書店様向け
書店様向け情報ご案内ページです。
書店様向けレビュー
水素エネルギーの科学と技術 - カーボンニュートラル実現のキーテクノロジー -
『水素エネルギーの科学と技術』は,水素の製造・貯蔵・輸送・利用までを熱力学,電気化学,材料科学の観点から体系的に整理した専門書であり,水素エネルギー技術の基盤理解に有益な一冊である。水蒸気改質や水電解などの製造プロセス,吸蔵合金や高圧貯蔵などの貯蔵技術,さらに燃料電池に至るまで,原理と技術課題がバランスよく解説されている。研究開発企画および大学との共同研究に関わる立場として,本書は水素関連技術を個別要素ではなくエネルギーシステムとして俯瞰する重要性を再認識させる内容であった。産学連携や次世代エネルギー技術の社会実装を考える上でも多くの示唆を与える。
システムとサイバネティクスの思想
サイバネティクスは認識の転回であり、それゆえに、サイバネティクスは思弁的・抽象的に議論するだけでなく、それを経て何をどう実践するかが問題となる。しかし、その理解のためにはある程度の思想史的な経緯の振り返りが必要であり、何がどう転回した結果としてどのような認識に至っているかを、自身の思考の体験として経験することが必要である。そのような整理された論考は意外とないどころか、サイバネティクス自体が理論化を拒むような複雑さとあいまいさを有しているがゆえに、サイバネティクスについて語る言語はしばしば難解になり、あいまいになり、ある種の魔術化や秘教化といった状態に陥りかねないところがあり、初学者にとってはうかつに近寄りがたい存在でもある。
一方で、昨今の学術界の状況を鑑みると、サイバネティクスを基礎とする新たな展開が数多く見られ、学際的に活発な議論を戦わせているし、情報化した社会の情勢をサイバネティクスの実践ととらえて語る議論も盛んである。
このようなギャップを埋めるための書籍として、本書は野心的かつ基本的であり、非常に有用である。まず前半四章で、サイバネティクスの思想史をたどりなおす。ファースト・オーダー・サイバネティクスがセカンド・オーダー・サイバネティクスに至るための認識論的転回を丁寧にたどり、さらにはセカンド・オーダー・サイバネティクスの本質を図式化せずに忍耐強く考察することを通じて、その根幹にある思考のパターンを抽出している。この一連の議論を可読的な端正な言語で読めることのありがたさを噛み締めたいところである。
そして、後半では、前半で至ったある種の本質的な認識に対して、その社会的な現象・あらわれを、社会学や経営学などの実践を通じて具体化する。前半に到達した認識のシンプルな美しさに対して、後半の社会的事象のもっさりした感じがあまりにももどかしく感じるところもあるかもしれないが、サイバネティクスが実践のための認識論的転回である以上、読者の力点は本書後半にも十分に置かれなければならない。理論がすでにある種の到達を見せている以上、サイバネティクスの可能性はむしろこのようなもっさりした現実との交錯のなかに見出されるのだと思う。
理論的には、オートポイエーシスをエナクティヴ・アプローチが意味論的に乗り越えるというポイントが重要であり、結論としての媒介的思考を図式化せずに思考のパターンとして可能な限り明晰に記述するという試みがたいへん示唆的である。また、社会事象に関して、サイバネティクスをメタファーではなく、実践のための認識論としてとらえた事例を紹介し、それについての学術的な言説を整理している。したがって、本書全体が非常に学際的な色調を帯びており、すべてを精読するのは難しいかもしれないが、それでも初学者でも全体を通読するのが不可能ではないような記述の明瞭さがあり、この点が教科書としての美点であるだろう。
昨今のさまざまな言説におけるサイバネティクスの基礎的な重要性にも関わらず、その本質を可読的な言語で初学者が理解できるように記述した教科書は意外とない。それは、サイバネティクス自体が理論化・抽象的な図式化を退ける性質を本質的に持っているためであるが、既存のサイバネティクスに関する基礎的な言説がそれゆえに帯びてきた難解さやあいまいさを徹底的に廃して、あくまでも端正に、しかし本質を失わずに語り、読者はそれを通じてサイバネティクスを「体験する」ことができる。
数理工学のための線形代数 - 線形代数の新しい地平 -
一般的な線型代数学の教科書は、抽象的なベクトル空間の理論から入るものと、よりイメージしやすい3次元幾何や行列の計算から入るものに大別されるかと思います。本書の最もユニークな特徴は、前者寄りの理論的なアプローチをとりつつも、グラフ理論や高速フーリエ変換等、工学的に重要かつ興味深い応用例を豊富に取り上げている点であると思います。
本書の構成に踏み込むと、2章までの代数学の準備は、純粋数学としての理論に踏み込みすぎずエッセンスが効率よくまとまっていると思います。
3章から5章ではベクトル空間を一般化した加群の理論を出発点として、基底の取り換え、次元公式、標準形などの重要な理論が展開されていきます。ここは本書の中でも重たい部分になりますが、線型代数に対して一段抽象的な観点から見通しが得られ、高度な応用への盤石な基礎が固まるでしょう。説明の構成という観点では、線型代数で必ず学ぶ固有値・固有ベクトルが標準形の説明の後に出てくる等、いくつか珍しい点があると感じました。
6章以降は数理工学・情報科学諸分野への線型代数が展開されています。それぞれの章の内容はグラフ理論、FFTなどの各専門書を紐解けば学習できますが、特に線型代数の理論によって美しく記述できる部分が凝縮されており、興味のある個所を一部ピックアップするだけでも線型代数へのモチベーションが上がると思います。また、応用の章は基本的に行列を中心に展開されるので、5章までの抽象的議論が完全に消化できなかったとしても十分理解して楽しめる内容になっています。ここでの内容を面白いと感じる方は、本書で扱っていない話題として、ランダム行列の理論やLie代数の理論も学んでみると面白いかもしれません。
決して易しい本ではありませんが、一般的な学部の講義や教科書で「線型代数は一通り分かった」と思った人にこそ本書を手に取り、線型代数の広くて深い世界に触れてほしいと思います。
数理工学のための線形代数 - 線形代数の新しい地平 -
この本はぜひ電気工学や制御工学を使う学生や社会人に読んで欲しい1冊である。大学の工学部や高専の学生なら授業で線形代数を習わない人はいないであろう。しかし、授業で習う線形代数は手を動かす演習系のカリキュラムがほとんどであるため、数学としての定義や定理を厳密に理解し、またそれを数理的に応用できる人はわずかである。
この本では、線形代数を学ぶ上で見落としがちな理論に言及し、それらの応用例を詳しく提示している。特に、クロン縮約と電気回路そしてマルコフ連鎖という一見関係がなさそうなものの数理学的なつながりについて詳しく説明されている点がとても興味深いと感じた。
大規模系の制御やシステムの縮約など近年、注目されている課題について足がかりとなるようなヒントが良く書かれている印象を受けた。初学者にとっては難しく感じそうであるが、研究活動を行っている学生や社会人などが読めば新しいアイデアが降ってきそうである。
システムとサイバネティクスの思想
私が最初にサイバネティクスに出会ったのは、ビジネスモデル研究者の妹尾堅一郎氏による知的財産に関する講義でした。妹尾先生は初回の講義で、各世紀を規定する知的パラダイムの変遷を語りました。18世紀はニュートンの「物質」、19世紀はマルクスの「唯物」、20世紀はアインシュタインの「エネルギー」が、その時代を規定してきました。そして、21世紀のパラダイムは「情報」であり、その先駆者がノーバート・ウィーナーの「サイバネティクス」です。サイバー攻撃、サイバースペース、サイボーグといった馴染み深い言葉の「サイバー」は、すべてこのサイバネティクスに由来します。しかし、その源流であるサイバネティクス自体については驚くほど知られていません。
情報化社会という言葉はもはや死語になりつつありますし、IT化も当たり前になりました。今やAI、特に大規模言語モデルが世界を席巻しています。そんな時代に、私自身「情報とは何か」を一度も真剣に考えたことがなかったことに気づきました。AIは情報技術の集大成とも言えますが、そもそも「情報」とは何かを問えていない。現代を規定するパラダイムがわからないということは、自分が生きている時代について何もわかっていないのと同じではないか。「情報とは何か」を学ぶためにサイバネティクスを学ぼう、というのが私のモチベーションでした。
まずウィーナーの「サイバネティクス」を手に取りましたが、数学的な記述が多く歯が立ちませんでした。ならばと、ウィーナー自身が一般向けに書いた「人間機械論」を読みましたが、それでもサイバネティクスを理解できたという手応えはまるで得られませんでした。そこで出会ったのが本書「システムとサイバネティクスの思想」です。
本書はサイバネティクスの思想的な面を正面から取り上げ、情報がどのように考えられてきたのか、その歴史を辿ることができます。ただし、ウィーナーの時代のサイバネティクスをそのまま解説するだけの本ではありません。本書の軸になっているのは、サイバネティクスをさらに発展させた「ネオサイバネティクス」と呼ばれる流れです。現代で情報といえば、シャノンの情報理論が真っ先に思い浮かびます。しかしシャノンの理論では、情報から「意味」が捨象されています。0と1の列として情報を効率よく伝送することには長けていても、その情報が何を意味するかは扱わない。意味を欠いた情報だけを扱うことに、それこそ意味があるのか。ネオサイバネティクスはそうした問題意識から出発しているように私は読みました。
人間をコンピュータになぞらえ、外部の情報をインプットし、内部で処理してアウトプットするという素朴な見方を超えて、意味を持った情報を捉え直そうとする。編者の西田洋平氏がネオサイバネティクスを一般向けに概説した「人間非機械論」でもこの流れは紹介されていますが、本書はさらに踏み込み、一般書と専門書の間を橋渡ししてくれます。現代の議論がどこまで進んでいるのか、一般書では触れられない地点まで扱っている点が貴重です。
ベストセラーとなった読書猿氏の「独学大全」に「独学者にとって教科書こそが学びの起点になる」という話がありますが、本書はまさにそのような存在だと思います。章ごとに話がある程度独立しており、参考文献も豊富に示されているので、自分の問題意識に合わせた章を熟読し、参考文献を辿ることで学びを深められる、独学のハブになり得ます。これまでサイバネティクスの教科書は、私の知る限り工学的な制御理論のものばかりでした。思想としてのサイバネティクス、情報とは何かを考えるための教科書として、本書は待ち望まれていた一冊だと思います。
AIが爆発的に広がる現代を読み解くためにも、意味を回復するような本来的な情報の捉え方は欠かせません。そしてそれは、私たち若い研究者が22世紀のパラダイムを築いていくための土台にもなり得る。本書、本シリーズはその両方に向けた大きな土台を築いてくれるはずです。
Pythonで始めるスワーム制御プログラミング
Pythonによる自立型水中ロボット(AUV)開発のために参考とさせていただきました。
ロボット制御として、スワーム制御を応用することで、広範囲の探索や環境モニタリング等の効率化に期待しています。
制御アルゴリズムとして、ポテンシャル法(引力、斤力、整列)を採用しようと考えていたので、非常に参考となりました。
今後、海洋開発における技術として自立型水中ロボットは必要不可欠になってくるので、これをきっかけにさらなる発展に繋げたい。
アート・エンタテインメントとXR
本書籍はとても面白く、私にとってユニークな本でした。
本の内容は、VR、AR、またその他のデジタルアートについての、学術的考え方から、どういったものがあるのかを、執筆されております。
私自身は、プログラムこそしますが、新しい形作りのようなアートはしないので、とても斬新でよかったです。
これからデジタルアートや、デジタルなものに対して人間の受ける影響をテーマにされる方におすすめの1冊かと思います。はたまた、私のように知らない世界を見てみたい人にもおすすめです。
本書籍中では特に、歴史を齧りつつ、どんなものが今まで作られてきたかを写真付きで載せてくれているため、感心する内容が多かったです。
水素エネルギーの科学と技術 - カーボンニュートラル実現のキーテクノロジー -
本書は水素エネルギーについて元素としての基礎から製造・貯蔵・利用、さらには経済性までを横断的にまとめた一冊である。各章では理工系の基礎知識を前提に原理へ踏み込んだ説明がなされており、初学者にはやや難しく感じられる部分もある。一方で、章構成を俯瞰しながら通読するだけでも水素エネルギーの全体像をつかむことができる。また、各章が比較的独立しており、関心の高い部分を重点的に読むといった使い方にも適している。
モニターを担当する私は鉄鋼メーカーに所属する技術者であり、水素に直接関わる研究や技術に携わっているわけではない。しかし近年は、鉄鋼分野でも水素還元製鉄や水素脆化など水素関連の話題に触れる機会が多く、基礎的な理解を深めたいという思いで本書を手に取った。特に「1. 水素の基礎」で示される水素脆性の評価方法や理論の整理、「6. 水素の利用技術」での水素燃焼技術の解説は、日頃目にする議論の背景を理解し、今後の水素活用の展望を想像するうえで有用だった。「7. 水素利用の経済性」も、技術だけでなく社会実装の視点を得る助けとなり、全体として高い満足感を得られた。深い専門内容の良し悪しを論じる立場にはないものの、水素について学び始める読者にとって有益な入門書であると感じた。
一点だけ要望を挙げるとすれば、今後各分野で期待される水素技術について、より網羅的に展望を示す章があると理解がさらに深まったように思う。たとえば水素還元製鉄のように、エネルギー利用とはやや異なるが社会的に注目度の高いテーマも含めて触れられていると、読者が自分の専門領域の外側まで視野を広げやすくなったかもしれない。
生産加工・工作機械学
工作機械の設計は「総合格闘技」である。機械工学の基盤となる四力(材料・機械・熱・流体)+制御の知識を総動員して行う必要があるからだ。
本書は「部品を加工する」ことを出発点として、それに必要な工作機械とはどのようなものか、また、工作機械と「四力+制御」がどのように関わっているのかを考える入り口を示してくれる(残念ながら流体力学についての記述はないが)。
もちろん、本書だけで設計のすべてを習得できるわけではないが、これから生産加工や工作機械を学ぼうとする学生にとって、大きな助けとなるはずだ。一人でも多くの学生に、工作機械の設計へ興味を持ってもらえたらと願っている。
生産加工・工作機械学
生産加工学や工作機械に関する専門的な知識のみならず、それらに関連する振動工学や材料力学、制御工学そして熱力学の基礎知識の復習もでき、非常に読みやすかった。生産加工・工作機械学といっても、材料を成形する時の加工技術から、ロボットを始めとする工作機械の適切な制御技術まで、幅広い技術を取り上げ紹介しているところが特に良かった。メーカーの生産技術職や、工作機械メーカーへの就職を視野に入れている機械系の学生はぜひ読んでおくべき一冊であると感じた。
Pythonで始めるスワーム制御プログラミング
本書はスワーム制御に関する入門書である。スワームとは群れという意味で、従来の中央集権的な大域的構造の制御とは異なるアプローチが近年試みられている。それについて、概要を押さえながら、もっとも基本的なモデルから段階的にPythonでプログラミングすることで、体感的に理解しようというのが趣旨である。
本書が扱う現代的なスワーム制御の骨子は、分散制御によるマルチエージェントシステムである。全体を司る司令塔は存在せず、各エージェントは近傍の情報のセンシングと通信で自律的・反応的に行動する。
各エージェントが従う行動の局所的なルールは単純なものだが、その局所的な行動が集団になることによって大域的な振る舞いへと創発する。つまり、局所的なルール自体には存在しない大域的な行動のルールが、自然発生的に現れる。これが群れという意味である。
本書では、理論的な解説は最小限にとどめ、実際に手を動かし、プログラムを動かしていくことによる直感的な理解を目的としている。最初に扱うのが、スワーム研究の原点であるBoidsモデルである。これはごくシンプルな3つの局所ルールから、鳥の群れのような大域的振る舞いが創発するモデルである。
興味深いのは、現代のロボット工学者がスワーム制御のモデルを考察するに当たって、丹念に自然を観察し、その本質を抽象化して、数式に置き換える、という作業を繰り返しているという点である。自然現象の複雑さの中から、モデル化しうる要素を見抜いて、単純な数理に落とし込み、そこからシステムを組み上げる。このような地道な作業の繰り返しが現代的なロボティクスの基盤になっている。
第5章までが実装してみながら手を動かして理解する、というスタンスで進むのに対して、最後の第6章はそれまでの内容を踏まえて、様々な応用の可能性について解説されている。Boidsモデルに始まる基本的な考え方を理解したうえで、本章に当たると、現代のスワーム制御の奥深い世界が垣間見えて実に興味深い。
“Simple rules lead to complex behavior”としばしばいわれる。シンプルな局所ルールから大域的な複雑な振る舞いへと創発する、という点がスワーム制御の根本的な設計思想である。この点をふまえるだけでも、現代的なロボティクスや知能研究への視線が変わってくるのではないだろうか。
生産加工・工作機械学
本書は、機械工学における主要学問分野の一つである、機械工作法・生産加工学のうちで、大量高速高能率生産、多品種少量(高品質)生産、試作や機械部品・機械要素の修理修復など一点モノの製作、あるいは他の生産技術である塑性加工(鍛造)や射出成形・鋳造などにおいて必須である金型の製作のいずれでもコアな技術であるという点で、最も重要な生産技術(除去加工)である切削加工を中心として、その周辺技術としての(切削型)工作機械、CAM、生産システム、研削研磨についても扱われている一冊になります。ふた昔前くらいまでは主にコンピュータの性能や価格、使いにくさの問題から、実験的な切削加工に関する研究開発とコンピュータを駆使した(CAD/CAE/)CAM・シミュレーション技術に関する研究開発との分断が大きかったようですが、近年のコンピュータの爆発的な高性能化と低価格化による普及、社会全体のコンピュータリテラシー向上もあって1研究室・研究チーム(あるいは個人)レベルで実験とシミュレーションそれぞれのアプローチを突き合わせることが可能になってきたようですが、そんな現代的な事情が反映された機械工作法・生産加工学のテキストといえそうです。
機械工作法・生産加工学についての科目は、機械工学がメカトロやVR技術などにも裾野を広げ続けている中にあって、ふた昔前よりかはどこの大学・高専等教育研究機関でも減らされている傾向にあるらしいですが、その中でも半期2セメスター四半期4ターム程度は機械工作法・生産加工学関連科目を設けられ得るとして、本書を主に用いる講義科目の前に、出来れば難しい数学や物理学の素養を必ずしも前提としない知識としての機械工作法・生産加工学に関する科目として、例えば「機械工作法(増補)(機械系 教科書シリーズ 3)」(平井 三友・和田 任弘・塚本 晃久 著、コロナ社)や「はじめての生産加工学1 基本加工技術編」(帯川 利之・笹原 弘之 編著、講談社)などを主なテキストとして用いた科目が事前に半期1セメスターあるいは四半期2タームくらいの時間で開講されていると、本書で網羅できていない溶接(あるいはその現在進行形の発展形である積層造形(Additive Manufacturing,AM)技術)、鋳造、鍛造(塑性加工)、射出成形などをカバーできて良いかもしれません。
上述の事情や、機械力学(振動学)、伝熱(工)学、制御工学といった他の機械系主要科目を事前に学んでおいた方が理解がスムーズな箇所が少なくない、という意味では、本書は学部3年次学生向けの授業用テキストを主な使途として編纂されたとのことですが、本書ベースの講義を開講するとしたら3年次後期(第2セメスター、第3・4ターム)くらいが妥当かなとは思います。そのような事情もあるので、無理に学部での講義で本書レベルの内容を教授しようとせず、大学院博士前期(修士)課程の生産加工・工作機械学特論とでも言えそうな授業科目用テキストとしても通用し得ると思います。その場合は必ずしも機械系学科出身者だけでなく、振動・波動論や制御工学くらいは学部で習得している可能性のある電気電子系・情報系・化学工学系あるいは(理論系はともかく)実験系では実験装置の設計製作運用に当たって高度に工学の素養が求められる理学系などの学生に門戸を広げても良さそうです。
あとは各章末の演習問題や例題では、十数年くらい前のものですが過去の院試(おそらく修士課程)の過去問ベースの問題が幾つも挙げられているので、いわゆる院試(修士課程だけでなく博士課程でも)対策でも有用な可能性があります(もっとも、近年の院試は数学+機械系専門科目(いわゆる4力(材料力学・熱力学・機械力学(振動学)・流体力学)+制御工学の中から幾つか選択)+英語の外部試験スコア(TOEICなど)提出+口頭試問、といった具合に筆記試験の(専門科目)選択の幅が狭まっている大学も少なくないと聞くので、機械工作法・生産加工学に準ずる科目で院試を受けられる大学院はあまり多くないかもしれませんが)。
本書で事実上扱われていない放電加工、レーザー加工、AM技術などについては「はじめての生産加工学2 応用加工技術編」(帯川 利之・笹原 弘之 編著、講談社)などで言及があるので、もし各生産技術についてより網羅的な講義が求められる場合にはそちらを副読本・参考図書に加えても良いかもしれません。
説明可能AI入門 - 人とAIが共存する未来に向けて -
本書籍は、非常に分かりやすく丁寧に書かれておりました。
私個人のおすすめとしては、AIをこれから仕事に使う方への導入本として非常に最適だと思います。
本書籍は多彩なイラストで、分かりやすく記載されています。内容も浅くなく実用的な考え方が記載されており、「AIにはどういうものがあって、それぞれどう作られており、どういったものが得意で課題を持ち合わせているか」という内容がしっかり書かれていると思います。
私自身なんとなくAIが分かるレベルでしたが、本書籍で単語や考え方を学ばせて頂き、非常に有意義な書籍だと思います。
水素エネルギーの科学と技術 - カーボンニュートラル実現のキーテクノロジー -
水素そのものの特性に始まり、製造・分離プロセス、貯蔵・輸送方式、利用技術と一連の流れがつながって理解できます。各技術に対してエネルギーを軸とした定量的な議論がなされており、設計や評価の観点で「どこを見るべきか」が参考になりました。他の書籍と比べて引用・参考文献が多く、記載事項の詳細調査がしやすいのも特徴です。個人的に水素を取り巻く話題は多い一方で、情報が分散していて全体像をつかみにくい印象を受けていました。そんな中、約250ページの中に網羅的にまとめられており、専門外の方の入門にも、専門家の整理にも役立つ書籍です。
説明可能AI入門 - 人とAIが共存する未来に向けて -
AIをツールとして用いる学生や,特に社会人にとっては,深層回路などの学習器がどのような処理をしたのか,を知ることは非常に重要であろう.本書では,AIの判断根拠などを示す手法である説明可能AI(XAI)や人とAIを共に進化させる共進化AI(CAI)について述べられており,これらの内容に関して知見を広めたいと考えている人たちに是非推薦したい一冊である.また,まえがきに記述のある通り,AIの説明性を理解すると同時に,AIの入門書としても適している書籍である.数式よりも,図などを用いた説明に重点が置かれており,内容も理解しやすいと思われる.XAIについて知りたい人のみならず,AIに関して知りたいと思う人にもお勧めしたい一冊である.
本書の大きな特徴は次の二点である.一つ目の特徴は,理解を深めやすい章構成である.まず第一章では,人工知能の概要から説明が始まる.複雑な数式を用いることなく,パーセプトロンから近年のトレンドとなっている手法までのアプローチの変遷や,AIの課題などが述べられる.その後,従来の機械学習手法やAIに関する説明を経てXAIなどの内容が始まるため,理解を深めることができる.本書を通して読むことで,AIなど機械学習の内容から,XAIの考え方,実用面や今後の展望まで広い知見を得られるであろう.二点目は,生成AIや大規模言語モデルなど,近年のトレンドとなっている内容にまで触れられている点である.生成AIなどは現在開発途上であるが,本書では説明性の観点から,それら手法の注意点が述べられている.他にも,アクティブラーニングなど様々な手法に関して触れられている.これらの内容を取り扱う第四部を読むことで,最近のトレンドである内容に関する知見を深めつつ,説明性という重要な要素を把握できると考えられる.
固体材料の強度と物性評価のための 分子動力学法入門
金属や半導体を含む多様な固体材料を対象に、分子動力学法(MD)を基礎から応用まで体系的に解説しており、大学の入門教材としても社会人のリスキリング教材としても適している。
特に、半導体結晶材料の強度評価や欠陥・破壊挙動の捉え方など、実務の課題に直結しやすい観点で整理されている点が有用である。
さらに、Pythonを用いたシミュレーション例が掲載されているため、理論理解に留まらず手を動かしながら学習を進められ、再現性の高い学びにつながる。
加えて、量子力学と併せて学ぶことで、原子間相互作用や材料物性の背景理解が深まり、より立体的に内容を吸収できると考える。
金属バイオマテリアル - 医療用金属材料 -
本書では医療に使用する金属材料を用途毎に細かい解説を加えて解説しており、医学・歯学系および材料工学系の学生のどちらにもとっても非常に有益なわかりやすい教科書である。特に序盤で臨床応用例と課題が具体的に提示されているため、その後の章で展開されている材料や機能別の特性の説明が頭に入りやすくなっている。人体と接触して使われるという観点から、金属の腐食に限定せず、疲労や摩耗、トライボロジーといった幅広い使用環境で何が起こるかについての整理もしっかりとされている。毒性評価や金属アレルギー、生体適合性に関する記述では、チタンが硬組織である骨と結合しやすいため、時間が経過し過ぎると取り外すのが難しくなるなど、興味を引くトピックスが多く盛り込まれている。生体適合性を高めるための表面処理・表面形態制御では、ナノメートルサイズの周期的微細構造の研究が今後のトレンドとのことであり、未来技術の方向性についても知ることができた。
最後に、本書の大きな特徴の一つに金属材料の機械的性質と腐食を簡潔にまとめた付録を挙げることができる。30頁にわたる付録の中に金属材料学のエッセンスが凝縮されており、金属材料を短時間で学べる点でも有益であろう。
ベイズ画像処理の基礎
本書は確率モデルがどのように活用されている技術なのかを知りたい人におすすめできる。
1章では、画像処理で使われる手法とそれに必要な数学の知識がわかりやすく説明されており、大学で習った画像処理の復習にぴったりだった。特に数値最適化法の説明では、理論の説明に加えてアルゴリズムの紹介もされているため、深い理解につながった。
7章では、グラフ表現を用いた具体例が出てきて、確率伝搬法の計算がどのように進むのかがよくわかった。付録には導出過程も掲載されているのも便利でよい。
題名にあるベイズ画像処理は8章で登場する。ここまでに必要となる予備知識は、線形代数、微分積分、統計学といった基礎的な数学だ。確率モデルの前提知識となる最尤法などの統計的推定に関する知識があると、さらに読みやすいだろう。すでに情報理論を学んだ人にとっては、グラフ理論を通して新たな視点から見直す際にも役立つ一冊だと感じた。
説明可能AI入門 - 人とAIが共存する未来に向けて -
世の中の多くの人は、「銀行のATMがどのようなしくみで動いているのか」を理解しなくても、引き出したい金額(入力)と出てきた現金(出力)が合っていれば特に困りません。しかし銀行員の立場で考えると話が変わってきます。銀行員にとってはお金の出入りが1円でもずれてしまったら大問題ですから、ATMが「どのような処理をしているのか」「正当な手続きを経て処理が行われているのか」が明確に確認できないと困ってしまいます。
これと同じような図式が、人工知能の世界でも起こっています。世の中の多くの人は「与えた入力に対して、それらしい出力が得られれば良い」と思うかもしれませんが、「なぜその出力に至ったのか」がわからないと困ってしまう人がいるという事です(例えば人工知能がレントゲン写真を見て「ここが悪いから切除すべき」と診断したとしても、なぜその診断に至ったのかという根拠がわからなければ、医師は手術をためらうでしょう)。
本書は、判断過程が人間に理解できる人工知能(説明可能AI)を構築するためのノウハウが集められた本です。現在流行しているディープニューラルネットワーク(DNN)は強力な性能で目覚ましい成果を挙げている反面、原理上どうしても内部の挙動がブラックボックスになりがちです。そのためこの本はまず、DNNだけではない様々な人工知能アルゴリズムについて概要を解説した後「(DNNではない)中身の分かりやすい人工知能アルゴリズムが使えないか検討する」「性能を保ったままできるだけ構造のシンプルなアルゴリズムを構築する」「どうしてもDNNが必要な時に、ブラックボックスを紐解くためのツールを使う」という流れで説明可能AIを構築する手法を解説してくれます。説明可能AIに関心がある人だけでなく、人工知能をチューンアップして軽量高速にしたい人にも役立つ内容がたくさん含まれている本です。
また大きな特徴として、それぞれのアルゴリズムを説明する図が素晴らしく良くできています。言葉だけではわかりにくい処理のイメージを、的確な図でわかりやすくしめしてくれています。
注意点として、本書は様々なノウハウを網羅的に紹介している分、各アルゴリズムの詳細については深入りしていません。ある種のカタログとして本書で概要をいったんつかみ、さらに詳しい内容が必要な時は参考文献を追って学んでいくという使い方が良いでしょう。
建築におけるスピーチプライバシー
本書は、プライバシー空間における音響設計を建築設計の中核的テーマとして捉え、理論、評価指標、設計手法を高いレベルで統合した、非常に完成度の高い専門書だと感じました。
近年、オフィスのオープンプラン化や医療施設、金融機関などにおいて、会話内容の秘匿性や心理的安心感が強く求められる一方で、「声がどの程度聞こえるべきか」「どこまで聞こえない状態を目指すのか」といった判断は、設計者の経験や感覚に委ねられてきた側面が大きいと思います。
本書は、その曖昧さを国際規格に基づく客観的な評価軸によって整理し、建築設計における合理的な判断へと導いてくれる点に大きな価値があります。
ISO 3382-3によるオープンプランオフィスの音響評価、ASTM E1130-16に示されるスピーチプライバシーの測定概念、ASTM E2638-10による遮蔽性能の評価方法、さらにISO 22351-1に基づく音声了解度および不明瞭性の考え方が体系的に整理されており、単なる規格解説にとどまらず、それらを設計者がどのように実際の設計に落とし込み、設計判断に活かすべきかという実務的視点で書かれている点が印象的でした。
また、ABCDルール(A:吸音、B:遮断、C:マスキング、D:話者との距離)を軸とした設計指針は、吸音、遮音、天井や内装構成、距離やレイアウトといった建築的操作がスピーチプライバシーの確保にどのように寄与するのかを分かりやすく示しており、建築計画の初期段階から音響を統合的に扱うための有効な思考フレームになっています。
材料選定や間仕切り計画、設備計画を検討する際の判断根拠が明確になり、設計意図を施主や関係者に説明する際の説得力が高まる点も、実務者にとって大きな利点です。一方で、作業妨害感や音声情報漏洩に対する主観的印象は、純粋な音響性能だけでなく、利用者の心理状態、業務内容、人間関係、空間の視覚的要素など、音響以外の主観的要因とも密接に関係していることも事実です。そのため、現行の評価指標だけでは、主観印象のすべてを包含するには限界があると感じました。
今後は、本書で示された音響評価の枠組みを基盤としつつ、日常生活における室内音環境をより総合的に捉える評価手法や、建築設計と人間の認知・心理を結びつけた研究がさらに進展されることを期待いたします。
お問い合わせ先
書籍に関するお問い合わせやご相談は、以下まで、お気軽にお問い合わせください。
- コロナ社 営業部
- TEL:03-3941-3133
- FAX:03-3941-3137
- 休業日を除く、平日の9時~17時








