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書店様向けレビュー

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマー)】 掲載日:2026/08/19
ハプティクス

本書はハプティクスについての体系的な概説書である。明確な構成と、個々のテーマへの具体的な記述が丁寧で、読んでいておもしろいと思う箇所がたくさんあった。また、数式に頼るところが少なく、自然言語での記述に重点が置かれているのも、この種の書籍としては特徴的だと思う。

第20章で感覚代行が取り上げられている。感覚代行は、「失われた、または機能が低下した感覚に対して、残存する別のモダリティを用いて情報を補完する」ものである(p.306)。触覚を用いた感覚代行の代表例は点字である。最近は電子化が進んでいて、センサーで取得した情報から特徴量を抽出し、それを触覚で知覚可能な信号に変換して、触覚ディスプレイで出力する、という形でモデル化できる。この形であれば、原理的にはあらゆる情報を触覚で感覚代行可能とも考えられる。ただし、代行された信号は、しばしば認知的な努力を要する「読み取り」に留まって、母国語的なモダリティのように透明化した知覚そのものにはなりきらないという指摘がある。

感覚モダリティは相互に影響を及ぼし合い、別のモダリティの入力が影響して他のモダリティの入力自体が変容するような、クロスモーダル性を持ったものである(p.55)。それゆえに、直感的には感覚は互いに分かちがたく、漠然とした総体として捉えないといけないような気がするものでもある。

また、クロスモーダル性を持った総体的なものである感覚モダリティをどのように数理的に表現するかというと、単純に各モダリティを加算して考えるのではなく、不確実性を取り入れて考える。つまり、各モダリティが確率分布として表現されると仮定して、分散に重み付けすることで統合された知覚を決定する(p.62)。

この相互に複雑に影響を及ぼし合っているという在り方(クロスモーダル性)と、なにかが欠けても他のなにかが補いうるという在り方(感覚代行)には、共通の背景がある。つまり、上記のような不確実性を取り入れた統合の考え方である。知覚を、複数のノイズを含むチャネルから、共通の外界の状態を推定すること、と考える。その推定の標的は個々のチャネルそのものではなく、その背後にある共有された外界の状態である。それゆえに、クロスモーダルも感覚代行も発生しうる。

個人的に興味深かったのは、2.5節の「触覚の言葉」である。感覚や情動を言葉で表現するには、カテゴリー化しなければならない。それによって個々の感覚が客観的に共有しうるという側面と、そうするとその感覚はすでに事前に想定された基準に従うものになるという側面が両方ある(p.77)。こういう話題は、言語表現に興味がある者としては大変興味深い。

感覚は生理学だけに帰せられるものではなく、心理学とも深く関係している。そして、それを言語的に表現するという話になるといっそう関係する範囲が広がる。本書はハプティクスに関する書籍だが、感覚の在り方への丁寧な解説を通じて、感覚全般をどう捉えるかという問いへと自然に関心がつながっていくものだった。

読者モニターレビュー【 木下 喬史 様 (業界・専門分野:データサイエンス)】 掲載日:2026/08/10
Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

推薦システムやNLPを実務で扱ってきた立場から読んだが、Web基盤から機械学習、自然言語処理、情報検索・推薦、そしてLLMまでを一冊で通す構成が非常に良い。各分野が独立した章になっているので、興味のあるところから読める。特に推薦の章は、協調フィルタリングからMF・BPR・FM、さらにGNNや時系列まで押さえており、実装の勘所を思い出しながら読み進められた。個々の手法を深掘りする本は多いが、Webサービスを支える技術群を俯瞰し、それぞれの背後にある考え方を地続きで捉えさせてくれる点に価値がある。

読者モニターレビュー【 いたち 様 (業界・専門分野:評価装置メーカー)】 掲載日:2026/08/04
五訂版 放射線機器学(Ⅰ) - X線撮影機器・診療画像機器 -

本書は、理系だがX線を対して知らない私にも分かりやすく記載されている内容だと思います。
まず、X線装置を装置単位ごとに分け、1つずつ解説があり飲み込みやすい記載順で書かれている内容だと思います。また、実際のX線装置の写真や、撮像した写真を多種記載されており、読んだ内容と実際の使い方の結びつきが分かりやすくてよかったと思います。
個人的には、序盤の回路図まで落とし込んで、どう動くのかが記載されている部分が面白いと思いました。
私は医療系ではないですが、面白く拝読させていただけたので、専門とする学生さん以外にも、おすすめできる本だと思います。

読者モニターレビュー【 いたち 様 (業界・専門分野:評価装置メーカー)】 掲載日:2026/08/04
Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

本書のタイトルはWebテクノロジーですので、Webの内容が90%以上占めるかと思ったのですが、サブタイトルにあるように近年話題のAIが多数載っております。
Chat GPTから国民に広く知れ渡っていると思っておりますが、これらもWebを介してユーザーが利用するので、今までの私のWebという認識が変わって、面白かったです。また、内容は幅広く。分かりやすく。でした。説明部分に多々イラストを記載してくれており、よかったです。
本書は、ITパスポートを勉強している方や、AIを専門とする方に幅広く進められる内容になっていると思います。また、私のようにWebとAIが離れた分野として固まっているような人にも、ぜひ読んで頂きたいなと思う一冊でした。

読者モニターレビュー【 たーぼー 様 (業界・専門分野:自動車部品業界・物性物理学,プラズマ物理学)】 掲載日:2026/08/04
新 医用材料工学 - バイオマテリアルの基礎からDDS・再生医療への応用まで -

医用材料の基礎から最新の応用技術までを体系的に学べる一冊です。医用金属、セラミックス、高分子材料といった基礎事項に加え、生体適合性、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、再生医療など、近年重要性が高まるテーマが分かりやすく整理されており、医療と工学の接点を俯瞰しながら理解することができます。各分野の基礎理論と実際の応用がバランスよく解説されているため、学生や大学院生はもちろん、企業で医療・ヘルスケア分野の研究開発や新規事業に携わる技術者にとっても有益な内容です。専門書でありながら全体の構成が分かりやすく、医用材料工学をこれから学ぶ方から、知識を体系的に整理したい実務者まで幅広く推薦できる良書です。

読者モニターレビュー【 N/M 様 (業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】 掲載日:2026/07/27
Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

本書は「メディアテクノロジーシリーズ」の13巻目に位置する書籍である.本巻では「Webテクノロジー(Web技術)」と書名の通り,Webにまつわる関連技術についての記述がなされている.

また,本書は全6章で構成されている.Web技術の基礎と仕組みから始まり,サブタイトルにもある自然言語処理,(情報)検索,(情報)推薦,大規模言語モデルについて,それぞれ独立して記述されているため,興味のある章から読めるという自由度の高さも特徴の一つである.

1章では,Web技術の基礎と各種バックグラウンド技術の仕組みについての解説がなされている.個人的には,OAuth (Open Authorization) の仕組みが大変興味深かった.X(旧Twitter)で企業アカウントがPRや新商品・サービスの拡散のために行う「RTするとその場で当たるプレゼントキャンペーン」に応募した際,よく見かける「アプリにアカウントへのアクセスを許可しますか?」という画面の裏側で動いているのがまさにこの技術だと気付かされた.

3章では,自然言語処理 (Natural Language Processing; NLP) についての解説がなされている.「自然言語処理」という言葉自体はなんとなく知っていたものの,具体的にどのようなものかまでは理解していなかったため,本書で学ぶ機会が得られたのは非常に良かった.日本語のように単語間にスペースがない言語では,テキストの前処理としてまずトークン化を行い,形態素解析,構文解析,意味解析といった順を追う手順があるのだと知ったことは大きな発見であった.

また,3章で扱われるNLPを応用した技術が,6章で解説される大規模言語モデル (Large Language Model; LLM) であり,これは生成AIでも中心的な役割を果たしている.そしてそのバックグラウンドでは,2章で学ぶ機械学習の技術も同様に大きく貢献している.

残りの4章と5章では,情報検索および情報推薦に関する技術についての解説がなされている.情報検索で有名なPageRankの仕組みや,ネットショッピングでよく見かける「この商品を買った人は,この商品も買っています」といったおすすめを表示する仕組みについても書かれており,大変参考になった.

また,5章の情報推薦に関しては本章のまとめにも紹介があるが,本書と同じコロナ社から出版されている『基礎から学ぶ推薦システム- 情報技術で嗜好を予測』(https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339029284/)が大いに役立つだろうと思う.こちらの書籍に関しても僭越ながら私がレビュさせていただいており,購入に際して参考にしていただければ幸いである.

読者モニターレビュー【 masa 様 (業界・専門分野:機械工学)】 掲載日:2026/07/27
設計のための発想力

〇実務と教育の架け橋となる必読の一冊
優れた設計を生み出す「発想のメカニズム」と「価値創出」の本質

長年企業で設計開発に携わり、現在は大学で学生の発想力・実践力を高めるPBL(課題解決型学習)教育に従事している立場から、本書を強く推薦したい。

本書は、単なるアイデア出しのテクニック集ではない。「設計とは、人間の目的を果たす製品や仕組みを考案・計画することである」という本質に立ち返り、アイデアが生まれるメカニズムから、それを社会的な「価値」へと昇華させるプロセスまでを体系的に解き明かした一冊である。

1. 優れたアイデアを生み出し、実社会の「価値」に変えるプロセス
アイデアは決して無から生まれるのではなく、過去の知識や体験の「結合・再結合」から生み出される。例えば、板チョコの折筋と割れたガラスの鋭利さを結合して生まれた「折るカッター刃」のように、既存の知の組み合わせこそがイノベーションの正体である。しかし、素晴らしいアイデア(発想力)を持つだけでは意味がない。本書が説くように、それをいかに産業や社会に活かすかという「実現力(計画力・実行力)」が揃って初めて創造力となる。また、真の「価値」とは人に満ち足りる感情をもたらす効果である。自前でタクシーを保有せずとも「配車・位置把握・決済」の利便性でタクシー問題を解決したUberや、人々の生活観察から新たな音楽体験を生み出したSONYのWalkmanのように、「正しい問題発見」こそが優れた製品と価値を生み出すのだ。

2. 思考の枠組みを揺さぶる「リフレーミング」と「概念空間の変換」
設計において特に陥りがちなのが、目先の手段に捕らわれて目的を見失うことである。例えば「切符の販売や改札」という手段に捉われず、「乗降と運賃の管理」という上位概念にリフレーミングできたからこそ、現在の運賃・乗降管理システムが存在する。
エンジニアにとっても重要なのが「概念空間の変換」だ。エレベーターや手荷物の待ち時間問題に対し、設備増設というハードウェア的解決だけでなく、「人を飽きさせない心理的アプローチ」をとることで課題を解決できる場合もある。そして何より「設計者は人間の良き理解者でなければならない」という教訓は、モノがあふれる現代の「提案型デザイン」において極めて示唆に富んでいる。
HondaJetが従来のエンジン配置の制約を破ったような、絶対的な制約と打ち破るべき制約を見極める力、これは現代に非常に必要な力と感じる。常に常識を疑いながらも、技術理論をしっかり学んでいなければ、論理が破綻してしまう。しかし、昔の制約というのは一度疑ってみると、新しい視点が得られるのは確実なので、ネットの情報ばかりを信じるのではなく、一度自分で腑に落ちるまで確認していく作業は、これからの新しい設計開発にとても重要な視点が得られるものと思われる。

3. 経営論・発想法から見る設計論の深遠さ
本書の面白さは、技術論にとどまらず「深化と探索(両利きの経営)」といった経営論・組織論の視点を取り入れている点にもある。既存技術の深化によるコスト削減や安定だけでなく、不確実性の高い探索(イノベーション)に挑戦する思考法は、現代の設計論にも不可欠である。カワセミのくちばしを模した新幹線500系に見られる「類推法(アナロジー)」や、金出武雄氏の「素人発想、玄人実行」に通ずる直観と論理のバランスなど、実践的な発想法の示唆も豊富だ。
 
本書は、日々の設計業務で問題整理や壁にぶつかっている企業のエンジニアにとって、思考の視座を上げる最高のバイブルとなるだろう。また同時に、教育者が「学生の設計力・発想力をいかに引き出し、育成するか」を考える上での明確な指針にもなっている。
実務家にも教育者にも、そしてこれからモノづくりやコトづくりに挑むすべての学生に、自信を持って薦められる著である。

読者モニターレビュー【 moka 様 (業界・専門分野:設計・品質工学)】 掲載日:2026/07/21
設計のための発想力

本書は、発想力を単なる才能やひらめきとして扱うのではなく、設計工学、認知心理学、認知神経科学の知見を統合しながら、そのメカニズムと向上方法を体系的に説明したものである。著者は発想力を「潜在的発想力」と「発想顕在化力」に分けて捉え、「what is(発想とは何か)」と「how to(どう高めるか)」の両面から論じている。

まず、「アイデアは過去の知識や情報から生み出される」という認知神経科学の文献をもとに、情報や知識が蓄積され、それに対し問題の文脈に合わせて意識的あるいは無意識的に想起、変形、組合せなどの操作がなされ、元の記憶とは異なるアイデアが発現するという説明は、非常に分かりやすい。

また、本書は設計工学フロンティアシリーズの一冊であることから、ものづくりや製品開発に携わる人を主要読者として、機能、形状・構造、材料、加工法という設計の基本要素ごとに発想事例を紹介しているため、技術者が自身の業務へ直接結び付けて理解できる点が「設計に活かす創造性の教科書」となっている。

発想法に関しても、アナロジーやチェックリスト、ブレインストーミング、ブレインライティング、TRIZ、KJ法、マインドマップなど、創造工学に用いられる代表的手法が体系的に解説され、「なぜその方法が有効なのか」を認知モデルとの関連で説明している点が学術的でありながら実務的と思われる。

生成AIを設計支援ツールとして用いるにあたっても、効果や効率、リスクなど、ユーザビリティの観点から分析しており、AIと人間の創造性の関係を分析している。

発想法の代表的手法を活用したことのある方は、「発想法は知識・経験・情報を活用するための装置であり、材料が乏しいと効果が限定される」ことに共感してもらえると思う。ここで、興味深い指摘は、知識が多いほど良いとも限らないということである。専門家はしばしば固定観念(制約)を持ちやすく、誤った制約や時代遅れの制約が創造性を阻害する場合もあることなどを分かりやすい事例で示してくれている。優れた発想は、「専門知識の豊富さ×固定観念の少なさ」のバランスから生まれることに気づかされる。

結論として、人はなぜ発想できるのか、発想力はどのように育つのか、設計において創造性はどのように発揮されるのか、という根本的な問いに正面から向き合った、設計工学と認知心理学を橋渡しする秀逸の書籍である。

読者モニターレビュー【 かんちゃん 様 (業界・専門分野:二輪メーカー)】 掲載日:2026/07/21
身近な音と音波

高校物理で波の回折や反射や干渉を勉強したが、本質的なことは理解できていなかった。
本書は身近な音や波の現象を題材に、数学を程よく混ぜながら現象の本質を説明している。
高校数学では問題を解くための理解が求められたが、この本は「なぜそうなのか?」が明快に解説されており、音と波が好きな先生に楽しく教えてもらっているような感覚になる。
社会人で物理現象に向き合っているエンジニアはもちろん、大学生・大学院生、意欲のある高校生にもおすすめしたい内容である。
音・波に解像度を上げたい人に打ってつけの本だと思う。

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマー)】 掲載日:2026/07/21
Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

本書は1990年12月に公開された世界初のWebサイトから始めて、現代的なLLMの応用で終わるという、Web技術通史である。まず第1章で、インターネットとWebのそもそもの原理と従来型のWebシステム開発の歴史を通観したあと、第2章からは機械学習の登場以降の話題をまとめている。

基本的な歴史観として、機械学習の登場によって、システム開発における大きな変化があったという認識がある。つまり、「ルール」と「データ」を入力し、アルゴリズムに基づいて結果を得るという従来型のシステム開発から、コンピュータがデータからルールを作るというアプローチに変化した。特に、従来は専門知によって人間が「ルールの発見と実装」を行っていたが、その本質的な部分に変化があった。(pp.37-38)

この転換をフックにして、従来型のWebシステム開発技術の話題と、機械学習以降のWebシステムの在り方を、一気につなげてしまうという構成になっている。話題が広い分、ひとつひとつのテーマの掘り下げが深いとはいえないが、理工書として基礎技術に軸足を置いた記述が一貫している。

従来型のWebシステム開発の文脈と、機械学習の文脈は、実務では密接に関係しているはずだが、パラダイムとしては前述のように本質的な変化があるので、文献上は別々に語られがちである。両者を並べて、通史的に見通す視点を提示した点が、本書の面白さであると思う。

LLMを中核とする生成AIの進展によって、Webサービスの設計と実装の前提が大きく変わりつつある、まさにその変化の先端をとらえて教科書としてまとめるのが本書の意図するところである。そのためにWebシステムの基礎から説き起こして、機械学習によってなにが変わるのか、その延長上にあるLLMとは何なのか、という議論の進め方をする。

読者としては、従来的なWebシステムの基礎を踏まえたうえで、機械学習以降の技術によってなにが変わり、なにが可能になったのかを見極めて、積極的に新しいシステム開発へと進んでいくことが求められているのだと思う。個人的に、ぼんやり認識しているものの、はっきりと捉えられていなかった時代認識と課題なので、大変刺激になった。

読者モニターレビュー【 北山 匡史 様 (業界・専門分野:電力システム)】 掲載日:2026/07/21
設計のための発想力

複雑化する社会課題を解決し、新たな価値を提供する人工物やサービスを創造するために、今や「発想力」は最大の原動力である。本書は、設計やデザインにおける創造的思考のメカニズムを解き明かし、その能力をいかに高め、発揮すべきかという実践論へと落とし込んだ一冊である。
著者は発想力を「潜在的発想力」と「発想顕在化力」という二つの要素でモデル化し、発想という複雑な思考活動の本質を解き明かそうと試みる。その議論は設計工学にとどまらず、認知心理学・認知神経科学・デザイン思考など幅広い分野の知見を総合しており、学際的な視野の広さが本書の大きな魅力となっている。
本書が特に優れているのは、抽象的な理論を具体的な事例で丁寧に補っている点だ。「9点問題」「天秤分銅問題」「エレベータの待ち時間短縮」など、専門知識がなくても理解できる事例を通じて、発想の性質や思考の仕組みが生き生きと描かれる。工学系ならではの「棒立てかけ問題」などの事例が随所に織り込まれているのもよい。また、意識と無意識、論理と直感という二項対立を超えた発想のメカニズムを、脳科学の最新知見と実践者の経験則の両面から照らし合わせる試みは、従来の発想論にはない説得力をもたらしている。
実践的な「how to」としての充実度も特筆に値する。アナロジー、ブレインストーミング、KJ法、マインドマップ、TRIZといった主要な発想法を体系的に分類・解説するだけでなく、生成AIを設計ツールとして捉え、効果・効率・満足・利用状況といったユーザビリティの観点から多角的に考察している。AI技術が急速に普及する現代において、この視点は極めて時宜を得たものといえる。
さらに、発想力の涵養を目的とした教育における試行やSTEAM教育の新たな意義についても実践例に基づいて論じており、教育者にとっても示唆に富む内容となっている。設計・デザインに携わる研究者・技術者・学生はもちろん、創造的思考を深めたいあらゆる分野の読者に広く推薦できる一冊である。

読者モニターレビュー【ふくさん 様(業界・専門分野:電力システム)】 掲載日:2026/07/21
責任ある人工知能ロボット - 倫理・法・社会的観点から考える未来 -

最も印象に残ったのは,スマートロボットを単なる便利な道具として捉えるのではなく,人間の暮らしや社会の価値観を変化させる存在として考える必要がある,という指摘である.技術は中立ではなく,設計や利用の仕方を通じて,特定の世界観や政治的性質を社会に持ち込む可能性がある.そのため,完成後に問題へ対処するだけではなく,研究開発の初期段階からELSIやRRIの観点を取り入れ,人文学と工学が協力して議論する重要性がよく理解できた.
また,西洋的な技術観だけを普遍的なものとせず,各地域の文化や歴史,生活様式に根差して技術を考える「技術多様性」の発想も興味深い.後半では,生命情報・社会情報・機械情報,サイバネティクス,オートポイエーシス,HACS,メディア・アプローチなど,多くの理論が紹介される.内容はやや難解だが,人間とロボットを単純な入出力関係ではなく,社会やコミュニケーションの中で相互に影響し合うシステムとして捉えるための土台になっていると感じた.
特に,自律性を理論的自律性と実践的自律性に分ける議論は,AIやロボットに責任を負わせられるのかを考える上で重要である.本章は,技術者に対して「何を作れるか」だけでなく,「なぜ作るのか,誰の暮らしをどう変えるのか」を問い続ける姿勢の必要性を示している.生成AIが急速に普及する現在,倫理や法を専門家だけの問題にせず,開発者と利用者の双方が考えるべきだという点にも強く共感した.

読者モニターレビュー【 Mizu9673 様 (業界・専門分野:組み込みソフト)】 掲載日:2026/07/07
解いて学ぶ 材料力学のポイント

本書は理論だけを勉強しても問題が解けない自分のようなタイプに適した入門書だったと感じている。
理論をはじめに示し、その直後に関連する例題がついている。
そのため理論の理解をすぐに確認できるし、もし解けなくても何処が躓いているポイントなのかを見直しながら学習を行える
力学を学習した方ならすぐに取り掛かることができると思う。

自分は一緒に働いている設計・機構の部署の仕事の基礎を理解したくて、本書に興味を持った。
本書で挙げられている例・問題はそうした具体的なシーンをイメージすることができるものが多くあり、興味を絶やさず学習ができたと感じてる
具体的には、モータに2つのギアを付けた際の動力配分と軸へのせん断応力や、組み合わせはりの剛性である。
もちろん最初は簡単な長方形物体などを扱っているため、手も足も出ないといったことがないように工夫されている。

このように、本書は具体的な問題を通して材料力学の基礎を学習できる良き入門書となっている。
学生にとどまらず、私のような社会人で専門以外の基礎を身につけたい方にもおすすめである。

読者モニターレビュー【 mgm 様 (業界・専門分野:出版業/法学・STS)】 掲載日:2026/07/07
責任ある人工知能ロボット - 倫理・法・社会的観点から考える未来 -

■本書について
コロナ社といえば、主に理工書出版で有名だが、同社は学際分野においても質の高い書籍を多数刊行している。その中でも本書籍『責任ある人工知能ロボット――倫理・法・社会的観点から考える未来』は、現代社会におけるシステムを構成する要素の多様さに鑑み、物理モデルによる古典的制御を超克した新たなシステム・制御の体系を構築することを目指す「シリーズ システム・制御のニューフロンティア」の1冊として編まれている(p.i)。同シリーズのカテゴリD「人間社会におけるシステム・制御」は、社会科学や経済学、心理学など人文社会系の視点を取り入れた、人間社会におけるシステムの解析や設計について最新の理論を紹介することを目的としている(p.ii)。
■レビュー作成にあたって
さて、本レビュー作成者がこのような学際分野を扱う本を読むときに常に心がけているのは、どのような問題意識で、どのような執筆陣が、どのようなプロジェクトの一環で、どのような対象に、どのようなアプローチで臨んでいるかといった、いわば「外枠」を、時間をかけて確認することである。そこで、本レビューは、①レビュワーが本書収録論文の「外枠」をどのように認識したか、②感想、の2点によって主に構成される(よってネタバレ的ではない)。なお、レビュワーは非専門家であり、またレビュー依頼期間が2週間前後という短期間であったため、内容に対する誤解が多く含まれていることが考えられる。ご容赦願いたい。
■各章についての認識と感想
〇原島大輔「人の暮らしとスマートロボット」
基礎情報学の見地から、スマートロボットの社会実装の上で課題となる“ヒューマン・ファースト・イノベーション”に求められる「人間観」について考察したもの。具体的には、西垣のHACSの捉えなおしという形で行われている。ムーンショットという長期研究に相応しい広がりがある形で論が進められている。
〇河島茂生「技術倫理の構築:AIロボットを中心に」
倫理学から技術倫理、AI倫理を概観し、スマートロボットについても、筆者らの議論の中で練り上げられた(p.68)問題となりうる諸領域(8項目)について指摘するもの。8項目のうち、特に大きく取り上げられている“漸進性”については、すべてのイノベーション政策に通じるところがある。
〇成原慧「スマートロボットの規制とガバナンス」
AIRECが利用される場面を念頭に、スマートロボットの規制を考える上で問題となりうる項目をもれなく整理し、また国内外で先行する取り組みを概観した上で、多層的ガバナンスの必要性を訴えるもの。「3.3.4地域社会におけるガバナンス」「3.3.5企業におけるガバナンス」「3.3.6スマートロボットのガバナンスにおけるデザインの役割と限界」などは、特に今後議論が発展する余地を感じた。
〇板倉陽一郎「スマートロボットの法的問題」
AIRECについて、ESLI上の検討として、国内法規範に関するケーススタディを行うとともに、欧州AI Actの条文への網羅的な当てはめを行うもの。実際に起こりそうな事例を挙げて法的に検討する過程を示す書き方は独自性があり面白い。こうした形で、論者ごとのアプローチの違いを見ることができるのは、本書を読んでよかったと思える点のひとつである。
〇河井大介「AIロボットへの理解とリスク認知:日英米の比較から」
日・英・米の10代、20代の若者がAIロボットのリスクをどのように捉えているかについて、インターネットを用いた質問紙調査(2022)から得られたデータを分析したもの。この調査はムーンショット型研究開発事業【JPMJMS2031】の支援を受けて実施したものである(p.126注2)。質問調査項目については、研究代表者である高橋利枝が作成し、河井は分析を担当したとのことである(p.126注2、p.127)。興味深いのは、「5.3 AIロボットのリスク認知×理解と具体的ケース」にて、各国の若者の具体的なAI利活用場面における意識がその理解やリスク認知と併せて分析されていることである。
〇高橋利枝「ヒューマン・ファースト・イノベーション:人を幸せにするAI社会の創造に向けて」
本章は、①AIがもたらす社会的インパクトを捉える理論枠組みとしての「コミュニケーションの複雑性モデル」の紹介、②国際プロジェクト「プロジェクトGenZAI」の紹介、③若者に対する、AIロボットの社会的受容性についての国際比較調査、④「人を幸せにするAI社会」創造のための鍵概念「自己創造(self-creation)」の考察という4つの節によって構成されている。ただ、これらの各節で行われている考察の内容のいくつかは、厳密な学術的論証を経ると1冊の本になるようなテーマを含み、やや詰め込みの感が否めなかった。特に「コミュニケーションの複雑性モデル」は執筆者の独自概念であり、詳しくは引用されている著書を確認する必要があろうが、本章の説明のみでは理解が難しかった。調査については、実際の若者のコメントを多く紹介しており、将来世代への期待が感じ取れた。
■学際研究について
一般的な学際研究は、それぞれの学問的バックグラウンドを持った研究者たちが、定められた対象について、自分のフィールドに引き込んで解釈し分析するというのが一般的な構成であるように思う。しかしそのような研究は、読者としては、通読しても、それぞれの研究がバラバラに存在しており「色んなアプローチがあるのだな」以上の感想がなくなってしまう。私としては、学際研究とは、(1)それぞれの研究が、他分野の研究の入り込む余地を作っているもの、(2)それぞれの研究が、統一テーマに対する応用や他分野の研究との対話を通じて、自らのメジャーとしてきた概念や方法にフィードバックをもたらすもの、であってほしい気持ちがある。
本書については、倫理を取り扱った2章では議論が行われたことが認められるものの、他の研究の相互の対話可能性やそれぞれのメジャー分野の諸概念のフィードバックについても、今後より踏み込んでほしいと期待している。
■構成上の特徴点:注のデザインについて
本書では、本文の注と章末の注の併用という、社会科学分野の書籍では珍しい方式が使われている。これは本文が注で圧迫されると読みにくい・参考文献は一覧で見たいという読者の要望に応えた編集上の工夫であるように見受けられ、大変面白いと思う反面、本文-注間の検索性はやや劣るものとなっており、難しいところである。この方式を採用するための校正の努力も感じられ、他の読者の反応が待たれる。

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマー)】 掲載日:2026/07/07
身近な音と音波

本書は「音」全般に対する入門的書籍として、波の原理から音の諸現象まで幅広く扱っている。しかし、事典的にテーマを総ざらいしているという印象ではないところが特徴である。扱うテーマはさまざまだが、きちんと基本的な内容が厳選されている。それゆえに、ひとつひとつのテーマに対して数理もふまえた物理学の記述に踏み込むことができている。いわゆる一般書としての入門書とは毛色が異なり、全体像を概観しながらひとつひとつのテーマの物理・数理的側面へと導入する意図が読み取れる点が、教科書として好感が持てる点であると思う。

高校程度の数学と物理の知識をベースに、大学理工系の物理学への橋渡しのようなレベル感で、本書で興味を持ったらより専門的な書籍に進むという方針がはっきりしている。たとえば高校で習う断熱過程が疎密波の伝搬にも当てはまるか、という疑問から出発し、まず疎密波における変位と圧力の位相のズレを説明したうえで、熱の移動の原理から音の伝搬が断熱過程であることを導く。高校程度の知識から発想を一歩進めて、それに数理的・物理学的な基礎理論を適用する、という書き方が特徴的である。

個人的にパソコンや電子機器を使った音響合成に取り組んでいるのだが、最近はツールやプログラミング言語がリッチになった分、素朴な波の物理や振動の側面を見ずに済ませている傾向がある。パソコン上で合成した音をヘッドフォンで聴いているという状況が、音・音響の豊かな要素をかなり取りこぼしている可能性がある、と改めて感じた。

音響は波が単独で存在して成立するものではない。空気などが媒質として振動するという物理的な現象が伴い、さらにはそれを聴覚が知覚する、という多層的な成り立ちをしている。空間やメディアそのものを巻き込んで、知覚現象全体をデザインするような発想が必要である。パソコンで簡単に音が鳴る時代だからこそ、音響デザインという広い視点を持つべきであるという示唆があるように思う。

本書は、抽象度の高い基本原理を押さえることから始めることによって、工学的なテーマから生物の聴覚へ、さらに幅広い波の現象へと、無理なく接続する構成になっている。理論と現象が密接に関係している物理学の面白さも感じられる。ぜひ巻末の参考書を使って勉強を深めたいと思う。

読者モニターレビュー【 田中 裕己 様 (業界・専門分野:ソフトウェア工学)】 掲載日:2026/07/07
身近な音と音波

本書は音の物理に関する入門書として、高校物理の波動分野で習う基本的な内容の復習(音速の式、定在波、ドップラー効果など)から始めて、自然現象・工学における様々な波動現象(音階の仕組み、人の聴覚、クジラの鳴き声、超音波の医療への応用等など)が紹介されています。主に音=空気を伝わる可聴域の波動を扱っていますが、超音波や、地震波・水面波等の広い意味での波動現象がカバーされています。

本書の一番すてきな点は、短いページ数の中で多くの身近な物理現象が豊富な写真・波形グラフとともに紹介されている点であると思います。人が「ありがとう」と発声したときのスペクトログラムとか、超音波洗浄機から発する騒音のスペクトルなど、他所であまり見かけない図表が色々と掲載されており眺めているだけでも面白いです。同時に、現象の羅列というわけではなく、波動現象の観点で丁寧に解説がついており、物理好きな読者には是非お勧めしたいです。

数学については、本書ではほとんど高校数学範囲を超えないように配慮されています。例えば音のスペクトル分解との関係でフーリエ級数について言及がありますが、フーリエ級数のグラフが収束していく様子を示すに留まっています。大学生以上の読者であれば、本書で物理現象への定性的理解を養いつつ、振動・波動論や物理数学(特に、波動方程式の一般解)などの学習に接続するのも良いと思います。

読者モニターレビュー【 みと 様 (業界・専門分野:電池)】 掲載日:2026/07/02
昆虫工学 - 新しい価値を創造する「昆虫の知能」の解明と応用 -

本書は、小さな身体という限られた資源の中で驚くほど高効率に機能する昆虫の仕組みを解き明かし、その知見をロボティクスや群知能アルゴリズムなどの工学へ応用する最前線の研究を紹介した一冊である。昆虫は、哺乳類のような冗長性やロバスト性に依存するのではなく、極めて限られた計算資源やエネルギーで環境に適応する独自のシステムを進化させてきた。そのため、省電力・高効率な人工システムを設計するうえで、昆虫から学ぶ意義は非常に大きいことが、本書を通じてよく理解できた。特に印象に残った点は三つある。
第一に、「好蟻性」をはじめとする昆虫の生態に関する多くの事例である。例えば、アブラムシとアリは共生関係を築くことで知られる一方、植物の栄養状態など環境条件によってはアブラムシがアリの捕食対象となることもある。このように、生物同士の関係が固定的ではなく、環境に応じて柔軟に変化するという事例は非常に興味深く、昆虫の世界にはまだ知らない現象が数多く存在することを実感した。
第二に、スーパーコンピュータを用いてショウジョウバエなどの知覚・行動を再現しようとする「昆虫全脳シミュレーション」である。視覚や嗅覚といった複数の感覚情報が、飛翔や歩行などの行動とどのように結び付いてモデル化されるのか、大きな関心を持った。この研究は、複数の情報を統合して判断を行うマルチモーダルAIとの接点も大きく、今後のAI研究への応用可能性にも期待がもたれる。
第三に、「昆虫サイボーグ」の研究である。これは昆虫型ロボットではなく、生きた昆虫を電気的・化学的手法によって制御する技術であり、狭隘空間の探索や災害救助などへの応用が期待されている。実用化には課題も多いと思われるが、将来的に人命救助など社会課題の解決に役立つ技術へと発展することを期待したい。
本書は、昆虫の巧妙な仕組みを知ることから始まり、それが次世代のAIやロボティクス、機械設計へどのようにつながっていくのかを考えるきっかけを与えてくれる。

読者モニターレビュー【 N/M 様 (業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】 掲載日:2026/06/25
責任ある人工知能ロボット - 倫理・法・社会的観点から考える未来 -

本書は「シリーズ システム・制御のニューフロンティア」のカテゴリーD(人間社会におけるシステム・制御)の2巻目に位置する書籍である.本巻では,人工知能ロボットの技術的な内容をさまざまな理論や数式を用いた数学モデルを扱うのではなく,近い将来,人工知能ロボットを人間社会に導入する際に関わりが出てくるであろう倫理や法など社会的観点からの解説がなされている.

1章では,人間の暮らしとスマートロボットとの関係性について述べられている.ただ,私自身の読解力の問題もあり大変恐縮だが,図や表,箇条書きによる整理がなく,何ページにもわたって文章が延々と続くため,冗長で論点がやや掴みにくかった,というのが正直な感想である.まるで学生時代の現代文の評論文を読んでいるかのような錯覚さえ覚えた.

まえがきの執筆分担や巻末を拝見すると,著者の方々は理系ではなく文系寄りのようで,急に登場するカタカナ用語や海外の思想家や学者が随所に記述されていることと,一部のページの脚注が全体の3分の2くらいもあり,所謂,文系のお作法(分かっていることは全部,詳細に文献をあげて書く)みたいなものが,残念ながら私には合わなかったようだ.

4章では,スマートロボットであるAIRECが将来,人間社会に浸透していく際に必要な法的な問題についての考察がなされている.

具体的には,AIRECのようなスマートロボットが広く国内・海外問わず流通し,利活用されていく際を想定したケーススタディを,主に日本のAI法と欧州AI法(AI Act)に当てはめて,さまざまな観点から考えうる法的な問題点の検討がなされている.

単にスマートロボットを導入すると便利だといっても,2章や3章にある倫理や規制・ガバナンス,そして,4章にある法的な問題,まえがきや6章にある「ヒューマン・ファースト・イノベーション」などといった,現実的な問題,法整備など解決しないといけないことや,考慮するべき課題がまだまだ山積みであるという認識が少しでも得られたことが本書を読んでの大きな収穫である.

読者モニターレビュー【 namamugi 様 (業界・専門分野:電気電子工学)】 掲載日:2026/06/24
責任ある人工知能ロボット - 倫理・法・社会的観点から考える未来 -

【具体例を用いた実践的な内容で分かりやすい一冊】
工学を学ぶ学生として、AIを利用したものづくりにおいて、どのような点に気をつけるべきか、ということが知りたくて読み始めました。倫理学の本と聞くと抽象的で分かりにくい、浮世離れしたイメージを抱くかもしれませんが、本書は具体的な法令やケーススタディを用いた、非常に実践的な内容となっています。この本の読者層としては大学院生も想定されているようで、確かに高度な部分も多いのですが、決して理解できない訳ではなく、むしろ具体例を交えてかなり分かりやすく書いてくれているように感じました。
特に面白かったのが4章で、スマートロボット「AIREC」を元に、起こりうる事例を(1)物理的リスク、(2)心理的リスク、(3)プライバシーとセキュリティのリスク、(4)環境リスクの4つの視点から分析していきます。実際の日本の法律を挙げながら、具体的な数値・データを元に、スマートロボットの製造においてどのような点に留意すべきかということを紐解いていくのは、非常に実践的で参考になりました。
これからの時代、AI技術が進歩していくなかで、工学やものづくりに携わる人がそれらに関わらずにいることはほとんど不可能だと思います。一度、本書のような本で工学の倫理について考えておくことは、ある種の責任ともいえるのではないでしょうか。

読者モニターレビュー【 たーぼー 様(業界・専門分野:自動車部品業界・物性物理学,プラズマ物理学)】 掲載日:2026/06/24
半導体デバイス基礎の基礎

本書は,半導体デバイスを初めて学ぶ学生や若手技術者だけでなく,専門外の研究者・開発者が半導体技術の全体像を把握するための優れた入門書である。私は車載システム分野において研究開発に従事しているが,近年の自動車産業ではAI,センシング,通信,電動化技術の進展に伴い,半導体への理解は不可欠になっている。本書は,そのような背景を持つ技術者にとって,半導体物理からデバイス動作までを体系的に再確認できる内容となっている。特に,pn接合,ダイオード,トランジスタ,MOSFETなどの基本デバイスについて,数式だけに依存せず物理現象の意味を重視して解説している点が優れている。大学講義や企業内技術教育の教材としても活用しやすく,「なぜその特性が現れるのか」を理解しながら読み進めることができる。また,自動車業界では近年,パワー半導体や車載SoC,高性能コンピューティングプラットフォームの重要性が急速に高まっている。本書は最先端技術を深く扱うものではないが,それらを理解するための基礎体力を養うという意味で大きな価値がある。異分野連携や新規事業開発に携わる研究者にとっても,半導体技術者との共通言語を獲得するための良書である。

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