レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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通信の信号処理 - 線形逆問題,圧縮センシング,確率推論,ウィルティンガー微分 -
通信の典型的な問題に対する典型的な信号処理手法について解説することで,現在の通信システムで用いられている最先端の信号処理技術を理解するために必要な最低限の知識を,効率的かつ体系的に提供することを目的としている。
- 発行年月日
- 2023/11/02
- 定価
- 3,850円(本体3,500円+税)
- ISBN
- 978-4-339-01406-8
レビュー,書籍紹介・書評掲載情報
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読者モニターレビュー【 つじもん 様 (業界・専門分野:無線信号処理)】
掲載日:2023/11/06
本書「通信の信号処理」は、現在の通信システムで用いられている最先端の信号処理技術を体系的に学べる書籍である。私の専門分野である無線通信システムの研究開発分野では、近年、圧縮センシングや確率伝搬法が当然のことのように使われている。最先端の信号処理技術は、大学院時代に輪講等で学んだ基礎知識だけでは太刀打ちできず、論文等から断片的な知識しか得られないことも多い。そのため、個人的には本書のように通信の信号処理分野において幅広く俯瞰して体系的に学べる書籍を待望していた。
本書では、1章から3章で通信の信号処理の理解に必要な確率の基本と複素関数の微分について説明されている。その後、4章の線形逆問題の基本的な手法では、ZF推定やMMSE推定、干渉除去等の無線信号処理方法が丁寧に式展開されて説明される。そして、5章の圧縮センシング、6章の部分空間法、7章の状態推定、8章の確率推論と発展的な内容まで言及されている。
本書では、通信の信号処理に関する普遍的な知識を学べるように構成されている。抽象的な説明が多いため、初学者が自学自習するには向かないかもしれない。その場合、他の書籍をあたった上で再度本書に戻ってくることがおすすめされるであろう。他の書籍では異なる文脈で説明された手法が本書ではすっきりと説明されているため、頭の中で一つにつながるような印象を受けるに違いない。私はまだ本書にひととおり目を通しただけの段階であり、自分の業務に応用できるほど深くは理解できていない。本書のまえがきにあるとおり「白紙とペンを用意して」自分の手で式を一つ一つ展開しながら、身に着けることで業務に活かしていきたいと考える。