レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

これならわかる微積分学

これならわかる微積分学

読者の疑問にやさしく詳しく答えてくれる微積分学の入門書。初学者にも興味を持ってもらえるように,目を惹く話題をふんだんに盛り込みました。各章末に豊富に用意した「章末問題」を通して,さらに理解を深めることができます。

発行年月日
2022/08/18
定価
2,970(本体2,700円+税)
ISBN
978-4-339-06126-0
在庫あり

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報

amazonレビュー これならわかる微積分学

掲載日:2022/10/21

読者モニターレビュー【 おかもと 様( 業界:電気事業 )】

掲載日:2022/09/05

数学や数式を見るだけで拒否反応が出る、そんな人にこそおすすめしたい1冊です!
一般的な参考書によくあるような暗記すべき公式や問題と解説の羅列ではなく、「微分とはなにか」や「その公式でなにを解いているのか」など、数学の“中身”を教えてくれます。
読んだあとは数学が「問題を解かされる大嫌いなもの」から「自分の中でのツールの1つ」に近づくような感覚でした。
筆者の数学や大学教育に対する思いが垣間見える【コーヒーブレイク】も必見です!

読者モニターレビュー【 さいもん 様(ご専門:制御工学、強化学習 )】

掲載日:2022/08/16

私は現在,大学院で制御工学の研究を行っています.制御工学では微積分も多く登場するため(例えば,現代制御という手法では制御対象のモデルを微分方程式で表現します),その知識は必須であります.

そこで本書です.最初に総評すると,本文の記述の丁寧さやデザイン面からも,「これならわかる」という名に偽りのない書籍だと感じました.大学へ入学したばかりの学生の教科書になるだけでなく,大学院生や社会人の学びなおしにも,また発展的な内容を学びたい中高生にも勧められる書籍です.実際,自分もこのレビューを書かせていただくにあたって一通り拝読しましたが,よい復習になりました.

最初に,本書の内容について述べます.本書は最初に「関数」について基礎的な知識や概念の説明を行った後,微分の説明と応用,積分の説明と応用,というように続いていきますが,この流れが非常に読みやすいです.説明も丁寧でわかりやすく,最初から通読するのにも不明な箇所を拾い読みするのにも便利であると感じます.

また前書きに「数学的な厳密性に欠いた箇所は少なくない」とありますが,その厳密性を多少なりとも注釈や付録でケアしている点も好印象でした.とりあえず一通り学びたい場合は本文だけを,発展的な内容もあわせて学びたい場合には注釈や付録もあわせて学習するというように,個々人の目的に応じて学習ができると思います.少なくとも微積分学の土台としては十分な内容が書かれていますので,まずは本書の内容を一通り理解し,その後さらに発展的な書籍に入るとよいかなと感じました.

加えて,本文に差し込まれる「コーヒーブレイク」もよいと思います.後述しますが本文中にもイラストやグラフが多く挿入され,またフォントの違いによる要点の強調が行われていますが,このコーヒーブレイクも相まって俗にいう「堅苦しく無味乾燥な」学術書にならず(それがいけないとは言いませんが),親しみやすい書籍になっているように感じました.

最後に,各章の章末問題にもかなりボリュームがあり,解答はきちんとコロナ社の書籍ページで公開されています.しかも表紙のついた冊子形式のPDFで閲覧でき,答えの導出も丁寧に行われているため,よくある「答えが省略されていて困る!」というような心配は無用です.

続いて,デザイン面についても述べます.最初に,表紙へ描かれている眼鏡をかけたキャラクターのイラストがとても可愛らしくて好印象です.また,このキャラクターイラストはカバーだけでなく書籍自体の表紙にも描かれているため,カバーを外しても安心です.私が所属する大学の図書館では本は全てカバーを外して所蔵されているため,そうした場合でも変わらぬデザインのよさを味わえます.加えて,このキャラクターイラストは本文中にも度々登場し,学習における貴重な癒しになります.イラストは研究室のスタッフの方が描かれたとのことで,大変ありがたいなと感じました.

さらに,本文のフォントについても注目すべき工夫があります.基本的には一般的な書籍と同様に明朝体で書かれていますが,筆者の方が「ここは大事であるという要点」はフォントやその大きさを変え,独立した形で書かれています.どうしても学術書は(そうした工夫がなく)無味乾燥なものになりがちですが,本書は要点が際立ってわかりやすく,非常によいと感じました.復習時などは,この要点だけを拾い読みしてもよいかもしれません.

最後に,本文中でグラフや図を多く活用している点も素晴らしいです.関数のところではグラフによって「それがどういう関数なのか」がわかりやすく描かれており,また微分では例えば合成関数の微分がどのように行われているか,積分では積分操作によってどういったものが求められているのか,というようなことがわかりやすく示されています.記述の丁寧さだけでなく,こうしたところも内容の理解の大きな助けになると感じました.

筆をおくにあたり,蛇足ながら微積分学だけでなく線形代数や他の分野についてもぜひ拝読してみたいなと感じました.ぜひ,ご検討のほどよろしくお願いいたします.

読者モニターレビュー【 東 高氏 様(ご専門:航空宇宙工学 )】

掲載日:2022/08/16

この本の特徴として、高校の内容を論理的に解説しており、語り口調で書かれていることが挙げられます。私はこの本を使ったことで、今まで理解せず覚えることで対処していたマクローリン展開やそれに付随する問題を容易に解けるようになりました。注意点として、この本は解説書であるため演習問題が少ないです。章末問題として存在しているため、演習には不向きです。よって、学んだことをより身に着けるために演習をする場合には、コロナ社「微分積分の講義テキスト」や「理系基礎数学演習」を併用すると学習効果は高くなります。以上のことを踏まえて、この本は大学受験の際に解法暗記で問題を解いてきた理系新大学生や、一切数学Ⅲに触れることのなかった文系学生の数学の学習に効果を発揮すると思います。また、内容は高校数学での数学Ⅲの内容が含まれているので、数学Ⅲを理論的に学びたい高校生にもおすすめできます。

読者モニターレビュー【 Cielo 様(ご専門:SE )】

掲載日:2022/08/04

多くの理系分野で非常に重要な「微積分学」ですが、高校数学でも大学数学でも抽象的な分野の印象で、統計学などと比べるといまいち掴めずにいました。本書は、難易度「数学3.5」に相当すると公式サイトにもあるように、高校から大学への橋渡しとなるような難易度で、数IIIを勉強しながらもしくは勉強し終えた読者にちょうど良いと思いました。
読んでみてよかった点は、文字がびっしりになりがちな大学数学の参考書と比べて、視覚的に理解してもらおう、コラムなどでちょっと一息ついてもらおうと、「読者の快適さ」を考えた作りになっていたことです。自習などでもやりきれそうと自信を持たせてくれる難易度と解説のわかりやすさはピカイチだと感じました。

読者モニターレビュー【 日下部 貢一 様 明海大学非常勤講師(ご専門:経営情報学 )】

掲載日:2022/08/01

本書は初心者向けの微分積分学の入門書である。微分積分は線形代数とともに、理系のみならず文系であっても科学的研究手法を用いる学問を学ぶ基礎として必須の数学である。当然大学教科書としての需要は多く、現在刊行しているものだけでも数百冊は下らないであろう。

大学で新入生に微積分を教えるときの留意点として、高校数学からの接続の問題、極限の厳密な扱いをどうするかの2点がある。第1の点は、高校における数学履修の多様性の問題である。微積分をまったく学ばなかった者、整関数の微積分を学んだ者(基礎解析程度)、三角関数や対数関数などの初等関数の微積分まで学んだものなど、学生のレベル差は大きい。第2の点は、いわゆるε-δ方式をどこまで教えるかである。本書はこの点で明確な路線をとっている。前者においては、高校で微積を学ばない学生にもわかるように充分な紙幅をとり、入念な準備を行っている。後者ではε-δ方式は扱わないで、高校数学同様の直感的説明で済ませている。

本書の特徴として、著者の教育的配慮が行き届いていることがあげられる。大学の数学教科書は無味乾燥な定義から始め、定理の証明、その定理を使って解く例題、演習問題などの繰り返しと淡々に進むものが多い。これに対し本書は題材ごとに自由に説明する形をとり、新しい数学概念を導入するときは、最初にその意味を十分に説明している。大切な部分はゴシック大文字で強調し、まるで教室で教師の説明を聞くかのごとくである。随所にかわいらしいイラストが添えてあり、これは著者の研究室の学生さんによるとのことである。各章末に問題があり、解答はコロナ社Webサイトに掲載されている。本文を理解すれば解ける素直な問題が多いことも入門書として望ましい配慮である。

印象的なのは学習者が何気なく見過ごしてしまいがちな点を随所で指摘していることである。たとえば∞は特定の数ではないこと、対数の底の条件と真数条件の必要性、高校数学における合成関数の微分公式の証明は穴があることなど、著者の教育者としての経験に基づくものであろう。

第1章冒頭で早くも微分係数の定義と積分の意味を説明し、無限大や「ある数に限りなく近づく」ことの意味を直感的に説明している。第2章から第4章は本書で扱う微積分の数学的準備にあてられている。ここで高校数学の範囲である指数、対数、三角の初等関数と大学数学で扱う双曲線関と逆三角関数を導入する。グラフを描く際の留意点も親切に説明している。第5章以降が微積分の本論である。第5~7章は微分法の計算とその応用、第8章は関数展開、第9~11章は積分とその応用という章立てである。構成自体は伝統的なものであるが、教室での講義を再現したようなスタイルで、楽しく学習できると思う。

以上述べたように、本書は大学の入門レベルの微分積分学教科書として充分使用できるものである。学生のレベルに応じて、第4章までを適宜自習に任せれば半期用として、また本書全体をゆっくりと学習するのであれば1年用の教科書として使用できるフレキシビリティをもっている。

大学生のみならず、これから微積分を学びたい社会人にも独習のできる親切な教本としてもお勧めである。欲を言えば巻末に、2変量微積分の簡単な導入とε-δ方式の入門部分があれば、さらに上の学習をめざす読者の動機づけになるのではないかと思う。増補の際に検討いただきたく要望したい。