実験音声科学 - 音声事象の成立過程を探る -

音響サイエンスシリーズ 19

実験音声科学 - 音声事象の成立過程を探る -

音声信号の背景にある人体の仕組みを理解することを目指し,観測データを用い,音声現象の生成要因を明らかにした研究の経緯を説明。

ジャンル
発行年月日
2018/08/20
判型
A5
ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-01339-9
実験音声科学 - 音声事象の成立過程を探る -
在庫あり

定価

2,970(本体2,700円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
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本書は,音声信号の背景にあるヒトの体の仕組みを理解するための手がかりになることを期待して,実験により得られた観測データを数多く示し,非定型で複雑な音声現象の生成要因を明らかにした研究の経緯を説明する。

本書は,音声信号の背景にあるヒトの体の仕組みを理解するための手がかりになることを期待して,音声科学,実験音声学,音声臨床に携わる研究者,技術者,および学生を読者対象として,実験により得られた観測データを数多く示すことを目的とした。

音声信号を資料として研究を進めるにつれ,なぜそうなのかという疑問が生じる。音声信号を記録すれば,それは単なる時系列の交流波形であることがわかる。その中に日常の情報交換に必要なすべてが含まれている。しかし,そのような情報がなぜ音の波の形になるのか。この問いに答えるためには,ヒトが音声を出力する仕掛けを明らかにすればよい。ところが対象がヒトであるという理由で,その試みは簡単な方法では解明できない。音声は特異な科学研究の対象であって,人体の観測手段に制約があり動物モデルによる類推も限られている。したがって研究者たちは,新しい装置を作って新しい事実を見出す努力を重ねてきた。記録に残る過去の努力は,われわれの想像をはるかに超える精緻なものがある。音声の実験的研究が300年を経て,得られた知識は十分に蓄積され,もはや新しい事実はないという理解が一般論かもしれない。その反面,時間というフィルタ作用により,われわれの現在の理解は,定型化されたデータと単純化されたモデルが源泉になっているのではないか。個別の音声現象を目の前にしたときに,その生成的背景を解読するには,集約されすぎた知識では不十分であるかもしれず,新しいモデルが必要になる局面が現れるかもしれない。

本書では,そのような疑問に対して,非定型で複雑な音声現象の生成要因を明らかにした研究の経緯を説明したい。音声の現代的な実験研究は,サウンドスペクトログラフに始まり,パタンプレイバックにより発展した。発声に関しては声帯振動観測法の発展が理解を進め,調音に関しても専用の研究装置が開発され,新しい医用画像装置が援用された。新しい装置の使用によって研究を進めるにあたり必要な事項は,やはり人体の構造との関連による現象の理解であると思われる。そのような観点から,音声研究に必要な実験音声科学の装置のみならず,問題となる音声研究の課題について,解剖と生理の背景に関する最新のトピックを解説し,最後に長年の課題でありながら未解決となっている問題を取りあげる。

2018年6月 著者

1. 音声の性質
1.1 母音の実験的研究
 1.1.1 母音とスペクトル
 1.1.2 母音理論論争から母音知覚研究へ
1.2 聴覚研究と母音の分析
 1.2.1 聴覚研究小史
 1.2.2 母音の聴覚像
1.3 音節を対象とする研究
 1.3.1 音節の構成
 1.3.2 音節内における母音の性質
 1.3.3 有声音と無声音
 1.3.4 音節の連鎖
1.4 まとめ
引用・参考文献

2. 発声の機構
2.1 声帯と声門音源
 2.1.1 声帯の振動
 2.1.2 声帯の形
 2.1.3 声門気流音源の形
2.2 声の高さの変化
 2.2.1 声の高さ,声帯張力,呼気圧の関係
 2.2.2 声の高さを変化させる筋性機構
 2.2.3 アクセントとイントネーション
 2.2.4 マイクロプロソディ
2.3 まとめ
引用・参考文献

3. 調音の機構
3.1 調音の要素
 3.1.1 調音器官の構造
 3.1.2 調音器官の特性
3.2 調音と音響との関係
 3.2.1 調音と音響の対応関係
 3.2.2 調音と音響の非線形的関係
 3.2.3 調音の安定性と不安定性
 3.2.4 量子的性質と知覚対比の強化
3.3 声道の形状と共鳴
 3.3.1 声道の形
 3.3.2 定在波と多重反射
 3.3.3 声道共鳴:低域の特徴
 3.3.4 声道共鳴:高域の特徴
3.4 まとめ
引用・参考文献

4. 音声の中枢制御
4.1 音声の生成と中枢機構
 4.1.1 音声情報交換を支える大脳皮質
 4.1.2 音声生成と知覚の皮質領域
 4.1.3 音声生成系を巻き込む音声知覚の神経回路
4.2 音声生成と知覚の関係
 4.2.1 言葉の鎖
 4.2.2 感覚統合に基づく音声生成モデル
 4.2.3 発声に関わる皮質下の構造
4.3 音声生成の聴覚フィードバック
4.4 音声知覚の運動説とミラーニューロン説
 4.4.1 音声知覚の運動説
 4.4.2 音声知覚のミラーニューロン説
4.5 まとめ
引用・参考文献

5. 音声の個人性と共通性
5.1 鍵のかかった問題
 5.1.1 過去の母音研究から
 5.1.2 音声の個人性および母音の正規化の要約
5.2 音声の個人性特徴と生成要因
 5.2.1 高い周波数領域の特徴
 5.2.2 女声の個人性の問題
5.3 母音フォルマント領域における個人性特徴
 5.3.1 固定腔・硬性器官の効果
 5.3.2 舌の運動速度の個人差
5.4 音声の共通性の生成要因
 5.4.1 声道長の調節要因
 5.4.2 声道形状の調節要因
5.5 音声の共通性の生成要因
 5.5.1 母音の正規化
 5.5.2 母音生成の安定性からみた母音の共通性
5.6 まとめ
引用・参考文献

付章 発声と調音の観測法
A.1 発声機構の観測
 A.1.1 声帯の観察法
 A.1.2 声帯振動の可視化法
 A.1.3 グロトグラフ法
 A.1.4 呼気流計測法
A.2 調音機構の観測
 A.2.1 調音運動の計測と分析
 A.2.2 磁気共鳴画像法の利用
 A.2.3 筋電計測法
引用・参考文献

あとがき
索引

本多 清志(ホンダ キヨシ)

掲載日:2020/03/04

日本音響学会 2020年春季研究発表会 講演論文集広告