こどもの音声

音響サイエンスシリーズ 21

こどもの音声

こどもの音声発達に焦点を当て、行動や脳機能の計測といった研究手法から乳幼児期の言語音声の獲得過程、感情や情動の発達などを解説。

ジャンル
発行年月日
2019/03/22
判型
A5
ページ数
254ページ
ISBN
978-4-339-01341-2
こどもの音声
在庫あり

定価

3,850(本体3,500円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

行動や脳機能の計測,計算機シミュレーションなどの研究方法から始めて,乳幼児期の言語音声の獲得過程,感情や情動の発達,発達と音楽の親和性,発達障害や聴覚障害を取り上げ,こどもの音声発達に焦点を当てて解説した。

本書では,こどもの音声発達をテーマの中心に据えている。こどもの音声については,研究対象が乳幼児であることならではの研究の難しさがある一方で,脳機能計測に代表される新たな研究手法の導入により,近年の研究の進展が目覚ましい。そこで得られた知見は言語獲得と絡める形で,これまでも種々の書籍において解説されてきた。音響サイエンスシリーズにおいても,「視聴覚融合の科学」,「音声は何を伝えているか―感情・パラ言語情報・個人性の音声科学―」,「聞くと話すの脳科学」といった巻でこどもの音声発達を取り上げている。さらに,音響学会誌上では2012年に「こどもの音声」,2015年に「子どものための音環境」の特集が組まれ,このトピックへの関心は年々高まっているように感じられる。一方で「音声発達」そのものに焦点を当て,一冊のすべてを充てた本は,これまでほとんど存在しなかった。そこで,2012年の音響学会誌特集「こどもの音声」に共著で寄稿した廣谷定男 氏とともに企画したのが本書である。

1章では,こどもの音声発達をどのような手段を用いてひもといていくのか,という方法論を取り上げる。従来から行われてきた行動実験や音響分析に加え,近年では乳幼児を対象とした脳機能計測が盛んになり,さらに計算機シミュレーションを用いたアプローチも可能になってきた。こうした新しい手法も含めた解説となっている。

2章から4章までは,言語音声,感情,音楽について,生成と知覚の二つの側面から得られている知見を概観する。2章では特に,乳幼児期の音声獲得を中心に,母音,子音といった音素レベルから,アクセントやイントネーションのような韻いん律りつ情報(プロソディ)を含めた言語音声の獲得過程を概観している。 3章では,音声が伝える情報の中でも感情や情動といった側面をクローズアップし,パラ言語情報,表情の知覚とともに,感情を伝える発声の発達についても併せて解説する。

4章では,こどもの発達と親和性の高い音楽を取り上げる。ピッチの知覚,生成だけでなく,音楽がこどもの発達にもたらすもの,環境からの音楽入力がこどもに与える影響なども含めて,こどもと音楽をめぐる最近の知見を包括的に解説する。

5章は,音声発達における障害について,自閉症スペクトラム障害(ASD),発達性吃きつ音おんといった発達障害および聴覚障害を取り上げて解説している。 本書は,音響系,言語系,医学系,心理系,臨床系の研究者・大学院生や大学生,および音声に興味を持つ幅広いバックグラウンドの読者を想定した。そのため,各著者は,できるだけ平易な表現を使い,各分野について最新の知見を含めた包括的なレビューとなるように尽力した。本書が,「こどもの音声」に興味を持つ読者の知的好奇心をくすぐり,示唆を与えるものとなれば,とても嬉しく思う。

2019年1月 麦谷綾子 

1. こどもの音声研究手法
1.1 行動指標を用いた音声知覚研究法
 1.1.1 なぜ行動を測るのか
 1.1.2 乳児に適応可能な音声知覚計測手法
 1.1.3 幼児に適応可能な音声知覚計測手法
 1.1.4 行動実験における留意点
1.2 脳機能計測を用いた音声知覚研究手法
 1.2.1 なぜ脳の活動を測るのか
 1.2.2 脳機能計測が測ること
 1.2.3 こどもの音声知覚と脳機能計測
1.3 生成発達の研究手法
 1.3.1 ラベリング,音声(音響)分析
 1.3.2 音声言語獲得シミュレーション
引用・参考文献

2. 言語音声
2.1 乳幼児の音声知覚の発達
 2.1.1 胎児期から誕生までの聴覚器官と音声知覚の発達
 2.1.2 音韻と韻律の知覚発達
 2.1.3 日本語音声の知覚発達
2.2 乳児期の生成発達
 2.2.1 声帯,声道の発達に伴う音響変化
 2.2.2 乳児期の音声生成発達
 2.2.3 生成発達に影響する要因
2.3 幼児期の音声生成
 2.3.1 母音,子音の発音
 2.3.2 音節構造の発達
 2.3.3 アクセントの発達
 2.3.4 音声連続について
引用・参考文献

3. 感情
3.1 感情は音声のどこに現れるか
 3.1.1 なぜ音声から感情がわかるのか
 3.1.2 感情とプロソディとの対応
 3.1.3 感情音声の普遍性
3.2 乳児はいつから感情音声を聞いているのか
 3.2.1 感情音声に対する敏感性の萌芽
 3.2.2 乳児は感情音声をどこまで理解しているのか
 3.2.3 乳児の感情音声に対する敏感性のまとめ
3.3 幼児期,児童期を通した感情音声理解の発達
 3.3.1 幼児期における感情音声知覚の「谷」とその後の発達
 3.3.2 幼児期から児童期にかけての感情音声の発達
 3.3.3 言語情報が示す感情とパラ言語情報が示す感情
 3.3.4 顔が示す感情と声が示す感情
 3.3.5 乳児研究と幼児研究の矛盾はどう説明できるか
 3.3.6 感情音声知覚の発達に見られる文化差
3.4 感情音声の産出に見られる発達的変化
 3.4.1 感情音声の産出を追うことの難しさ
 3.4.2 乳児の音声に含まれる感情情報
 3.4.3 幼児期から児童期の演技音声における感情情報
 3.4.4 感情音声の産出におけるまとめ
引用・参考文献

4. 音楽
4.1 音楽との出会い
 4.1.1 養育者による対乳児歌唱
 4.1.2 視聴覚メディアによる音楽
4.2 知覚と認知―聞く―
 4.2.1 リズムとテンポ
 4.2.2 ピッチ(音程)
 4.2.3 協和音と不協和音
 4.2.4 メロディの記憶
 4.2.5 音楽の感情価の認知
4.3 生成―歌う―
 4.3.1 音楽的発声の始まり
 4.3.2 歌唱
4.4 発達と音楽
 4.4.1 音楽と言語の関わり
 4.4.2 音楽行動と社会性の発達
引用・参考文献

5. 障害と音声
5.1 発達障害における音声コミュニケーション:自閉症スペクトラム障害(ASD)と発達性吃音
 5.1.1 自閉症スペクトラム障害(ASD)
 5.1.2 発達性吃音
5.2 こどもの聴覚障害と音声
 5.2.1 聴力障害と聴覚障害
 5.2.2 聴覚障害児に対する補聴デバイス
 5.2.3 聴覚障害による二次的障害
 5.2.4 聴覚障害児教育における発音発語指導略史
引用・参考文献

あとがき
索引

田中 章浩(タナカ アキヒロ)

今泉 敏(イマイズミ サトシ)

立入 哉(タチイリ ハジメ)