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書店様向けレビュー
暮らしと霧の科学
霧の定義から始まり、科学的説明を基本に広く話が展開され、多少の数式こそあるものの理系高校生などが読むのに好適です。
特に3章は大学の研究室や研究の紹介という趣があります。価格も手ごろで地学オリンピックなどの場に出る高校生に渡してみたい本です。
一方、暮らしの面からは、気象庁の出す気象情報や濃霧注意報等に触れられていないのが残念でした。濃霧注意報がどういう情報か、どう注意すればいいかというのは最も暮らしに直結する観点の一つですから、改訂の折などに追記されることを期待いたします。
専門家を目指す人への書籍として、おすすめできる本でした。
核融合炉入門 - フュージョンエネルギーへの道 -
本書は、フュージョンエネルギーに関する素朴な疑問から、専門的かつ最新の話題までを丁寧に解説しており、関心を持つ読者にとって読み応えがあります。
日米欧のトカマク炉の開発史に関する記載は中でも印象深く、各国の取り組みがどのような経緯を経て、現在のフュージョン炉開発へとつながっているのかがよく理解できました。
私自身もかつて、フュージョン炉の先進性に魅了されて原子力業界を志した経緯があり、本書を通じてその原点を思い起こすことができました。
フュージョン炉に対する正しい知見を身に着けることができるとともに、実用化への期待が湧いてくる一冊です。
コンバータ回路の応用 - PFC,LLC,PSFB,OBC -
本書は、PFC、LLC、PSFB、OBCといったパワーエレクトロニクスの応用的なコンバータ回路について解説された一冊であるが、動作原理や電流経路、波形、制御回路などの図が多く掲載されており、初学者でも視覚的に理解しやすい構成となっている。特に、電流経路図や動作波形は、回路の理解を深めるうえで大変参考になる。応用回路の解説を中心としながらも、動作原理に関する基礎的な記述も含まれているため、初めてその回路を扱う読者でも無理なく学習を進められる。パワーエレクトロニクスに興味のある学生や技術者にとって、自身の理解を深めるうえで役立つ一冊であり、 PFC、LLC、PSFB、OBCといった各種コンバータ回路について理解を深めたい方は、ぜひ書店で実際に手に取ってみていただきたい。
コピュラ理論の基礎
本書はコピュラ理論の入門書として非常に有用であり、特に統計学・確率論をある程度学んだ学生には適していると感じました。
各章の構成について、定義→定理→証明や具体例の流れがしっかりしており、論理の筋が追いやすいです。また、図やビジュアル的な補助があるので、コピュラの直感的理解ができるものとなっています。
章末問題は、理解の確認と深掘りに非常に役立ちました。特に2章・3章の扱いは、実際に計算する中で理論の意味が深まったように思います。解答はWeb上に公開されておりました。
ただし一部の証明や章末問題の回答では途中計算が省略されているところもあり、特に初学者向けにはもう一段階細かな補足があるとより親切だと思いました。
総じて、大学院生や数理系や情報系学部生が理論的背景を学ぶうえで非常に有用な一冊といえます。
音楽制作 - プログラミング・数理・アート -
本書は、電子楽器を初めとするテクノロジーを用いた音楽表現について、わかりやすく、詳細に記された1冊である。
全体的に、この分野では、日本語での書籍や情報が少ないと感じることが多い。その中でも本書はタイトルにある通り、音楽制作を中心にテクノロジーの歴史から、プログラミングの実例、作品例を、日本語で取り上げた良書である。
構成として、初めには音楽用語の解説、テクノロジーを用いた作品や歴史など、時系列順で記載されており、多少の知識があれば、一部だけを読んでも出来る内容となっている。さらに、適宜、図や画像があるためソフトなどの詳細な違いの理解などがしやすい。
ライブエレクトロニクス上演のプロセスや、コードの例、環境構築なども記載されており、座学的要素のみならず、実践に役立つ内容も豊富である。
特に私の場合、セリー音楽のような数学的側面の強い作曲技法について、あまり理解していなかったものの、本書の詳細な解説は、理解に非常に役立った。
DAWやPd、Maxの概念についても丁寧に説明がされており、且つ冗長では無い。簡潔にまとまりながらも、充実した内容であるため、初学者からメディアアーティスト、研究者まで、読者の程度を問わず勧めたい書籍である。特にPdやMaxを初めて扱う学生などには強く勧めたい。
核融合炉入門 - フュージョンエネルギーへの道 -
現在ロボティクスやAIの分野のソフトウェアエンジニアで門外漢の私ですが、わかりやすい流れで非常に楽しく読めました。
多様性によるイノベーションが叫ばれる中、日本がフュージョン炉を造る技術のすべてを持っている稀有な国、というのは大きな希望に感じました。丁寧な仕事、積み上げ磨いた技術が実り世界の資源大国になる日を夢見られる、同時に、すぐにではない現実的な未来として想像できる一冊です。
理解しやすい制御工学
本書では主に古典制御(微分方程式・伝達関数・伝達関数に基づく制御系設計等)に関する内容を解説している。「理解しやすい」とタイトルにある通り、初学書では省略されがちな古典制御の基礎内容が網羅されている。例えば,昨今の初学書で省略されがちな伝達関数の代表特性根やランプ応答の定常/過渡特性に関する丁寧な解説がなされている。制御系設計においては,限界感度法だけでなくMp規範や根軌跡を用いたゲイン調整法も解説されている。本書を一通り読むことで古典制御の基礎の理解が進むと考えられる。一方,古典制御の代表的な内容のすべてを解説しているわけではなく,本書のみで古典制御の全てを理解できるわけではない。本書の網羅範囲としてPID制御の設計に留まっており,マクローリン展開に基づくゲイン設計や2自由度制御の設計等の応用的な内容に関しては解説されていない。また,MATLABやPython等の演習用プログラム等は付属していない。したがって,本書で古典制御の基礎を理解した上で他の初学書も併用して勉強することを勧める。
理解しやすい制御工学
古典制御の基本的な内容がコンパクトにまとめられています。
タイトルの通り、確かに途中式の省略がほぼなく、「どうやってこの式になった!?」となる場面が少なかった様に思います。
また、全編に渡って、ほぼ全てのページに図や表が記載されており、「少しでもイメージをしやすくしよう」と言った著者の方々の気遣いを感じました。
本編についても然る事ながら、演習問題の解答についても同様に省略が少なく、特に社会人になってから独学するような読者にはありがたいのではないでしょうか。
欲を言えばもっと行間を埋められたのではないか、と言った点も見受けられましたが、まだ初版ですので今後の展開にも期待したい書籍です。
核融合炉入門 - フュージョンエネルギーへの道 -
本書はフュージョン(核融合)発電について、基礎からやや専門的な内容まで幅広く扱ったものである。題から想像できるように、主な内容はフュージョン炉の種類や仕組みとなっており、フュージョン反応の基本やこれまでの開発史も併せて紹介されている。内容が内容であるため、高校の物理基礎から物理程度の前提知識は必須であるが、丁寧な説明と体系的な構成のお陰もあり、業界の人間でない初学者でも知識を深めることが可能となっている。分野への興味の有無によらず、そう遠くない未来に暮らしを支えられる一人としても、是非読んでおきたい一冊である。
理解しやすい制御工学
古典制御理論の基礎から応用までを丁寧に解説した、制御工学の入門書として最適な一冊です。微分方程式やラプラス変換といった前提となる数学的知識も丁寧に取り上げられており、初学者でも無理なく読み進められると感じました。ボード線図やナイキスト線図などの具体例を通じて、制御系設計の流れを段階的に理解できる構成となっています。さらに、制御系の安定性判断など理解が難しいテーマについても、例題を用いて手順とナイキスト線図などの図表を示してくれているため理解がしやすくなっています。特に、例題や演習問題の解説が省略されることなく丁寧に記されているため、初学者だけでなく一度学習した方々の復習にも良いと感じました。
理解しやすい制御工学
本書では、制御工学の基礎的な内容を学ぶことができます。これまで数多くの制御工学の書籍に触れてきましたが、これほどスムーズに読み終えられた本は初めてでした。非常に読みやすく、親しみやすい一冊です。図が豊富に掲載されており、それぞれの図に対する説明も簡潔かつ丁寧で、内容が非常によく整理されていると感じました。特に、制御工学の導入部分にあたる第3章・第4章では、多様な制御対象やブロック線図を用いることで、読者の興味を引きつける工夫がなされています。また、他書では文字だけで説明されるような細かな内容も、本書では図解を通じて直感的に理解できるようになっており、学習効果が高まります。さらに、第2章では制御工学に必要な数学的知識が網羅されているため、数学に苦手意識のある方でも復習しながら安心して読み進めることができます。加えて、多様な例題や演習問題が豊富に盛り込まれており、体系的な学習にも適しています。ただし、本書ではあまり高度な内容までは取り扱っていないため、すでに他の書籍で学習を進めている方には、やや物足りなく感じられるかもしれません。今後、より発展的な内容を扱った続編が刊行されることを期待したいと思います。
総じて、本書は制御工学をこれから学び始める方にとって、非常に優れた入門書です。これから制御工学の学習を始めようと考えている方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。本書の購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
理解しやすい制御工学
大学や高専では,講義形式の授業を自学自習の時間も含め,2単位で運用しているケースが多いと思われる.このとき,学生たちのつまずきは,本書のまえがきにも記載されているように,「自明のこと」として教科書の一部が省略されていることである.制御工学では,ラプラス変換の式が多く,ベクトルや行列なども出てくることから,このあたりを苦手としている学生にとって,「自学自習」において,複数の教科書で学習していくことは,挫折につながりかねない.
本書は,この「省略されやすい部分」を強く意識され,丁寧に解説しているところが特長であり,良書たるポイントである.例えば,第3章の伝達関数について,基本的な6つの要素について,分かりやすい事例をもとに伝達関数G(s)の形を理解させてくれる.第4章の過渡特性についても,インパルス応答やステップ応答で,ラプラス変換や逆ラプラス変換による結果の求め方を示している.
体裁は好みによるが,私は白黒1色の方が,重要なところにマーカーを引かせたりする上で都合が良いと思っている.本書により,制御工学を得意科目にしてくれる学生が増えることを期待している.
音楽制作 - プログラミング・数理・アート -
本書は、Music Tracker、Max、PureData、SuperCollider、TidalCycles などの多様なツールをはじめ、無調音楽の作曲技法(数理的な視点からのアプローチ)、さらにはメディアアートに至るまで、「特定の表現による音楽制作」を主題として取り上げた意欲的な一冊である。
各分野の第一線で活躍する研究者および表現者たちによって執筆されており、内容は極めて前衛的かつ挑戦的である。
本書の特徴として、歴史的背景や代表的な作品例に関する丁寧な解説が随所に盛り込まれており、「技術」と「芸術」という二つの観点から情報が体系的に整理されている点が挙げられる。その結果、専門的な内容でありながらも、読者にとって理解しやすい構成となっている。
ライブコーディングに関する章では、プログラミング言語や開発環境を通して音楽を理論的・構造的に捉え、従来のDAWでは実現が困難であった複雑な処理や即興的な実験が可能となる点が強調されている。環境構築の手順やサンプルコードも豊富に掲載されており、実践的なガイドとしての価値も高い。
取り上げられている各ツールは、それぞれ明確なコンセプトを持ち、Sonic Pi や PureData など、オープンソースかつ無償で利用可能なものも含まれている。読者が興味を持ったものをすぐに試せるよう配慮されており、研究者・実践者双方にとって有益な設計となっている。
個人的に印象深かった一言は、「Show us your screen(スクリーンを見せろ)」というスローガンである。これは制作過程そのものを可視化し、プロセスの価値を共有するという思想を象徴しており、音楽表現における透明性と即興性への新たな視点を提示している。
従来のDAWや楽器による音楽制作に限界を感じている読者にとって、本書で紹介される多様な「表現」の技法は、既存の枠組みを問い直し、創造性を再活性化させる契機となり得るだろう。
音楽制作に対して、より科学的・実験的な姿勢で向き合い、自身の表現世界を深化させたいと考える読者に、強く推奨される一冊である。
核融合炉入門 - フュージョンエネルギーへの道 -
SF作品への理解を深めたいという思いからこの一冊を手に取ったものの、最初は理系でもない私に読み進められるか不安でした。しかし、タイトルに【入門】とある通り、本書は中学高校程度の基礎的な知識からでも十分に理解できる構成で、基本的な概要から詳細に向けて、順を追って丁寧に説明されています。また注釈や図解も丁寧なため、専門的な内容にも関わらず無理なく読み進めることができます。
また個人的に、一貫して実用化の観点から書かれている点も嬉しかったです。初めて触れる分野の書籍を読むと、解説が詳細すぎて覚えるべきことが膨大だったり、中々核心にたどり着けなかったりといったことが往々にしてあります。しかし本書ではそのようなことは無く、冒頭からその仕組みについて述べられています。
加えて、実際に新しいエネルギーとして用いるにはどんな技術が必要なのか、コストは、時期は、情勢は......と、フュージョン炉の理論に留まらずそれらを取り巻く事情にまで言及しており、フュージョン炉について過不足なく知ることができるという点で最初の一冊にピッタリだと思います。
本書を読めば、フュージョン炉が夢物語ではなく、今まさに実現しかけている技術であることがわかります。実用化への過程をリアルタイムで楽しめるという観点からも、専攻分野を問わず、少しでも興味があればぜひ手に取って欲しい一冊です。
理解しやすい制御工学
本書は、制御工学の入門書として、豊富な図版と見やすいレイアウトにより、読者の学習意欲を損なうことなく読み進められる工夫が随所に凝らされています。序盤では「制御とは何か」を平易に整理し、続く章で微分方程式、ラプラス変換、伝達関数、時間応答、周波数応答、安定判別、設計論へと段階的に知識を積み上げる構成のため、初学者の基礎固めはもちろん、再入門にも最適です。数式の解説は丁寧で、ブロック線図や日常的な例を挟むことで「抽象」と「具体」を行き来しながら理解を深められる点も魅力です。さらに章末問題も充実しており、学んだ理論を実務に応用するための橋渡しとなります。学生から現場技術者、企業研修や講義テキストまで、幅広く活用できる一冊としてお薦めします。
現場で役立つ応用力を養う 工業力学入門
私が本書を読んだ印象は機械工学分野(材料力学 流体工学 機械設計 機械力学)の各分野に必要な力学に関する知識がまとめられた書籍だと思いました。本書の構成は8章の構成になっており大きく分けると次のような構成になっています。第1章では力学問題を解く基礎的な知識(物理・数学)の記載があり、第2章~第4章では高校物理の内容からステップバイステップで質点系の動力学まで学べるようになっています。また、第5章~第6章でエネルギーや運動量を考える問題にふれ、第7章で剛体の動力学を扱っています。最後の第8章では多自由度の系の基礎となる1自由度系の振動問題を解くことで振動工学の基礎部分を学習できる構成になっています。そのため、本書は高校物理の基礎的な知識を取得していて自分で調べて学習する力があれば、学部1年生でも工業力学の基礎から動力学や振動工学の基礎まで学習ができると思います。ただ、本書は1冊目の工業力学の本としてはハードルが高い書籍なので、初学者に対してはフルカラーで初学者向けの【工業力学 第4版(森北出版)】をサブテキストで使用することをお勧めします。また、本書で取り上げられている問題は機械設計技術者試験や技術士1次試験で出題されるような問題が取り上げられているので資格取得の勉強をしている方にもお勧めします。改善点を挙げると、各機械工学分野の力学に関する知識がまとめられていますが、実務上は業務の一部に力学を使用するため、力学の視点だけでなく機械部品の選定や振動データからの固有振動数の調査方法、リンク系ロボットのトルク計算などの具体的な業務事例にどのように工業力学が使用されるかを説明する項目があってもいいと思いました。私の読書レビューが書籍を検討している方々の参考になれば幸いです。
理解しやすい制御工学
「制御工学」という名前だけを聞くとすごく難しそうと感じる人もいるかもしれません。
しかしこの本は、私の「やってみたい!」という気持ちをまっすぐに受け止めてくれる一冊でした。
私は工学部ではなく、もともとは健康や運動系の勉強をしていましたが、今は情報系分野の学びを楽しんでいます。そして、自分の好きなロボティクス分野をより深く理解したいと思い、制御工学の扉を開きました。
ラプラス変換やPID制御などの言葉と初めて本気で向き合いました。ただ、微分や積分の基礎はやはり大事なのでそこがあやふやな人は一度立ち戻るのもおすすめです。一気に全部分かろうとせず、調べたり立ち止まりながら進めることが大切だと思います。私もこの本を通して、「もっと学びたい!」という気持ちがどんどん広がりました。
分野や経験に関係なく、好奇心がある人にはぜひ手にとってほしいです!
現場で役立つ応用力を養う 工業力学入門
私は過去に筆者が執筆された「モード解析」(コロナ社)の愛読者なので、本書を非常に楽しく読ませていただいた。本書の内容に関しては、特に高専生や大学1、2年生向けで力学の基礎から剛体の動力学、振動の導入部分までを学ぶことができる。また、これまでに工学系の専門分野を学んでこなかった方々においても、記載されている各式の作り方が丁寧に解説されているために初学者でも安心して学ぶことができる。是非、読書には本書で工業力学の基礎を学んだ上で各専門書を読むことをお勧めしたい。さらに本書のタイトルにあるように現場で役立つ応用力を養うための内容になっている点も大きな特徴である。具体的には練習問題が多数記載されているので、力学の基礎的な知識を理解しながら練習問題を通して実践的なスキルを獲得することが出来る。こうしたスキルの積み重ねが現場における多くの課題を解決する力に繋がるのではないかと考える。個人的には機械式ジャイロに興味があるため、原理の説明から運動方程式の立式までの要点を確認することができたのが非常に勉強になった。是非、本書をお手に取って読んでいただきたい。
現場で役立つ応用力を養う 工業力学入門
レベルや位置付け的には著者の一人による数十年前の前著「工業力学」(養賢堂)を現代の事情、具体的には就活やそれに必要な俗に言うガクチカなどで、工業力学をはじめとする座学の類に昔の学生ほど時間を割く余裕がかなり無くなってきていると思われる現代の学生のために、演習問題の解答についていわゆる行間を読む能力や労力に極力頼らず理解できる程度に詳解を与えている演習主体の教科書、といったところでしょうか。
工業力学はいわゆる機械工学の主要専門科目の四力学(機械力学(振動学)・材料力学・流体力学・熱力学)あるいは機械(要素)設計(法)に進む前段階の基礎的科目として置かれていることがかなり多いようですが、それら科目に進む前段階の入門的科目としての内容、例えば曲げモーメントや噴流に関する力学なども取り扱われており、その点で比較的充実していると思われます。
本書はあくまで演習とその詳解が主体で、公式だとかの理論的な背景の説明は比較的あっさりしている、習うより慣れよの傾向があるので、本書の内容、演習問題の詳説についていけない場合は、例えば「工業力学入門」(森北出版)や「力学キャンパス・ゼミ」(マセマ出版社)などを参照すれば理解が進むものかと思います。
専門科目に与えられている時間数が恵まれている高専などであれば、講義を通して本書を隅々まで通読することも可能かもしれませんが、大半の一般の大学では工業力学に与えられた時間は1年次後期~2年次前期頃に半期・週1時間・2単位程度であることが殆どかと思われるので、その場合は例えば理系一般教養の力学と重複する主に冒頭の基礎的内容や、四力学や要素設計と重複する内容を割愛する、例えば本書終盤の振動などは工業力学習得後に履修することになる機械力学(振動学)などの専門科目の方に回してしまってもよいかもしれません。あるいは理系一般教養の力学や、大学院における例えば(工業・古典)力学特論といった科目のテキストに本書を用いるのもありかもしれません。
一方で、工業力学の科目では終盤におまけ程度に簡単なラグランジュ方程式を用いた力学的問題の解法といった解析力学の初歩・概論的なことを教授していることも少なくないようですが、本書では解析力学は扱われていないので、その点については担当教員が適宜補ってやる必要があるかもしれません。
本書の演習問題は機械設計等の現場における実践的な問題が多いので、大学や高専の専門課程に入りたての若者や初心者にはオーバースペックかもしれませんが、実務者や大学院入試等で演習問題を作成する側の方々にも重宝するのかなとは思います。あるいは機械系以外でも例えば衛星や実験装置等の設計で高度な古典力学の素養が必要になるであろう理学系など非機械系の方々の独習・輪講用書籍として有用かもしれません。
筆者らは従来の伝統的な(特に機械系の)力学教育に対して長年問題提起されてきているようですが、本書はあくまで従来の伝統的な力学教育に沿った内容でありますので、筆者らが例えば「機械の力学」(朝倉書店)などで提唱の新たな(電磁気学等との親和性の高い、理論的対称性の美しさが際立っているような)機械系力学理論の体系の改革に関する続報についても期待したいところです。
音楽制作 - プログラミング・数理・アート -
本書は多様なメディアテクノロジーの視点から音楽制作を論じており、著者陣には研究者とクリエイターの双方が名を連ねるため、記述が具体的で非常に興味深い。特に第3章「音響コンポジション」と第6章「メディアアートとミュージックテクノロジー」では、QRコードを通じて実際の音楽作品を視聴できる点が魅力的だ。中でもソニフィケーションの位相空間を視聴覚化した作品『x/y』(3.3.12) は、音の方向や位置を体感的に理解でき、文字情報だけでは得られない発見がある。どの章もテクノロジーが切り拓く音楽の新たな深淵を示し、何度も読み返したくなる一冊である。
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