設計のための発想力

設計工学フロンティアシリーズ 11

設計のための発想力

設計において複雑な問題を解決し新たな価値を提供する人工物を創造するための発想力を解説

ジャンル
発行予定日
2026/07/上旬
判型
A5
予定ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-04711-0
設計のための発想力
近刊

予定価格

3,300

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

発想を設計工学の観点から概観し,発想の性質を認知心理学や認知神経科学の知見,技術者やデザイナーの経験則などに基づき概観した。本書における発想法の分類を提示し,思考の内容や構造化,解候補の生成による設計法を紹介した。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

設計の重要な目的の一つは,有形の製品や無形のサービスなど新しい人工物の創造である。近年,人々の生活,社会,産業,経済,環境など,複雑化した問題を解決し新たな価値を提供する人工物を創造するためには,これまでにも増して設計における発想力,創造的思考が重要となっている。

発想は,意識と無意識,論理と直感などが組み合わさった複雑な思考活動であり,必要な時に必ず優れた発想が得られる方法はいまだ存在しない。しかし,近年の認知心理学,認知神経科学など,さまざまな分野の研究から,発想という思考活動の内容が少しずつ明らかになってきている。また,本書の中でも述べているように,発想を得たい問題とは異なる分野の知識や情報が,その問題に関する優れた発想のきっかけとなることも少なくない。そのような背景や筆者の経験から,本書では発想に有効な知識や情報の範囲を,通常の設計工学における議論よりも少し広くとらえることとした。それによって本書は,設計の分野の研究者,技術者,学生だけでなく,他の分野の方々にとっても参考になり得る内容を含んでいると考えている。

以上の趣旨を踏まえ,本書は以下の構成をとっている。

第1章では,後の各章で詳述する内容を抜粋して,本書で想定する設計のための発想力のモデルを概説し,本書を読む上でのガイドを与える。

第2章では,設計とはどのような思考や過程であり,そこではどのような発想が必要とされるかを,設計工学の観点から概観する。

第3章では,発想の性質を,認知心理学や近年の認知神経科学の知見,発想を実践する技術者やデザイナーの経験則などに基づき概観する。

第4章では,第5章以降での代表的な発想法の紹介のための,本書における発想法の分類を設定する。

第5章~第7章では,第4章で設定した三つの分類に基づき,思考の内容に関する示唆による発想法,思考の構造化による発想法,解候補の生成による発想法を紹介し,近年急速に発展している生成AIについても考察する。
 
第8章では,設計,創造力という文脈で現在行われている教育事例を概観し,本書の趣旨である発想力の向上を主眼とする教育が不十分であることを指摘する。それを踏まえ,発想力の涵養を目的とした筆者の教育の試行を紹介する。そして,AI技術が発展する現在および将来において,STEAM教育が従来よりも大きな意義を有する可能性を述べる。
 
第9章では,本書の内容のまとめを述べ,本書を締めくくる。

なお,本書の記述は基本的に以下の方針に従っている。
・発想することを「発想」,発想されたものを「アイデア」と表記する。

・「設計」という語を,審美性や意匠性も含めた総合的なモノやコトの計画としての広義の「デザイン」と,特に区別せずに用いている。そのため,本書の内容は「設計」,「デザイン」のいずれについても成立する内容となっている。

・本書で紹介するような発想の思考や方法は,一般的には,革新的,独創的,新奇な,などと形容される発想やアイデアを目的とする場合が多い。しかし,確実性やコストなどの条件により,過去の実績のあるアイデアを流用することが,その問題や文脈に最も適しているという場合もあり,それを新奇なアイデアと表現することには違和感がある。そこで本書では,特に発想やアイデアの革新性,独創性,新奇性などを議論する場合を除き,目的とする発想やアイデアを,優れた発想,優れたアイデア,と表現する。その「優れた」の内容や評価関数は,問題や文脈により異なり得る。

・設計における優れた発想というものの理解を助けるため,機械工学などの深い専門知識がなくても理解可能な事例を示すことを心掛けた。それらの事例は,優れた発想とは何かを理解するだけでなく,多種多数の事例を知ることが発想力の向上につながるという,本書の仮説を実践する意図も含んでいる。

2026年6月
村上 存

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.設計のための発想力:“what is”と“how to”
1.1 アイデアの発現は無意識的過程である 
1.2 アイデアは過去の知識や情報から生み出される 
1.3 創造力の構成要素 
1.4 設計のための発想力を向上する方法 
 1.4.1 事前の活動 
 1.4.2 事中の活動 
 1.4.3 事後の活動 

2.設計における思考
2.1 設計の対象 
2.2 問題発見,創造,価値提供 
2.3 構造,挙動,機能,ユーザ体験 
2.4 機能,形状・構造,材料,加工法 
 2.4.1 形状・構造による発想の例 
 2.4.2 材料による発想の例 
2.5 手段と目的 
2.6 発散的思考と収束的思考 
2.7 設計の過程 
2.8 深化と探索 
2.9 問題解決型デザインと提案型デザイン 
2.10 プロダクトアウトとマーケットイン,デザイン思考とアート思考 

3.発想の性質
3.1 認知心理学における発想のモデル 
 3.1.1 活性拡散モデル 
 3.1.2 問題空間モデル 
 3.1.3 機会論的モデル 
 3.1.4 制約論的モデル 
3.2 意識的過程と無意識的過程 
3.3 発想は過去の知識や情報から生み出される 
3.4 論理+直感 
3.5 発想と制約 
 3.5.1 本当の制約 
 3.5.2 かつては本当だった時代遅れの制約 
 3.5.3 間違って本当だと思われていた制約 
 3.5.4 意図的で人工的な制約 
3.6 創造性の分類 
 3.6.1 創造性,心理的創造性,歴史的創造性 
 3.6.2 組合せによる創造性 
 3.6.3 概念空間の探索による創造性 
 3.6.4 概念空間の変換による創造性 
3.7 アイデアの評価 
コラム アイデアの評価方法 

4.発想法の分類
4.1 発想支援の3レベル 
 4.1.1 秘書レベル 
 4.1.2 フレームワーク-パラダイムレベル 
 4.1.3 生成レベル 
4.2 発想法の分類例1 
4.3 発想法の分類例2 
4.4 本書における発想法の分類 

5.思考の内容に関する示唆による発想法
5.1 アナロジー 
5.2 チェックリスト 
5.3 ブレインストーミング 
5.4 ブレインライティング 
5.5 TRIZの発明原理 
5.6 格言的なフレーズ 
5.7 発想のための刺激の提示 
 5.7.1 ランダム刺激法 
 5.7.2 刺激の具体度と得られる発想の関係 
 5.7.3 刺激の様式・課題との距離・一般性と得られる発想の関係 
5.8 概念の距離・類似度の計算方法 
 5.8.1 概念の階層構造に基づく方法 
 5.8.2 単語のベクトル表現を用いる方法 
5.9 概念空間の空孔の探索 

6.思考の構造化による発想法
6.1 アイデア群の空間配置 
6.2 MECEなマトリクス 
 6.2.1 製品の機種の絞り込み 
 6.2.2 設計におけるアフォーダンスの問題の系統的整理 
 6.2.3 信頼性の評価に関する誤りの系統的整理 
 6.2.4 ユーザの多様性への対応の系統的列挙 
6.3 KJ法 
6.4 マインドマップ 
6.5 アンゾフの成長マトリクス 
6.6 TRIZの矛盾マトリクス 

7.解候補の生成による発想法
7.1 テキスト表現の生成 
7.2 形状表現の生成 
7.3 ジェネレーティブデザイン 
7.4 生成AI 
 7.4.1 設計における生成AIの研究事例 
 7.4.2 設計におけるツールとしての生成AI 
 7.4.3 生成AIのユーザビリティ1:効果 
 7.4.4 生成AIのユーザビリティ2:効率 
 7.4.5 生成AIのユーザビリティ3:満足 
 7.4.6 生成AIのユーザビリティ4:利用状況 
 7.4.7 生成AIを使用するリスク・使用しないリスク 

8.設計・創造力・発想力の教育
8.1 設計・創造力の教育事例 
 8.1.1 問題発見型アクティブラーニング 
 8.1.2 機械製図演習 
 8.1.3 図面による機械設計演習 
 8.1.4 CAD操作演習 
 8.1.5 コンセプトスケッチ 
 8.1.6 機械設計製作演習 
 8.1.7 メカトロニクス創作演習 
 8.1.8 企業からの課題に取り組むプロジェクト型教育 
 8.1.9 デザイン系との連携による作品制作教育 
8.2 創造力の要素に対する教育効果 
8.3 発想力の教育の試行 
8.4 AI時代におけるSTEAM教育の新たな意義 

9.まとめ

引用・参考文献
あとがき
索引

村上 存(ムラカミ タモツ)