聴覚・発話に関する脳活動観測

音響テクノロジーシリーズ 25

聴覚・発話に関する脳活動観測

聴覚・発話に関する脳活動観測のため,EEG,MEG,fMRI,fNIRSを解説する。

ジャンル
発行予定日
2022/08/中旬
判型
A5 上製
ページ数
194ページ
ISBN
978-4-339-01164-7
聴覚・発話に関する脳活動観測
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定価

3,300(本体3,000円+税)

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  • 内容紹介
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本書は,聴覚や音声に関わる脳機能を非侵襲的に観測する代表的な方法である,脳波,脳磁図,機能的磁気共鳴画像法,機能的近赤外分光法を解説する。研究者や大学院生が脳活動を観測し解析するために最適な方法と解析結果を紹介する。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

本書では聴覚・発話に関する脳活動観測のテクニックを解説する。研究対象者に苦痛や侵襲を与えることが少なく,医師免許など特別な資格をもたない研究者や大学院生でも十分訓練すれば安全に活用でき,かつ発話と聴覚の研究に適したテクニックを対象とした。結果として選択されたのは,脳波(EEG),脳磁図(MEG),機能的磁気共鳴画像法(fMRI),機能的近赤外分光法(fNIRS)である。これらのテクニックは,脳障害の診断や研究のために従来から医学分野で活用されてきたものである。しかし近年では,脳と心のより深い理解,人のコミュニケーション行動や社会活動の理解,AI(人工知能)やBMI(brain machine interface)など,新技術の研究開発などに必須の基礎的知見を得る方法として,医学系のみならず理工系や文系など,多彩な分野で活用される基盤的研究テクニックになってきている。

1 章では,これらのテクニックの得失,相互関係を概説する。複数のテクニックを活用し,それぞれの得失を補い合い,より深い理解を引き出す研究も視野に入れた解説を試みた。2 章では,これらのテクニックを理解するために必要な基礎概念を概説する。

3 章では,最も長い歴史をもつ脳波(EEG)を詳しく解説する。EEG は,他の方法に比べて安価で比較的取り扱いやすく,脳活動の時間的特性の解析に適しており,脳の複数部位の同期的な共振活動の解析などでも活用されている。

4 章では,1980 年代に実用化された脳磁図(MEG)を解説している。EEGと同じように脳活動の時間的特性の解析が得意で,活動部位の推定がEEG よりも正確にできるとされる。ただし,地磁気より7 ~ 8 桁小さい微弱な脳磁界を超電導素子で計測する装置は,EEG に比べて高価で維持経費も安くないため,活用例はEEG より少ない。

5 章では,最も新しい方法である機能的近赤外分光法(fNIRS)を取り上げる。fNIRS は特に赤ちゃんの脳機能発達研究などで威力を示し,ここ15 年間で研究報告が顕著に増加している。fMRI に比べて騒音がなく研究対象者の動きを拘束する制約が小さく,自由度が大きいなどの利点がある。ただし,観測可能な脳部位が皮質表面に限局されるという制約がある。

6 章では,40 年ほど前に実用化されたfMRI を解説する。fMRI は脳の深部の活動も計測でき,活動部位の推定精度が高いという強みもあって研究論文は急速に増加し,現在最も活発に活用される方法となっている。解剖学的構造を撮影する(f の付かない)MRI で脳の詳細な構造を観測し,その結果にMEG やfMRI で得られた活動を重畳(マッピング)させ,脳のどの部位がどのタイミングでどのように活動したかを調べるテクニックとしても活用される。ただし,強い磁場を振動させる必要があるため,騒音が大きく,磁性体を体内外に身に着けている場合には計測の対象外になるといった制約もある。

7 章では,研究倫理の三原則「人格の尊重原則」,「善行原則」,「正義原則」を基盤として,脳機能研究の倫理を解説する。研究目的の明確化,研究対象者数設定の統計学的根拠や科学的妥当性,研究実施に伴うリスク評価とその低減法,説明同意文書の理解可能性,脳機能研究が心の研究であるということを意識したプライバシーと個人情報保護,偶発的所見への対処といった倫理的妥当性の重要性を示す。

諸般の事情で発行が予定よりかなり遅れてしまったにもかかわらず,執筆を分担して下さった皆様のご協力,日本音響学会音響サイエンスシリーズ編集委員会の北村達也先生やコロナ社の粘り強いご支援に心から感謝する。

2022 年7 月
今泉 敏 

執 筆 分 担
今泉  敏:1 章,2 章,4 章  
軍司 敦子:3 章
皆川 泰代:5 章
能田由紀子:6 章
河内山隆紀:6 章
中澤 栄輔:7 章

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.聴覚・発話に関する脳活動観測のテクニック
1.1 脳活動観測手法
1.2 時間分解能と空間分解能
1.3 脳機能研究の流れ
引用・参考文献

2.ヒトの脳の構造と機能
2.1 脳部位の表し方
2.2 脳の解剖的構造
2.3 側頭葉の構造と機能
2.4 頭頂葉の構造と機能
2.5 後頭葉の構造と機能
2.6 前頭葉の機能と構造
2.7 音声言語に関わる脳神経機能モデル
引用・参考文献

3.脳波による脳活動観測
3.1 原理・装置
 3.1.1 聴取や発話に伴って生じる脳電位とは
 3.1.2 手続き
 3.1.3 刺激や課題
 3.1.4 計測
3.2 実験デザイン
 3.2.1 聴覚誘発電位(AEP)
 3.2.2 事象関連電位(ERP)
3.3 データ解析
 3.3.1 加算平均法
 3.3.2 周波数解析
 3.3.3 電位分布図
 3.3.4 発生源推定
3.4 研究事例
引用・参考文献

4.MEGによる脳活動観測
4.1 原理・装置
 4.1.1 計測システム
 4.1.2 電流源推定
4.2 実験デザイン
 4.2.1 短潜時の事象関連磁界
 4.2.2 オドボール課題とMMF
 4.2.3 長潜時の事象関連磁界
 4.2.4 連続音声に対するMEG計測
4.3 データ解析
4.4 研究事例
 4.4.1 聴覚情報処理機構の発達
 4.4.2 音韻概念の学習
 4.4.3 MMF生成機構のDCM解析
 4.4.4 文統合過程の研究
 4.4.5 周波数時間応答関数によるMEG解析
 4.4.6 音声の階層構造に対応する神経系振動活動のMEG解析
 4.4.7 ボトムアップ処理とトップダウン処理に関する研究
 4.4.8 MEGによる音声研究の今後
引用・参考文献

5.近赤外分光法による脳活動計測
5.1 原理・装置
 5.1.1 近赤外分光法(NIRS)とは
 5.1.2 NIRSの測定原理
 5.1.3 さまざまなNIRSシステム
 5.1.4 NIRSの特徴
5.2 実験デザイン
 5.2.1 なんの機能を測るか:刺激,タスクの選定
 5.2.2 どこを測定するか:プローブの配置
 5.2.3 実験デザイン:ベースライン設定
 5.2.4 実験デザイン:ブロックデザイン,イベントデザイン
 5.2.5 実験デザイン:実験計画法
 5.2.6 脳機能結合解析やハイパースキャンニングでの実験デザイン
 5.2.7 fNIRS特有の注意点
5.3 データ解析
 5.3.1 データの前処理
 5.3.2 平均法とGLM
5.4 研究事例
 5.4.1 研究目的と実験デザインの選定
 5.4.2 刺激音声とベースライン,ターゲット区間の設定
 5.4.3 プローブの設定と実験参加者
 5.4.4 実験の流れ
 5.4.5 結果の解析と解釈
引用・参考文献

6.fMRIによる脳活動観測
6.1 原理・装置
 6.1.1 MRIの原理
 6.1.2 fMRIの原理
 6.1.3 MRI装置
 6.1.4 fMRI実験用周辺装置
6.2 実験デザイン
 6.2.1 実験参加者
 6.2.2 文献調査
 6.2.3 実験型と刺激呈示タイミング
 6.2.4 聴取実験と発話実験
6.3 データ解析
 6.3.1 解析ソフトウェア
 6.3.2 MRI画像データとファイル形式の変換
 6.3.3 前処理
 6.3.4 統計処理:個人解析
 6.3.5 統計処理:集団解析
 6.3.6 脳地図
6.4 研究事例
 6.4.1 言語音の聴取実験の実験例
 6.4.2 発話実験の実験例
 6.4.3 リアルタイムMRIとfMRIを併用した実験例
6.5 fMRIを学ぶための参考情報
引用・参考文献

7.研究倫理と安全
7.1 脳機能研究における研究倫理とは
 7.1.1 自律尊重とインフォームドコンセント
 7.1.2 善行とリスク,侵襲性
 7.1.3 研究における正義
7.2 倫理審査,安全審査の必要性と実際
 7.2.1 日本における研究倫理審査
 7.2.2 脳機能研究における倫理審査の要点:科学的妥当性
 7.2.3 脳機能研究における倫理審査の要点:倫理的妥当性
7.3 まとめ
引用・参考文献

索引

今泉 敏(イマイズミ サトシ)

軍司 敦子(グンジ アツコ)

能田 由紀子(ノウタ ユキコ)

河内山 隆紀(コウチヤマ タカノリ)

中澤 栄輔(ナカザワ エイスケ)