磁性複合材料 - 圧粉磁心とボンド磁石 -

磁性複合材料 - 圧粉磁心とボンド磁石 -

自動車や強電用途の圧粉磁心とボンド磁石の基礎から具体的な応用までを網羅的に解説。

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2023/03/20
判型
A5
ページ数
422ページ
ISBN
978-4-339-00986-6
磁性複合材料 - 圧粉磁心とボンド磁石 -
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定価

7,260(本体6,600円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

【本書の特徴】
本書は,電源やモータ(いわゆる強電)関係に使用されている圧粉磁心とボンド磁石の基礎から応用までを記述している。これらの磁性複合材料について学びたい方に役立つような内容となるように説明している。本書のレベルは,大学工学部4年生程度の材料科学の知識を学んでいることを想定している。ただし,重要な部分は,できるだけ本書だけで理解できるように記載している。
内容としては,圧粉磁心とボンド磁石の具体的なプロセスや,それらの材料特性に関する情報が主体である。実用例に関しては,筆者の所属の関係で,自動車関連が多い内容となっている。あまり詳細な磁性理論などには,立ち入らないようにした。また,最近,軟質磁性材料に関する教科書がほとんど発行されていないので,軟質磁性材料の説明を多めにしている。なお,磁気センサ,電磁波吸収体や磁気記録などは,本書では取り扱っていない。

【各章について】
1~4章は,電磁気,磁性材料および磁気応用の基礎を説明している。これから磁性材料に携わる方や,別の材料分野から磁性材料に変わる方でも,本書のみで基礎・概要が理解できるようにしている。5~7章は,圧粉磁心やボンド磁石の具体的なプロセスや特性,さらにその実用化例を説明している。
1章:序論で,電磁気学や磁性材料の歴史概要を示している。
2章:電磁気学と磁性材料の基礎を説明している。磁性の基礎理論についても少し触れている。磁性を理解するには,量子力学が必須であるため,この点についても簡単に説明した。
3章:実用化されている強電関係の磁性材料について説明している。また,磁性材料に関係する評価技術についても記述した。
4章:モータ,電磁弁,変圧装置など,磁性材料を利用した応用機器の基本動作を説明している。本書の読者は,材料の開発者・研究者と想定しているので,そのような方に役立つ内容とした。したがって,磁気応用部品の動作に関係する詳細な理論計算などは省いてある。
5章:磁性複合材料の考え方を説明している。圧粉磁心やボンド磁石は,特殊な効果を利用したハイスペックな材料ではなく,複合化で今までなかった領域を実現した材料であることを記述している。材料の実用化には,単なる「高性能」ではなく,「必要な特性」が重要であることを示している。
6章:報告および実用化されている圧粉磁心やボンド磁石の具体的なプロセスや特性について説明している。これらの材料は実用化されているものの,その特性は期待されたものに対して,まだ不十分であること,不明な点も多いことが示されている。この分野に参入する若手研究者のブレークスルーに期待したい。
7章:情報が公開されている圧粉磁心やボンド磁石の具体的な実用化例を説明している。読者に役立つように,材料特性などの詳細な情報が公開されている例に限定している。なお,筆者の所属の関係で,自動車応用が多くなっている。

【著者からのメッセージ】
本書の内容で,圧粉磁心やボンド磁石の基礎から応用まで理解できるものと期待している。磁性材料は,日本のお家芸とも言える分野である。本書により磁性材料分野に参入した若手研究者が,磁性材料研究でブレークスルーを起こすことや,ネオジム磁石のような新材料を発明することを願っている。

【キーワード】
圧粉磁心,ボンド磁石,複合材料,シナジー効果,軟質磁性材料,磁石材料,永久磁石,モータ,電磁弁,DC-DCコンバータ,コモンレール,磁気回路,磁性粉末,磁石粉末,バインダ,絶縁被膜

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

本書の目的は,自動車や強電用途の圧粉磁心とボンド磁石の研究開発に役立つと思われる技術・知識を説明することにある。内容としては,これらの材料の基礎から具体的な応用まで,全体を網羅している。もちろん,不足した内容は,すべて筆者の責任である。なお,本書では,高周波ノイズフィルタや電磁波吸収体については,割愛していることを付言しておく。

筆者は,大学から企業で,一貫して無機・金属系材料の研究開発に従事してきた。材料研究には,現在,AIなどが利用されつつあるが,いまだに経験や職人的な部分が多い。本書では,筆者の経験で,自分自身が習得に苦労したことや,理解したことで研究に大いに役立った内容をできるだけ記載するようにした。加えて,基礎的かつ広範囲な情報も記述した。筆者は,このような知識や技術を習得することで,若手であってもベテラン研究者の経験や職人芸的な技術に近づけるものと考えている。叢書からの知識や技術習得は,経験や年齢と無関係だからである。

筆者が所属する豊田中央研究所(以下,当所)は,トヨタ自動車グループの一つである。そのため,本書で紹介する技術も,自動車関係が多い。他分野の研究者・技術者には,物足りない部分があると思うが,それは筆者の限界であるので,ご容赦いただきたい。

最後に,本書の執筆の機会を与えてくれた当所・前代表取締役所長・菊池昇氏に深謝する。また,本書の監修を引き受けていただいた静岡理工科大学・小林久理眞名誉教授に感謝する。加えて,本書作成にご協力をいただいた以下の当所の関係者にも感謝する(順不同,敬称略);宮木正彦,佐藤和夫,高尾尚史,小野英一,稲垣伸二,服部毅,中井英雄,高田幸生,大坪将士,ファンジョンハン,松本伸彦,難波雅史,平本健二,前田義隆,浦田信也,高橋健一,菊地直人,小島崇,代永彩夏,吉川信明,平井宏俊,大庭伸子,岡本篤人,武市憲典,菅原朋子,池畑秀哲,近藤瑠歩。

なお,当所のデータ・研究成果は,当所の研究者各位の熱意と取組みによるものであることを付言しておく。

さらに,本書へのデータ利用を許諾していただいたトヨタグループ各社にも感謝する;トヨタ自動車(大石雄介),デンソー(野々山龍彦,河村亮,中村裕太),アイシン(神谷直樹),愛知製鋼(御手洗浩成,三嶋千里)。本書執筆にあたって,いろいろな情報をいただいた以下の各位にも感謝したい;九州大学:尾﨑由紀子教授,JFEスチール:高下拓也,東北大学:杉本諭教授,物質・材料研究機構:広沢哲。データや技術情報の掲載を許可していただいた以下の各社にも感謝する;日本製鉄,神戸製鋼所,ヘガネスジャパン,昭和電工マテリアルズ,大同特殊鋼,住友電気工業,ダイヤメット,エプソンアトミックス,アルプスアルパイン,JFEスチール,戸田工業,Magnequench,ダイドー電子,日亜化学工業,住友金属鉱山。

本書が,読者各位に少しでもお役に立てば,望外の喜びである。なお,研究(特に材料研究)には,positive thinkingと「思い込み」が必要であることを助言しておきたい。最後に筆者のモットーを。

LLAP(Live Long And Prosper) & May the Force be with you!

2023年1月
田島 伸(JG2QUM)

1.序論
1.1 圧粉磁心とボンド磁石について
1.2 電磁気学および磁性材料に関係する科学技術の歴史
1.3 自動車の歴史
1.4 磁性材料の発展に向けて

2.磁性概論と強磁性材料
2.1 磁気の単位
2.2 電磁気学の基礎
 2.2.1 ボルタの電池
 2.2.2 クーロンの法則
 2.2.3 ガウスの法則
 2.2.4 エルステッドの発見
 2.2.5 ビオ・サバールの法則とアンペールの法則
 2.2.6 ファラデーの電磁誘導の法則
 2.2.7 マックスウェルの方程式
 2.2.8 電磁気により物質間に発生する力
2.3 強磁性体の起源
 2.3.1 電子と磁性の関係
 2.3.2 原子,イオンに局在する電子の磁性
 2.3.3 強磁性の起源(磁気モーメントが揃う理由)
 2.3.4 遍歴電子による磁性
2.4 磁気特性による物質の分類
 2.4.1 常磁性体
 2.4.2 反磁性体
 2.4.3 反強磁性体
 2.4.4 強磁性体:フェロ磁性体
 2.4.5 強磁性体:フェリ磁性体
2.5 強磁性材料の特性
 2.5.1 強磁性材料の磁化曲線
 2.5.2 磁気異方性
 2.5.3 磁区構造
 2.5.4 単磁区粒子
 2.5.5 永久磁石の保磁力機構
2.6 磁気損失(鉄損)
 2.6.1 ヒステリシス損失
 2.6.2 渦電流損失
 2.6.3 外部応力の影響
2.7 強磁性材料の温度依存性

3.実用化されている強磁性材料の特性と評価方法
3.1 本書で扱う強磁性材料について
3.2 軟質磁性材料
 3.2.1 Fe(純鉄,電磁軟鉄など)
 3.2.2 鉄鋼材,圧延鋼板
 3.2.3 鉄合金系
 3.2.4 アモルファス合金およびナノ結晶材料
 3.2.5 金属ガラス
 3.2.6 酸化物系
3.3 硬質磁性(永久磁石)材料
 3.3.1 鉄鋼系磁石材料
 3.3.2 鉄酸化物系磁石材料(フェライト系)
 3.3.3 希土類磁石材料
 3.3.4 その他の金属間化合物系
3.4 磁性材料および磁性粉末の評価方法
 3.4.1 磁気特性の評価方法
 3.4.2 粉末特性の評価方法
 3.4.3 粉末成形体の評価方法

4.磁気応用部品・機器の動作原理
4.1 電磁気工学の基礎
 4.1.1 コイル
 4.1.2 磁束の発生と逆起電力
 4.1.3 コイルのインダクタンスと磁気回路
 4.1.4 磁気エネルギー
 4.1.5 コイルの電気的な動作
4.2 反磁界とギャップの影響
 4.2.1 反磁界
 4.2.2 磁気応用に及ぼすギャップの影響
 4.2.3 漏れ磁束・フリンジング磁束の影響
4.3 モータ
 4.3.1 直流モータ
 4.3.2 ブラシレス直流(BLDC)モータ
 4.3.3 誘導モータ
 4.3.4 SRモータ
 4.3.5 モータの出力
4.4 電磁弁
 4.4.1 電磁弁の動作特性
 4.4.2 電磁弁の開閉速度
4.5 リアクトル
 4.5.1 DC-DCコンバータ用リアクトル
 4.5.2 変圧器(トランス)

5.磁性複合材料:圧粉磁心とボンド磁石
5.1 圧粉磁心とボンド磁石
5.2 複合材料の考え方
5.3 磁性複合材料:圧粉磁心とボンド磁石
5.4 圧粉磁心の長所と短所(特徴),利用分野
 5.4.1 等方的な特性(3次元磁気回路の利用)
 5.4.2 高電気抵抗率(高周波化による効率向上・小型化)
 5.4.3 生産時の歩留りが高い
 5.4.4 磁歪の低減(磁気騒音の低減)
 5.4.5 磁束密度および透磁率の低下
 5.4.6 ヒステリシス損失(保磁力)がバルク材に比べて大きい
 5.4.7 機械的強度が低い
 5.4.8 圧粉磁心の利用分野
5.5 ボンド磁石の長所と短所(特徴),利用分野
 5.5.1 磁石特性は,原料磁石粉末より必ず劣る
 5.5.2 生産時および使用時の形状自由度が高い
 5.5.3 着磁方向の自由度が高い(等方性ボンド磁石の場合)
 5.5.4 高電気抵抗率(低渦電流損失)
 5.5.5 ボンド磁石の利用分野

6.圧粉磁心およびボンド磁石の作製方法と特性
6.1 はじめに
6.2 圧粉磁心用磁性粉末
 6.2.1 粉末作製プロセス
 6.2.2 圧粉磁心用磁性粉末の種類と特徴
6.3 圧粉磁心用絶縁被膜の種類と特徴
 6.3.1 リン酸塩系被膜
 6.3.2 アルカリ土類(希土類)-ホウリン酸塩被膜
 6.3.3 SiO2系,Al2O3系およびMgO系被膜
 6.3.4 フェライト被膜
 6.3.5 その他の酸化物系被膜および複合絶縁被膜
6.4 圧粉磁心とボンド磁石用バインダ(結合剤)
 6.4.1 樹脂・高分子系バインダ
 6.4.2 無機バインダ
6.5 圧粉磁心とボンド磁石の作製プロセス
 6.5.1 粒度調製と混合
 6.5.2 成形
 6.5.3 熱処理
 6.5.4 加工
 6.5.5 後処理
 6.5.6 着磁
6.6 圧粉磁心の基本特性
 6.6.1 飽和磁化および高磁場での磁束密度
 6.6.2 透磁率および低磁場での磁束密度
 6.6.3 保磁力
 6.6.4 損失
 6.6.5 機械的特性
 6.6.6 耐食性
6.7 報告されている圧粉磁心の特性
 6.7.1 純鉄粉末系
 6.7.2 鉄合金粉末系
 6.7.3 アモルファス合金・ナノ結晶材料・金属ガラス系
 6.7.4 異方性圧粉磁心
6.8 市販されている圧粉磁心の特性
 6.8.1 ヘガネスジャパン
 6.8.2 神戸製鋼所
 6.8.3 昭和電工マテリアルズ(旧日立粉末治金)
 6.8.4 大同特殊鋼
 6.8.5 住友電気工業
 6.8.6 ダイヤメット
 6.8.7 エプソンアトミックス
 6.8.8 アルプスアルパイン
 6.8.9 その他
6.9 ボンド磁石の基本特性
 6.9.1 磁気特性
 6.9.2 電気抵抗率
 6.9.3 機械的強度
 6.9.4 耐食性
6.10 市販されているボンド磁石の特性
 6.10.1 ボンド磁石の生産概況
 6.10.2 マグネトプランバイト(M)型フェライト系
 6.10.3 Nd2Fe14B系
 6.10.4 Sm-Fe-N系(Sm2Fe17N3およびSmFe7N)
 6.10.5 混合系

7.圧粉磁心とボンド磁石の応用
7.1 磁気応用部品・機器から圧粉磁心とボンド磁石に求められる特性
7.2 圧粉磁心を使用したリアクトル
 7.2.1 直流送電システム用アノードリアクトル
 7.2.2 HV用DC-DCコンバータ用リアクトル
 7.2.3 ガソリンエンジン点火用コイル
 7.2.4 高スイッチング周波数DDコン用リアクトル
7.3 圧粉磁心を使用したモータ
 7.3.1 自動車ABS用モータ
 7.3.2 自動車駆動用モータ
 7.3.3 その他の圧粉磁心を使用したモータ
7.4 圧粉磁心を使用した電磁弁:ディーゼルエンジン用コモンレールシステム
 7.4.1 ディーゼルエンジン用コモンレールシステムの概要
 7.4.2 電磁弁を使用したコモンレール式噴射弁
 7.4.3 圧粉磁心を使用した噴射弁の開発
7.5 ボンド磁石を使用したモータ
 7.5.1 電動アクスル
 7.5.2 インバータ冷却用電動ウォータポンプ
 7.5.3 電動シート用モータ
 7.5.4 その他のボンド磁石を使用したモータ

付録
A.1 重要な定数と物性値,および磁気関係の換算式
A.2 金属の電子伝導度
A.3 規則-不規則転移
A.4 アモルファスとガラス
A.5 焼結
A.6 液相焼結
A.7 コイルの巻数とモータ駆動電流,電圧の設定
A.8 金属表面の酸化挙動
引用・参考文献
索引

小林 久理眞(コバヤシ クリマ)

(株)豊田中央研究所(トヨタチュウオウケンキュウジョ)

田島 伸

田島 伸(タジマ シン)

名古屋大学に入学後,セラミックスや無機材料に興味を持ち,これらの材料の研究を行う。卒業後,(株)豊田中央研究所に入社し,自動車用機能性無機材料の研究開発に従事する。その一つとして,本書で紹介する圧粉磁心やボンド磁石の研究開発に携わってきた。他にも,
・Cu2ZnSnS4(CZTS)太陽電池の開発
・マテリアルズインフォマティクスによる新規材料の高速探索
などを行っている。
磁性材料は,日本のお家芸の一つである。磁性材料研究者の方に,本書が少しでも役立てば幸いである。また,若手研究者が,本書により磁性材料に興味を持ち,この分野に参入して,その伝統を引き継ぐことや,ブレークスルーを起こすことがあれば,望外の喜びである。
所属学会
・粉体粉末冶金協会
・日本磁気学会
・応用物理学会
・日本セラミックス協会
趣味
・アマチュア無線(コールサイン:JG2QUM)
・渓流釣り:日本式の毛ばり釣りであるテンカラをこよなく愛する。
・将棋:棋力は1級程度。藤井聡太さんを応援。
・読書:推理小説とSF小説が大好き。特に,レイ・ブラッドベリーの「火星年代記」,スタニスワフ・レムの「大失敗」が愛読書。

掲載日:2023/08/01

電気学会誌2023年8月号

掲載日:2023/04/26

日刊工業新聞広告掲載(2023年4月27日)

掲載日:2023/04/04

日本磁気学会誌「まぐね」第18巻2号

掲載日:2023/03/20

令和5年 電気学会全国大会プログラム広告

掲載日:2023/03/15

電子情報通信学会2023年総合大会プログラム広告

掲載日:2023/03/01

電子情報通信学会誌2023年3月号