- 内容紹介
- まえがき
モビリティイノベーションシリーズの全5巻セットです。
◆図書カード・オリジナル付箋プレゼント◆
本ページの全5巻セットをご購入いただいた方(ただし「代金引換」および「書店受取」を除く)へ,もれなく「図書カード(1000円分)」と「オリジナル付箋」をプレゼントいたします。なお,図書カードのプレゼントは2021年3月31日までの期間限定です。
この機会にぜひご注文ください。
各書籍の詳細は下記書目をクリック頂けますと詳細ページに移動できます。
刊行のことば
人は新たな機会を得るために移動する。新たな食糧や繁殖相手を探すような動物的本能による移動から始まり,交易によって富を得たり,人と会って情報を交換したり,異なる文化や風土を経験したりと,人間社会が豊かになるほど,移動の量も多様性も増してきた。しかし,移動にはリスクが伴う。現在でも自動車事故死者数は世界で年間130万人もいるが,古代,中世,近世における移動に伴うリスクは想像を絶するものであったであろう。自分の意志による移動を英語でtravelというが,これはフランス語のtravailler(働く)から転じており,その語源は中世ラテン語のtrepaliare(3本の杭に縛り付けて拷問する)にさかのぼる。昔は,それほど働くことと旅することは苦難の連続であったのであろう。裏返していえば,そのようなリスクを取ってまでも,移動ということに価値を見出していたのである。
大きな便益をもたらす一方,大きな苦難を伴う移動の方法にはさまざまな工夫がなされてきた。ずっと徒歩に頼ってきた古代でも,帆を張った舟や家畜化した動物の利用という手段を得て,長距離の移動や荷物を運ぶ移動は格段に便利になった。しかし,何といっても最大の移動イノベーションは,産業革命期に発明された原動機の利用である。蒸気鉄道,蒸気船,蒸気自動車,そして19世紀末にはガソリンエンジンを積んだ自動車が誕生した。そして,20世紀初頭に米国でガソリン自動車が大量生産されるようになって,一般市民が格段に便利で自由なモビリティをもたらす自家用車を得たのである。自動車の普及により,ライフスタイルも街も大きく変化した。物流もトラック利用が大半になり,複雑なサプライチェーンを可能にして,経済は大きく発展した。ただ,同時に交通事故,渋滞,環境破壊という負の側面も顕在化してきた。
いつでもどこにでも,簡単な操作で運転して行ける自動車の魅力には抗しがたい。ただし,免許を取ったとはいえ素人の運転手が,車線,信号,標識という物理的拘束力のない空間とルールの中を相当な速度で走るからには,必ずや事故は起きる。そのために,余裕を持った車線幅と車間距離が必要で,走行時には1台につき100平方メートル近い面積を占有する。このため,人が集まる,つまり車が集まるところではどうしても渋滞が起きる。自動車の平均稼働時間は5%程度であるが,残りの時間に駐車しておくスペースもいる。ガソリンや軽油は石油から作られ,やがては枯渇する資源であるし,その燃焼後には必ず二酸化炭素が発生する。世界の石油消費の約半分が自動車燃料に使われ,二酸化炭素排出量の約15%が自動車起源である。
このような自動車の負の側面を大きく削減し,その利便性をも増すと期待される道路交通革命がCASE化である。CはConnected(インターネットなどへの常時接続化),AはAutonomous(またはAutomated,自動運転化),SはServicized(またはShare & Service,個人保有ではなく共有によるサービス化),EはElectric(パワートレインの電動化)を意味し,自動車の大衆化が始まった20世紀初頭から100年ぶりの変革期といわれる。CASE化がもたらすであろう都市交通の典型的な変化を下図(立ち読みページ参照)に示した。本シリーズ全5巻の「モビリティイノベーション」は,四つの巻をCASEのそれぞれの解説にあてていることが特徴である。さらに,CASE化された車を使う人や社会の観点から取り上げた第2巻では,社会科学的な切り口にも重点を置いている。
このような,移動のイノベーションに関する研究が2013~2021年度にわたり,文部科学省および科学技術振興機構の支援により,名古屋大学COI(Center of Innovation)事業として実施されており,本シリーズはその研究活動を通して生まれた「移動学」ともいうべき統合的な学理形成の成果を取りまとめたものである。この学理が,人類最大の発明の一つである自動車の革命期における知のマイルストーンになることを願っている。
2020年3月
編集委員長 森川高行
1 モビリティサービス
森川 高行 名大教授 Ph.D. 編著
山本 俊行 名大教授 博士(工学) 編著
定価:3,190円(本体2,900円+税)
人間活動における移動の意味を問いかけ,移動の歴史とその価値,交通サービスなどを解説。
2 高齢社会における人と自動車
青木 宏文 名大特任教授 博士(工学) 編著
赤松 幹之 産業技術総合研究所 工博 編著
上出 寛子 名大特任准教授 博士(人間科学) 編著
定価:4,510円(本体4,100円+税)
高齢者は運転をやめるべきか。加齢変化から心理・哲学的側面も含めて研究動向を解説した。
3 つながるクルマ
河口 信夫 名大教授 博士(工学) 編著
高田 広章 名大教授 博士(理学) 編著
佐藤 健哉 同志社大教授 博士(工学) 編著
定価:3,850円(本体3,500円+税)
「つながるクルマ」のサービス,技術,システムを体系化。その現状と未来を見渡す。
4 車両の電動化とスマートグリッド
鈴木 達也 名大大学院教授 工博 編著
稲垣 伸吉 南山大教授 博士(工学) 編著
定価:3,190円(本体2,900円+税)
I編は電動車両の最新技術を解説。Ⅱ編は電動車両とエネルギーマネジメントの関係を紹介。
5 自動運転
二宮 芳樹 名大特任教授 博士(工学) 編著
武田 一哉 名大教授 工博 編
定価:5,280円(本体4,800円+税)
自動運転を構成する技術的要素とそれに伴う法制度まで解説した,自動運転を網羅した一冊。