経営科学のための確率統計入門

経営科学のための確率統計入門

経営科学系の確率統計の入門書。経営科学上の問題と絡めてその意味や直観的説明を与える。

ジャンル
発行年月日
2022/06/24
判型
A5
ページ数
206ページ
ISBN
978-4-339-06125-3
経営科学のための確率統計入門
在庫あり

定価

3,080(本体2,800円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

本書は理工系学部でオペレーションズリサーチ(OR)を中心とした経営科学分野を専門に確率統計を学ぶ学部学生を対象としています.公式や定理などは,特に重要と思われるものは証明や導出過程を詳しく説明し,あまり数学的過ぎるものは理論の一部や概観に触れる形としました.幾つかの公式や定理に関して応用する場面や目的などにも言及しています.また,経営や生産の関係のある例を取り上げ,確率や統計と応用との関係を理解できるよう経営や生産と関係のある例も取り上げました.

1章「確率とはなにか」では,本格的に確率を学ぶための準備を行います.確率と統計の役割の違いや,確率が何の役に立つのかについても言及します.
2章「確率の基礎概念」では,確率の定義を示し,今後確率を理解する上で必要な基本的な性質を説明します.
3章「確率変数と確率分布」では,1次元確率変数の定義を与え,離散型確率分布と連続型確率分布の意味と違いを説明します.さらに期待値と分散,積率母関数に加え,条件付き確率や確率変数の関数の分布など,1次元分布を用いて得られる様々な特性量の導出方や考え方についても言及します.
4章「いろいろな確率分布」では,正規分布など応用の場面で用いられる代表的な確率分布とその性質を説明します.
5章「2次元確率分布」では,1次元と2次元の確率変数の関係を示し,2次元確率分布特有の難しさや考え方,及び重要な性質について説明します.
6章「極限定理」では,確率モデルや統計モデルの理論を考察する際に必要となる中心極限定理と大数の法則を紹介します.理論の詳細には踏み込まず,定理の持つ意味を重視して説明します.
7章「統計とはなにか」では,統計の役割について説明し,今後統計を学ぶ上での準備を行います.
8章「標本分布」では,標本と母集団の考え方と違い,及び統計量の意味とその性質について説明します.
9章「推定」では,確率分布の母数(パラメータ)をただ一点だけ推定する「点推定」と点ではなく母数が存在する範囲(区間)を推定する「区間推定」について述べます.特に点推定に関しては最尤法,区間推定は信頼区間を得るための考え方を説明します.
10章「検定」では,検定の基本的な考え方と母集団が正規分布に従う場合の検定統計量の導出法を説明します.
11章「単回帰分析」では,二つの変数間の関係を調べる際に有用な単回帰分析について,パラメータの点推定と検定,及び推定量の性質を中心に説明します.

【著者からのメッセージ】
公式や定理を単に“暗記”あるいは“知る”だけでなく,その背後にある数理を理解し,さらに応用のための“道具”として確率モデルや統計モデルを作るための準備として確率と統計を学習する方にはお薦めです.

本書は理工系学部でオペレーションズリサーチ(OR)を中心とした経営科学分野を専門として学ぶ予定の,主に学部学生に必要な確率と統計の基礎理論をまとめたものである。確率統計に関する書籍は,理論を重視した数学的なものから微分積分を知らなくても理解できる文系学生を対象としたような基礎的なものまでさまざまである。最近はデータサイエンスという言葉が流行っているようにデータ解析手法を中心とした統計的な内容に焦点を当てた書籍も増えているが,応用を意識しつつ理論も重視した書籍はそれほど多くない。

ORのような内容を勉強する場合は,具体的な現象に基づいて式を立てたり問題を解いたりする必要があるため,公式や定理を丸暗記して使用するような勉強だけでは不十分である。この意味ではあまり基礎的な内容だけを取り上げるわけにはいかない。その一方で数学的な理論を重視し過ぎると初学者には難しく感じられてしまい,結果として応用に到達する前の段階で挫折し,確率統計に対する熱意や興味を失ってしまうことがある。

そこで,本書では,特に経営科学分野へ応用する上で必要と思われる確率統計に関する理論に焦点を当てて解説する。公式や定理などは,特に重要と思われるものは証明や導出過程を詳しく説明し,あまり数学的過ぎるものは理論の一部を紹介する形とした。また,どのような場面で確率や統計が利用されるかを少しでも理解してもらうため,なるべく経営や生産などの問題との関連を想像できる例を用いた解説を加えた。ただし,本書の内容で取り扱える応用範囲は限られているため,少々非現実的な設定になっていることがある点はご容赦いただきたい。なお,章末問題の中には,Excelなど数値計算のためのソフトウェアを使用しないと計算にたいへん手間がかかるものが含まれている。これらについては本書で詳しく取り上げていないが,さまざまな書籍が出版されているのでそちらを参照してほしい。

最後に,本書を執筆するにあたっては多くの方にご協力いただいた。筆者が法政大学理工学部経営システム工学科の専門科目である「確率統計」を担当していた関係で,木村光宏先生(法政大学教授)に本書を執筆する機会を与えていただいた。作村建紀先生(法政大学専任講師)と太田修平先生(神奈川大学助教)には初稿に目を通していただき,誤りや不備などをご指摘いただいた。お二方の専門家としての貴重なご意見は本書を完成させる上でたいへん有益だったと考えている。そして,コロナ社の方々には,当初の出版予定が大幅に遅れたにもかかわらず辛抱強く完成を待っていただいた。この場を借りてこれらの方々に心からお礼を申し上げたい。

2022年4月
田村信幸

1. 確率とはなにか
1.1 確率と統計の役割
1.2 確率はなんの役に立つ?
1.3 基本用語の定義
1.4 組合せ的確率と統計的確率

2. 確率の基礎概念
2.1 確率の定義
2.2 確率の性質
2.3 条件付き確率と独立性
 2.3.1 条件付き確率
 2.3.2 ベイズの定理
 2.3.3 独立性
章末問題

3. 確率変数と確率分布
3.1 事象と確率変数
3.2 離散型分布と連続型分布
 3.2.1 確率分布とはなにか
 3.2.2 離散型確率分布
 3.2.3 連続型確率分布
 3.2.4 1次元分布における条件付き確率
3.3 期待値とその周辺
 3.3.1 期待値と分散
 3.3.2 条件付き期待値
 3.3.3 積率母関数
 3.3.4 積率を用いた確率の評価
3.4 確率変数の関数の分布
 3.4.1 確率変数の四則演算
 3.4.2 確率変数の最大値と最小値
 3.4.3 確率変数の変数変換
章末問題

4. いろいろな確率分布
4.1 連続型確率分布
 4.1.1 正規分布
 4.1.2 対数正規分布
 4.1.3 コーシー分布
 4.1.4 一様分布とベータ分布
 4.1.5 指数分布とガンマ分布
4.2 離散型確率分布
 4.2.1 二項分布
 4.2.2 超幾何分布
 4.2.3 負の二項分布と幾何分布
 4.2.4 ポアソン分布
章末問題

5. 2次元確率分布
5.1 2次元確率分布の基礎
 5.1.1 同時分布
 5.1.2 2次元離散型確率分布
 5.1.3 2次元連続型確率分布
5.2 独立性と条件付き分布
5.3 2次元確率分布とさまざまな特性値
 5.3.1 積率母関数
 5.3.2 条件付き期待値
 5.3.3 共分散と相関係数
5.4 確率変数の関数の分布
5.5 混合分布
章末問題

6. 極限定理
6.1 大数の法則
6.2 中心極限定理
章末問題

7. 統計とはなにか
7.1 統計の主な役割
7.2 記述統計学と推測統計学
7.3 統計学とその周辺

8. 標本分布
8.1 母集団と標本
8.2 統計量
8.3 正規母集団の下での統計量の分布
 8.3.1 正規分布から導かれる分布
 8.3.2 標本平均の分布
 8.3.3 標本分散の分布
章末問題

9. 推定
9.1 点推定
 9.1.1 推定量の性質
 9.1.2 最尤法
9.2 区間推定
 9.2.1 信頼区間のつくり方
 9.2.2 正規母集団の下での区間推定
 9.2.3 母比率の区間推定
章末問題

10. 検定
10.1 基本的な考え方
10.2 正規母集団の下での検定
10.3 p値の考え方
章末問題

11. 単回帰分析
11.1 回帰分析とは
11.2 回帰係数の推定
 11.2.1 最小二乗法
 11.2.2 最小二乗推定量の性質
11.3 回帰式の評価
11.4 最尤法と最小二乗法
章末問題

引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【 N/M 様(ご専門:総合情報学(情報科学))】

本書は,オペレーションズリサーチ(OR)を主とした,経営科学の分野を学ぶにあたり,必要な確率論及び,統計学の分野についての記述がなされている.

私自身,確率論及び,統計学の基礎を身につけたいという理由から本レビュ企画に応募した.また,確率論及び,統計学,その他の数学的な知識はほぼない(情報科学の分野を学ぶ際に,条件付き確率,相関係数等の確率論,統計学の用語を見聞きした程度)に等しい状態であるので,気になった点や内容の概略を中心に紹介していく形を取る.

本書を読むに当たり,Σの計算,極限 lim,積分
∫などの計算の知識が前提知識として必要である.付録として,簡単な計算方法が解説してあるといいのではないかと思った.

内容としては,確率論や統計学の役割や何の役に立つのかという,そもそも論の話から始まり,それらの定義や性質や,各種確率分布,推定,検定,分析について,時には証明を交えながら詳しく解説されている.一部,扱われていない内容(例えば,「単回帰分析」の記述はあるが,「重回帰分析」は扱われていない,など)も含むが,基礎的な部分に関してはほぼ網羅されているのではないだろうか.

7章にも書かれているが,データサイエンスや,情報系の分野では,AI(人工知能)を実装する上で重要な技術として「機械学習」が挙げられる.この機械学習には,多変量解析の手法が一部使われていたりと,統計学は何かと最近流行りの分野でも深く関連性がある,ということが改めて感じ取ることができるだろう.

最後に,経営科学に関連した題材の章末問題を中心に,かなり多めに用意されているので,理解を深める意味で大変参考になるだろう.ただ,略解も含めて解答・解説がないのが,大変悔やまれる(もちろん,講義でのレポート問題として活用するという意味合いもあると思うが・・・).是非とも,このレビュ後にでも良いので,コロナ社や著者のWebページにでも公開していただけることを切に願いたい.

読者モニターレビュー【 あめ色玉ねぎ 様(ご専門:システム工学)】

本書は、初学者が読みやすくなるような工夫が随所に散りばめられた、確率統計の良書である。

通常、確率統計の書籍は数学的な説明が多く理論に偏ったものである場合か、それとは反対に数学的な説明に乏しく概念的な内容に偏ったものである場合が大半だが、本書は数学的な理論と概念的な説明とのバランスが非常に良く、読者が理解しやすいようにまとめられている。

また、文中に出てくる例は身近で実用的なものが多いため、単に理論を学ぶだけでなく各章で紹介される手法の実用性を理解しながら読み進めることができる。

全体を通して取り扱われている内容が基礎的なものから応用的なものまで幅広く、各章が簡潔で読みやすく理解もしやすいので、是非とも確率統計の初学者各位に手に取っていただきたいと思える一冊であった。

田村 信幸(タムラ ノブユキ)

オペレーションズ・リサーチや信頼性工学を専門に研究しています.

掲載日:2022/06/01

「電子情報通信学会誌」2022年6月号広告