ゼロからの最速理解 量子化学

ゼロからの最速理解 量子化学

難解で敬遠されがちな量子化学を理解・習得出来る本

ジャンル
発行年月日
2017/05/01
判型
A5
ページ数
262ページ
ISBN
978-4-339-06639-5
ゼロからの最速理解 量子化学
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定価

3,630(本体3,300円+税)

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本書は量子化学の基礎を習得するための本である。高校の物理・数学の解説を入れ,図・写真も多用,さらに,科学者のエピソードを織り交ぜ,物語的な内容にすることで,難解で敬遠されがちな量子化学を理解しやすくした。

物理化学は化学の基本である。物理化学の知識があればこそ,化学を単なる暗記科目ではない面白い科目として見ることができる。新現象の発見や新素材の開拓も,物理化学の理解があって初めてできることである。このテキストは,基礎的な化学から物質科学,さらには材料化学と呼ばれる広い領域の理解に必要となる,量子力学の入門から分子軌道法の基本的なところを身に付けることを目指して書かれたものである。敬遠されがちな物理化学の中でも「量子」関連は特にわかり難く,無味乾燥で,勉強時間を消費する苦痛な科目とされている。しかし,量子化学は熱力学とともに化学現象を理解するための基礎となる知識である。化学現象がどのように進むかは基本的に熱力学に従う。エネルギーはできる限り低くなるように,エントロピーはできる限り大きくなるように現象は進んでいく。そして,化学反応とは化学結合の組替えである。熱力学の原理に従うように化学結合の組替えが起こる。その化学結合とはそもそもなんなのか,化学結合の組替えとはつまりどういうことなのか,ということを教えてくれるのが量子化学である。

量子化学の理解のためには若干の数学や物理の知識が必要であるが,ポイントをつかめば全体の筋道はそれほど難解ではない。このテキストでは,高校数学,高校物理についての簡潔な解説を入れておいた。ただし,わからないことに遭遇したときはその都度,高校数学や物理の参考書を読んで理解することが大切である。慣れ親しんだ教科書を持つことが数学や物理の上達のコツである。同じ教科書を何回も何回も繰り返し読む。数学や物理の基本部分,さらに物理化学の勉強は語学の勉強と同じである。講義を聞くだけでは修得できない。何回も何回も自分で教科書を読んで,理解し覚えていく以外に修得の道はない。だんだんと基本知識が増えてくると,教科書(専門書)を読むことが楽しくなる。

本テキストは,量子化学の基本的事項を把握することを目的としており,詳しい事柄には触れていないので,必ずほかの量子化学の教科書も併せ読むべきである。特に問題集を購入して解いてみることを勧める。量子化学の先駆者であり1954年のノーベル化学賞受賞者であるLinus Pauling(ライナス・ポーリング)は,大学院入学直前の夏休み(米国の新学期は9月から)に500題の物理化学の問題集を解いたそうである) 。そしてこれがのちの人生に大きな力を与えたと語っている。問題を解くことは,初めはなかなか気が向かないものであるが,問題を解くことで本当の理解が得られる。教科書を読んだだけでは,わかったような気になるだけである。
本書の執筆にあたり,査読,校正をしていただいた中裕美子博士,レバンコア博士,祝実穂氏,小野真太郎氏に感謝します。

また,本書の出版についてご尽力いただいたコロナ社に深く感謝いたします。

2017年2月 佐々木健夫

1. 量子論の誕生
1.1 原子の構造
1.2 前期量子論の登場
1.3 古典力学
 1.3.1 物体の運動
 1.3.2 Newtonの運動方程式
 1.3.3 重さと質量
 1.3.4 作用・反作用の法則
 1.3.5 運動量,エネルギー
 1.3.6 円運動の物理
 1.3.7 クーロンの法則
 1.3.8 電場
 1.3.9 振動と波
 1.3.10 定常波の式
 1.3.11 光
 1.3.12 Young(ヤング)の実験
 1.3.13 Bragg(ブラッグ)反射(回折)
 1.3.14 次元解析
1.4 Bohrの原子モデル
章末問題

2. Schrödinger方程式と量子力学の誕生
2.1 光の波動性と粒子性
2.2 物質の波動性
2.3 Heisenbergの不確定性原理
2.4 Schrödinger方程式
2.5 時間に依存するSchrödinger方程式
章末問題

3. 量子力学の基本
3.1 Schrödinger方程式の作り方
3.2 量子力学の基本事項
 3.2.1 演算子の交換関係
 3.2.2 古典力学と量子力学の関係
 3.2.3 原子単位
章末問題

4. 「箱の中の粒子」モデル
4.1 一次元の箱の中の粒子モデル
 4.1.1 規格直交系の確認
 4.1.2 波動関数の形
4.2 不確定性原理の確認
4.3 光の吸収
4.4 節点,節面について
4.5 三次元の箱の中の粒子モデル
4.6 有限の高さの壁で囲われたポテンシャル井戸とトンネル効果
章末問題

5. 振動と回転
5.1 調和振動子モデル
5.2 振動運動の量子化
5.3 回転運動の量子化
5.4 平面上の回転運動における角運動量
5.5 三次元空間での回転運動
5.6 二原子分子のマイクロ波スペクトルと回転状態変化
章末問題

6. 水素原子
6.1 水素原子の軌道
6.2 波動関数から求められる水素原子の半径
6.3 水素類似原子
章末問題

7. 電子のスピンと量子状態
7.1 電子
7.2 電子のスピン
7.3 区別できない粒子
7.4 スレーター行列式
7.5 量子状態
章末問題

8. 多電子系の扱いと近似計算
8.1 変分法
8.2 摂動法
 8.2.1 段差のあるポテンシャル井戸
 8.2.2 ヘリウム原子
8.3 より高度な近似法
章末問題

9. 化学結合の基本
9.1 二原子分子の化学結合
9.2 水素分子イオンの分子軌道
章末問題

10. 分子軌道法
10.1 変分法による分子軌道計算
10.2 Hückel法による分子軌道計算
 10.2.1 アリルラジカルの分子軌道
 10.2.2 電子密度の計算
 10.2.3 結合次数
 10.2.4 ベンゼンのπ電子系の共鳴安定化効果
 10.2.5 簡単な分子の構造予測
10.3 軌道の混成と原子価結合法
10.4 拡張Hückel法
10.5 Hartree-Fock-Roothaan法
章末問題

11. 位相軌道反応論
11.1 フロンティア軌道論とウッドワードホフマン則
11.2 Diels-Alder反応
11.3 フロンティア電子密度
章末問題

付録
A.1 本書で用いる記号・用語
A.2 数学ノート

参考文献
章末問題の解答
索引

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