引抜き - 棒線から管までのすべて -
「引抜き」に関する理論,製造技術,材料,解析方法,機器・設備などを紹介・解説。
- 発行年月日
- 2017/05/26
- 判型
- A5
- ページ数
- 358ページ
- ISBN
- 978-4-339-04372-3
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 書籍紹介・書評掲載情報
- 広告掲載情報
本書は,「引抜き」に関する理論,製造技術,材料,解析方法,機器・設備などを紹介・解説。旧版である「引抜き加工」(1990年,塑性加工技術シリーズ)刊行以降に得られた多くの新しい技術情報を盛り込んだ。
引抜き加工の歴史は古く,有史以前から比較的変形しやすい金属を線に加工する方法として多くの技術が培われてきた.現在では,対象とする形状として棒・線を中心として管などにも適用される加工方法である.また,対象は,鉄鋼・非鉄の金属材料の域にとどまらず,高分子系材料やカーボン系材料,超電導材料の製造などにも適用できる普遍的な技術として発展している.棒・線材の素材(素形材)としての可能性は大きく,二次的加工を経てボルトやばねなどの機能的要素を付加させる素地ともなり得る.そもそも,線や管の特徴である長尺の材料形状は,橋梁吊ワイヤ,送電線やパイプライン,光ファイバーといった例に見られるように,物理的にものを「つなぐ」,「支える」という現代文明に欠かせない重要な役割を担っている.よって,機能性とともに,強く,壊れない,しなやかな機械的性質が求められ,技術開発もそういった基本的な性能向上を目指して行われてきたと考えられる.ただ,近年,さまざまな工業製品での技術の進化や発展の特徴として,機器の小型化と軽量化,そしてトータルエネルギー消費の減少を目指す傾向が挙げられる.棒・線材や管材の用途もいまでは細線・細管,極細線にまで広がっており,将来的にはナノワイヤ・チューブなる未来技術へとつながり得て,その加工方法としてもさらに深化が続いていくものと予想される.
本書は「引抜き」に関する理論,製造技術,材料,解析方法,機器・設備などを一堂に集めて紹介・解説している.また,棒・線材,管材の「引抜き」製造に携わる最前線の技術者,研究者の自らが,おのおのの最新の情報を基に記述している点が特徴である.旧版にあたる塑性加工技術シリーズ『引抜き加工』が出版された1990年からすでに四半世紀以上が経ち,この新版作成にあたっては,その間に得られた多くの新しい技術情報を盛り込むことにも努めた.昨今さまざまなメディアを通じて迅速に情報が得られる時代においても,「引抜き」をキーワードに「棒線から管までのすべて」を参照できる本書は,読者である技術者や学習者に,一本の筋の通った有意な視点を提供するものと考えられる.同時に,古来から脈々と引き継がれてきた「引抜き」技術の本質(変わらない技術)を見いだしていただき,将来来るべき技術ブレークスルーへと昇華していただけるものと確信している.
本書の執筆母体は,一般社団法人日本塑性加工学会の「伸線技術分科会」である.鉄鋼,非鉄,伸線,潤滑などの各メーカーが集まり1976年に開始されたこの会は,現在(2017年)まで40年以上継続しており,定例の研究集会だけでも通算80回以上の実施を数え,その間,引抜き技術に関連する多くの技術者・研究者の交流の場としての役割を担ってきた.その運営委員会には,特に今回の執筆体制に関して多くの便宜を図っていただき,ここに厚く御礼申し上げる.また本書は,旧版のデータや記述の一部を用いており,当時の執筆者および出版部会の御尽力なしには存在し得なかった.厚く御礼申し上げる次第である.また,ご多忙中にさまざまな対応をいただいた執筆者各位に御礼申し上げるとともに,日本塑性加工学会,新塑性加工技術シリーズ出版部会および出版の労をおとりいただいたコロナ社には,原稿や編集方法へのさまざまなアドバイスをいただいたことに厚く感謝する.
2017年3月 「引抜き」専門部会長 齋藤賢一
1. 概要
1.1 引抜きの歴史
1.1.1 世界の歴史
1.1.2 日本の歴史
1.1.3 伸線技術分科会の発足
1.2 引抜き技術の展望
1.2.1 引抜きの要点
1.2.2 巧みのワザから技術・理論へ
1.2.3 引抜き技術の現状と課題
引用・参考文献
2. 変形機構と力学
2.1 棒・線の引抜き
2.1.1 材料の流れ
2.1.2 引抜き応力
2.1.3 ダイス面圧と逆張力
2.1.4 ダイス角と断面減少率
2.1.5 摩擦と潤滑
2.1.6 加工材の温度変化
2.2 管の引抜き
2.2.1 引抜きの分類と理論
2.2.2 空引き中の肉厚の変化
2.2.3 管引きによる引抜き力の予測
2.2.4 偏肉の矯正
2.3 数値解析
2.3.1 有限要素法を用いた解析
2.3.2 異物を含む線材の解析
2.3.3 その他の解析手法の紹介
2.4 引き細り
2.4.1 引き細りとアンダーシュート
2.4.2 2枚ダイスによる引き細り現象
2.5 引抜きの残留応力
2.5.1 残留応力の測定方法
2.5.2 残留応力の測定結果
引用・参考文献
3. 製造技術
3.1 引抜き加工工程
3.1.1 熱処理
3.1.2 脱スケール,皮膜処理
3.1.3 潤滑剤
3.1.4 引抜き条件
3.1.5 線材と線材との接合
3.2 断面減少率の設定
3.2.1 断面減少率
3.2.2 伸線パススケジュールの設計
3.3 ダイス
3.3.1 ダイス材料
3.3.2 ダイス材料の選択
3.3.3 ダイスの形状・寸法
3.3.4 ダイス面圧
3.3.5 ダイスの正しい使用
3.3.6 ダイスの製造・修理
3.4 引抜き機械
3.4.1 引抜き機械とその分類
3.4.2 伸線機
3.4.3 抽伸機
3.4.4 棒材加工機
3.5 引抜き材の欠陥
3.5.1 素材欠陥
3.5.2 引抜き加工による欠陥
3.5.3 形状不良
3.6 棒線の矯正
3.6.1 矯正の種類と基本
3.6.2 棒線矯正に必要な材料の特性
3.6.3 2ロール矯正
3.6.4 ローラーレベラー矯正
3.6.5 引張矯正
3.6.6 回転ブレード矯正
引用・参考文献
4. 引抜き材の性質と評価
4.1 金属組織学的考察
4.1.1 繊維組織の形成
4.1.2 加工性と繊維組織
4.1.3 最近の結晶方位解析
4.2 機械的諸特性
4.2.1 加工率と材料強度
4.2.2 加工限界と材料特性
4.3 線材および線の試験方法
4.3.1 機械試験
4.3.2 鋼質試験
4.3.3 腐食試験
4.3.4 非破壊試験
4.3.5 電磁気試験
4.4 線材の品質保証
4.4.1 非破壊試験器による品質保証
4.4.2 自動探傷・欠陥除去装置による表面品質の保証
引用・参考文献
5. 特殊引抜き加工
5.1 強制潤滑引抜き
5.2 ローラーダイス伸線およびロール伸線
5.2.1 孔ダイス伸線とロールによる伸線の比較
5.2.2 ローラーダイス伸線法
5.2.3 ロール伸線法
5.3 回転ダイス引抜き
5.4 束引き
5.5 超音波引抜き
5.6 温間,熱間伸線
5.7 ダイレス伸線
5.8 液体マンドレル引き
引用・参考文献
6. 鋼線
6.1 素材
6.1.1 線材の製造工程
6.1.2 線材の製造設備
6.1.3 線材の規格
6.1.4 線材の熱処理
6.2 伸線前処理
6.2.1 脱スケール
6.2.2 皮膜処理
6.3 伸線用潤滑剤
6.3.1 伸線潤滑剤の要求特性
6.3.2 乾式伸線用潤滑剤
6.3.3 湿式伸線用潤滑剤
6.3.4 油性伸線用潤滑剤
6.4 線の冷却
6.4.1 伸線速度とダイス寿命
6.4.2 伸線速度と線温
6.4.3 伸線速度と鋼線品質
6.4.4 線の冷却技術
6.5 線の特性
6.5.1 素材の特性に及ぼす熱処理の影響
6.5.2 伸線による諸特性の変化
6.6 製品例
6.6.1 鉄線
6.6.2 亜鉛めっき鉄線
6.6.3 冷間圧造用鋼線
6.6.4 ばね用鋼
6.6.5 スチールコード用鋼線
6.6.6 PC鋼線,PC鋼より線
6.6.7 亜鉛めっき鋼線,亜鉛めっき鋼より線
6.6.8 針
6.6.9 磨き棒鋼
引用・参考文献
7. 銅および銅合金線
7.1 素材
7.1.1 銅荒引線製造方式
7.1.2 銅合金線製造方式
7.1.3 特殊線製造方式
7.2 伸線前処理
7.3 伸線加工
7.3.1 純銅線の加工
7.3.2 銅合金線の加工
7.3.3 異形線の加工
7.4 線の特性
7.5 製品例
引用・参考文献
8. 鋼管
8.1 素材
8.1.1 材質
8.1.2 素材製法
8.1.3 素材表面
8.1.4 素材の延性・靭性
8.1.5 素材面からの歩留り,能率改善
8.2 加工
8.2.1 引抜き機械
8.2.2 工具
8.2.3 潤滑
8.2.4 加工
8.2.5 引抜き
8.2.6 空引きにおける寸法変化
8.3 管材の特性
8.3.1 管材の引抜き特性
8.3.2 引抜き後の残留応力
8.3.3 硬度分布
8.4 製品例
8.4.1 引抜きの目的と製品の用途
8.4.2 寸法精度
8.4.3 表面粗さ
8.4.4 機械的性質
8.4.5 特殊形状
引用・参考文献
9. 銅および銅合金管
9.1 素材
9.1.1 製造工程
9.1.2 製造設備
9.1.3 品質管理
9.2 加工
9.2.1 加工概要
9.2.2 引抜き加工設備
9.2.3 抽伸工具の種類と特徴
9.2.4 潤滑剤
9.3 製品規格
9.4 管の特性
9.5 製品例
引用・参考文献
10. その他の金属線と管
10.1 アルミニウムとその合金線
10.1.1 素材
10.1.2 加工
10.1.3 線の特性
10.1.4 製品例
10.2 ステンレス鋼線
10.2.1 素材
10.2.2 線の特性
10.3 ニッケル線
10.4 タングステン線
10.5 チタン線
10.6 ニクロム線
10.7 マグネシウム合金線
10.8 アルミニウム管
引用・参考文献
11. 新素材
11.1 光ファイバー
11.1.1 装置概略
11.1.2 加熱炉
11.1.3 線径制御
11.1.4 光ファイバーの被覆技術
11.1.5 光ファイバーの機械強度
11.2 超電導線材
11.2.1 超電導材料の種類と用途
11.2.2 金属系実用超電導線材の製造工程と引抜き加工
11.2.3 酸化物系高温超電導線材の引抜き加工
11.3 複合材,その他
11.3.1 クラッド線の製造方法
11.3.2 繊維強化プラスチックの製造
11.3.3 複合線の実用例
引用・参考文献
索引
日刊工業新聞2017年6月28日 「技術科学図書」欄 掲載日:2017/06/28
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掲載日:2023/05/31
-
掲載日:2020/11/05
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