モビリティサービス

モビリティイノベーションシリーズ 1

モビリティサービス

人間活動における移動の意味を問いかけ,移動の歴史とその価値,交通サービスなどを解説

ジャンル
発行年月日
2020/05/15
判型
B5
ページ数
176ページ
ISBN
978-4-339-02771-6
モビリティサービス
在庫あり

定価

3,190(本体2,900円+税)

カートに入れる

購入案内

  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 書籍紹介・書評掲載情報
  • 広告掲載情報

本書では,人間の活動における移動の意味を問いかけ,移動の歴史とその価値,交通サービスや自動車の歴史を解説した。また,今後,重要性が増してくるパーソナルモビリティビークルやモビリティのサービス化についても紹介した。 

かつて古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスは「豊かさとは,所有することよりも利用することをいう」といったが,この言葉は,最近では自動車にも当てはまるようになってきたようである。20世紀初頭から大衆化が始まった自動車は,利用したいときにいつでも利用できるといった随時性,出発地から目的地まで直接ドア・ツー・ドアで移動することができるという機動性,荷物を持たずにすむといった快適性等,バスや鉄道等の公共交通機関にはない利便性の高さゆえに現代生活においては必要不可欠の生活具として,その利用に伴う効用を提供してきた。それとともに,1960年代の高度成長期においては,自動車はカラーテレビ,クーラーとともに新・三種の神器と呼ばれ,それらを所有することは豊かさや憧れの象徴であった。また,「いつかはクラウン」のキャッチフレーズは,保有する車種がステータスを示していたことを示唆する。すなわち,自動車は顕示的欲求を満たすステータスシンボルであり,所有することに大きな価値があったのである。しかし,このような状況は,21世紀になって大きく変化している。すでにカーシェアリングによって自動車を所有することなく利用することも珍しいことではなくなってきており,100年に一度の自動車革命のキーワードであるCASEの一つであるS(servicizedまたはshare & service)は自動車の所有から利用への流れをさらに強力に進めるものである。

本書では,人間の活動における「移動」の意味を問いかけ,文明の進化とともに変わってきた移動の歴史とその価値,交通サービスや自動車の歴史をひも解く。また,近年さまざまなタイプが現れてきているパーソナルモビリティビークルについても解説する。さらに,モビリティのサービス化について,人とモノの両面から最新の動向を紹介する。本書は6章から構成されている。1章では,人類誕生から現在までの移動の歴史を概観したうえで,移動の価値やまちづくりと交通の関係について議論し,移動の本質を探っている。2章では,移動する人の大衆化とそれをささえる移動サービスの歴史について,馬車,鉄道,自動車という歴史的な流れに沿って,それぞれによる移動サービスを取り上げ,自動車普及の理由について論じている。3章および4章は人々の移動を担う車両について解説している。3章では,自動車の車両技術に関するイノベーションの歴史と自動車利用を支える関連サービスの歴史について解説している。4章では,一般的な自動車より小型のパーソナルモビリティビークル(personal mobility vehicle,PMV)について,その歴史と車両技術を解説し,さらにはPMVによる社会イノベーションについて論じている。5章および6章は人とモノのモビリティのサービス化を紹介している。5章では,人のモビリティのサービス化としてシェアリングサービスおよびMaaS(Mobility as a Service)の概要と近年の動向を紹介している。6章では,物流サービスを含むサプライチェーンの概要と最適化問題を解説したうえで,近年の物流サービスの進展について紹介している。

「移動」は人類の幸福追求の歴史の中で,人と社会と技術のダイナミズムが織りなす多元的な現象で,人の幸福度にきわめて大きく影響する。自動車,情報,交通,まちづくりなどに関わる大学院生,研究者,企画部門ビジネスパーソンなど幅広い分野の方々にとって,細分化された学問ではない「移動」研究スペシャリストがもつべき統合学理を理解し,われわれとともに未来を切り開く人材となるために,本書が一助となることを願う。

最後に,本書の出版にあたりご尽力いただいたコロナ社の方々,名古屋大学における出版事務局の大野鋭二氏,小池春妙氏をはじめ,関係者の皆様に厚くお礼を申し上げる次第である。

2020年3月   1巻編集委員 山本俊行

1.人間活動と移動
1.1 移動の歴史
 1.1.1 人類誕生からローマ時代まで
 1.1.2 ローマ時代から産業革命まで
 1.1.3 ガソリン自動車の誕生
 1.1.4 電気自動車の歴史
 1.1.5 自動車の大衆化
 〈コラム:「自動車」という言葉〉
 1.1.6 鉄道の歴史
 1.1.7 自転車の歴史
1.2 移動がもたらす価値
1.3 人・モノ・情報・エネルギーの移動
1.4 まちづくりと交通
引用・参考文献

2.移動サービスの歴史
2.1 人の移動とサービスの始まり
2.2 馬車の登場と移動のためのインフラ整備
2.3 乗り物としての馬車
2.4 駅馬車:庶民のための交通サービス
2.5 駅馬車による移動サービスを支えたもの
 2.5.1 道路
 2.5.2 宿駅
 2.5.3 馭者
2.6 鉄道という移動イノベーション
 2.6.1 鉄道の発展
 2.6.2 快適すぎる鉄道
 2.6.3 郊外にあった鉄道駅
 2.6.4 駅からの移動と市街地内での移動
2.7 馬車と鉄道の時代の移動は何のためだったのか
 2.7.1 グランドツアー
 2.7.2 余暇と観光
 2.7.3 大衆の保養
 2.7.4 労働・休暇・健康と富による支配
2.8 ガソリン自動車の登場とその急激な普及の背景にあるもの
 2.8.1 蒸気自動車による乗合自動車と電気自動車の挑戦
 2.8.2 個人的な乗り物としてのガソリン自動車
 2.8.3 移動の道具としての自動車:鉄道に対するアドバンテージ
 2.8.4 上流階級のための自動車から低価格化による大衆化へ
引用・参考文献

3.人からみた自動車のイノベーションの歴史
3.1 人に使いやすい自動車
 3.1.1 操舵装置:丸ハンドルというイノベーション
 3.1.2 ブレーキペダル
 3.1.3 スロットル
 3.1.4 乗り心地
 3.1.5 対環境
 3.1.6 キャビン寸法
 3.1.7 荷物・物入れスペース
 3.1.8 前方視界とバックミラー
 3.1.9 雨の日の視界:ワイパ
 3.1.10 夜間の視界:ライト
 3.1.11 ほかの交通参加者とのミュニケーション
 3.1.12 インフォテイメント:カーエンターテイメントとカーナビゲーションシステム
 3.1.13 運転の支援
3.2 自動車利用を支えるサービスのイノベーションの歴史
 3.2.1 ガソリンスタンドと修理工場
 3.2.2 ショーファー:運転手
 3.2.3 道路
 3.2.4 道路標識
 3.2.5 道路地図
 3.2.6 ガイドブック
 3.2.7 ホテルとレストラン
3.3 自動車を使ったサービス
 3.3.1 タクシー
 3.3.2 市内の路線バスと郊外とを結ぶコーチバス
 3.3.3 観光バス
引用・参考文献

4.パーソナルモビリティビークル
4.1 PMVの歴史
 4.1.1 第一世代
 4.1.2 第二世代
 4.1.3 第三世代
4.2 いま求められるPMVの姿
 4.2.1 PMV「三度目の正直」の背景
 4.2.2 爆販してこそ意味がある
4.3 PMVのパッケージと特徴的な機構
 4.3.1 PMVのパッケージ
 4.3.2 操舵輪と駆動輪
 4.3.3 サスペンション
 4.3.4 旋回時内傾の与え方(パッシブとアクティブ)
4.4 アクティブに内傾するPMVの技術的課題
 4.4.1 障害物回避能力
 4.4.2 アクティブな内傾システムのエネルギー収支
4.5 PMVの普及による社会イノベーション
 4.5.1 モビリティの輸送効率
 4.5.2 輸送効率のための自律走行技術
 4.5.3 社会イノベーションのために
 4.5.4 PMVによるモビリティ文化の復興
引用・参考文献

5.近年のモビリティのサービス化
5.1 シェアリングサービス
 5.1.1 はじめに
 5.1.2 モビリティサービスの基本的性質
 5.1.3 シェアリングサービスの事例
 5.1.4 シェアリングサービスの成立要因
5.2 MaaS
 5.2.1 MaaSの基礎概念
 5.2.2 MaaSプラットフォームとMaaSオペレータ
 5.2.3 MaaSによる社会インパクト
 5.2.4 フィンランドのMaaS Global社WhimにおけるMaaS
 5.2.5 わが国におけるMaaS
 5.2.6 MaaSの普及への期待と課題
引用・参考文献

6.物流サービス
6.1 ロジスティクス
 6.1.1 サプライチェーン
 6.1.2 ロジスティクスモデル
6.2 物流サービスの進展
 6.2.1 物流情報の電子データ化とその活用
 6.2.2 物流拠点の省力化・省人化
 6.2.3 物流道路ネットワークの機能強化
 6.2.4 トラック輸送の省人化
 6.2.5 宅配輸送の効率化
 6.2.6 災害時の物流
引用・参考文献

索引

読者モニターレビュー【kyama0321 様(ご所属:自動車製造業,業務内容:車室内音響開発業務)】

本書では,ヒトの活動における "移動" の意味を問いかけ,文明の進化とともに変わってきた移動の歴史とその価値,交通サービスや自動車の歴史を紐解き,将来のモビリティサービスのあり方について論じている。

前半では,自動車の誕生と現在までの進化を辿りながら,街づくりやサービスがどのように変わったのかを時系列順に説明している.後半では,近年のヒト・モノの移動に関わる技術やサービス全般について説明している.特に,近年注目されているシェアリングサービスや MaaS については,基礎概念の説明だけでなく国内外での取り組み例についても詳しく紹介されている。

本書を読むことで,自分自身が働く自動車・モビリティサービス業界の歴史や事例を客観的に学ぶことができた.シェアリングサービスや MaaS を起点として社会をアップデートさせるためには,工学的な解決策の実施だけでなく,行政・事業体の連携による持続可能なサービスの提供,さらには不特定多数の個人間での "分散された信頼" の構築も重要であると感じた。

本レビューを執筆している2020年5月現在は,新型ウイルスの世界的流行によりヒトの移動が大きく制限されている非常事態の真っ只中である.そのような状況下ではあるが,本書を手に取り一読することによって,ヒトが移動することの本質的な意味や将来のモビリティサービスのあり方を学ぶ,あるいは改めて考え直すことができる絶好の機会になるのではないだろうか。

読者モニターレビュー【めっくろぐ 様(業務内容:自動運転開発,専門:制御工学)】

シリーズの第1巻にふさわしく,人類史における移動の価値・意味を振り返ることから出発し,モビリティサービスの全体像を示してくれる一冊である.会社で新たに関連事業に取り組むことになった人,大学で新たに研究を始める学生などに,特におすすめしたい。

1章から3章までは,車輪の発明から自動車社会の発展まで,「移動」の歴史がまとめられている.単に発明の歴史を綴るのではなく,新たな移動手段がどのようなサービスを生み出し,どのように社会構造を変えてきたか,という点まで言及されていることが興味深かった。

4章から6章では,パーソナルモビリティやMaaS,物流サービスなど,近年注目を集めている分野が概説されている.これらの発展途上のトピックについて整理された書物は,これまで多くなかったように思う.特に,新たにこれらのテーマに取り組むことになった人は,まずこれらの章を読み,さらに各章末の参考文献から深堀していくと,最新の動向を効率よくフォローできるだろう。

読者モニターレビュー【kumo様(自営業,都市開発に関するアプリ開発)】

本書は,モビリティサービスに関わる複数の分野の概要を知った上で,人の移動手段にや自動車の発展の歴史について展開されていきます。4章のパーソナルモビリティビークルに関しては,技術的なシュミレーションや数学的にグラフなどを用いた説明が含まれているので一部専門的な知識がないと理解が難しい可能性があります。また,6章の物流サービスでもロジスティクスなどの説明に数式が用いられることがありましたが,ビジネスの概要を中心に説明されていたので,4章よりもわかりやすく学ぶことができました。

各章末に記載されている「引用・参考文献」も過去の重要なものから最新の論文や情報収集に役立つウェブサイトが紹介されており,大学での調査や会社のプロジェクトでモビリティサービスに関わる場合にもこれらの資料が役立つと思います。

『モビリティイノベーションシリーズ』として今後,自動車や自動運転に関するより詳しい本が出版予定ということで,本書はモビリティイノベーションに関しての導入篇としての歴史・現在の事例を学ぶことができる1冊でした。

原口 哲之理(ハラグチ テツノリ)

金森 亮(カナモリ リョウ)

中村 俊之(ナカムラ トシユキ)

読売新聞夕刊パブ掲載(2020年5月12日)

掲載日:2020/05/11

「月刊 トライボロジー」2020年5月号広告

掲載日:2020/05/08

「電子情報通信学会誌」2020年5月号広告

掲載日:2020/05/08

「日本機械学会誌」2020年5月号広告

『モビリティイノベーションシリーズ』ラインナップ
  1. 1.モビリティサービス
  2. 森川高行・山本俊行 編著 

以下続刊
  • 高齢社会における人と自動車
  •  
  • つながるクルマ
  •  
  • 車両の電動化とスマートグリッド
  •  
  • 自動運転
  •  

刊行のことば

人は新たな機会を得るために移動する。新たな食糧や繁殖相手を探すような動物的本能による移動から始まり,交易によって富を得たり,人と会って情報を交換したり,異なる文化や風土を経験したりと,人間社会が豊かになるほど,移動の量も多様性も増してきた。しかし,移動にはリスクが伴う。現在でも自動車事故死者数は世界で年間130万人もいるが,古代,中世,近世における移動に伴うリスクは想像を絶するものであったであろう。自分の意志による移動を英語でtravelというが,これはフランス語のtravailler(働く)から転じており,その語源は中世ラテン語のtrepaliare(3本の杭に縛り付けて拷問する)にさかのぼる。昔は,それほど働くことと旅することは苦難の連続であったのであろう。裏返していえば,そのようなリスクを取ってまでも,移動ということに価値を見出していたのである。

大きな便益をもたらす一方,大きな苦難を伴う移動の方法にはさまざまな工夫がなされてきた。ずっと徒歩に頼ってきた古代でも,帆を張った舟や家畜化した動物の利用という手段を得て,長距離の移動や荷物を運ぶ移動は格段に便利になった。しかし,何といっても最大の移動イノベーションは,産業革命期に発明された原動機の利用である。蒸気鉄道,蒸気船,蒸気自動車,そして19世紀末にはガソリンエンジンを積んだ自動車が誕生した。そして,20世紀初頭に米国でガソリン自動車が大量生産されるようになって,一般市民が格段に便利で自由なモビリティをもたらす自家用車を得たのである。自動車の普及により,ライフスタイルも街も大きく変化した。物流もトラック利用が大半になり,複雑なサプライチェーンを可能にして,経済は大きく発展した。ただ,同時に交通事故,渋滞,環境破壊という負の側面も顕在化してきた。

いつでもどこにでも,簡単な操作で運転して行ける自動車の魅力には抗しがたい。ただし,免許を取ったとはいえ素人の運転手が,車線,信号,標識という物理的拘束力のない空間とルールの中を相当な速度で走るからには,必ずや事故は起きる。そのために,余裕を持った車線幅と車間距離が必要で,走行時には1台につき100平方メートル近い面積を占有する。このため,人が集まる,つまり車が集まるところではどうしても渋滞が起きる。自動車の平均稼働時間は5%程度であるが,残りの時間に駐車しておくスペースもいる。ガソリンや軽油は石油から作られ,やがては枯渇する資源であるし,その燃焼後には必ず二酸化炭素が発生する。世界の石油消費の約半分が自動車燃料に使われ,二酸化炭素排出量の約15%が自動車起源である。

このような自動車の負の側面を大きく削減し,その利便性をも増すと期待される道路交通革命がCASE化である。CはConnected(インターネットなどへの常時接続化),AはAutonomous(またはAutomated,自動運転化),SはServicized(またはShare & Service,個人保有ではなく共有によるサービス化),EはElectric(パワートレインの電動化)を意味し,自動車の大衆化が始まった20世紀初頭から100年ぶりの変革期といわれる。CASE化がもたらすであろう都市交通の典型的な変化を下図(立ち読みページ参照)に示した。本シリーズ全5巻の「モビリティイノベーション」は,四つの巻をCASEのそれぞれの解説にあてていることが特徴である。さらに,CASE化された車を使う人や社会の観点から取り上げた第2巻では,社会科学的な切り口にも重点を置いている。

このような,移動のイノベーションに関する研究が2013~2021年度に渡り,文部科学省および科学技術振興機構の支援により,名古屋大学COI(Center of Innovation)事業として実施されており,本シリーズはその研究活動を通して生まれた「移動学」ともいうべき統合的な学理形成の成果を取りまとめたものである。この学理が,人類最大の発明の一つである自動車の革命期における知のマイルストーンになることを願っている。

2020年3月

編集委員長 森川高行