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書店様向けレビュー
数理工学のための線形代数 - 線形代数の新しい地平 -
本書の特徴を、一言でいうならば、「線形代数を学んだ学部生が、線形代数の理解を深めるために、次に学ぶための本」と言えます。
近年のデータサイエンスやAIの発展に伴い、線形代数の重要性は高まる一方です。しかしながら、学部で線形代数を学んだ学生が、その重要性に気づけない理由の一つに、具体的な応用イメージの欠如があると評者は考えています。その中にあって、本書は、筆者の研究を含む「数理工学」という具体的な事例を取り上げつつ、具体的な事例に取り組んだ良書と言えます。(適度に抽象的な概念も入っているも良いですね。)
そのうえで、是非、読者にお勧めなのは「演習問題」に取り組むことです。演習問題には、少しアドバンスドな話題も含めて掲載されており、線形代数の広がりを感じるものが多く掲載されています。評者としては、第3章で代数的トポロジーの題材が取り上げられていることに、ニヤリとしました。また、読者の中でプログラミングなどにも興味がある方は、PythonやSageMathなどでの実装を試みてはどうでしょうか。より具体的なイメージが沸くと思います。
昨今の生成AIが進展する中、手を動かしてみることをお勧めできるテーマが満載の本です。
固体材料の強度と物性評価のための 分子動力学法入門
企業での材料開発および産学連携研究の経験から,本書は固体材料の強度・破壊機構を原子論的に理解するための実践的リファレンスとして極めて有用である。分子動力学(MD)法の数理的基盤,原子ポテンシャルの選択指針、境界条件や時間積分法など計算設定の要点が体系的に整理され,初学者にも段階的に理解しやすい構成となっている。また,ポテンシャルの適用限界,計算コストと精度のバランス,マルチスケール連成への展開可能性など,産業応用を意識した視点が盛り込まれており,MDが設計指針の高度化や試作削減に寄与し得ることを明確に示している。総じて,本書は研究者・技術者双方にとって,原子スケールの理解を材料開発へ結びつけるための信頼性の高い入門書である。
金属疲労の基礎と疲労強度設計への応用 (増補)
疲労限度・疲労寿命・損傷許容の3アプローチを起点に、金属疲労のメカニズムから応力集中・表面処理・腐食環境といった影響因子まで体系的に学べる。個人的に参考になったのが表面粗さに関する記述で、高強度の合金鋼ほど表面粗さが疲労限度に与える影響が大きいという点は、強度の高い材料に変えれば解決するという単純な発想を見直すきっかけになった。第6章ではボルト・歯車・クランク軸など実機部品ごとの設計手法も示されており、基礎から実務まで繋げて学びたい設計者に勧めたい一冊だ。
基礎力がつくPythonプログラミング入門
近年、社会のあらゆる分野において、データテクノロジーを活用し新たな価値を創出するおける「デジタルトランスフォーメーション(DX)」化が急速に進んでいる。DXを推進する上で最も有力なプログラミング言語としてはPythonが注目されおり、大学授業においても理工系の他、文系においても必須化する大学が多くなりつつある。
私の本業はソフトウェア関係とはかけ離れており、ソフト知識は趣味でのマイコン工作程度(PICマイコン)程度のレベルであるが、今回、初めてPythonに挑戦してみた
Pythonはフリーソフト(完全無料)として公開されているため、本書に記載された手順でダウンロード・インストールし、本書のプログラム例を基にキーボードより手入力することによりPythonからの応答を確認することができる。
本書においては、「式(演算、基本要素)、プログラム実行、基本的な組み込み」等の初歩から丁寧に記述されているため、全章のプログラム例を実行してみたところ、Python機能の概要が把握でき、「プログラムが動くしくみ」についても理解することができた。
著者の富永先生は、以前は大学教員をされており、「書籍化前に本書内容に沿った授業を行い、学生からの意見を取り入れて更なる充実を図った。」とのことであり、これも分かりやすさの一因である。
また、著者や出版社のご厚意により、コロナ社ホームページ上において「補足情報」が掲載されており、本書に掲載されている「入出力に使っているテキストファイル」や、「CSVファイル」もダウンロード可能なため、途中からは同プログラムを活用させていただき、効率的に学習(手入力時間の削減)することができた。
今後は、本書の続編(工学系における各種の応用事例等)の刊行を期待したい。
アート・エンタテインメントとXR
本書は「バーチャルリアリティ学ライブラリ」の3巻目に位置する書籍である.本巻では,XR (Extended Reality または,Cross Realityの略) 表現を用いた,アート・エンタテインメント分野での最新の活用事例や研究事例などの幅広い解説がなされている.
1章では,本書でこれから話題にするXR,エンタテインメント,アート等の用語を改めて定義する,導入の章としての解説がなされている.ここでは,特にXRの他に似た用語としてVR (Virtual Reality; 人工現実感) ,AR (Augmented Reality; 拡張現実感) ,MR (Mixed Reality; 複合現実感) といった用語の違いを改めて理解し直すきっかけにもなった.
2章では,XR技術を活用したアート・エンタテインメントの活用事例を豊富に紹介する過程で,XR及び,AI技術との関係性が詳細に解説がなされている.その中でも特に,触覚によるVRの試みの変遷として,私自身が今も所持している「ニンテンドー64の振動パック」が挙げられていたことに興味が湧いた.今では当たり前となった振動フィードバックが,当時コントローラに装着するデバイスとしてゲーム体験に確かな付加価値を与えていたことを思い出し,今の技術へとつながる進化の流れを改めて感じた.
3章では,2章までのXR技術を用いた応用事例の実現している各種技術について,人間の五感の特徴を中心にどのように関連しているかということを詳細に解説がなされている.
なお,この章の内容は,本シリーズの1巻目に位置する書籍である『ヘッドマウントディスプレイ』(Ref: https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339026917/)及び,2巻目に位置する書籍である『神経刺激インタフェース』(Ref: https://www.coronasha.co.jp/np/isbn/9784339026924/)にも詳細が記載されており,適宜読まれることをお勧めする(※ 両巻とも拙い文書ではあるが,私がレビュさせていただいているので,読まれる際の参考にでもしていただければ嬉しく思う).
4章では,XR技術を用いたアート・エンタテインメント分野の研究方法及び,それらを評価する方法論についての解説がなされている.その中でも,自身の研究や作品を他者に公開する際に行われる「ワークショップ」という鑑賞者に体験してもらい評価する方法が述べられている.その際に,電気・熱・水の使用や衛生面,プライバシへの配慮といった「実装現場での盲点」にしっかりと言及されている点が素晴らしい.単なる技術解説に留まらず,制作者が直面する実務的な課題にまで踏み込んだ視点は,専門外の私にとっても自身の視点を広げる良いきっかけになった.
最後の5章では,アート・エンタテインメント,及びXR技術の今後の展望ということで未来に向けてのまとめの章になっている.
本シリーズは今後もハプティクスや,拡張認知インタフェース,3Dユーザインタフェース,メタバースなど多様なテーマで続刊が予定されているとのことだが,これからの展開がますます楽しみである.
システムとサイバネティクスの思想
本書は、サイバネティクスの原点からネオ・サイバネティクス、エナクティヴ・アプローチに至る思想的系譜を通じて、「制御」と「認識」を再考するものである。
特に、機械系制御エンジニアとして現場の自動化に携わる私にとっては、「反制御」という視点から「制御対象」と「環境」の包含関係を反転して捉える点が新鮮に感じられた。
この点は、「自律した制御系は外から働きかけられるのではなく、自らが認知したものを世界そのものとして制御していく」ものと理解した。
さらに、身体性や相互作用に根ざした認知観は、言語処理の延長にある現在のAIの限界を浮き彫りにし、その先にある身体を獲得したAIや次世代知能を考える上で不可欠な視座を与えると感じた。
現代のAI技術の先を見通すための重要な一冊である。
数理工学のための線形代数 - 線形代数の新しい地平 -
「線形代数」と聞くと、多くの人はベクトル空間や行列演算といった分野を思い浮かべるだろう。しかし、本書は副題に “新しい地平” とあるように、代数学と数理工学の視点を橋渡しする書籍である。
前半では、群・環・体、整数論などの代数学の基礎が丁寧に説明されている。そして、本書の大きな魅力は、これらの代数学的性質を、従来の線形代数で扱ってきたベクトル空間の視点から改めて確認できる点にある。例えば、第4章では整域上での行列式の解説があり、第5章のジョルダン標準形も加群の理論を踏まえて議論が展開される。私自身、これまで「代数学」と「線形代数」の書籍で別々に説明されることが多かった内容が、本書を通して読むことによって,つながることを実感できた。
さらに、第6章以降ではグラフ理論、制御工学、FFT など、数理工学への応用が幅広く紹介されており、「このような応用と結びつくのか」と実感することができる。特に、第8章で扱われる behavior approach のように、制御工学において代数学的なアプローチを用いる研究は現在も盛んに行われており、本書はこうした分野に必要な基礎知識を身につけるうえでも有用である。
代数学的な手法に興味のある人はもちろん、目次を見て気になると感じた人にもぜひ手に取ってもらいたい一冊である。
金属疲労の基礎と疲労強度設計への応用 (増補)
本書は、金属材料の疲労強度について、理論的な基礎から実践的な設計への応用まで幅広く網羅しています。特に秀逸なのは、鉄道車軸などの実機検証に関する詳細な解説です。実際の応力測定ポイントの選定や、実測データに基づく考察が極めて明確に示されており、実務に直結する深い理解を得ることができます。基礎を学ぶ初学者から現場の実務者まで、幅広い層の技術者に強くお勧めしたい一冊です。
アート・エンタテインメントとXR
XRとは何?また、アート・エンターテインメントとXRが、どのように繋がっているの?と思い、本を拝見。
第一章では、XRの意味や説明がわかりやすく明記しており、老若男女の皆さんが理解しやすい内容になっています。
第一章を踏まえた上で、第二章以降では、実際どのように、XRが、展開していったのか。
XRが、メディアアートやゲームに貢献している話が記載してあるので、ぜひ多くの方に目を通して欲しい内容だと思いました。
私たちが生活を送るにあたり、XRが欠かせないものだという事は間違いない。
是非、この機会に、1人でも多くの方に、XRを知っていただき、今後もっともっと発展していくXR技術に注目していただき、心や身体全体で「アート・エンターテインメント」感じ、五感を楽しむ時代が待ち遠しいと思った素敵な1冊に出会うことが出来ました。
基礎力がつくPythonプログラミング入門
多くの初学者にとってプログラミングを始める上で最初のハードルとなる、実行の環境構築に関して詳しく説明されている点が、初学者にとって親切であり勉強を始めやすい工夫がなされていて好感を持てる。PythonのみならずC言語を始めとした他言語でも重要になってくる、データ型の概念を2章に渡って詳しく説明されている点も良い。Pythonを新たに始めたい人はもちろん、プログラミングそのものをこれから始める人にとっても学びやすい良書である。
基礎力がつくPythonプログラミング入門
本書はPythonを使いながら、その機能を学んでいくタイプの学生向け授業を念頭においた演習書です。全くの初心者でもPythonプログラミングの全体を学習できる良書であり、独習にも適しています。
最初に環境設定(Windows, Mac, Linux)が詳細に紹介されています。また。PCに自分の権限でインストールできない人ならWebサービスのGoogle Colaboratoryを使って勉強することもできます。
「基礎力がつく」のタイトル通り、式の立て方や変数の型の扱い方から、条件分岐や繰り返し処理、関数やモジュール処理、各種ファイル処理などを一歩一歩着実に学ぶことができます。また、一般に難しくて挫折しやすいとされている辞書型、例外処理、オブジェクト指向、も丁寧に説明されています。特にわかりにくいと思われる箇所には「実行イメージ」の図解が挿入されており、理解を大いに手助けしてくれています。
また、Web上の補足情報のページに、Pythonプログラム、プログラムで使うデータ、および、章末問題解答が掲載されているので、打ち間違いなどに煩わされずに効率よく学習することができます。
コンクリート構造学 (改訂版)
本書は、コンクリート構造の基礎から設計実務で必要となる考え方までを、幅広く見渡せる総合的な参考書です。材料や構造の基本にはじまり、設計法の考え方、曲げ・軸圧縮・せん断・ねじりといった各種作用への対応、使用性や疲労、さらにはPCや耐震設計まで、全体像をつかむための「学習の地図」として役立ちました。
一方で内容はしっかりしている分、初学者にとっては少し情報量が多く説明も難しく感じられるかもしれません。基礎的な用語や考え方をやさしく解説した入門書とあわせて読むことで、各章の内容がより理解しやすくなり、学習がスムーズに進むと感じました。
限界状態設計法については独立した章で触れられていますが、詳細な理論展開というよりは概要説明が中心でした。ただ、国内ではこの設計法をまとめて学べる資料が多くないため、学習の入り口としては貴重な存在だと思います。
また、海外では限界状態設計法が一般的であるのに対し、日本では独自の法規や運用のもとで安全性が確保されてきた背景があります。そうした違いを意識しながら読むと、他の設計法との比較も含めて、本書の良さがより実感できます。
気になった点としては、一部で本文の説明より先に演習問題が出てくる箇所があり、流れが少し途切れる印象を受けました。説明、演習という順序で統一されていれば、さらに読みやすくなったのではないかと思います。
数理工学のための線形代数 - 線形代数の新しい地平 -
線形代数は制御工学をはじめとするシステム工学,統計学,経済学など,幅広い分野に共通する基盤である。大学初年度に「ベクトル空間上の線形写像」として学んだ内容が,各専門分野で改めて必要となるときに,改めて習ったことを振り返って学習する書物,というのが線形代数の書籍に対する印象である。しっかり学習している学生もいるのだろうが,行列の計算,固有値の計算と対角化,といった計算技術に目が行ってしまい,深い理解に至りにくい面があると思われる。
近年,このような初学者向けの教科書的な書籍でなく,応用分野を深く,広く理解するための線形代数を扱う書籍が増えてきたように感じる。その背景には,従来の学術分野を横断的に理解したいというニーズに加え,ビッグデータを用いた深層学習などデータサイエンスが身近になるにつれ,これらを「使う」だけでなく「理解する」ための数学的基礎として,線形代数の重要性が改めて認識されてきたことも一因であろう。また,本書が基盤とする代数学についても,一般的な関心が高まっているようである。
本書は,大学教養課程で扱う「体上のベクトル空間としての線形代数」を,環や加群といった抽象代数の視点から再構築した,広義の線形代数の体系書である。単なる計算技術の習得にとどまらず,数理工学における複雑な構造を読み解き,新たな道具を自ら創造するための「数学的思考の基礎体力」を養うことを主眼としている。また,応用例として,大規模ネットワークを効率よく縮約するクロン縮約,信号処理の根幹をなす高速フーリエ変換の線形代数的解釈,深層学習モデルへの応用,さらには格子暗号を取り上げており,抽象理論が高度なアルゴリズムへと結実する過程を丁寧に解説している。
線形代数の基礎を修めた学生はもちろん,システムモデリングやデータ分析の理論的裏付けを深めたい実務家エンジニアにとっても,座右に置く価値のある一冊である。抽象と具体を往復する本書の構成は,現代の複雑な技術課題に立ち向かうための真の数理工学的センスを養う上で,大きな助けとなるだろう。
水素エネルギーの科学と技術 - カーボンニュートラル実現のキーテクノロジー -
『水素エネルギーの科学と技術』は,水素の製造・貯蔵・輸送・利用までを熱力学,電気化学,材料科学の観点から体系的に整理した専門書であり,水素エネルギー技術の基盤理解に有益な一冊である。水蒸気改質や水電解などの製造プロセス,吸蔵合金や高圧貯蔵などの貯蔵技術,さらに燃料電池に至るまで,原理と技術課題がバランスよく解説されている。研究開発企画および大学との共同研究に関わる立場として,本書は水素関連技術を個別要素ではなくエネルギーシステムとして俯瞰する重要性を再認識させる内容であった。産学連携や次世代エネルギー技術の社会実装を考える上でも多くの示唆を与える。
システムとサイバネティクスの思想
サイバネティクスは認識の転回であり、それゆえに、サイバネティクスは思弁的・抽象的に議論するだけでなく、それを経て何をどう実践するかが問題となる。しかし、その理解のためにはある程度の思想史的な経緯の振り返りが必要であり、何がどう転回した結果としてどのような認識に至っているかを、自身の思考の体験として経験することが必要である。そのような整理された論考は意外とないどころか、サイバネティクス自体が理論化を拒むような複雑さとあいまいさを有しているがゆえに、サイバネティクスについて語る言語はしばしば難解になり、あいまいになり、ある種の魔術化や秘教化といった状態に陥りかねないところがあり、初学者にとってはうかつに近寄りがたい存在でもある。
一方で、昨今の学術界の状況を鑑みると、サイバネティクスを基礎とする新たな展開が数多く見られ、学際的に活発な議論を戦わせているし、情報化した社会の情勢をサイバネティクスの実践ととらえて語る議論も盛んである。
このようなギャップを埋めるための書籍として、本書は野心的かつ基本的であり、非常に有用である。まず前半四章で、サイバネティクスの思想史をたどりなおす。ファースト・オーダー・サイバネティクスがセカンド・オーダー・サイバネティクスに至るための認識論的転回を丁寧にたどり、さらにはセカンド・オーダー・サイバネティクスの本質を図式化せずに忍耐強く考察することを通じて、その根幹にある思考のパターンを抽出している。この一連の議論を可読的な端正な言語で読めることのありがたさを噛み締めたいところである。
そして、後半では、前半で至ったある種の本質的な認識に対して、その社会的な現象・あらわれを、社会学や経営学などの実践を通じて具体化する。前半に到達した認識のシンプルな美しさに対して、後半の社会的事象のもっさりした感じがあまりにももどかしく感じるところもあるかもしれないが、サイバネティクスが実践のための認識論的転回である以上、読者の力点は本書後半にも十分に置かれなければならない。理論がすでにある種の到達を見せている以上、サイバネティクスの可能性はむしろこのようなもっさりした現実との交錯のなかに見出されるのだと思う。
理論的には、オートポイエーシスをエナクティヴ・アプローチが意味論的に乗り越えるというポイントが重要であり、結論としての媒介的思考を図式化せずに思考のパターンとして可能な限り明晰に記述するという試みがたいへん示唆的である。また、社会事象に関して、サイバネティクスをメタファーではなく、実践のための認識論としてとらえた事例を紹介し、それについての学術的な言説を整理している。したがって、本書全体が非常に学際的な色調を帯びており、すべてを精読するのは難しいかもしれないが、それでも初学者でも全体を通読するのが不可能ではないような記述の明瞭さがあり、この点が教科書としての美点であるだろう。
昨今のさまざまな言説におけるサイバネティクスの基礎的な重要性にも関わらず、その本質を可読的な言語で初学者が理解できるように記述した教科書は意外とない。それは、サイバネティクス自体が理論化・抽象的な図式化を退ける性質を本質的に持っているためであるが、既存のサイバネティクスに関する基礎的な言説がそれゆえに帯びてきた難解さやあいまいさを徹底的に廃して、あくまでも端正に、しかし本質を失わずに語り、読者はそれを通じてサイバネティクスを「体験する」ことができる。
数理工学のための線形代数 - 線形代数の新しい地平 -
一般的な線型代数学の教科書は、抽象的なベクトル空間の理論から入るものと、よりイメージしやすい3次元幾何や行列の計算から入るものに大別されるかと思います。本書の最もユニークな特徴は、前者寄りの理論的なアプローチをとりつつも、グラフ理論や高速フーリエ変換等、工学的に重要かつ興味深い応用例を豊富に取り上げている点であると思います。
本書の構成に踏み込むと、2章までの代数学の準備は、純粋数学としての理論に踏み込みすぎずエッセンスが効率よくまとまっていると思います。
3章から5章ではベクトル空間を一般化した加群の理論を出発点として、基底の取り換え、次元公式、標準形などの重要な理論が展開されていきます。ここは本書の中でも重たい部分になりますが、線型代数に対して一段抽象的な観点から見通しが得られ、高度な応用への盤石な基礎が固まるでしょう。説明の構成という観点では、線型代数で必ず学ぶ固有値・固有ベクトルが標準形の説明の後に出てくる等、いくつか珍しい点があると感じました。
6章以降は数理工学・情報科学諸分野への線型代数が展開されています。それぞれの章の内容はグラフ理論、FFTなどの各専門書を紐解けば学習できますが、特に線型代数の理論によって美しく記述できる部分が凝縮されており、興味のある個所を一部ピックアップするだけでも線型代数へのモチベーションが上がると思います。また、応用の章は基本的に行列を中心に展開されるので、5章までの抽象的議論が完全に消化できなかったとしても十分理解して楽しめる内容になっています。ここでの内容を面白いと感じる方は、本書で扱っていない話題として、ランダム行列の理論やLie代数の理論も学んでみると面白いかもしれません。
決して易しい本ではありませんが、一般的な学部の講義や教科書で「線型代数は一通り分かった」と思った人にこそ本書を手に取り、線型代数の広くて深い世界に触れてほしいと思います。
数理工学のための線形代数 - 線形代数の新しい地平 -
この本はぜひ電気工学や制御工学を使う学生や社会人に読んで欲しい1冊である。大学の工学部や高専の学生なら授業で線形代数を習わない人はいないであろう。しかし、授業で習う線形代数は手を動かす演習系のカリキュラムがほとんどであるため、数学としての定義や定理を厳密に理解し、またそれを数理的に応用できる人はわずかである。
この本では、線形代数を学ぶ上で見落としがちな理論に言及し、それらの応用例を詳しく提示している。特に、クロン縮約と電気回路そしてマルコフ連鎖という一見関係がなさそうなものの数理学的なつながりについて詳しく説明されている点がとても興味深いと感じた。
大規模系の制御やシステムの縮約など近年、注目されている課題について足がかりとなるようなヒントが良く書かれている印象を受けた。初学者にとっては難しく感じそうであるが、研究活動を行っている学生や社会人などが読めば新しいアイデアが降ってきそうである。
システムとサイバネティクスの思想
私が最初にサイバネティクスに出会ったのは、ビジネスモデル研究者の妹尾堅一郎氏による知的財産に関する講義でした。妹尾先生は初回の講義で、各世紀を規定する知的パラダイムの変遷を語りました。18世紀はニュートンの「物質」、19世紀はマルクスの「唯物」、20世紀はアインシュタインの「エネルギー」が、その時代を規定してきました。そして、21世紀のパラダイムは「情報」であり、その先駆者がノーバート・ウィーナーの「サイバネティクス」です。サイバー攻撃、サイバースペース、サイボーグといった馴染み深い言葉の「サイバー」は、すべてこのサイバネティクスに由来します。しかし、その源流であるサイバネティクス自体については驚くほど知られていません。
情報化社会という言葉はもはや死語になりつつありますし、IT化も当たり前になりました。今やAI、特に大規模言語モデルが世界を席巻しています。そんな時代に、私自身「情報とは何か」を一度も真剣に考えたことがなかったことに気づきました。AIは情報技術の集大成とも言えますが、そもそも「情報」とは何かを問えていない。現代を規定するパラダイムがわからないということは、自分が生きている時代について何もわかっていないのと同じではないか。「情報とは何か」を学ぶためにサイバネティクスを学ぼう、というのが私のモチベーションでした。
まずウィーナーの「サイバネティクス」を手に取りましたが、数学的な記述が多く歯が立ちませんでした。ならばと、ウィーナー自身が一般向けに書いた「人間機械論」を読みましたが、それでもサイバネティクスを理解できたという手応えはまるで得られませんでした。そこで出会ったのが本書「システムとサイバネティクスの思想」です。
本書はサイバネティクスの思想的な面を正面から取り上げ、情報がどのように考えられてきたのか、その歴史を辿ることができます。ただし、ウィーナーの時代のサイバネティクスをそのまま解説するだけの本ではありません。本書の軸になっているのは、サイバネティクスをさらに発展させた「ネオサイバネティクス」と呼ばれる流れです。現代で情報といえば、シャノンの情報理論が真っ先に思い浮かびます。しかしシャノンの理論では、情報から「意味」が捨象されています。0と1の列として情報を効率よく伝送することには長けていても、その情報が何を意味するかは扱わない。意味を欠いた情報だけを扱うことに、それこそ意味があるのか。ネオサイバネティクスはそうした問題意識から出発しているように私は読みました。
人間をコンピュータになぞらえ、外部の情報をインプットし、内部で処理してアウトプットするという素朴な見方を超えて、意味を持った情報を捉え直そうとする。編者の西田洋平氏がネオサイバネティクスを一般向けに概説した「人間非機械論」でもこの流れは紹介されていますが、本書はさらに踏み込み、一般書と専門書の間を橋渡ししてくれます。現代の議論がどこまで進んでいるのか、一般書では触れられない地点まで扱っている点が貴重です。
ベストセラーとなった読書猿氏の「独学大全」に「独学者にとって教科書こそが学びの起点になる」という話がありますが、本書はまさにそのような存在だと思います。章ごとに話がある程度独立しており、参考文献も豊富に示されているので、自分の問題意識に合わせた章を熟読し、参考文献を辿ることで学びを深められる、独学のハブになり得ます。これまでサイバネティクスの教科書は、私の知る限り工学的な制御理論のものばかりでした。思想としてのサイバネティクス、情報とは何かを考えるための教科書として、本書は待ち望まれていた一冊だと思います。
AIが爆発的に広がる現代を読み解くためにも、意味を回復するような本来的な情報の捉え方は欠かせません。そしてそれは、私たち若い研究者が22世紀のパラダイムを築いていくための土台にもなり得る。本書、本シリーズはその両方に向けた大きな土台を築いてくれるはずです。
Pythonで始めるスワーム制御プログラミング
Pythonによる自立型水中ロボット(AUV)開発のために参考とさせていただきました。
ロボット制御として、スワーム制御を応用することで、広範囲の探索や環境モニタリング等の効率化に期待しています。
制御アルゴリズムとして、ポテンシャル法(引力、斤力、整列)を採用しようと考えていたので、非常に参考となりました。
今後、海洋開発における技術として自立型水中ロボットは必要不可欠になってくるので、これをきっかけにさらなる発展に繋げたい。
アート・エンタテインメントとXR
本書籍はとても面白く、私にとってユニークな本でした。
本の内容は、VR、AR、またその他のデジタルアートについての、学術的考え方から、どういったものがあるのかを、執筆されております。
私自身は、プログラムこそしますが、新しい形作りのようなアートはしないので、とても斬新でよかったです。
これからデジタルアートや、デジタルなものに対して人間の受ける影響をテーマにされる方におすすめの1冊かと思います。はたまた、私のように知らない世界を見てみたい人にもおすすめです。
本書籍中では特に、歴史を齧りつつ、どんなものが今まで作られてきたかを写真付きで載せてくれているため、感心する内容が多かったです。
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