ネイティブスピーカーも納得する技術英語表現

ネイティブスピーカーも納得する技術英語表現

「英語表現の上達にはネイティブスピーカーの文章をまねるのが一番」との考えの下,初級~中級・上級レベルまでの例文を多数収録。

ジャンル
発行年月日
2018/06/28
判型
A5
ページ数
240ページ
ISBN
978-4-339-07818-3
ネイティブスピーカーも納得する技術英語表現
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本書では「英語表現の上達にはネイティブスピーカーの文章をまねるのが一番」との考えの下,初級~中級・上級レベルまでのさまざまな英語表現を含む例文を多数収録。今よりワンランク上の技術英語を書きたい方の支援ツールとなる。

日本人は英語が苦手な民族であるといわれて久しい。しかしながら,近年ではTOEICをはじめとするさまざまな英語能力の評価指針が広く受け入れられるようになり,若い人たちを中心として日本人の英語能力は格段に向上したといえる。一般に英語の能力は,読む,書く,聞く,話すという四つの能力に分類できるといわれている。その中で,エンジニアに必要とされる「書く」能力については,技術英語という別の壁が存在する。日本語と英語でのトークを継ぎ目なく切り替えることができるバイリンガルのラジオディスクジョッキーでも,専門知識がない場合は適切な表現の技術英語を書くことはできない。それでは,一般に文法に強いといわれる日本人の場合はどうか。大学で専門分野の知識を習得したエンジニアにとっても,技術英語を書くことは容易ではない。その理由として,ネイティブスピーカーが納得するような技術英語を書くためには,一般的な英語能力と専門分野の知識を組み合わせて文章を作成しなければならない点が挙げられる。

著者が技術英語の重要性に目覚めたのは,1988年から1989年にかけて,在外研究で米国のミシガン大学に滞在したことがきっかけである。ある日,博士論文でお世話になった日本の教授から米国の一流雑誌に投稿された論文の査読依頼があった。インターネットのない時代である。所属する大学に送られてきた郵便を米国に転送してもらっていたため提出期限までほとんど時間がない。一流雑誌に投稿された英語論文の査読は初めての経験だったので,最優先の仕事として取り組んだ。論文のレベル,査読者として指摘すべき点は理解できた。問題は著者に対する修正依頼文書の作成である。ネイティブスピーカーである論文の著者が理解できない英語では恥ずかしい。そこで,研究室に在籍する博士課程の学生で,唯一のネイティブスピーカーであるジーンにチェックを依頼した。驚いたことに,ジーンは著者が作成した査読結果の英文を「英語らしさを評価するソフト」に読み込ませた。10回以上見直していたので80点以上を期待していたが,無情にもソフトの判定は70点。ジーンいわく「俺のレポ-トが79点。日本人のお前の70点は悪くない」と言いながらさらさらと数箇所修正した。ジーンの文章は,意味はわかるが日本人にはまず思いつかないような簡潔な表現であった。このときに得た「英語表現の上達にはネイティブスピーカーの文章をまねるのが一番」を教訓として,ネイティブスピーカーの書いた文章を集め始めた。本書は,それ以来集めた多数の文章中の英語表現を基本に,技術英語を書く際のsupporting toolとしてまとめたものである。

ところで技術英語を書く場合,「不確かさ」を表す表現は不可欠といえる。例えば日本語で「おそらく」というと,個人差はあるがおおむね「50%以上はOK」をイメージするのではないだろうか。一方英語では,確率の低い方から高い方までいくつかの表現がある。実際の確率が50%程度,この場合perhapsが適切な単語の一つであるが,仮にprobablyを使ってしまった場合,相手はおそらく80%以上の確かさを期待するだろう。もしこれが製品の信頼性に関連した報告書における表現であった場合,たった一つの単語の選択を誤ったために,大きなトラブルに発展する可能性がある。そのようなミスを避けるために,[3.技術英語でよく使う表現] のSecondary Index「頻度」では,頻度と確率を表すさまざまな副詞や助動詞について,程度の大小を概略の数値を添えて不等号で示している。共著者のMatthew Rooks氏は,偶然にもミシガン大学で言語学を修めた新進気鋭のアメリカ人研究者である。同時に職場の同僚で,所属学部におけるコミュニケーション英語教育のキーパーソンでもある。自らの専門分野の知識を生かし,著者が集めた技術英語表現のチェック・修正を担当した。

米国の学会における講演,学術誌に投稿された論文は,excellent,very good,good,marginal,poorという5段階で評価されるケースがある。大学あるいは大学院まで国内で終えた一般的な日本人にとって,excellentレベルの技術英語を書くことは至難の業といえる。しかしながら,ネイティブスピーカーが使うような英語表現をうまく取り入れると,著者自身が目標としている「very goodレベルの技術英語」を書くことは可能ではないだろうか。本書がネイティブスピーカーのエンジニアや研究者を納得させるレベルの技術英語を書くための一助となれば幸いである。

2018年4月 著者を代表して 福岡 俊道

Basic/IntermediateLevelExpressions(初級/中級編)
1. 技術英語のための文法
 文法の基礎(Part-I)
 文法の基礎(Part-II)
 文法の基礎(Part-III)
 技術者のための文法?否定,部分否定?
 技術者のための文法?比較級?
 技術者のための文法?動詞+ingの用法?
 技術者のための文法?文章の接続方法?
 技術者のための文法?倒置法?
 技術者のための文法?離れた名詞を修飾?

2. 技術英語における文頭表現
 “書き出し”の表現
 研究の説明

3. 技術英語でよく使う表現
 さまざまな
 ほとんど,あらゆる
 大部分
 全体,全部
 例,例えば
 必ず,当然
 限り
 さらに,まったく,強調
 頻度
 そんな,…のような,ある
 それぞれ,each
 …のように
 …に基づいて
 用語,術語

4. 目的から結果に至る過程の表現
 目的,興味
 最初,初期
 対象
 種類
 場合,case
 問題
 原因
 理由
 関係,関連
 影響,効果
 調査する
 知る
 考える
 仮定する
 わかる
 理解する
 定義する
 方法,手順
 評価,推定
 説明
 解く
 決定,判断
 結果
 討論,議論
 参考,文献

5. よく使う動詞的表現(Part-I)
 使う
 適用する
 示す,表す
 持つ,含む
 扱う
 選ぶ
 呼ぶ
 発生する,現れる
 実行する,達成する
 発展する,開発する
 意味する
 期待する
 考慮する
 分類する,分ける
 比較する
 求める
 改善する
 修正する

6. 値と量に関する表現
 算数の表現
 値
 数と量
 半分,half
 変化
 増加
 減少
 一定
 違い,差
 比率,割合

7. 基本的な性質に関する表現
 基本的
 同じ,類似,同様
 等しい,等価
 一致する
 異なる
 対応する
 逆の,反対の
 正確,厳密
 完全,不完全
 実際,実用
 広く,拡大
 良い,望ましい
 厳しい

8. 特性と状態に関する表現
 特性,特徴,挙動
 簡単
 難しい,困難な
 複雑
 可能,不可能
 役立つ,有効
 適する
 一般的
 通常,正常
 長所,欠点
 重要
 必要,不要,満足
 状態
 明白
 傾向
 支配的
 なる,近づく

9. 程度に関する表現
 程度
 少し,わずか
 多少,かなり
 十分
 最も
 およそ,近似
 顕著に
 非常に,過度に

10. 比較に関する表現
 大きい
 小さい
 低い
 多い,少ない
 以上,以下
 最大,最小

11. 時間に関する表現
 時間,時間経過
 期間
 前に,あらかじめ
 後,後の
 次第に,急な

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Intermediate/AdvancedLevelExpressions(中級/上級編)
1. エンジニアのための技術英語リテラシ
 単位
 基準,規格,規定,形式
 形状,寸法
 記号,符号
 グラフ,図
 原理,法則,現象
 初歩の力学
 温度
 コスト,費用
 設計
 製造,製品,機械
 現場,技術
 組み立て,取り付け

2. よく使う名詞的表現
 条件
 組み合わせ
 残り,追加
 範囲
 段階
 制限
 順序
 繰り返し,回数
 役割,機能
 指針
 観点
 経験
 都合
 注意
 間違い

3. よく使う動詞的表現(Part-II)
 始める,開始する
 進む
 動く
 作用する,受ける
 供給する
 保つ
 続く
 超える
 停止する,終わる
 存在する
 依存する
 記述する,述べる
 区別する
 構成する
 提案する,賛成する
 工夫する
 協力する
 達成する,達する
 防ぐ,妨げる
 避ける
 除く,省略する
 補償する
 確認する,保証する,証明する

4. よく使う形容詞/副詞的表現
 見かけの
 一様に
 うまい,うまく
 …以外
 代わりに,交互に
 適切な,不適切な
 特別な,特に
 詳細に
 固有の
 無視できる,無効な
 矛盾する
 強制的

5. 位置と方向の表し方
 位置,配置
 方向

6. 負の事象の表現
 危険,事故
 壊れる,有害
 失う,消える,失敗

7. 実験に関する表現
 実験
 測定
 精度
 誤差
 ばらつき

8. 数学に関する表現
 数学
 幾何
 式,方程式
 計算
 線形,非線形

9. 解析に関する表現
 解析と理論
 数値解析とコンピュータ

付録
 機械工学とその周辺分野の専門用語

むすびにかえて

Matthew Rooks(マシュー ルックス)

Chem-Station(ケムステ)化学書籍レビュー 掲載日:2020/10/31

レビューが掲載されました。上記リンクからご覧ください。
「機械の研究」2018年11月号 掲載日:2018/10/29

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報一覧

[本書の特徴]
本書は,初めて英語論文を書く大学院生から,すでに英語で報告書/説明書を書いた経験がある
技術者,英語論文のquality の向上を目指す研究者まで,幅広い読者を対象としている。また本書
は,文法解説書でも技術英語に特化した辞書でもなく,ネイティブスピーカーが納得するような技
術英語を書くための支援ツールである。具体的な特徴は以下のとおりである。

Point 1: 技術英語として和訳はできるが,同じレベルの内容を英語で書くとなると難しい“技術
英語表現”を多数の例文を通して提供する。

Point 2: 例文はネイティブスピーカーが書いた文章を中心に収録し,技術英語を書くときの必要
性を考慮して配置している。その例文集の中から,文法の細かい解釈にとらわれることな
く「見ればわかる」を基本として,必要な表現方法を見つけられるように工夫している。

Point 3: 専門性の高い単語の用途は限られているが,反対によく見かける使用頻度の高い単語ほ
ど,文章の前後関係などによって大きく意味が変化する。そのような単語のさまざまな
使い方を効果的に学べるように,例文にはすべて全訳を付している。なお,意訳すると
日本語との対応が難しくなるような英語表現については,読者の誤解を招かないように,
あえて直訳に近い形で訳している。

Point 4: 例文には著者の専門である機械工学分野,特に材料力学や機械設計関係の専門用語がたび
たび現れるが,対象となる単語を読者自身の分野の単語に置き換えることにより,さま
ざまな技術分野に対応可能である。さらに,機械工学分野以外の技術者をサポートする
ために,重要と考えられる専門用語は巻末に「機械工学とその周辺分野の専門用語」と
してまとめ,短く解説している。

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