
14.2.2 クリープ変形の構成式
14.3 リラクセーション
14.4 高温強度
引用・参考文献
15.機械材料の力学的性質
15.1 弾性と塑性
15.2 粘弾性
15.3 硬さ
15.4 残留応力
15.5 力学的機能材料の性質
15.5.1 複合材料
15.5.2 傾斜機能材料
15.5.3 インテリジェント材料
15.5.4 多孔質材料
引用・参考文献
付録
索引
-
掲載日:2020/11/09
-
掲載日:2020/11/05
【営業担当者より】
2014年4月に発行した「材料力学ー機械設計の基礎ー」は多数の教育機関でご採用いただいてきましたが,このたび2020年10月の増刷におきまして,本書の特徴でもある機械要素の設計で必要な課題を解決するための内容を補強し,増補版としてリニューアルいたしました。以下の内容が新規で加わっております。
6章5節「円形でない断面を持つ棒のねじり」(楕円形断面の棒のねじり/長方形断面の棒のねじり)
7章3節「厚肉円筒」
9章4節「円柱座標における応力」
15章 機械材料の力学的性質【1節「弾性と塑性」2節「粘弾性」3節「硬さ」4節「残留応力」5節力学的機能材料の性質(複合材料/傾斜機能材料/インテリジェント材料/多孔質材料)】