コピュラ理論の基礎

シリーズ 情報科学における確率モデル 12

コピュラ理論の基礎

確率モデルの構築に有用な手法であるコピュラの理論と代表例を基礎から網羅的に解説。

ジャンル
発行予定日
2025/05/下旬
判型
A5
ページ数
168ページ
ISBN
978-4-339-02842-3
コピュラ理論の基礎
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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【書籍の特徴】
コピュラは,多変量の確率モデルを用いるあらゆる分野で重宝されています。 なぜなら,コピュラが様々な分野に特徴的に現れる確率現象をモデル化,統計解析を行うツールとして必要不可欠だからです。 本書はコピュラ理論の基礎をまとめた本邦で最初の書籍です。 特に, 多変量の確率変数間の相関構造をモデル化するのに有用なコピュラの理論と,応用上必須となるパラメトリックコピュラの代表例を解説しています。

【各章について】
1章「確率の基礎とコピュラの概要」:確率の基礎や用語を説明し,コピュラがなぜ有用なのかを手短に概説する。
2章「コピュラの定義と基本定理」:コピュラの数学的定義,コピュラの根本をなす定理,コピュラの基本的な性質や用語を紹介する。
3章「パラメトリックコピュラ」:パラメトリックコピュラの基本的な考え方と,いくつかの具体例を紹介する。
4章「相関の尺度」:相関の一般的な概念を理解するため, "順序"について紹介する。 その後, 相関の尺度を表すケンドール順位相関係数とスピアマン順位相関係数を紹介する。 最後に,裾従属を紹介する。
5章「アルキメデスコピュラ」:生成素によって構成されるアルキメデスコピュラを定義する。 スケール混合モデルやフレイルティモデルとの関連を紹介する。 さらに, 順位相関係数の計算法などについても紹介する。
6章「多変量コピュラ」:5章までに議論してきた2変量コピュラを拡張し, 3変量コピュラ,楕円型コピュラ,多変量アルキメデスコピュラ,ヴァインコピュラをはじめとする, 多変量コピュラについて概説する。

【著者からのメッセージ】
読者の方々が,コピュラという強力な道具を理解し,使いこなし,教育・研究・実務の現場で活躍されることを期待する。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

コピュラは自然科学・社会科学のあらゆる分野に浸透している。コピュラに関する文献は数学・統計学をはじめとし,金融・計量経済学・機械工学・医学・生態学などすべての学術分野で見られる。日本語の優れた学術論文(巻末の参考文献で紹介した)やインターネット上のわかりやすい記事も多数存在する。しかしながら,コピュラの基礎について日本語で体系的にまとめた教科書的なものは存在していない。コピュラを統計家が使う便利なツールと認識している人もいれば,数学の中から出てきた不思議な概念と思う人もいるであろう。研究者や大学院生にとって,コピュラについて書かれた欧文の書籍・論文を読むことは普通だが,高校生・大学生には日本語で理解するための成書があるとなおよい。

2023年11月にシリーズ編集委員長の土肥正先生より「コピュラとその周辺に関する本の執筆をお願いできませんか?」とのEメールをいただいた。コピュラはその統計解析への応用が注目される。一方,数学的に厳密に定義された研究対象でもあり,その揺るぎない定義や定理が多く確立されている。書籍で専門的な内容をまとめることも重要な学術的貢献と考え,これを契機にコピュラ理論の基礎をまとめた本邦で最初の書籍として,本書の執筆を開始した。

本書の目的は,コピュラの理論でよく知られている事項を,丁寧に余すところなく解説することである。どの応用分野へコピュラを応用する際にも有用となる基礎的・本質的な事項を扱うようにし,注目されがちな金融や医学など特定の分野への偏りをなくした。本書で扱うほとんどの内容はコピュラ理論の著名な成書(巻末の引用・参考文献に挙げた)で述べられている古典的な結果や例題である。本文中では参考文献を逐一挙げることはせず,重要参考文献は巻末で紹介した。

コピュラはその基礎理論のみで多くの重要な概念や確立された結果がある。また,統計データの解析や確率モデルの構築に実際に用いられるクレイトンコピュラや正規コピュラをはじめとするパラメトリックコピュラの種類はきわめて多い(第1章表1.1)。これらの基礎事項を網羅的に紹介するよう努めた。

本書は理系・文系問わず,初等的な数式が理解できれば読めるレベルになっている。初等的な集合,関数,微積分の知識があるとなおよい。また,本書は式が多いものの,大学1年時から読めるよう執筆した。一方,統計検定1級レベルの上級者の方々には物足りないであろう。

本邦におけるコピュラの教育・研究・実務に,本書が新たな貢献を果たせれば幸いである。最後に,本書の原稿に対する適切なコメントをいただき,校正にも協力いただいた太田修平氏,清智也氏,吉羽要直氏,日野雅喜氏と,編集上多くのアドバイスと校正に協力いただいた査読者の先生およびコロナ社関係者に感謝する。

2025年4月
江村剛志

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.確率の基礎とコピュラの概要
1.1 確率論の基礎
 1.1.1 確率変数
 1.1.2 パラメトリック分布
1.2 なぜコピュラを用いるのか
 1.2.1 2変量正規分布とコピュラ
 1.2.2 コピュラによる相関構造
1.3 さまざまなコピュラの類
章末問題

2.コピュラの定義と基本定理
2.1 同時分布と周辺分布
2.2 コピュラの定義
2.3 コピュラの基本性質
2.4 スクラーの定理
2.5 コピュラの上界・下界
2.6 生存コピュラ
2.7 対称性
2.8 乱数の生成
章末問題

3.パラメトリックコピュラ
3.1 1パラメータコピュラの例
3.2 オッズ比・クロス比・ハザード比
 3.2.1 プラケットコピュラ
 3.2.2 クレイトンコピュラ
3.3 2パラメータコピュラの例
章末問題

4.相関の尺度
4.1 順序
4.2 ケンドール順位相関
4.3 スピアマン順位相関
4.4 裾従属
章末問題

5.アルキメデスコピュラ
5.1 生成素
5.2 混合モデル
5.3 ラプラス変換
5.4 ケンドール分布と順位相関
5.5 乱数の生成
 5.5.1 逆関数法によるアルゴリズム
 5.5.2 1対1変換によるアルゴリズム
章末問題

6.多変量コピュラ
6.1 3変量コピュラ
6.2 楕円型コピュラ
 6.2.1 多変量正規コピュラ
 6.2.2 多変量t-コピュラ
6.3 多変量アルキメデスコピュラ
6.4 ヴァインコピュラ
章末問題

あとがき
引用・参考文献
欧文論文
邦文論文
索引

江村 剛志(エムラ タケシ)