AI時系列制御解析

AI時系列制御解析

基本的な理論を数式展開により示し,その理論の実践応用例を示すというわかりやすい構成。

ジャンル
発行年月日
2022/07/15
判型
A5 上製
ページ数
270ページ
ISBN
978-4-339-03239-0
AI時系列制御解析
在庫あり
2営業日以内に出荷致します。

定価

4,400(本体4,000円+税)

カートに入れる

電子版を購入

購入案内

  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

【本書の特徴】
本書は,膨大な時系列データの中から,AI技術を活用して有意義な知見を抽出する,時系列AIモデリングについて述べる。時系列AIモデリングは,履歴を扱う高度な予測器であるため,学習理論の理解や,有効な学習データ収集技術は初心者には難しいと思われる。例えば,理論を勉強して自分の仕事で試そうと時系列データを収集しても,現実は偏った学習データしか得られない,あるいは現実的な収束条件の判断ができないなどの問題に直面する。そこで本書は基本的な理論を数式展開により示し,引き続き当該理論に対応する実践応用例を示すという従来見られなかった構成を採用し,純粋な数式の導出という抽象的な理論展開の数学書や,逆に,理論は述べずに既製品ツールにデータを入出力する方法だけを述べたハウツー本とは違うアプローチを目指した。各実例は,すべて電気学会,米国電気電子学会(IEEE)などの専門家の査読を受けた論文から選び,信頼性の確保に努めた。

【本書の構成】
1章は,システム制御における「時系列」の定義から始めて,対象物理量の時系列データからの制御設計モデリングの位置づけを述べる。
2章は,時系列データモデリングにおける最も基本的な手法として,線形重回帰モデリングおよび自己回帰(AR)モデリングの基礎理論,および,それぞれの実応用例を示す。
3章は,時系列データによるAI機械学習モデリングの代表として,ニューラルネットワークによる制御対象動特性のモデル化の基礎理論と,その応用としてステップ応答特性のモデリング実例について述べる。
4章は,時系列履歴によりその後の動作が異なる制御対象モデリングとして近年注目されてきたLSTMニューラルネットワークの理論,およびその応用として制御上の突発事象の予測モデル実例を示す。
5章は,上記の時系列AIモデルを用いた最適制御として,ヒューリスティック最適探索制御の理論と実例について述べる。
6章は,システム制御設計の現場で起こる,時系列データ収集における現実的な手法として,収集データ偏り補正法,平常動作データからの学習データ推定法について述べる。
7章は,上記各章の手法を実装する方法として,時系列データ収集プラットフォーム,現場収集データからの注目ゾーン抽出法,機械学習ソフトウェア自作開発という実践的手法を示す。

【読者へのメッセージ】
これまでのこの分野の書物は,学習データが十分に収集できている,あるいは,標準データセットをダウンロードするだけ,という状況からモデリング理論を論じるものがほとんどだったと思います。しかし,現実には十分な学習データ収集そのものが問題であり困難であることが普通です。それゆえ,本書では実用的な時系列データ収集システム実装法,対象システムを平常運転させながら学習時系列データ収集する方法,収集した学習データの分布偏り補正方法など,現実の問題に泥臭く対処するヒントを充実させました。読者の皆さんの現実の実務に役立つことを期待しています。

わが国が提唱するSociety5.0のキー技術分野として,IoT(Internet of Things)とAI(artificial intelligence)が挙げられるのに異論はなかろう。世の中がDX(digital transformation)化され,IoTによるインターネットデータ収集が常態化し,膨大な時系列データ蓄積の時代が始まろうとしている。また,その膨大な時系列データの海から有意義な知見を抽出するモデリング技術はもはや人間の手作業では追いつかなくなる。それら時系列データの海から有意義な知見を取出すAIモデリングは,DX時代の必然的な中核技術であろう。

AI技術の代表ともいえる画像認識の多くは,過去履歴に依存しない静的なモデリングともいえるが,DXで蓄積される時系列データは過去履歴により都度出現値が変わる動的なモデリングといえよう。時系列データ履歴に依存する予測が得意なニューラルネットワークとして,LSTM(long short term memory)という時系列データに特化したニューラルネットワークが注目され,そのツールも容易に手に入る時代となった。

時系列AIモデリングは履歴を扱う高度な予測器であるため,学習理論の理解や,有効な学習データ収集技術は初心者には難しいと思われる。例えば,理論を勉強して自分の仕事で試そうと時系列データを収集しても,現実は偏った学習データしか得られない,あるいは現実的な収束条件の判断ができないなどの問題に直面する。

しかるに,世の中にあるのは,数式だけの理論書か,はたまた,ツールハウツー本の両極端のように思われる。大学研究室の大学院生や,産業界第一線の技術者にとって,理論を踏まえたうえでの実践モデル構築を述べた「橋渡し」となる専門書が望まれているのではないか。

本書では各章において,基本的な理論を数式展開により示す節を設け,引き続き当該理論に対応する実践応用例の節を設けるという従来見られなかった構成を採用した。すなわち,基礎的なアルゴリズムを数学的に理解した直後にそれをシステム制御の現場に応用した例を具体的に示すことを強調した。それにより,純粋な数式の導出という抽象的な理論展開の数学書や,逆に,理論は述べずに既製品ツールにデータを入出力する方法だけを述べたハウツー本とは違うアプローチを目指した。

一般に,AI機械学習に関する実例は,一見うまく処理されているように見えても,信頼性が担保されていないケースがありうる。そこで,本書の各実例はすべて電気学会,米国電気電子学会(IEEE)などの専門家の査読を受けた論文から選んで信頼性確保に努めた。

以下に本書の構成を示す。
1章は,システム制御における「時系列」の定義から始めて,対象物理量の時系列データからの制御設計モデリングの位置づけを述べる。
2章は,時系列データモデリングにおける最も基本的な手法として,線形重回帰モデリングおよび自己回帰(AR)モデリングの基礎理論,および,それぞれの実応用例を示す。
3章は,時系列データによるAI機械学習モデリングの代表として,ニューラルネットワークによる制御対象動特性のモデル化の基礎理論と,その応用としてステップ応答特性のモデリング実例について述べる。
4章は,時系列履歴によりその後の動作が異なる制御対象モデリングとして近年注目されてきたLSTMニューラルネットワークの理論,およびその応用として制御上の突発事象の予測モデル実例を示す。
5章は,上記の時系列AIモデルを用いた最適制御として,ヒューリスティック最適探索制御の理論と実例について述べる。
6章は,システム制御設計の現場で起こる,時系列データ収集における現実的な手法として,収集データ偏り補正法,平常動作データからの学習データ推定法について述べる。
7章は,上記各章の手法を実装する方法として,時系列データ収集プラットフォーム,現場収集データからの注目ゾーン抽出法,機械学習ソフトウェア自作開発という実践的手法を示す。

本書をまとめるうえで多くの方々にお世話になった。制御工学の専門家として高濱盛雄 元名古屋大学教授,AIの専門家として速水悟 元岐阜大学教授には原稿に貴重なご指摘をいただいた。数式の確認には松川瞬 元岐阜大学蜷川研究室助教,現北海道科学大学講師にご協力いただいた。もちろん,岐阜大学蜷川研究室の青木佳史助教はじめ歴代研究室メンバーには我慢強く研究してくれたことに感謝する。ここに,皆様に御礼申し上げる次第である。最後に,長時間にわたる自宅での執筆を許してくれた妻に感謝する。

2022年5月
蜷川 忠三

1.序章
1.1 時系列
 1.1.1 本書で扱う「時系列」とは
 1.1.2 統計的な制御用時系列
 1.1.3 制御用時系列データの普及
1.2 時系列と制御モデル
 1.2.1 制御モデリング
 1.2.2 制御モデル構築法
1.3 制御時系列とAI手法
 1.3.1 時系列解析による制御モデル
 1.3.2 制御とAI手法
引用・参考文献

2.線形時系列モデリング
2.1 線形回帰モデル
 2.1.11 次元の線形回帰モデル
 2.1.2 多次元の線形回帰モデル
2.2 ARモデルの基礎
 2.2.1 ARモデルの概要
 2.2.2 1変数のユール・ウォーカー法
 2.2.3 多変数のユール・ウォーカー法
2.3 実例1:安定区間線形重回帰モデル
 2.3.1 空調安定電力モデル
 2.3.2 説明変数の選定
 2.3.3 線形重回帰分析
 2.3.4 モデルの評価検証
2.4 実例2:ステップ応答ARモデル
 2.4.1 ビル空調電力の制限制御
 2.4.2 ARモデルの当てはめ
 2.4.3 実測データからのモデル同定
 2.4.4 ARモデルの同定結果
引用・参考文献

3.ディープラーニングAIモデリング
3.1 ディープラーニングの基礎
 3.1.1 ニューラルネットワークの基礎
 3.1.2 ディープラーニングの原理
 3.1.3 Stacked Denosing Autoencoder法
3.2 時系列データディープラーニング
 3.2.1 時系列並列入力ニューラルネットワーク
 3.2.2 時系列ディープラーニングの層数
 3.2.3 時系列ディープラーニングのハイパーパラメータ
3.3 実例3:ステップ応答ARニューラルネットワーク
 3.3.1 ステップ応答ARニューラルネットワーク
 3.3.2 ステップ応答時系列モデルの学習
 3.3.3 ステップ応答時系列モデルの評価
3.4 実例4:ディープラーニングの実例―突発事象予知モデル
 3.4.1 突発事象の例
 3.4.2 突発事象予知ニューラルネットワークモデル
 3.4.3 突発事象予知ニューラルネットワークモデルの学習
引用・参考文献

4.LSTMAIモデリング
4.1 LSTMニューラルネットワークの基礎
 4.1.1 LSTMニューラルネットワークとは
 4.1.2 LSTM順伝搬計算
 4.1.3 LSTM逆伝搬計算
4.2 LSTM時系列モデルの性能評価法
 4.2.1 まれに発生する突然事象のLSTMモデル
 4.2.2 まれに発生する事象の予知性能評価計算
 4.2.3 事象発生予知性能の比較評価結果
4.3 実例5:電力卸売価格トレンド予測LSTMモデル
 4.3.1 電力卸売価格のトレンド予測
 4.3.2 電力卸売価格トレンド予測LSTMモデル
 4.3.3 電力卸売価格トレンド予測LSTMモデルの評価
4.4 実例6:制御外乱予知LSTMモデル
 4.4.1 突発事象予知モデルの制御への応用例
 4.4.2 RTP適応制御の外乱となる設備保全運転
 4.4.3 RTP適応制御の外乱予知LSTMモデル
 4.4.4 RTP適応制御の外乱予知LSTMモデルの評価
引用・参考文献

5.時系列AIモデルによる最適制御
5.1 最適探索制御の基礎
 5.1.1 SA最適探索法
 5.1.2 SA最適探索アルゴリズムの原理
 5.1.3 SA最適探索制御の評価関数例
5.2 状態爆発と並列探索
 5.2.1 大規模な制御対象状態空間
 5.2.2 並列SA探索アルゴリズム
 5.2.3 大規模並列探索の試行
5.3 実例7:電力料金最適探索制御
 5.3.1 リアルタイム電力料金
 5.3.2 空調電力料金最適制御
 5.3.3 最適探索制御の実機試験
5.4 実例8:大規模探索の実用的打切り
 5.4.1 最適探索制御の実用性
 5.4.2 大規模探索の打切り判定
引用・参考文献

6.時系列学習データ収集の現実
6.1 実例9:疑似ステップ応答による学習データ生成
 6.1.1 ステップ応答学習データ
 6.1.2 Break-Pointステップ応答抽出法
 6.1.3 Break-Point法学習データ収集例
6.2 実例10:学習データ収集の人工的増強
 6.2.1 学習データ収集の現実
 6.2.2 学習データの人工的増強手法
 6.2.3 人工的学習データ増強の実際
6.3 実例11:エミュレータによる学習データ生成
 6.3.1 ベースラインと再現性
 6.3.2 ベースラインエミュレータ学習
 6.3.3 ベースライン推定LSTMニューラルネットワークモデルの評価
引用・参考文献

7.時系列AIモデリングの実作業
7.1 IoT時系列データ収集方法
 7.1.1 時系列データ収集の通信規格IEEE1888
 7.1.2 IEEE1888通信規格における時系列データ伝送方式
 7.1.3 IEEE1888通信規格におけるIoT通信ソフトウェア実装
7.2 時系列AI学習データのゾーン選別
 7.2.1 時系列学習データ収集の現実
 7.2.2 時系列学習データのゾーン選別
 7.2.3 時系列学習データ選別による実用的方法
7.3 時系列AIモデリング自作学習ソフト
 7.3.1 既製学習ツールと自作学習ソフト
 7.3.2 機械学習ソフトの自作開発
 7.3.3 自作学習ソフトによる可視化
引用・参考文献

付録
付録AMLP型ニューラルネットワークの自作学習用のプログラム例
付録BLSTMニューラルネットワークの自作学習用のプログラム例
索引

読者モニターレビュー【 Manny-Lab 様(業務内容:時系列データなどへの機械学習適用に関する研究等 )】

この本の特徴を一言で言い表すならば、「社会実装」を指向した本です。

近年、経済データ・センサーデータなど様々な時系列データへの深層学習などAI技術の応用が広がっています。しかしながら、その多くは所謂データサイエンス的な分析・モデル化の側面に重点が置かれています。そのため、作成したモデルの出力を、次のプロセスでどのように使うか・繋げるかという視点の記載が弱くなっています。

その中で、本書は「制御」を含むタイトルにある通り、組込システムでのAI技術を使用したモデル化のみならず、その次のプロセスである「制御」までを範囲とした実際的な取組までを紹介している所に特徴があります。大きく言い換えると、AI技術を社会実装するための取組が一通り記載されていると言えます。

本書が事例としているIoTを含む組込システムは、社会実装する上で特有の課題があります。それは、組込システムは、その対象システム環境に特化した技術検討が必要になるため、容易に他のシステムへと知見を展開しにくいという課題です。この課題に、果敢に取り組まれたのが本書と言えます。

本書の特徴を評者なりに纏めると、次の3点になります。
・空調機器制御を題材に、時系列データの取扱から制御まで一通り取り扱っています。
・様々なAIに関する技術の使い方・組合せ方を、事例を通じて紹介しています。
・各事例の課題設定は、モデルを作るだけではなく、実運用を指向しています。
時系列データはとても身近に存在するデータです。その分、関連する技術の蓄積も数多いです。しかしながら、近年のトレンドは、所謂データサイエンス系のデータが多く取り扱われており、工学的な組込システム系の取扱が少ないです。ここに、工学系技術者の悩みがあります。本書を読み進めることで、AI技術などの基礎事項を習得した工学系技術者が、次のステップとして「では、(習得した)技術で何が出来るか?どのように使えば良いのか?」という問に応える事が出来ると期待しています。

本書で説明している各種アルゴリズムの詳細は、必要に応じて他書を参照するとしても、読者は確実に得るものが大きいです。特に、社会実装までを目指す時に必要となる事項が概観できるものと思います。実を言う評者も、シミュレーテッド アニーリング (SA) 法の概要は知っていたつもりでしたかが、本書で始めて実例を通して学び直すことができました(第5章)。また、突発事象予知モデル(3.4節)などは、ここまで出来るのかと興味深く読ませて頂きました。

最後に、1点要望等を記載致します。本書最後でソースコードを記載し読者の便宜を図っているのですが、折角なのでダウンロードファイルの提供や、簡単な解説、実行に関する説明などがあると、なお読者にとって親切であったと思います。

読者モニターレビュー【 MasaTam 様(ご専門:Robotics/AI/Software Engineering)】

全編に渡り内部メカニズムの理解と応用のバランスが取られ、基本的なモデルの解説から、
その現実世界への応用を数式も交え説明しています。データの強化や収集法に関しても
触れられており、付録にはコードも付いている至れり尽くせりの一冊です。
スコープは時系列の実用的なものに絞られていますが、深めで実用へのヒントが多数
含められており、痒い所に手が届く内容です。
読者は基本的な機械学習の知識や技法を知っていると理解しやすいと思います。

読者モニターレビュー【 田中真夜 様(ご専門:工学 )】

まえがきに「しかるに,世の中にあるのは数式だけの理論書か,はたまた,ツールハウツー本の両極端のように思われる。(中略)理論を踏まえたうえでの実践モデル構築を述べた「橋渡し」となる専門書が望まれているのではないか。」とあるとおり、本書は、数式による基礎理論の解説とその理論が実際にどのように実用されるのかという事例紹介の両面がセットになっています。この構成により理論を説明する数式がいきいきとして見えてきますし、実例をより深く理解することができると思います。理論の説明に豊富に用いられている図も、実用に向けた理論の直観的な理解を助けるものとなっています。

また、6章『時系列学習データ収集の現実』、7章『時系列AIモデリングの実作業』、付録のプログラム例により、読者自身が直面する問題に対して本書の5章までの内容を実際に適用するサポートが行われている点からも、非常に実践的な内容になっていると思われます。

蜷川 忠三

蜷川 忠三(ニナガワ チュウゾウ)

私は、三菱重工業で通信ネットワークを使った制御設計を30年間経験してきました。その後、岐阜大学電気電子工学科教授に転進し、最近は、IoTによる次世代電力系統における需要家電力制御システムの学術研究をしています。学術分野における系統だった理論を、開発分野における現実に合った実務に結び付けることが私の信念です。

掲載日:2023/07/01

日本オペレーションズ・リサーチ学会誌「オペレーションズ・リサーチ」2023年7月号

掲載日:2023/03/01

電子情報通信学会誌2023年3月号

掲載日:2022/10/17

情報処理学会誌「情報処理」2022年11月号広告

掲載日:2022/09/01

「電気学会誌」2022年9月号広告

掲載日:2022/08/01

「電子情報通信学会誌」2022年8月号広告

掲載日:2022/07/11

「計測と制御」2022年7月号広告

掲載日:2022/07/04

「電子情報通信学会誌」2022年7月号広告

掲載日:2022/06/30

日刊工業新聞広告掲載(2022年6月30日)