システム制御のための数学(1) - 線形代数編 -

システム制御工学シリーズ 7

システム制御のための数学(1) - 線形代数編 -

本シリーズを学ぶ上で必要となる数学のための教本である。線形代数編と関数解析編の二つに大きく分け,本書はそのうち線形代数を解説する。本書は教科書であるが,制御工学のための数学を復習,自習したいと思う人にも適している。

ジャンル
発行年月日
2000/11/06
判型
A5
ページ数
266ページ
ISBN
978-4-339-03307-6
システム制御のための数学(1) - 線形代数編 -
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本シリーズを学ぶ上で必要となる数学のための教本である。線形代数編と関数解析編の二つに大きく分け,本書はそのうち線形代数を解説する。本書は教科書であるが,制御工学のための数学を復習,自習したいと思う人にも適している。

工学部ではさまざまな分野の講義が提供されているが,その中でも数学は物理学などと並んで基礎科目となっている。どのような分野に進もうとも,数学の基礎をしっかりしたものにすると,専門科目の習得が容易になるからである。さらに,数理的な考え方そのものが,工学に対して大きな影響を与えてきたことにも注意しておきたい。

制御工学では,伝達関数や状態方程式といった道具立ての記述に始まり,解析手段や設計方法に至るまで,複素関数や線形代数を利用している。多くの大学では,線形代数,解析学を入学後の早い時期に提供している。しかし,限られた時間の講義であるから,制御工学の勉強を始めたときにもう一度それらの知識を確かなものにしたいと思う人も多いであろう。

本書は,制御工学の講義の理解や制御系の研究室での卒業研究の手がかりをより容易に得られるように,線形代数に焦点を置いて書かれたものである。行列や線形空間の基礎事項を自習できるようにしている。そのため,できるだけ本書の中で完結した記述を目指した。定理を証明することに不慣れな人にもわかるように,通常ならば自明であると書いて済ます部分も記述したために,あえて冗長な証明となったところもある。基本的に定理は基礎事項の記述,例題はその使い方の例示のために用いた。演習問題の中には,よくある誤解を指摘するものも含まれているので,最初は解答を見ずに考えていただきたい。

もう一つの本書の基本的な方針として,読者は線形代数の初学者ではないので,できるだけ制御工学での利用の多い部分を詳細に記述した。1章から5章の範囲は,多くの標準的な線形代数の教科書と重なる部分が多い。線形空間の丁寧で、わかりやすい参考書を含めて,巻末の引用・参考文献で挙げた線形代数に関する文献を参照し,補っていただきたい。6章のジョルダン標準形は初読時には若干複雑に感じられるかもしれない。初めは結果だけを眺めて,後に読み返してもよい。7章以降の部分は,学部の線形代数の講義ではあまり触れられていないところだと思う。制御工学では何らかの量を考えて解析や設計を行う。そのために,内積,ノルム,特異値といった考え方が重要となってくる。本書では,それらの基本的な事項の記述に努め,できるだけ多くのページを割り当てた。

人名の読み方については「数学辞典」(岩波書店)の人名索引にできるだけ従うことにした。その他基礎的な用語の初出時には,対応する英語を併記して英文の文献を読む必要のあるときに利用できるようにした。

最後になるが,筆者をシステム制御工学の分野に導いていただいた近畿大学児玉慎三先生,大阪大学前田肇先生に謝意を表したい。本シリーズを企画し執筆の機会を与えて下さった大阪大学池田雅夫先生,原稿を読んでコメントをいただいた京都大学杉江俊治先生と金沢大学藤田政之先生,ならびに本シリーズ編集委員の方々に感謝したい。遅筆に辛抱強くお付き合いいただいたコロナ社の皆さんにお礼申し上げる。私事になるので恐縮であるが,本書の執筆中,家族には多くの面で支えてもらった。ここに記して感謝したい。

2000年10月
太田快人

1.行列とベクトル
1.1 行列とベクトルの構成
 1.1.1 実数または複素数の配列
 1.1.2 行列の演算
1.2 行列式
 1.2.1 行列式の定義
 1.2.2 行列式の基本的性質
 1.2.3 小行列式
1.3 逆行列
演習問題

2.線形空間
2.1 線形空間の定義と具体例
 2.1.1 線形空間-その定義
 2.1.2 線形空間の例
2.2 一次独立と次元
 2.2.1 一次独立の定義
 2.2.2 一次独立な集合の性質
 2.2.3 次元
2.3 基底
 2.3.1 基底の定義
 2.3.2 基底による線形空間の表現
2.4 部分空間
 2.4.1 部分空間の和と共通集合
 2.4.2 補空間
 2.4.3 商空間
演習問題

3.線形写像
3.1 線形写像の定義と具体例
 3.1.1 定義
 3.1.2 線形写像の例
 3.1.3 線形写像のつくる線形空間
3.2 正則な線形写像
3.3 基底を用いた線形写像の行列表示
 3.3.1 行列表示
 3.3.2 基底の変換
演習問題

4.線形写像の像と零空間
4.1 像と零空間
 4.1.1 像と零空間の定義
 4.1.2 線形写像の階数
 4.1.3 行列の階数との関係
4.2 連立一次方程式の解の構造
4.3 不変空間と行列表示
 4.3.1 不変空間の定義
 4.3.2 行列表示との関係
4.4 像と零空間を用いた線形写像の分解
 4.4.1 線形写像の分解
 4.4.2 最大階数分解への適用
演習問題

5.固有値 I
5.1 固有値と固有ベクトル
 5.1.1 固有値と特性方程式
 5.1.2 行列の固有値のもついくつかの性質
5.2 固有ベクトルを用いた行列の対角化
5.3 不変部分空間と固有値
演習問題

6.固有値 II
6.1 最小多項式
 6.1.1 最大公約多項式とユークリッドの互除法
 6.1.2 零化多項式と最小多項式
 6.1.3 最小多項式と一般化固有空間の直和分割
6.2 ジョルダン標準形
 6.2.1 一般化固有空間とジョルダンブロック
 6.2.2 ジョルダン標準形
6.3 行列関数
 6.3.1 ジョルダン標準形を用いた行列関数の定義
 6.3.2 行列関数の性質
演習問題

7.内積をもった線形空間
7.1 内積の定義と基本的性質
 7.1.1 内積の定義と具体例
 7.1.2 内積から定まるノルム
 7.1.3 基本的性質
7.2 直交性
 7.2.1 定義
 7.2.2 正規直交基底
7.3 直交補空間
 7.3.1 直交補空間の定義
 7.3.2 直交補空間の基本的性質
演習問題

8.正規行列とその固有値
8.1 正規行列の固有ベクトル
 8.1.1 定義と具体例
 8.1.2 正規行列の固有ベクトル
8.2 直交行列とユニタリ行列
 8.2.1 固有値の存在領域
 8.2.2 線形変換としてのユニタリ行列と直交行列
 8.2.3 ユニタリ行列と直交行列による相似変換
8.3 実対称行列とエルミート行列
 8.3.1 固有値の存在領域
 8.3.2 ミニマックス定理とその帰結
演習問題

9.二次形式と正定行列
9.1 二次形式の定義と符号
 9.1.1 二次形式とエルミート行列
 9.1.2 二次形式の符号
 9.1.3 二次曲面
9.2 正定行列
 9.2.1 正定行列の定義
 9.2.2 正定行列の性質
 9.2.3 準正定行列の平方根
9.3 二次形式と内積
演習問題

10.射影と一般化逆行列
10.1 射影と補空間
 10.1.1 射影
 10.1.2 射影と冪等(べきとう)な行列
10.2 直交射影と直交補空間
 10.2.1 直交射影
 10.2.2 直交射影と冪等なエルミート行列
10.3 一般化逆行列
 10.3.1 一般化逆行列の定義
 10.3.2 一般化逆行列のクラス
 10.3.3 疑似逆行列
演習問題

11.特異値
11.1 特異値分解
 11.1.1 特異値分解の定義
 11.1.2 特異値分解の幾何学的意味
11.2 特異値のさまざまな性質
 11.2.1 ミニマックス定理
 11.2.2 行列の積和と特異値の関係
11.3 特異値分解の利用
 11.3.1 階数の決定
 11.3.2 低階数行列での近似
 11.3.3 特異値分解を利用した計算
演習問題

12.ノルムをもった線形空間
12.1 ノルム
 12.1.1 ノルムの定義と基本的性質
 12.1.2 ノルムをもつ線形空間の具体例
 12.1.3 内積より導かれるノルムとの相違点
 12.1.4 行列のノルム
12.2 行列の作用素としてのノルム
 12.2.1 定義と基本的性質
 12.2.2 作用素としてのノルムの具体例
12.3 正方行列のノルムと固有値
 12.3.1 ノルムとスペクトル半径
 12.3.2 行列のノルムと正則性
演習問題

13.行列に関する等式と不等式
13.1 線形行列方程式
 13.1.1 線形行列方程式の解の存在条件
 13.1.2 リアプノフ方程式
13.2 代数リッカチ方程式
 13.2.1 連続形代数リッカチ方程式
 13.2.2 離散形代数リッカチ方程式
13.3 線形行列不等式
演習問題

14.行列の公式
14.1 行列式と逆行列に関する公式
 14.1.1 行列式
 14.1.2 逆行列
 14.1.3 微分
 14.1.4 トレース
14.2 行列指数関数に関する公式
演習問題

引用・参考文献
演習問題の解答
索引

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