演習問題で学ぶ 材料の力学

演習問題で学ぶ 材料の力学

問題を解き,材料力学の応用力を身に着ける。「演習問題で学ぶ釣合いの力学」の姉妹本。

ジャンル
発行年月日
2022/04/25
判型
A5
ページ数
168ページ
ISBN
978-4-339-04678-6
演習問題で学ぶ 材料の力学
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定価

2,640(本体2,400円+税)

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本書は,材料の力学の基本である切断法→自由体線図→力の釣合いという設計やものづくりに必須のアプローチを演習によって身につけることを目的としている.機械や構造物を仮想的に切断し,切断した物体のある部分に注目して,力の釣合いを考えることで,実際の機械や構造に作用する力が明確になる.その練習には,多くの実際の問題を自分自身で考え,SFD(せん断力図)・BMD(曲げモーメント図)を解いてみるのがよい.

本書の内容は,材料力学分野で基本となる直線棒の引張り・曲げ・ねじり・座屈による応力や変形の理論を中心としており,公式から応用的な問題まで幅広く演習し身に着けることができるよう構成している.

1章および2章は,材料力学の基礎となるSFD・BMDと応力とひずみの基礎式を統一的に導出する演習とした.3章以降は,各荷重形式に対応した演習問題を解くことで,切断法→自由体線図→力の釣合いのアプローチが身につくようにしている.特に,6章のはりのたわみの不静定問題,9章の弾性力学の基礎では,実用的かつ特色のある問題を取り上げ,材料の力学の理解が深まり,応用力も向上するように配慮した.

本書を通じて,材料の力学を統一的な手順で解決する手法を身につけていただければ幸いである.

ものづくりにおいては,その材料に力が加わっても壊れないよう設計する必要がある。極端な変形が生じれば使用できないので,変形量を把握することも要求される。材料力学や弾性力学と呼ばれる学問は,材料を安全かつ経済的に使用する上で必要となり,機械系のエンジニアが必要とする4力学の中でも,最も基本的かつ重要である。特に,教科書や参考書に書かれていることを,知識として知っているだけではなく,実用問題に応用できる能力を身に着けていることが必要となる。機械や構造物を仮想的に切断し(切断法),切断した物体に注目して自由体線図を描き,力の釣合いを考えることは設計やものづくりの現場では頻繁に行われている。また,実際の機械や構造にはいろいろな形状が存在するので,機械系の4力学の中でも特に材料の力学では,応用力を身に着けることが必要である。このような観点から,著者らの一人は,さきに「演習問題で学ぶ釣合いの力学」を上梓した。同書ではまず,質点の釣合いと剛体の力の釣合いの復習から始めて,実際に問題を解く上で特に重要となる,2力物体の釣合いの考え方とその演習問題を取り上げた。そして,その応用をトラス(2力物体で構成される)やフレームの演習問題として示すとともに,SFD(せん断力図)とBMD(曲げモーメント図)への応用や,変形を考慮する不静定問題の演習までを取り扱った。

本書では,上記のような,切断法→自由体線図→力の釣合いの考え方を,材料の力学に応用する。ここで取り扱う問題は,構造物を,棒や軸などの1次元の構造や1次元の部材を組み合わせたより単純な構造物としてモデル化したものである。このモデル化により,材料に生じる応力は,変形を規定するパラメータを仮定して断面のひずみ分布を表示し,応力とひずみの関係を用いて断面内の応力を荷重の関数として表すという統一的な手順で求められる。よって,計算機を使用することなく,紙と鉛筆で強度設計ならびに剛性設計を行うことができる。本書においても,「演習問題で学ぶ釣合いの力学」から一貫して,切断法→自由体線図→力の釣合いのアプローチを自分自身で,実際の問題を考えることによって,身に着けていけるように努めている。

計算機が発達した今日では,種々の問題がその利用によって解かれるようになっており,実際の複雑構造の設計にも用いられている。しかし,それに安易に頼ることによって,むしろ事故の危険性が高められている面がある。本書の内容は,材料の力学分野で基本となる直線棒の引張り・ねじり・曲げによる応力や変形の理論を身に着けることを中心としているが,そのためだけではなく,計算機をより有効に使用するための単純化・モデル化や,計算機で得られた結果をそのまま使うのではなく,その妥当性を確認する上でも有用となる。このような観点からも本書を活用していただければ幸いである。

2022年2月
著者一同

1.力の釣合いとSFD・BMD
【演習問題1.1】平面フレーム1
【演習問題1.2】平面フレーム2
【演習問題1.3】平面フレーム3

2.直線棒に生じる応力とひずみ
2.1 引張り・ねじり・曲げにより生じる応力と変形
【演習問題2.1】引張応力と引張変形
【演習問題2.2】引張りを受ける丸棒の半径減少量
【演習問題2.3】ねじり応力とねじり変形
【演習問題2.4】曲げ応力と曲げ変形
【演習問題2.5】はりのたわみの公式
2.2 断面2次モーメントと極断面2次モーメント
【演習問題2.6】I_pの導出
【演習問題2.7】円形断面のI
【演習問題2.8】長方形断面のI
【演習問題2.9】中立面から離れた位置にある長方形断面のI
【演習問題2.10】T形断面のI
章末問題

3.引張りと圧縮
3.1 静定問題(力の釣合いのみで求められる問題)
【演習問題3.1】静定問題1
【演習問題3.2】静定問題2
3.2 不静定問題(力の釣合いと変形の条件から求める問題)
【演習問題3.3】不静定問題1
【演習問題3.4】不静定問題2
【演習問題3.5】熱応力
【演習問題3.6】不静定問題3
章末問題

4.ねじり
4.1 静定問題
【演習問題4.1】丸棒断面に生じる応力
【演習問題4.2】静定問題1
【演習問題4.3】静定問題2
4.2 不静定問題
【演習問題4.4】不静定問題1
【演習問題4.5】不静定問題2
章末問題

5.はりの曲げとたわみ
5.1 曲げ応力
【演習問題5.1】はりに生じる曲げ応力1
【演習問題5.2】はりに生じる曲げ応力2
【演習問題5.3】丸棒から曲げ強度が最大となるように長方形断面の角材を切り出す
【演習問題5.4】構造物に生じる曲げ応力1
【演習問題5.5】構造物に生じる曲げ応力2
【演習問題5.6】偏心荷重によって生じる曲げ応力
5.2 はりのたわみ(静定問題)
【演習問題5.7】ミオソテスの方法
【演習問題5.8】ミオソテスの方法の応用1
【演習問題5.9】ミオソテスの方法の応用2
【演習問題5.10】ミオソテスの方法の応用3
【演習問題5.11】ミオソテスの方法の応用4
【演習問題5.12】L形はりのたわみ1
【演習問題5.13】L形はりのたわみ2
章末問題

6.はりのたわみの不静定問題
6.1 はりのたわみ(不静定問題)
【演習問題6.1】はりのたわみの不静定問題1
【演習問題6.2】はりのたわみの不静定問題2
【演習問題6.3】はりのたわみの不静定問題3
【演習問題6.4】はりのたわみの不静定問題4
【演習問題6.5】はりのたわみの不静定問題5
【演習問題6.6】はりのたわみの不静定問題6
【演習問題6.7】はりのたわみの不静定問題7
【演習問題6.8】熱応力による不静定問題
6.2 はりの曲げによるせん断応力
【演習問題6.9】せん断応力の性質(共役せん断応力)
【演習問題6.10】曲げによって生じる最大せん断応力1
【演習問題6.11】曲げによって生じる最大せん断応力2
章末問題

7.曲げとねじりの組合せ
7.1 曲げとねじりによる応力(組合せ応力)
【演習問題7.1】応力の座標変換
【演習問題7.2】主応力
【演習問題7.3】主せん断応力
【演習問題7.4】曲げとねじりが同時に作用するときの応力1
【演習問題7.5】曲げとねじりが同時に作用するときの応力2
7.2 曲げとねじりによる変形
【演習問題7.6】曲げとねじりが同時に作用するはりの変形
【演習問題7.7】曲げとねじりが同時に作用する構造の変形1
【演習問題7.8】曲げとねじりが同時に作用する構造の変形2
【演習問題7.9】曲げとねじりが同時に作用する構造の変形3
【演習問題7.10】曲げとねじりが同時に作用する構造の変形4
【演習問題7.11】曲げとねじりが同時に作用する構造の変形5
【演習問題7.12】曲げとねじりが同時に作用する構造の変形6
章末問題

8.エネルギー法・カスティリアーノの定理
【演習問題8.1】引張りを受ける棒のひずみエネルギー
【演習問題8.2】ねじりを受ける棒のひずみエネルギー
【演習問題8.3】曲げを受ける棒のひずみエネルギー
【演習問題8.4】カスティリアーノの定理の導出
【演習問題8.5】エネルギー法の応用1
【演習問題8.6】エネルギー法の応用2
【演習問題8.7】エネルギー法の応用3
【演習問題8.8】曲がりはりのたわみ1
【演習問題8.9】曲がりはりのたわみ2
【演習問題8.10】曲がりはりのたわみ3
【演習問題8.11】曲がりはりのたわみ4
【演習問題8.12】曲がりはりのたわみ5
【演習問題8.13】曲がりはりのたわみ6
【演習問題8.14】曲がりはりのたわみ7
章末問題

9.弾性力学の基礎
9.1 応力の座標変換
【演習問題9.1】応力の座標変換の応用1
【演習問題9.2】応力の座標変換の応用2
9.2 ひずみの座標変換
【演習問題9.3】ひずみの座標変換
【演習問題9.4】ひずみの座標変換の応用1
【演習問題9.5】ひずみの座標変換の応用2
【演習問題9.6】ひずみの座標変換の応用3
9.3 2次元および3次元のフックの法則
【演習問題9.7】2次元および3次元のフックの法則の応用1
【演習問題9.8】2次元および3次元のフックの法則の応用2
【演習問題9.9】2次元および3次元のフックの法則の応用3
【演習問題9.10】2次元および3次元のフックの法則の応用4
【演習問題9.11】2次元および3次元のフックの法則の応用5
9.4 薄肉円筒と薄肉球
【演習問題9.12】薄肉円筒に生じる応力
【演習問題9.13】薄肉円筒問題1
【演習問題9.14】薄肉円筒問題2
【演習問題9.15】薄肉円筒問題3
章末問題

10.直線棒の圧縮による座屈
10.1 剛体棒の座屈
【演習問題10.1】剛体棒の座屈
10.2 弾性棒の座屈(オイラーの座屈荷重)
【演習問題10.2】片側を剛体壁で固定された直線棒の座屈荷重(オイラーの座屈荷重)1
【演習問題10.3】片側を剛体壁で固定された直線棒の座屈荷重(オイラーの座屈荷重)2
【演習問題10.4】支持条件が異なる直線棒の座屈1
【演習問題10.5】支持条件が異なる直線棒の座屈2
【演習問題10.6】曲げ荷重と圧縮荷重が同時に作用する両端支持はりの座屈
章末問題

章末問題解答
索引

読者モニターレビュー【 こいずみりく 様(ご専門:機械工学、振動、音響)】

実際の機械製品の開発においては、材料強度に関する検討が大きなウェイトを占める。その検討には今では汎用ソフトウェアによる数値解析が多用されるが、その解析結果の妥当性の検証は設計者自身が手計算で当たらなくてはならない。また、図面に起こす前の初期検討においては、ざっくりとした図示と計算を繰り返す。したがって材料力学において本書で繰り返される「紙と鉛筆」での作業の重要性は今も昔も変わらない。

本書「演習問題で学ぶ材料の力学」は、本文中の演習問題95問、章末問題24問からなる。材料力学の初歩である応力とひずみ、引張と圧縮、ねじりから、弾性力学の基礎、座屈問題まで、ひととおりの知識を実践的な演習問題を通じて学ぶことができる。従来の教科書で多く用いられる、用語などの解説のあとに確認用の例題が付される形式とは異なり、本書では演習問題がまず提示され、その解説の中で必要な用語や公式が導入される。珍しい形式だが、材料力学の肝を理解するには手を動かすことが大事であり、効果的な配置であると思う。

機械系学生や新人技術者の基礎学習、機械工学に興味のある他分野の技術者などに本書をお薦めする。

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報一覧

野田 尚昭

野田 尚昭(ノダ ナオアキ)

専門は材料力学・弾性力学。公表された論文は400件以上。
素形材産業技術賞素形材センター会長賞、日本材料学会学術貢献賞、日本塑性加工学会論文賞/教育賞、日本設計工学会論文賞、日本機械学会材料力学部門賞貢献賞/業績賞、などを受賞。著書には、『演習問題で学ぶ釣合いの力学』(コロナ社)、『設計者に活かす切欠き・段付き部の材料強度』(日刊工業新聞社)、『設計者のためのすぐに役立つ弾性力学』(日刊工業新聞社)、『Q&Aでわかるリスクベース設計のポイント』(日刊工業新聞社)、『異種接合材の材料力学と応力集中』(コロナ社)、『演習問題で学ぶ材料の力学』(コロナ社)など。九州工業大学名誉教授、日本機械学会永年会員、自動車技術会フェロー。

小田 和広

小田 和広(オダ カズヒロ)

破壊力学による強度評価ならびに応力解析を専門分野としています.体積力法の特異積分方程式を用いた応力拡大係数の高精度解析に関する研究でこの分野に興味を持ち,「3次元表面き裂の位置・形状の同定に関する研究」で学位を取得.現在は,接着接合構造の高強度化に関する研究を中心に,地元企業との共同研究等に注力しています.大分大学学長特命補佐(産学連携担当),日本材料学会理事(2020年~2024年).

高木 怜(タカキ レイ)

掲載日:2022/10/06

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掲載日:2022/06/07

「日本機械学会誌」2022年6月号広告