これならわかる微積分学

これならわかる微積分学

これならわかる! 読者の疑問にやさしく詳しく答えてくれる微積分学の入門書。

ジャンル
発行年月日
2022/08/18
判型
A5
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-339-06126-0
これならわかる微積分学
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 広告掲載情報

●読者対象
 大学初年次の学生、または高校/高専の上級生。理系・文系問わず。

●キーワード
 微分、積分、極限、無限、自然対数の底、対数関数、指数関数、三角関数、逆三角関数、双曲線関数、合成関数、逆関数、陰関数、マクローリン展開、テイラー展開、置換積分、部分積分、曲線の長さ、回転体の面積、立体の体積

●著者からのメッセージ

 数学は、イマジネーション(=想像力)の学問です。…と聞くと、驚くでしょうか?

 僕は、数学を学ぶ際に一番大切なのは、頭の中にイメージを描くことだと思っています。特に、なにか初めて見聞きする物事を学ぶ際は、それがおよそどんなものなのか、イメージを持つことが大切です。
 
たとえば、初めて分数を学ぶ際には、「まるいケーキを5人で分けると…」というような例え話から始めるでしょう。実際にケーキの絵を描いて、それを5等分する様子を見せれば、ゴブンノイチ(=1/5)という分数のイメージが伝わります。
もし初めて分数を学ぶときに、横棒の上下に1と5という数字を書き込んで、「これが分数だよ」とだけ説明されたとしたら…。たちまち分数が嫌いになるかもしれません。

大学で学ぶ数学も、うえと全く同じことが言えます。どんなに難しい概念が現れたとしても、それに対するイメージを頭に描くことができれば、ある程度までは理解できるはずです。しかし大学で数学を学ぶ場では、こういう「おおざっぱなイメージ」があまり重視されません。ついつい、定義→定理→証明→練習問題という無味乾燥なサイクルを、ただ淡々と繰り返すスタイルに陥りがちです。そうした著者の経験と反省から、今回この本を執筆しました。

●本書の特徴

本書は、イメージを大切にした、微積分学のテキストです。

読者のみなさんが、読んだ物事を頭の中でイメージしやすいよう、親しみのあるイラストやグラフを多用しました。また、大学初年次の読者が疑問を抱きやすい題材についても、かなり細かく説明してあります。たとえば、
・無限大∞とはなにか? (§1.2)
・対数は何のためにあるのか? (§2.2)
・なぜ微分の逆操作で面積が求まるのか? (§9.3)
など、他の類書ではスッと通り過ぎてしまいがちな題材も、豊富な例とイラストを用いて詳細に説明してあります。

難易度としては、高校で習得する数学3(数III)から少しだけ背伸びした、いわば「数学3.5」に相当するテキストとなっています。微積分学とはどういう学問なのか、その大まかなイメージを本書によって掴めた読者は、より程度の高い他の良書にぜひ挑戦してください。イメージを持つ前と後では、理解の進め方が全然違うことに気づくはずです。

本書のところどころには、コーヒーブレイク(=コラム)という見出しで、様々な学問にまつわる豆知識を載せてあります。数学に関するトリビアを含め、生物学・化学・文学など、多彩な分野の豆知識を詰め込みました。本書の本題である微積分学とは別の観点で、読者の興味に沿う話題があれば、うれしく思います。

ある理科の実験にまつわる,こんなエピソードがあります。

『・・・・・・その実験では,まずアルミ箔のしわを伸ばせといわれた。理由もわからぬまま,とにかくいわれたとおりに作業していると,今度はそのアルミ箔で,竹串を巻け,といわれた。何度もやり直しをさせられたあげく,さらに今度は,その竹串を火であぶれ,といわれた。・・・・・・(中略)・・・・・・
でも,もし最初に「エジソンの白熱電球をつくるぞ!」といってくれてたら,もっと楽しく実験できたのに・・・・・・』

目的や目標がわからないまま,ただ作業をさせられるのは,誰にとってもシンドイものです。だからこそ,教える側には,「その作業がなぜ必要か」を相手に伝える気遣いが肝心なのでしょう。

さて,この話,じつは数学のテキストにも,まったく同じことが当てはまるのではないでしょうか?

微積分学というのは,歴史の古い学問です。それゆえ,教えるべき内容とその順番には決まったセオリーがあります。そうした伝統ある流れに沿って,各トピックを教えていけば,確かに大きな穴はないでしょう。

しかし,微分と積分を学ぶ人すべてが,十分な予備知識をもっているはずはありません。そういった五里霧中で不安を感じる読者に対して,やれ「実数の連続性」だの,「級数の収束性」だの,石橋をたたきつづけるような厳密性にこだわった内容構成が本当に適しているのでしょうか?それを学ぶべき理由も教えずに,ただ「アルミ箔のしわを伸ばせ」というステレオタイプな教え方に,なってはいないでしょうか?

この本は,こうした著者なりの経験と反省から,従来型のテキスト構成にとらわれずに内容を編纂したものです。執筆においては,できるだけ初学者の興味がつづくように,多彩な話題を平易な言葉で扱うように心掛けました。また,各章や各セクションの重要ポイントは,逐一太字でわかりやすく明示しました。この工夫によって,「なんのためにこれを読まされているの!?」といった印象はずいぶん薄れるものと思います。さらに必要な場面では,同じ内容を繰り返し,本書の違う箇所で説明してあります。通常の数学のテキストでは,定義や用語の説明を一回だけに留めることが多いので,この点も従来型とは異なる本書の特長といえるでしょう。

一方で,初学者の興味にかなう内容を目指したため,数学的な厳密性を欠いた箇所は少なくありません。より厳密な内容を好まれる読者には,伝統あるほかの良書をお勧めします。ただしそうした読者にも,本書でふんだんに盛り込んだ脚注やコーヒーブレイク,そして付録の中に,きっと目を惹く話題があろうかと思います。

なお,章末問題の解答例は,コロナ社の書籍詳細ページで閲覧できます。問題の解き方がわからなかったときは,どんどん解答例を覗いてください。ただし,丸写しはしないこと。解答例をちょっと覗いて,解き方がわかったら,すぐに解答を閉じてその問題に再挑戦する。そうやって問題と解答を何度も往復して,手もとのペンを動かすことが,理解を深める一番の近道になるはずです。

本書のいたるところに挿入されたイラストは,すべて研究室スタッフである豊浦牧子さんによるものです。また,山梨大学生命環境学部学部生の池谷汐織さんには,学生の目線で原稿全体を丁寧に精読して頂き,誤植を丹念に洗い出して頂きました。お二人の多大なお力添えに,謹んで感謝を申し上げます。

2022年6月
島 弘幸

1. 無限とはなにか
1.1 微積分学は「無限」の数学である
1.2 無限大∞とはなにか
1.3 x=0とx→0の違いとは
1.4 極限とはなにか
章末問題

2. 対数とはなにか
2.1 対数のもつ意味
2.2 対数はなぜ必要か
2.3 底の条件,真数条件
2.4 自然対数の底e
2.5 自然対数と常用対数
章末問題

3. いろいろな関数
3.1 関数とはなにか
3.2 逆関数とは
3.3 逆関数があるための条件とは
3.4 fの値域はf^-1の定義域
3.5 指数関数
3.6 対数関数
3.7 三角関数を定義する3種類の方法
3.8 三角関数のグラフの大事な性質
3.9 双曲線関数
3.10 双曲線関数の名前の由来
3.11 逆三角関数
3.12 逆三角関数と単位円の意外な関係
3.13 逆三角関数の定義域と値域
3.14 増加関数の速さ比べ
章末問題

4. 関数のグラフ表示
4.1 グラフの全体像を把握せよ
4.2 定義域を調べよ
4.3 軸との交点を探せ
4.4 対称性はあるか
4.5 漸近線はあるか
4.6 グラフの描き方:実践編
4.7 グラフの平行移動
4.8 グラフの拡大と縮小
4.9 極座標のグラフ
章末問題

5. 関数の微分簡単編
5.1 微分の定義
5.2 x^nの微分
5.3 \sqrt[n]{x}の微分
5.4 e^xの微分
5.5 logxの微分
5.6 微分の記号の使い分け
章末問題

6. 関数の微分ちょいムズ編
6.1 積の微分
6.2 商の微分
6.3 cosxの微分
6.4 sinxの微分,tanxの微分
6.5 合成関数の微分
6.6 合成関数の微分公式の「大雑把な」証明
6.7 逆関数の微分
6.8 逆三角関数の微分
章末問題

7. 微分計算の応用
7.1 対数微分法
7.2 陰関数
7.3 陰関数の微分
7.4 関数の最大最小
7.5 たがいに相関する変化率
章末問題

8. 関数の展開
8.1 関数を展開するとはどういうことか
8.2 関数を1次式で近似する
8.3 関数を2次式で近似する
8.4 関数を多項式で近似する
8.5 マクローリン展開とテイラー展開
8.6 展開の次数を無限にとると
8.7 収束半径とは
8.8 関数の展開の応用(1):極限の計算
8.9 関数の展開の応用(2):積分の計算
章末問題

9. 積分とはなにか
9.1 積分は二つの顔をもつ
9.2 区分求積法
9.3 逆微分と面積の関係
9.4 原始関数とは
9.5 積分定数がどんな値でもよいわけ
9.6 不定積分と定積分
9.7 積分に関するいくつかの注意
9.8 手で解ける積分の例
9.9 1/xの積分に絶対値がつくわけ
9.10 手で解けない積分の例
章末問題

10. 初等関数の積分
10.1 置換積分
10.2 形式的な約分(du/dx)dx=du
10.3 置換積分の具体例
10.4 部分積分
10.5 部分積分の連続技
章末問題

11. 面積・体積・曲線の長さ
11.1 立体の体積
11.2 回転体の体積
11.3 曲線の長さ
11.4 曲線の長さ(陰関数表示の場合)
11.5 回転面の面積
11.6 円筒か,円錐台か
章末問題

付録
A.1 常用対数表の使い方
A.2 複素数と三角関数のつながり
 A.2.1 虚数iを用いた三角関数の表現
 A.2.2 複素平面を用いた三角関数の表現
 A.2.3 オイラーの公式の応用例:
A.3 (sinx)/x→1(x→0)の証明
A.4 合成関数の微分,厳密な証明
 A.4.1 前準備その1
 A.4.2 前準備その2
 A.4.3 合成関数の式の証明
A.5 円錐と円錐台の幾何
 A.5.1 円錐台の側面積
 A.5.2 円錐台の体積
 A.5.3 円錐の体積にはなぜ1/3が付くのか
索引

読者モニターレビュー【 おかもと 様( 業界:電気事業 )】

数学や数式を見るだけで拒否反応が出る、そんな人にこそおすすめしたい1冊です!
一般的な参考書によくあるような暗記すべき公式や問題と解説の羅列ではなく、「微分とはなにか」や「その公式でなにを解いているのか」など、数学の“中身”を教えてくれます。
読んだあとは数学が「問題を解かされる大嫌いなもの」から「自分の中でのツールの1つ」に近づくような感覚でした。
筆者の数学や大学教育に対する思いが垣間見える【コーヒーブレイク】も必見です!

読者モニターレビュー【 さいもん 様(ご専門:制御工学、強化学習 )】

私は現在,大学院で制御工学の研究を行っています.制御工学では微積分も多く登場するため(例えば,現代制御という手法では制御対象のモデルを微分方程式で表現します),その知識は必須であります.

そこで本書です.最初に総評すると,本文の記述の丁寧さやデザイン面からも,「これならわかる」という名に偽りのない書籍だと感じました.大学へ入学したばかりの学生の教科書になるだけでなく,大学院生や社会人の学びなおしにも,また発展的な内容を学びたい中高生にも勧められる書籍です.実際,自分もこのレビューを書かせていただくにあたって一通り拝読しましたが,よい復習になりました.

最初に,本書の内容について述べます.本書は最初に「関数」について基礎的な知識や概念の説明を行った後,微分の説明と応用,積分の説明と応用,というように続いていきますが,この流れが非常に読みやすいです.説明も丁寧でわかりやすく,最初から通読するのにも不明な箇所を拾い読みするのにも便利であると感じます.

また前書きに「数学的な厳密性に欠いた箇所は少なくない」とありますが,その厳密性を多少なりとも注釈や付録でケアしている点も好印象でした.とりあえず一通り学びたい場合は本文だけを,発展的な内容もあわせて学びたい場合には注釈や付録もあわせて学習するというように,個々人の目的に応じて学習ができると思います.少なくとも微積分学の土台としては十分な内容が書かれていますので,まずは本書の内容を一通り理解し,その後さらに発展的な書籍に入るとよいかなと感じました.

加えて,本文に差し込まれる「コーヒーブレイク」もよいと思います.後述しますが本文中にもイラストやグラフが多く挿入され,またフォントの違いによる要点の強調が行われていますが,このコーヒーブレイクも相まって俗にいう「堅苦しく無味乾燥な」学術書にならず(それがいけないとは言いませんが),親しみやすい書籍になっているように感じました.

最後に,各章の章末問題にもかなりボリュームがあり,解答はきちんとコロナ社の書籍ページで公開されています.しかも表紙のついた冊子形式のPDFで閲覧でき,答えの導出も丁寧に行われているため,よくある「答えが省略されていて困る!」というような心配は無用です.

続いて,デザイン面についても述べます.最初に,表紙へ描かれている眼鏡をかけたキャラクターのイラストがとても可愛らしくて好印象です.また,このキャラクターイラストはカバーだけでなく書籍自体の表紙にも描かれているため,カバーを外しても安心です.私が所属する大学の図書館では本は全てカバーを外して所蔵されているため,そうした場合でも変わらぬデザインのよさを味わえます.加えて,このキャラクターイラストは本文中にも度々登場し,学習における貴重な癒しになります.イラストは研究室のスタッフの方が描かれたとのことで,大変ありがたいなと感じました.

さらに,本文のフォントについても注目すべき工夫があります.基本的には一般的な書籍と同様に明朝体で書かれていますが,筆者の方が「ここは大事であるという要点」はフォントやその大きさを変え,独立した形で書かれています.どうしても学術書は(そうした工夫がなく)無味乾燥なものになりがちですが,本書は要点が際立ってわかりやすく,非常によいと感じました.復習時などは,この要点だけを拾い読みしてもよいかもしれません.

最後に,本文中でグラフや図を多く活用している点も素晴らしいです.関数のところではグラフによって「それがどういう関数なのか」がわかりやすく描かれており,また微分では例えば合成関数の微分がどのように行われているか,積分では積分操作によってどういったものが求められているのか,というようなことがわかりやすく示されています.記述の丁寧さだけでなく,こうしたところも内容の理解の大きな助けになると感じました.

筆をおくにあたり,蛇足ながら微積分学だけでなく線形代数や他の分野についてもぜひ拝読してみたいなと感じました.ぜひ,ご検討のほどよろしくお願いいたします.

読者モニターレビュー【 東 高氏 様(ご専門:航空宇宙工学 )】

この本の特徴として、高校の内容を論理的に解説しており、語り口調で書かれていることが挙げられます。私はこの本を使ったことで、今まで理解せず覚えることで対処していたマクローリン展開やそれに付随する問題を容易に解けるようになりました。注意点として、この本は解説書であるため演習問題が少ないです。章末問題として存在しているため、演習には不向きです。よって、学んだことをより身に着けるために演習をする場合には、コロナ社「微分積分の講義テキスト」や「理系基礎数学演習」を併用すると学習効果は高くなります。以上のことを踏まえて、この本は大学受験の際に解法暗記で問題を解いてきた理系新大学生や、一切数学Ⅲに触れることのなかった文系学生の数学の学習に効果を発揮すると思います。また、内容は高校数学での数学Ⅲの内容が含まれているので、数学Ⅲを理論的に学びたい高校生にもおすすめできます。

読者モニターレビュー【 Cielo 様(ご専門:SE )】

多くの理系分野で非常に重要な「微積分学」ですが、高校数学でも大学数学でも抽象的な分野の印象で、統計学などと比べるといまいち掴めずにいました。本書は、難易度「数学3.5」に相当すると公式サイトにもあるように、高校から大学への橋渡しとなるような難易度で、数IIIを勉強しながらもしくは勉強し終えた読者にちょうど良いと思いました。
読んでみてよかった点は、文字がびっしりになりがちな大学数学の参考書と比べて、視覚的に理解してもらおう、コラムなどでちょっと一息ついてもらおうと、「読者の快適さ」を考えた作りになっていたことです。自習などでもやりきれそうと自信を持たせてくれる難易度と解説のわかりやすさはピカイチだと感じました。

読者モニターレビュー【 日下部 貢一 様 明海大学非常勤講師(ご専門:経営情報学 )】

本書は初心者向けの微分積分学の入門書である。微分積分は線形代数とともに、理系のみならず文系であっても科学的研究手法を用いる学問を学ぶ基礎として必須の数学である。当然大学教科書としての需要は多く、現在刊行しているものだけでも数百冊は下らないであろう。

大学で新入生に微積分を教えるときの留意点として、高校数学からの接続の問題、極限の厳密な扱いをどうするかの2点がある。第1の点は、高校における数学履修の多様性の問題である。微積分をまったく学ばなかった者、整関数の微積分を学んだ者(基礎解析程度)、三角関数や対数関数などの初等関数の微積分まで学んだものなど、学生のレベル差は大きい。第2の点は、いわゆるε-δ方式をどこまで教えるかである。本書はこの点で明確な路線をとっている。前者においては、高校で微積を学ばない学生にもわかるように充分な紙幅をとり、入念な準備を行っている。後者ではε-δ方式は扱わないで、高校数学同様の直感的説明で済ませている。

本書の特徴として、著者の教育的配慮が行き届いていることがあげられる。大学の数学教科書は無味乾燥な定義から始め、定理の証明、その定理を使って解く例題、演習問題などの繰り返しと淡々に進むものが多い。これに対し本書は題材ごとに自由に説明する形をとり、新しい数学概念を導入するときは、最初にその意味を十分に説明している。大切な部分はゴシック大文字で強調し、まるで教室で教師の説明を聞くかのごとくである。随所にかわいらしいイラストが添えてあり、これは著者の研究室の学生さんによるとのことである。各章末に問題があり、解答はコロナ社Webサイトに掲載されている。本文を理解すれば解ける素直な問題が多いことも入門書として望ましい配慮である。

印象的なのは学習者が何気なく見過ごしてしまいがちな点を随所で指摘していることである。たとえば∞は特定の数ではないこと、対数の底の条件と真数条件の必要性、高校数学における合成関数の微分公式の証明は穴があることなど、著者の教育者としての経験に基づくものであろう。

第1章冒頭で早くも微分係数の定義と積分の意味を説明し、無限大や「ある数に限りなく近づく」ことの意味を直感的に説明している。第2章から第4章は本書で扱う微積分の数学的準備にあてられている。ここで高校数学の範囲である指数、対数、三角の初等関数と大学数学で扱う双曲線関と逆三角関数を導入する。グラフを描く際の留意点も親切に説明している。第5章以降が微積分の本論である。第5~7章は微分法の計算とその応用、第8章は関数展開、第9~11章は積分とその応用という章立てである。構成自体は伝統的なものであるが、教室での講義を再現したようなスタイルで、楽しく学習できると思う。

以上述べたように、本書は大学の入門レベルの微分積分学教科書として充分使用できるものである。学生のレベルに応じて、第4章までを適宜自習に任せれば半期用として、また本書全体をゆっくりと学習するのであれば1年用の教科書として使用できるフレキシビリティをもっている。

大学生のみならず、これから微積分を学びたい社会人にも独習のできる親切な教本としてもお勧めである。欲を言えば巻末に、2変量微積分の簡単な導入とε-δ方式の入門部分があれば、さらに上の学習をめざす読者の動機づけになるのではないかと思う。増補の際に検討いただきたく要望したい。

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島 弘幸

島 弘幸(シマ ヒロユキ)

数理科学の手法を駆使して、生物・地球・物質をつなぐ新しい科学法則を探求しています。私たちを取り巻く自然は、とても複雑で絶えず変化していますが、数理の眼を通して見ると、そこにはシンプルで美しい法則がたくさん隠れていることがわかります。「複雑な」自然を司る「単純な」法則を、より深く・より広く理解したい。そういうワガママな想いを胸に抱えながら、日々個別の研究テーマに取り組んでいます。

略歴:
1999年8月 北海道大学大学院工学研究科 博士課程1年次 中退
1999年9月 北海道大学大学院工学研究科 助手
2007年4月 同研究科 助教
2009年9月 カタルーニャ工科大学(スペイン) 客員教授
2012年4月 山梨大学 大学院医学工学総合研究部 准教授
2019年10月 同大学 大学院総合研究部 教授

趣味:
食品サンプル集め、初めての街歩き

掲載日:2022/10/07

読売新聞広告掲載(2022年10月7日)

掲載日:2022/10/06

日本機械学会誌2022年10月号広告

掲載日:2022/10/03

電子情報通信学会誌2022年10月号

掲載日:2022/09/05

日本音響学会 2022年秋季研究発表会講演論文集広告

掲載日:2022/09/01

「電気学会誌」2022年9月号広告

掲載日:2022/08/22

「数理科学」2022年9月号広告

掲載日:2022/08/01

「電子情報通信学会誌」2022年8月号広告

【書店様向け情報】

本書のPOPを作成いたしました。

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【本書の採用をご検討される方へ】

本書を採用した講義のシラバスモデル(理系向け・文系向け 計2種)を公開しております。

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