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書店様向けレビュー

読者モニターレビュー【 竹内 朗 様 (業界・専門分野:Human speech perception, Speech quality evaluation, Automatic speech recognition, Musical instrument acoustics, 3D audio)】 掲載日:2026/10/02
音声器官のメカニズムとシミュレーション - 生体計測とモデル化 -

本書は、人間の発声メカニズムについての専門書であるが、副題にもあるように、特に「測定」と「シミュレーション」にフォーカスした内容となっている。私の研究領域では主に音声知覚に取り組んでいるため、今回はそのメカニズムを詳しく学びたいと思ったことが、本書を手に取ったきっかけである。

全体を通して感じたことは、かなり「実践的」だということだ。測定方法の手順や使用する器具などが詳細に記されており、初学者でも順を追って理解しやすい。また、高精度な測定には高価な装置が必要になることも多いが、本書では複雑で高精度な手法だけではなく、より簡易的な手法についても取り上げられており、それぞれがこの研究分野においてどの程度の位置づけにあるのかが体系的に記述されている。全体の半分はモデリングやシミュレーションについての説明であるが、測定とシミュレーションそれぞれの強みや弱みにも言及されているため、どのような手順で実験を組み立てていくのがよいかを考える上でも、大変参考になった。

また、特筆すべき点として、図表の多さが挙げられる。ほとんどの見開きページに文章を補足する図表が掲載されている。特に、普段実際に目にすることのない発声器官の内部形状や、そもそも目に見えない音声の特徴を可視化し、その理解を助ける上で、これらの図表は大きな役割を果たしている。私自身、普段の研究でも、自分が計測・可視化したもののグラフが、本当に自分の求めているものを表しているのかを疑問に思うことがよくある。そうした際に、本書に惜しみなく掲載されている図を参考にできることは、研究を進める上で大きなアドバンテージだと言えるだろう。

構成としては、第1章が概説、2・4章がそれぞれ計測に関する記述で、3・5章がそれぞれに対応するシミュレーションとなっている。そのため、それぞれの章が独立性を保ちつつ、2・3章、4・5章が互いに補い合う構成になっている。特にシミュレーションの章でも計測に関する言及や比較があるため、実際の生体構造に基づいたシミュレーションについても理解を深めることができる。この点は初学者だけでなく、シミュレーションには慣れているものの計測の経験に乏しい研究者にとっても、知識を再確認する助けになるのではないだろうか。第5章の最後では、昨今とても注目されている機械学習についても触れられており、幅広い範囲のメソドロジーをぎゅっと凝縮した一冊になっている。

人間の音声という、身近でありながら観察することの難しいトピックではあるが、本書を通して体系的に理解することで、明日から自分の声にもっと興味を持てるようになるのではないだろうか。

読者モニターレビュー【 Mizu9673 様 (業界・専門分野:組み込み)】 掲載日:2026/09/25
音声器官のメカニズムとシミュレーション - 生体計測とモデル化 -

本書は音声器官、音の生成に関する幅広い事柄をカバーした手引書である。
解剖学的な初歩から始まり、実験/測定の方法、シミュレーションまで、深層学習など近年の成果を交えて解説がなされている。

特に印象に残った点として以下の2点がある
1点目は第一章に記載されている、人が発声をする機構の解説である。
恥ずかしながら、私は本書を読むまで発声時の喉や筋肉、舌の動きを知らなかったが、
図解付きで解説されており、大まかな原理を知ることができた。
限られた紙面で丁寧に解説されており、私のような初学者でもこの後に必要な知識を得ることができた。

2点目は第二章、五章に記載されているシミュレーションである。
ここでは舌の材料力学的なモデルや音声の音響モデル、子音の流体力学モデル、
深層学習による発声時の声門のモデルなどが解説されている。
私は材料力学や流体力学についてあまり詳しくはないが、実際のモデルへの応用例を知ることができ、
それらの分野を学ぶモチベーションが高まったのを感じた。

まとめると、本書は広範囲の音声に関する内容をまとめた研究への入門書といえる
すべての前提知識を持つのは大変だと思うので、本書を読み進めながら周辺分野を学ぶといった使い方が良いのではと個人的に思う。
そういう意味で長期間お世話になる本だと思う。

読者モニターレビュー【 Odachan 様 (業界・専門分野:機械工学専攻)】 掲載日:2026/09/25
機械工学のための数理モデリングと現象解析入門

本書は理工系の大学生に向けた、機械工学の研究に用いる応用数学の基礎に関する教科書です。数学を工学の道具として利用することに慣れていない学生にも理解できるよう、基礎的な事項が丁寧に解説されています。

1章では数理モデルという概念について述べられており、用語の説明や具体例が充実しているため、初学者でもつまずくことなく学習を進められます。2章では、数理モデルの共通の表現である物理量について学びます。これらを踏まえた3章では、現象をモデル化するための偏微分方程式の物理的意味と解法を扱っており、基礎的な用語や演算子に関する丁寧な記述からは、数学が苦手な学生に対する配慮が感じられます。さらに4・5章では発展的な内容として波動方程式、熱伝導・拡散方程式、現象の安定性を取り上げ、最後の6章ではプログラミングコードを例示しながら、コンピュータシミュレーションを用いた解析方法を分かりやすく説明しています。

本書を読むことで、これまで座学の数学と実際の専門科目との間に感じていた壁が解消され、機械工学における「数学の役割」を再認識できます。これから機械工学を学ぶ理工系の学生にとって、大きな助けとなる一冊であると確信しています。

読者モニターレビュー【 yk 様 (業界・専門分野:神経科学・臨床医療・宇宙物理)】 掲載日:2026/09/25
広域プラズマ科学入門 - プラズマ特性・診断の基礎と地上から宇宙までの多面的応用展開 -

物理学者によるプラズマ物理の入門書であり、プラズマの生成と制御を支える原理を簡潔に概説した一冊である。プラズマとは一般に荷電粒子から成る多成分系を指すが、今日これは人工的に生成され、工学的に制御されている。本書はその基礎から応用までを一望できるよう構成されている。

プラズマを制御する―プラズマを操作し欲しい性質や挙動を実現させる―には、その状態を観測により推定する必要がある。これがプラズマ診断であるが、その方法としては本書に詳解されているように様々なものが提案されている。巧みなアイデアばかりで眺めるだけでも興味深いが、当然、どの方法を見てもプラズマ物理の理解が不可欠である。

本書ではボルツマン方程式を基礎に磁気流体方程式を導出し、プラズマ生成・制御に不可欠な性質を体系的に調べている。ボトムアップ的な理解を望む読者にとっては親切な構成である。ただ、未定義の記号を使用したり仮定が明言されていなかったりする箇所もあり、本分野の初学者は行間を埋めるのにやや忍耐を要するだろう。

読者層としてはプラズマを専門とする物理・工学の学生や研究者が想定されるが、個人的には物理の様々な分野の研究者に読んでほしい。プラズマ物理はこれまで、特に宇宙物理との相互作用が盛んであり続けてきた。恒星や高エネルギー天体現象の物理、コンパクト星におけるイオン結晶や圧力電離など枚挙に暇がない。いま、宇宙物理の研究者なら本書をどう読むか。境界領域において、新たな視点を提供しうる一冊であると思う。

読者モニターレビュー【 たか 様 (業界・専門分野:制御工学(産業応用))】 掲載日:2026/09/25
機械工学のための数理モデリングと現象解析入門

物理現象のモデリングは、シミュレーションや制御系の設計など、多くの場面で必要となる手法である。近年、デジタルツインやサイバーフィジカルなどの分野が注目されているように、学術分野の研究者のみならず、産業界の大多数の人が触れたことがあるであろう。このモデリングには、物理現象や対象システムの挙動を数式で表現するための数学的知識が必須である。本書は、それに必要な応用数学の基礎を、実例を交えて学ぶことのできる参考書である。

第1章は、「数理モデリングとは何か」という章題で始まる。哲学的な内容もあるが、リザバーコンピューティングやAIなど最近の話題にも触れられており、「数理モデルとは何か」という知識を俯瞰的に習得できる。第3章では、以降の内容の準備的な内容として、偏微分方程式の基礎的な数学知識が述べられる。丁寧な数式展開の説明、豊富な例題と解説があり、基礎的な内容から復習したい社会人技術者にもおすすめである。こうした準備を経て、第4章以降にて発展方程式や力学の安定性など、モデリングの内容に展開されていく。制御工学の分野でよく目にする自律系や、波動方程式、熱伝導方程式のみならず、例題4.1で触れられるSIRモデルなど、多くの物理現象を例にして、どのようにモデルを構成していくかが丁寧に論述されている。また、安定性についても、説明に沿った章構成や丁寧な解説がなされており、スムーズに読み進めることができた。

本書は、モデリングに興味があり、数学的知識を習得したい学生や社会人技術者に薦めたいと思う。前半の数学的準備を踏まえて、いくつもの例を交えながらモデリングや現象解析が説明される構成となっているため、知識を習得しつつ、この数学的知識がどのようにモデリングへ結び付くのかと理解を深めながら読み進めることができるであろう。

読者モニターレビュー【 まりりん 様 (業界・専門分野:教育関係 】 掲載日:2026/09/25
よくわかるサービスの科学

大学で心理学を学んだ私にとっては、心理学用語の懐かしさを感じながら拝見致しました。心理学を知らない心理学初心者の方にとっては、第2章人間科学とは?心理学とは?そして、認知心理学の例といったように例が挙げられておりますので、まずは、第2章を読んだ上で、1章・3~8章を読むと内容が頭に入ってくると思います。これからの時代、人間科学とAIの組み合わせの時代がそこまで来ているのだと、学びになる1冊に出会うことが出来ました。ぜひ、サービス業に関わる皆さんに、読んでいただきたい1冊でございます!

読者モニターレビュー【 田中 裕己 様 (業界・専門分野:ソフトウェア工学)】 掲載日:2026/09/25
ディペンダビリティ保証入門 - 安全分析・MBSE・アシュアランスケースによる統合アプローチ -

本書では、安全で信頼性の高いシステムを構築するために用いられる安全性解析手法、モデリング手法について解説されています。最もシンプルなFTA(Fault Tree Analysis)から始まり、システム内外での相互作用を含めたより複雑なシステムの解析手法へと順を追って丁寧に解説されています。自動車の例が多いですが、ハードウェア/ソフトウェア、システム規模によらない普遍的手法の解説に重点が置かれているのが特徴です(そのため、全体通して抽象度はやや高いです)。

評者の職域であるソフトウェア開発・運用においても、直接的なエラー波及関係の分析(例:関数Aの出力に誤りがあり、それを受け取った関数Bにおいて不具合が発生)にとどまらず、原因個所を含むより広い範囲を敷衍して「どのような状態であるべきか」「状態の不整合を起こしうる入力とは何か」といった分析を行うことが重要であると言われています。経験的にもそのような分析が後々良い結果(=バグが少なく、見通しも良く、開発しやすいシステム)をもたらすと感じていましたが、本書によってその理論的な裏付けが得られたように思いました。

本書によって安全なシステムを設計するための一般的思考法を身に着ければ、(自動車や航空機のみならず)日常のより小規模なシステム設計や、自分自身の仕事のクォリティ改善にも大きく役立つと思います。

読者モニターレビュー【 澁谷 喬之 様 (業界・専門分野:情報工学)】 掲載日:2026/09/25
よくわかるサービスの科学

2000年代にIBMアルマデン研究所が提唱したSSME(Services Science, Management & Engineering)を契機に、サービスを科学的に捉えようとするサービスサイエンスが注目を集めてきた。本書は、サービスを「人間に対して、人間もしくは人間がつくり上げたシステムによって行われるもの」と定義し、AIとAHP(階層分析法)をいずれも人間の価値観や意思決定力を補強する「賢いツール」と位置づけて、この領域に取り組んだ一冊である。

前半では、サービスサイエンスの定義と歴史に続いて、その基盤となる心理学と経済学の観点が整理される。中盤では、まずAHPを住宅設計の設例と健診施設の完成後評価で、次にAIを店舗の動線解析例で明快に解説する。後半の中心は、サービスサイエンス・AI・AHPを三角形で結ぶ「トライアングルインタフェース」である。著者は、AIの解をAHPで価値観認定する、AHPの解をAIでシミュレーションする、AIにAHPを包含させる、という三つのルートを示し、それらを価値が循環する事業の工程に組み込む。最終章では、AI同士が連携・循環する「スマートサイエンス社会」の到来を展望している。

本書の美点は、AHPの手順を、一対比較から幾何平均による重要度の算出、整合度(CI)の確認まで、表計算ソフトで追える形で丁寧に示した点にある。設例の数値は再計算でき、読者は手を動かしながら理解できる。さらに、AIとAHPを対比し、AHPは計算過程が見えるため重みづけの根拠を把握できると指摘する点は、AIの判断の説明可能性が問われる現在、示唆に富む。事例も住宅、医療施設、小売店舗、観光、地方の製造業と幅広い。とりわけ動線解析では、二つの店舗で計900人近い来店客の動線を実測したデータが用いられており、理論の紹介にとどまらない手触りがある。心理学や経済学の知見を数理的手法と並べて論じ、人間理解の重要性を説く姿勢も、工学的手法の解説書としては特色といえる。各章末のまとめや運用のためのチェックリストは、社内勉強会の教材としても使いやすい。そして何より、抽象的になりがちなサービスサイエンスに、AIとAHPという具体的な分析手法を結びつけようとする問題提起に意義がある。

一方、その結びつきを裏づける実例には物足りなさが残る。健診施設の評価は各課の責任者10名の回答に基づいており、受診者自身の評価を含まない。動線解析も、実測データに基づきながら機能の紹介が中心で、予測精度や導入効果の検証は本書の中では示されていない。また、本書の要であるAIとAHPの統合は三つのルートとして図示されるものの、事例による検証はなく、著者自身も今後の課題としている。動線解析で指摘される経営者視点と消費者視点の評価関数の相反は、まさにAHPで重みづけできる場面であり、今後の展開に期待したい。

総じて、本書はAHPの実践的な入門書として、また、AIとAHPの統合という今後の課題を示した構想の書として読むことができる。サービスの改善に分析手法を取り入れたい企業や行政の実務家に勧めたい。

読者モニターレビュー【 ビクトール 様 (業界・専門分野:機械工学)】 掲載日:2026/09/11
コンピュータグラフィックス技術の基礎と応用

コンピュータグラフィックスの概要が詳細に載っており、それらに用いられる技術が多数掲載されていた。特に、技術の概要や用途を文章中心で丁寧に説明されていた。用いられる数式の量は他の情報系の本と比較して少なめであり、線形代数や微分積分の知識さえあればある程度理解して読み進めることができる印象を受けた。本書後半にはVRをはじめとした発展的な内容も書かれていた。そのため、コンピュータグラフィックスの初学者からある程度勉強していて発展的な内容を掴みたい人まで幅広く読みやすい本であると感じた。

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマー)】 掲載日:2026/09/11
音声器官のメカニズムとシミュレーション - 生体計測とモデル化 -

本書は音声器官を計測し、シミュレートするための、具体的な手法を体系的にまとめた書籍である。技術を体系的に次代へ継承する際に、書籍が持ちうる役割は、上質な体系化を担うことである(「発刊にあたって」)という宣言の通り、「計測」「シミュレート」を軸に先行研究を体系的にまとめている。

本書は「メソッド」であるという自認(「発刊にあたって」)の通り、2章以降丁寧に方法が列挙されていく。ただ列挙するのではなく、体系的に、という点がポイントである。では、どのような観点から情報がまとめられているといえるか。軸となるのが、物理的メカニズムへの着目によって、生理学的にではなく物理的に発声のメカニズムを解明するという方法論的な選択を経た問いである。物理学的にアプローチするために、物理学の最も基本的なアプローチである「実験・観察」と「理論(シミュレーション)による説明」(「まえがき」)で情報を整理する。

この体系化の方針がシンプルかつ一貫していることによる、単なるレファレンスとは違う、体系化ということの強さがある。また、私は個人的に理論中心の研究しかしてこなかったので、物理学の実験・観察と理論の現場を垣間見て自身の研究スタイルと対比するのも興味深い。

たとえば、まずはMRIで口腔内の視覚的イメージを取得して、点成分の変動を記録する。その後、それを数理的にモデル化・シミュレートする。そして、数理的なシミュレーション結果をもとに、物理的な模型を作って実験する。実験器具のイラストがいろいろと掲載されていて、抽象的な数理が具体的な形を取るところに面白みを感じる。

このような物理学の基本的なアプローチを音声器官のメカニズムに適用して、その詳細を解明するというのが本書の問いである。あくまでも物理モデルが基本なので、機械学習による音声合成については副次的な扱いとなっている。

「上質な体系化」とはどういうことだろうか、と思って読んでみたが、本書の体系化の「上質さ」は、その軸が物理学そのものに内在しており、外から与えられたものではないという点に由来する。また、機械学習を主としては取り上げないという判断からも、著者たちの体系化の志向が読み取れる。

計測環境の選定から実験・観察の実際を経て、モデル化・シミュレーション、そして模型の作成まで、一連の工程が辿れるのは、上記の軸に沿って全工程が成立しているということであり、その意味でも本書の体系化は「上質」だといえる。たしかにこれは、書籍が他のメディアで代替しづらい部分を担っているといえるかもしれない。

読者モニターレビュー【 mochi 様 (業界・専門分野:IT)】 掲載日:2026/09/09
昆虫工学 - 新しい価値を創造する「昆虫の知能」の解明と応用 -

本書は、バイオミメティクスのように昆虫や植物の機能を「模倣する」のではなく、昆虫が持つ機能そのものをシステムとして捉え直し、再現・応用することを目指す新分野「昆虫工学」の全体像を示す一冊である。

本書でとりわけ印象に残ったのは、「第1部 基礎編」において、昆虫の行動から神経基盤、感覚器に至るまでを、全体の半分以上という紙幅を割いて丁寧に解説している点である。概説書にありがちな最新の研究成果の紹介にとどまらず、昆虫そのものが持つ行動の魅力や、感覚器の構造・機能、情報処理の仕組みにまで踏み込んでおり、まえがきで投げかけられる「なぜいま、昆虫なのか」という問いに応えるかのように、昆虫が秘める可能性を読者に感じさせる構成になっている。

本書が意図するところとは異なるかもしれないが、昆虫の神経回路について詳しく学びたい読者にとっても、格好の手引きとなるだろう。

一点惜しまれるのは、昆虫を用いた研究がはらむ倫理的な課題について、もう少し言及がほしかったところである。特に近年では、行動実験や神経基盤の研究が進むにつれ、哺乳類などと同様に昆虫にも情動と呼びうる状態が存在するのではないか、という議論も見られるようになってきた。本書は昆虫の行動や神経系をこれほど丁寧に描き出しているだけに、こうした昆虫の「内的状態」をめぐる知見も踏まえたうえで、研究対象としての昆虫をどう位置づけるかという倫理的な視点まで踏み込んだ議論を読みたかったように感じる。

読者モニターレビュー【 かねまる 様 (業界・専門分野:化学・製造技術)】 掲載日:2026/09/09
防錆油 - 基礎から実用まで -

防錆油については、金属表面に油膜を形成して錆を防ぐものという程度の認識でしたが、本書を読んで、その性能が塗布後のさまざまな条件に左右されることが印象に残りました。
特に興味深かったのが、4.4節で紹介されている油膜の薄膜化です。防錆油は部品上で流れ落ちるだけでなく、焼結材料では気孔内部へ浸透し、さらに包装紙との接触によっても油膜が失われます。紹介されている試験では、鋼板に塗布した防錆油の70~90%が紙材へ移着するという結果もあり、「防錆油を塗ったから大丈夫」という単純なものではないことがよく分かりました。他のページも含め、このようなさまざまな事象を実験結果や数値をもとに定量的に示している点も、本書の魅力だと感じました。
防錆油の成分や種類、作用機構といった基礎から、洗浄などの前工程、保管・包装、さらに溶接や熱処理などの後工程まで扱われています。防錆を製造工程全体で考えるための視点が得られる一冊でした。

読者モニターレビュー【 ルミエル 様 (業界・専門分野:Media technology)】 掲載日:2026/09/01
ハプティクス

本書は、感覚としての触覚と技術としての触覚を横断的に扱い、29名の研究者が基礎・計測・提示・応用の4部構成で体系的に解説する一冊である。

特に印象的だったのは2.5節「触覚の言葉」である。オノマトペによる触感の分布図は、視覚・聴覚のみで素材感を伝えるのではなく、日本語特有の「ざらざら」「もちもち」といった言語表現を通じて触感を想起・理解できることを示しており、人間ならではの感覚統合の在り方として示唆に富む。 VRの触覚設計は工学的な信号生成に偏りがちだが、言語的カテゴリー化がユーザー理解にどう介在するかという視点は、インタフェース設計やUXにも応用可能な着想である。

また第21章「触覚をエンタテインメントにする」も読み応えがある。iPhoneの振動フィードバックやPS5 DualSense、全身触覚デバイスTactSuit Pro、非装着型のHaptic Floorなど、身近な民生機器から美術館・車載空間の応用事例までを"見る・遊ぶ・巡る"という軸で整理しており、日常に溶け込んだハプティクスを学術的文脈に接続し直す構成は、VRコンテンツの没入感設計における実務的な参考になる。

一方、21章末のコラム「ハプティクスのマーケットとELSI」は倫理的論点に触れているものの、擬似触覚が悪用され得るリスク(心理操作、依存誘発、同意なき感覚介入等)への踏み込みはやや控えめな印象である。触覚は視覚・聴覚以上に無意識下で作用しうる感覚であるだけに、次版以降は応用章によりページを割いた倫理的議論を期待したい。

構成の明快さや620件超に及ぶ参考文献の充実度も評価できる。参考文献にはDOIが付され、電子書籍版ではクリック可能なリンクになっているため、初学者が一次資料へスムーズに接続できる設計も好ましい。ハプティクス全般を扱う総論書であるからこそ、VRデバイス(HMD・コントローラ等)に特化した実装事例を深掘りする続刊を期待したい。分野の見取り図として、書棚に置く価値のある一冊である。

読者モニターレビュー【 向日葵 様 (業界・専門分野:統計物理学、分子動力学)】 掲載日:2026/09/01
固体材料の強度と物性評価のための 分子動力学法入門

本書の特徴の一つは、分子動力学(MD)法の産業応用を意識した視点が盛り込まれ、固体材料の物性評価などにおいて、MDが、伝統的な測定手法では得られない優れた潜在的優位性(ポテンシャル)をなし得ることが意欲的に述べられている、点にある。この観点から見て、本書は、当該専門分野のMD入門書としてのみならず、研究者及び高度技術者の標準的な教材としても、他の類似の専門書にないオンリーワン的な地位を有している。MD法はあらゆる分野で手軽に用いられる汎用性がある反面、その実効性と信頼性などに関して批判的な評価の事実を述べた専門書がほとんど見当たらない現状において、本書のような教材は真に有意義である。MDが産業応用分野においても高い評価を得るにはこうした地道な実践の積み重ねが唯一の王道である、と考える。本書で、MDは「異端」?と書かれている箇所は、この分野のMDの限界を適切に述べたものであると同時に、未来への戦略的哲学をも述べているとも推察でき、興味深い。

読者モニターレビュー【 N/M 様 (業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】 掲載日:2026/08/24
ハプティクス

本書は「バーチャルリアリティ学ライブラリ」の4巻目に位置する書籍である.本巻では,ハプティクス (Haptics; 触覚(学)) についての解説がなされている.

まず本巻は,ハプティクスに関する技術や応用研究の事例が多く記載されている.さらに,同シリーズの他の巻とは異なり,内容のカタマリごとに「部」という単位で分けられている.第Ⅰ部 触覚の基礎,第Ⅱ部 触覚の計測,第Ⅲ部 触覚の提示,第Ⅳ部 触覚の応用等のように分かれているのも特徴的である.

なお第Ⅱ部〜第Ⅳ部に関しては,それぞれの「部」内の最初の章で概論的に内容を説明しつつ,次章以降に詳細を述べていくというスタイルを採用している点が特徴的である.まずは概論の章を読み,その後で興味が湧いた章を読むという読書スタイルが良いのではないかと,私自身は感じられた.

今回のレビュにあたり,第1章,第15章,第16章,第18章〜第21章を中心に拝読した.その中で気になった点をいくつか以下に述べていく.

第1章では,触覚の基礎として,皮膚からの刺激がどのように神経系へ伝わるかという仕組みが生理学的な観点から丁寧に解説されている.高等学校の教科である「生物」で習う感覚器や神経伝達の知識と直接つながる内容となっており,高校生や大学の学部生の入門としても「生物」の発展としてスムーズに入り込める内容ではないかと思われる.

第16章,第18章〜第20章では,触感の設計,伝送,変容,触覚の代行等の応用的な事例が紹介されている.これらの章全体を通して,本シリーズは「バーチャルリアリティ学ライブラリ」とあることもあり,VRの分野だけだと思われがちだが,実は医療や介護等の分野での研究事例もあり,新たな知見と驚きの多い内容であった.

第21章では,触覚をエンタテイメントするという,エンタメ領域での応用事例について述べられている.その中でもiPhoneでのハプティクスについては,日常的に位置情報ゲームアプリでのモンスターとのエンカウント(遭遇)時にブルッと震えて触覚に訴えかける,あの仕組みこそがまさにそれであるということを改めて実感させられた.

引用・参考文献も豊富で,全体で620もの膨大な量が挙げられており,その多くが学術論文で占められている.こういったことから学術的にも価値が高く,ハプティクス分野のライブラリ・辞書のような活用方法もできるであろうと思われる.

今後も本シリーズでは,拡張認知インタフェースや3Dユーザインタフェース,メタバース等の多様なテーマで続刊が予定されているとのことだが,これからの展開がますます楽しみになるラインナップである.

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマー)】 掲載日:2026/08/19
ハプティクス

本書はハプティクスについての体系的な概説書である。明確な構成と、個々のテーマへの具体的な記述が丁寧で、読んでいておもしろいと思う箇所がたくさんあった。また、数式に頼るところが少なく、自然言語での記述に重点が置かれているのも、この種の書籍としては特徴的だと思う。

第20章で感覚代行が取り上げられている。感覚代行は、「失われた、または機能が低下した感覚に対して、残存する別のモダリティを用いて情報を補完する」ものである(p.306)。触覚を用いた感覚代行の代表例は点字である。最近は電子化が進んでいて、センサーで取得した情報から特徴量を抽出し、それを触覚で知覚可能な信号に変換して、触覚ディスプレイで出力する、という形でモデル化できる。この形であれば、原理的にはあらゆる情報を触覚で感覚代行可能とも考えられる。ただし、代行された信号は、しばしば認知的な努力を要する「読み取り」に留まって、母国語的なモダリティのように透明化した知覚そのものにはなりきらないという指摘がある。

感覚モダリティは相互に影響を及ぼし合い、別のモダリティの入力が影響して他のモダリティの入力自体が変容するような、クロスモーダル性を持ったものである(p.55)。それゆえに、直感的には感覚は互いに分かちがたく、漠然とした総体として捉えないといけないような気がするものでもある。

また、クロスモーダル性を持った総体的なものである感覚モダリティをどのように数理的に表現するかというと、単純に各モダリティを加算して考えるのではなく、不確実性を取り入れて考える。つまり、各モダリティが確率分布として表現されると仮定して、分散に重み付けすることで統合された知覚を決定する(p.62)。

この相互に複雑に影響を及ぼし合っているという在り方(クロスモーダル性)と、なにかが欠けても他のなにかが補いうるという在り方(感覚代行)には、共通の背景がある。つまり、上記のような不確実性を取り入れた統合の考え方である。知覚を、複数のノイズを含むチャネルから、共通の外界の状態を推定すること、と考える。その推定の標的は個々のチャネルそのものではなく、その背後にある共有された外界の状態である。それゆえに、クロスモーダルも感覚代行も発生しうる。

個人的に興味深かったのは、2.5節の「触覚の言葉」である。感覚や情動を言葉で表現するには、カテゴリー化しなければならない。それによって個々の感覚が客観的に共有しうるという側面と、そうするとその感覚はすでに事前に想定された基準に従うものになるという側面が両方ある(p.77)。こういう話題は、言語表現に興味がある者としては大変興味深い。

感覚は生理学だけに帰せられるものではなく、心理学とも深く関係している。そして、それを言語的に表現するという話になるといっそう関係する範囲が広がる。本書はハプティクスに関する書籍だが、感覚の在り方への丁寧な解説を通じて、感覚全般をどう捉えるかという問いへと自然に関心がつながっていくものだった。

読者モニターレビュー【 木下 喬史 様 (業界・専門分野:データサイエンス)】 掲載日:2026/08/10
Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

推薦システムやNLPを実務で扱ってきた立場から読んだが、Web基盤から機械学習、自然言語処理、情報検索・推薦、そしてLLMまでを一冊で通す構成が非常に良い。各分野が独立した章になっているので、興味のあるところから読める。特に推薦の章は、協調フィルタリングからMF・BPR・FM、さらにGNNや時系列まで押さえており、実装の勘所を思い出しながら読み進められた。個々の手法を深掘りする本は多いが、Webサービスを支える技術群を俯瞰し、それぞれの背後にある考え方を地続きで捉えさせてくれる点に価値がある。

読者モニターレビュー【 いたち 様 (業界・専門分野:評価装置メーカー)】 掲載日:2026/08/04
Webテクノロジー - 自然言語処理・検索・推薦・大規模言語モデル -

本書のタイトルはWebテクノロジーですので、Webの内容が90%以上占めるかと思ったのですが、サブタイトルにあるように近年話題のAIが多数載っております。
Chat GPTから国民に広く知れ渡っていると思っておりますが、これらもWebを介してユーザーが利用するので、今までの私のWebという認識が変わって、面白かったです。また、内容は幅広く。分かりやすく。でした。説明部分に多々イラストを記載してくれており、よかったです。
本書は、ITパスポートを勉強している方や、AIを専門とする方に幅広く進められる内容になっていると思います。また、私のようにWebとAIが離れた分野として固まっているような人にも、ぜひ読んで頂きたいなと思う一冊でした。

読者モニターレビュー【 いたち 様 (業界・専門分野:評価装置メーカー)】 掲載日:2026/08/04
五訂版 放射線機器学(Ⅰ) - X線撮影機器・診療画像機器 -

本書は、理系だがX線を対して知らない私にも分かりやすく記載されている内容だと思います。
まず、X線装置を装置単位ごとに分け、1つずつ解説があり飲み込みやすい記載順で書かれている内容だと思います。また、実際のX線装置の写真や、撮像した写真を多種記載されており、読んだ内容と実際の使い方の結びつきが分かりやすくてよかったと思います。
個人的には、序盤の回路図まで落とし込んで、どう動くのかが記載されている部分が面白いと思いました。
私は医療系ではないですが、面白く拝読させていただけたので、専門とする学生さん以外にも、おすすめできる本だと思います。

読者モニターレビュー【 たーぼー 様 (業界・専門分野:自動車部品業界・物性物理学,プラズマ物理学)】 掲載日:2026/08/04
新 医用材料工学 - バイオマテリアルの基礎からDDS・再生医療への応用まで -

医用材料の基礎から最新の応用技術までを体系的に学べる一冊です。医用金属、セラミックス、高分子材料といった基礎事項に加え、生体適合性、ドラッグデリバリーシステム(DDS)、再生医療など、近年重要性が高まるテーマが分かりやすく整理されており、医療と工学の接点を俯瞰しながら理解することができます。各分野の基礎理論と実際の応用がバランスよく解説されているため、学生や大学院生はもちろん、企業で医療・ヘルスケア分野の研究開発や新規事業に携わる技術者にとっても有益な内容です。専門書でありながら全体の構成が分かりやすく、医用材料工学をこれから学ぶ方から、知識を体系的に整理したい実務者まで幅広く推薦できる良書です。

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