書店様向け
書店様向け情報ご案内ページです。
書店様向けレビュー
ネットワークシステムの分散協調制御
想定読者の最も若い層が大学院生と設定されているだけあって、最初の章から求められる基礎知識のレベルはかなり高い。基本的な微積分や線形代数の知識はもちろん、機械、電気、情報系の学生が学部3、4年で習う現代制御理論の知識も必須である。また、後半の内容では集合の概念を用いて説明されている部分があるため、集合論の勉強をしておくと該当部分の読解がスムーズになる。他の制御工学系の書籍と比較して、読解に必要な数学的知識の種類が多く、学部生が読むには少々ハードルが高いと感じた。
ネットワークシステムの分散協調制御
ネットワーク化された動的システムが社会のあらゆる場面に浸透しつつある現在、その協調動作をいかに設計し、いかに安全に運用するかは、もはや一部の研究者だけの関心事ではない。『ネットワークシステムの分散協調制御』は、この広大で複雑な領域を、受動性とエネルギーに基づく統一的な基盤理論によって貫き、同期制御・分散最適化・被覆制御といった主要テーマを一望できる形に整理した意欲的な一冊である。
20年以上にわたり枝分かれしてきた研究の流れを「どこに共通の本質があるのか」という視点から再構成する本書は、分散協調制御を学ぶ者にとって、単なる入門書でも専門書でもなく、“地図”として機能する稀有な書籍として位置づけられる。一方で、本書が同期制御、分散最適化、被覆制御、制御バリアなど、2000年代以降に急速に発展した多様なトピックを統一的に扱おうとしたがゆえに、個々の技術的背景──とりわけ数学的な部分──については、やや割り切った説明にとどまっている印象も受ける。たとえば、同期制御におけるグラフラプラシアンの導入はやや天下り的であり、分散最適化で扱われる交互方向乗数法(ADMM)も微分可能な関数の例に限定されているなど、背景知識のない読者には誤解を招きかねない箇所も散見される。
もっとも、これらは本書の目的が「個別技術の深掘り」ではなく、「分散協調制御を統一的に理解するための視座を提供すること」にあると考えれば、ある程度は必然的なトレードオフとも言える。個々の技術については、コロナ社から出版されている入門書──たとえば永原正章著『スパースモデリング』や田中雄一著『グラフ信号処理の基礎と応用』──を併読することで補完できるだろう。
いずれにしても、ネットワークでつながった制御対象を数理モデルとしてどのように捉え、どのように解析していくべきかについて、本書は多くの示唆を与えてくれる。分散協調制御に興味を持つ読者が最初に手に取る一冊として、十分に推奨できる内容である。
最後に蛇足ながら、本書評はネットワーク分野での経験は長いものの、制御分野についてはほとんど知識のない読者によるものであることを付記しておきたい。近年は複数分野にまたがる学術書や研究が増えているが、本書の主題である「ネットワークシステム制御」という語には、Control over Networks と Control of Networks の二つの意味がある。本書が扱うのは前者であり、後者──すなわち情報通信ネットワークの運用・管理──を意図したものではない点を明確にしておきたい。
ネットワークシステムの分散協調制御
本書の魅力は,種々の分散協調制御問題を統一的な基盤理論のもとで理解できる点にあります.私を含め,初学者は全ての内容を理解することが難しいかもしれませんが,第1章を通して分散協調制御の大枠を俯瞰するだけでも本書を手に取る価値があります.また,第2章以降は数式を用いて議論が展開されるため,大学数学や制御工学の基礎知識があると読み進めやすいです.
コヒーレント宇宙光通信入門 - 光でつなぐ次世代宇宙ネットワーク -
本書籍は、宇宙分野の光通信をこれから学ぶ方から、専攻としており理論を時折参考とする方におすすめの本だと思います。
個人的には、序盤と終盤の宇宙光通信分野の現状や課題をまとめている部分を、とても興味深く拝読させて頂きました。
1章で現状
2~6章で個別の課題、理論
7~8章で運用や広い視野で見た課題
といった感じにまとめられておりました。
学生や僕のように興味本位で読む方には、どんな分野で、何に注目されているのが、イラストも豊富で掴みやすいと思います。
既に専攻とされている方には、理論式が詳しく書かれており、机に置く一冊になるかと思います。
デブリ(宇宙のゴミになった衛星達)の数は驚く内容でしたので、ご興味ある方にはぜひ読んでもらいたい1冊でした。
ネットワークシステムの分散協調制御
本書は,ネットワークシステムの分散協調制御について,受動性を基盤とした統一的な視点から体系的に学ぶことができる一冊です。対象としては,制御工学を学ぶ学生だけでなく,マルチエージェントシステム,分散最適化,安全制御などに関心をもつ研究者・技術者にも有用な内容だと感じました。
本書を読み進めるうえでは,基礎的な制御工学の知識があると,数式や議論の流れをよりスムーズに理解できると思います。一方で,受動性については丁寧に導入されており,その考え方を軸として同期制御,分散最適化,被覆制御へと展開されるため,各トピックを単独の手法としてではなく,相互に関連した理論として理解できる点が印象的でした。
特に,受動性という共通の枠組みから,分散協調制御の代表的な問題を見通せる構成は本書の大きな特徴だと思います。これまで個別に学んできた同期制御や分散最適化の考え方が,より大きな理論的背景の中で整理されていく感覚があり,分野全体を体系的に捉えるうえで非常に勉強になりました。
また,制御バリア関数に関する記述が充実している点も本書の魅力です。制御バリア関数を日本語でまとまって学べる書籍はまだ少ないため,安全性を考慮した制御に関心のある読者にとって貴重な参考書になると思います。導入的な内容から発展的な話題まで丁寧に説明されており,分散協調制御の文脈で学びたい読者はもちろん,制御バリア関数を体系的に習得したい読者にとっても有用な一冊です。
総じて,本書は分散協調制御の基礎から近年の安全制御に関わる話題までを,一貫した視点で学ぶことができる良書だと感じました。当該分野にこれから取り組む学生や,研究・実装のために理論的な土台を整理したい研究者・技術者におすすめできる一冊です。
ネットワークシステムの分散協調制御
近年,ドローンや自律型ロボットが広く普及しており,ネットワークシステムの研究も盛んに行われている。本書は,この分野で第一線で活躍されている先生方によって執筆されたものである。合意制御や被覆制御といった学会のプログラムでよく目にする制御問題を,エネルギーに基づく制御理論を基盤として統一的に扱っている点が大きな特徴であり,ネットワークシステムに興味を持つ学生・社会人にぜひ薦めたい一冊である。
本書は全6章から構成されており,第1章〜第4章までが前半,それ以降が後半となっている。前半では,受動性や安定性について丁寧に論じられたのち,テレオペレーションシステムや合意最適化などを例として,受動性(エネルギー)の観点からどのように安定性を示すかが説明されている。基盤となる受動性についても懇切丁寧に述べられており,マニピュレータ系や移動ロボットといったネットワークシステムで扱われることの多い系に対し,どのように受動性を示すかが解説されている。この内容は,本書の理解にとどまらず,受動性や安定性そのものの理解にも大いに役立つと感じられる。
また,第4章では最適化の基礎から合意最適化までが,受動性を絡めつつ丁寧に展開されている。基礎から段階的に説明されているため,初学者にも理解しやすい構成であるという印象を受けた。
後半の第5章と第6章では,被覆制御と制御バリア関数が扱われている。いずれも学会の予稿などで目にする機会の多い制御問題であり,それらが体系的に説明されている点も本書の大きな特徴である。被覆制御においては,ボロノイ図の説明から複数の具体的な制御手法までが,図を用いて丁寧に説明されており,本章を読むことで十分な知識を習得できると思われる。
また,「はじめに」にて「第6章は一部に高度な数学を含むが…」と述べられているが,数式の間に日本語による丁寧な解説が挿入されており,理解を着実に深めることができる構成となっている。個人的には,これまで制御バリア関数について学会誌や予稿集だけでは十分に理解できなかったが,本書によって体系的に内容を把握でき,さらにネットワークシステムへの具体的な活用方法を理解できた点は,非常に有意義であった。
近年盛んに研究されているネットワークシステムのトピックについて,非常に丁寧に解説された書籍である。ネットワークシステムに関心のある学生・社会人に広くおすすめしたい一冊である。
コヒーレント宇宙光通信入門 - 光でつなぐ次世代宇宙ネットワーク -
技術は往々にして、現実の制約への対応のために発展する。本書は、無線通信技術が、宇宙空間との通信という新しい課題に直面し、それに固有の制約や条件に対応するために、どのように更新されつつあるかをわかりやすく記述している。
宇宙空間という新しい環境における技術といっても、その前提には、従来からの科学研究の積み重ねがある。何もないところから何かを生み出すわけではなく、従来の技術が新しい制約を課せられた環境でどのように応用できるか、という観点での累積的な技術開発がおこなわれている。それゆえに、200ページ程度のコンパクトな本書が、宇宙光通信という領域に関して、ある程度の網羅性と深さを伴った議論を展開することができているのだと思う。
無線通信はつまり、電磁波の伝搬による情報の伝達である。光も電波同様、電磁波である。ただし両者には周波数および波長の違いがある。本書はまず従来の電磁波に関する基礎理論を振り返ったあと、光による通信がなぜ宇宙空間での通信に適しているかを、議論の段階を分けながら簡潔に解説している。
そして、中盤以降は電磁波に関する理論から具体的な機器の設計・運用まで視野に入れた議論が展開する。このあたりがとても面白かった。各論、丁寧に議論をモジュールに分けながら、理論と技術の対応を紐づけていくので、読んでいるとなにか作りたくなる。
さらに興味深いのは、議論を理論・技術に閉じないで、それが運用や開発の段階でどのような現実の社会情勢のなかでおこなわれているかという観点があることである。組織などの具体名を多く挙げながら、実例に基づいて、理論・技術の運用という局面を強く意識しているのが特徴で、これは執筆陣の多様なバックグラウンドを見れば納得できる。
本書は、宇宙空間における宇宙光通信という新しい展開における制約下で更新されている技術の現状に関する啓発的な教科書であり、数式で厳密に定義されている箇所を読めなくても、通読すると宇宙開発に関するひとつの知見が得られるという意味では、幅広い読者にアピールしうると思う。
ロボット運動計算論
本書は、ロボットの運動学・動力学・制御を、基礎から発展的な内容まで体系的に学ぶことができる一冊だと感じました。リンクと関節からなるロボット機構の基礎から始まり、順運動学、微分運動学、逆運動学、さらに動力学、シミュレーション、制御、運動最適化へと内容が自然につながっており、ロボットの「動き」を数理的に理解するための道筋が丁寧に整理されています。
私自身、ロボットの順運動学・逆運動学について体系的に学んだ経験が十分にあったわけではありませんが、本書では基礎的な事項から順を追って説明されているため、無理なく読み進めることができました。また、微積分と線形代数の基礎があれば数式を追いやすく、式変形の行間も丁寧に補われているため、抽象的な概念についても納得しながら理解を深めることができました。
特に印象に残ったのは、運動学や動力学の知識が理論として示されるだけでなく、順動力学シミュレーションやロボット制御、さらに運動最適化へと自然につながっていく点です。現代制御で学ぶ安定性やフィードバック制御の考え方が、ロボットの PD 制御、計算トルク法、インピーダンス制御、Operational Space Control などの具体的な制御手法と結びついており、学んだ知識を実際のロボットシステムへどのように応用できるのかを理解しやすいと感じました。
また、これまで線形代数や数値計算の知識として断片的に理解していた特異値分解や疑似逆行列が、逆運動学、ヤコビ行列、特異姿勢への対応といった場面で理論的に活用されることも印象的でした。抽象的に見えていた数学的な道具が、ロボットの動きを計算し、制御するための具体的な手段として現れることで、知識同士がつながっていく感覚がありました。
私自身はロボットラーニングの研究に取り組んでいますが、データ駆動の手法を扱う場合であっても、シミュレーション環境や制御器、学習された方策の挙動を理解するためには、背景にある運動計算や動力学の知識が重要だと感じています。本書は、その理論的な土台を整理しながら、実際の応用まで見通すうえで非常に参考になりました。
後半では、順動力学シミュレーション、Operational Space Control、運動最適化、ソフトロボットの運動計算にも触れられており、古典的なロボット工学の基礎に加えて、現代的な研究テーマとの接続も感じられます。ロボット制御を専門とする学生だけでなく、ロボットラーニングやシミュレーションを用いた研究に取り組む学生にとっても、基礎と応用をつなぐ参考書として役立つ一冊だと思います。
総じて、本書はロボットの運動計算を基礎から応用まで一貫して学びたい読者にとって、大変有用な専門書だと感じました。特に、断片的に持っていた数学や制御の知識を、実際のロボット応用へとつなげるための手がかりを与えてくれる一冊だと思います。
ケモインフォマティクス
化学メーカーでMIを取り扱って数年になります。普段はコンパウンド技術に機械学習を活用することが多く、組成情報を説明変数とすることが多いです。本書籍では化学構造やスペクトル等を用いた事例の紹介があり非常に参考になりました。一方でpythonの使い方等の説明は詳しくされていないため、ある程度経験のある方向けの書籍であると感じます。個人的には6章の材料設計のパートが非常に参考になり、7章のスペクトル解析についてはまだ実務で活用経験がないため、本書籍を参考に解析に取り組んでみようかと思います。
ロボット運動計算論
今、世間の中心は、「AI」や「大規模言語(LLM)」に集中しています。
そんな折、中国では人型ロボットによるハーフマラソンが行われました。大会ではトラブルがあったものの、私はそこに強烈なロマンを感じました。
かつて日本には、ASIMOが階段を上り、走る姿に世間が熱狂した記憶があります。しかし今日では、ASIMOに続く象徴的な存在は見かけず、ロボットへのロマンは失われつつあるように感じます。
そんな時代、コロナ社から出版された『ロボット運動計算論』は、私に再び「ロボットへのロマン」を向けました。
本書で特筆すべき点は、その膨大な「引用・参考文献の幅広さ」です。
1980年代の基礎理論から、2025年の最新知見、さらには世界の論文や書籍までが網羅されています。
AIがいかに早い進化を遂げようとも、重力や慣性といった力学の法則は普遍です。
本書は、人類が数十年も積み上げてきた「知の結晶」だと考えます。
今後、ロボットの運動計算や物理演算にもAIが駆使されるでしょう。
しかし、AIが導き出した答えが「なぜそうなるのか」という前提、すなわち物理学の根底を知らずに、理解は得られないと考えます。
単なる利便性や効率性だけではなく、動くロボットへの回帰。
この一冊は、AI中心の現代において、私たちが忘れかけていた「ロボットというロマン」を再び燃え上がらせる火種になるのではないかと考えます。
構想設計の方法論 - ディスラプションからトランジションへ -
本書では、構想設計を事業や組織の中で形にしていく方法について、市場、事業、組織など様々な切り口から包括的に論じられています。実務上の折り合いや困難についての記述には手触り感があり、構想設計を現実の企業活動の中で推進していくための視野が広がりました。個人的には、近年の事業環境におけるソフトウェアの役割を俯瞰して捉えられた点も印象に残っています。今後も自身の視座や経験の変化に合わせて読み返したい一冊です。分野や役割を問わず、構想設計に関わる全ての方にお勧めできます。また、前書『設計論 - 製品設計からシステムズイノベーションへ -』と併せて読むことで、構想と設計をより深く捉えられると感じています。
ケモインフォマティクス
本書は、ケモインフォマティクスを狭義の創薬支援技術としてだけでなく、化学構造・生体分子・材料・スペクトル・プロセスデータまでを含む広義のデータ駆動型化学として捉え、その全体像を俯瞰できる一冊です。
まず始めに良さを感じたのは、冒頭でケモインフォマティクスの基本的な考え方が丁寧に整理されている点です。機械学習や深層学習の方法論から入ると、つい後回しにされがちな、化学構造をどのようにデータとして扱うのかといった、本領域に取り組むうえで重要な視点が記載されています。
また、本書で扱われる範囲は非常に広範です。マテリアルズ・インフォマティクスの分野でも重要となる分子設計、構造生成、材料設計、スペクトル解析に加え、バイオインフォマティクス領域に関わる化合物・タンパク質間相互作用解析やオミクス解析まで取り上げられています。創薬、バイオ、材料、化学プロセスの各分野を横断して学ぶことができる構成になっています。
深層学習に関する説明も充実しています。NN、CNN、GCN、RNN、LSTM、seq2seq、attention、Transformer、multi-head attention、VAE、GAN、拡散モデルといった手法について、概要が図解されており、それらがケモインフォマティクスにどのように応用されるのかをスムーズに理解できます。近年は生成AIや各種ライブラリの発展により、モデルの実装自体は以前より容易になっていますが、手法の背景を理解することは後回しになってしまいがちです。その意味で、本書はコードを書く前に理解しておくべき理論と考え方を学ぶうえでも有用です。
また、印象的だったのは、分子設計手法に関する整理です。本書では、分子設計の各手法を網羅的に紹介するだけでなく、生成される化学構造として望ましい条件として、①良好な目的変数の値やクラスが推定されること、②Applicability Domainの内側にあること、もしくは外側であればその理由があること、③化学構造として多様性があること、④合成可能または合成しやすいこと、⑤対象とする環境下で安定に存在すること、という観点が提示されています。そのうえで、各手法がどの条件を満たし得るのかを整理し、現状の化学構造生成手法の中には、これらすべてを同時に考慮できるものはないと踏み込んで述べられています。これは、各分子設計手法を、実際の化学研究・材料開発・創薬に接続するうえで何が不足しているのかを考えるための、非常に実践的な視点と思います。
全体として、本書はケモインフォマティクスの理論、方法論、応用先をバランスよく整理した良書です。ケモインフォマティクスやバイオインフォマティクスを専門とする読者だけでなく、マテリアルズ・インフォマティクスや各種の材料・プロセスのデータ解析に関わる読者にとっても、多くの示唆が得られるものと思います。
ケモインフォマティクス
ケモインフォマティクスの全体像や、どのような分野で使われているのかということを把握出来る一冊です。コードの実装よりも、理論的な背景の解説に重きを置いています。バイオインフォマティクスシリーズの一冊ではありますが、創薬のようなライフサイエンス領域だけでなく、材料開発のようなマテリアル領域まで網羅しており、どちらの領域の方にもおすすめです。ベイズ最適化など、双方の領域で使われている技術についても解説しています。コンパクトにまとまっていますが、参考文献として多くの論文が引用されており、それらを参照することで手法の詳細も学ぶことが出来ます。
基礎力がつくPythonプログラミング入門
プログラミングを学ぼうとすると、初学者が最初につまづくのが実は実行環境を用意することである。
Pythonは本書で取り上げられているJupyterLab以外にも、GoogleのColaboratoryにも対応しているのでその点をまず評価したい(私の勤務校は、セキュリティ上の都合で学内ネットワークからJupyterLabのインストールができなかったのでColaboratoryを使用している)。
本書には他の本ではあまり詳しく触れらていない部分がしっかり記載されている。
例えば「第3章 式と演算」「式の評価」である。Pythonを使ってなにかしら長い数式をそのまま実装すると、正しく計算してくれないケースがある。これは計算式がどのような順番で評価されて計算していくのかを把握していないと「一見正しそうに見えるプログラム上の計算式」だけど「間違った結果」が出力される。
この手のミスを減らすためには、適切にかっこをつけて計算式をプログラミングするのが基本テクニック(あとでプログラムを読む認知負荷を減らすための基本的な作戦)であるが、比較的省略して書けてしまうPythonではこの式の評価の知識は必須である。
また「第7章 関数を作る」の複数の図のように、プログラムの内部の構造が図解されているのもありがたい。オブジェクト指向の知識がなくても別にプログラムは作れるが、裏の仕組みを知っているのと知らないでは怪しいな挙動が出たときの知識の差が解決するかどうかにつながっていくことが多い。
最終章のCSV・JSONの扱いが小さいながらも大事である。WebAPIやオープンデータを使うとCSVやJSON形式のデータを取ることができる。このデータ形式を扱いやすいのがライブラリの充実しているPythonであるが、「なんのデータを」「なんのために」「どう使いたい」のかは常に意識してもらいたい。
個人的にはプログラミングの書籍を見るときに、「文法がまずしっかり書かれているか」を重視するようにしている。Pythonのプログラムが書けなくても生成AIを使うと簡単に作れてしまう時代になったが、文法を理解していると生成されたコードがどのような動きをするか(怪しい動きをするか)がわかる。その意味でも本書はサンプルコード・練習問題の多さも含めて大変よく練られたものである。
ロボット運動計算論
本書は、関節とリンクの基礎から始まり、運動学・微分運動学・逆運動学、さらにラグランジアンやニュートン・オイラー法による動力学、順動力学シミュレーション、制御までを体系的に解説しています。
私はフィジカルAI、特に模倣学習ベースのエンジニアです。本書を読んで感じたのは、データ駆動でロボットを動かす場合でも、こうした理論が依然として重要である点です。例えばデータ収集時には、作業データのタスク座標をロボットのコンフィグレーション空間に変換する必要がある場合があります。そのようなケースでは(逆)運動学•(逆)動力学の理解が不可欠です。また強化学習の報酬設計でもこれらの理論に加えて、タスク空間や力学的制約を踏まえた設計が求められ、本書の知識が直接活きてきます。ブラックボックス的な学習だけでは到達しにくい性能や安定性を引き出す土台として、本書の価値を強く感じました。
ロボットの運動計算を包括的に学び、データ駆動手法と物理ベースの理解を橋渡ししたいエンジニアにとって、基盤を確実に固める一冊です。
ロボット運動計算論
ヒューマノイドロボットのように、数十もの自由度が複雑に絡み合う構造体が、生き物のように滑らかに躍動する姿には、理屈抜きに魂を揺さぶられる感動がある。
しかし、その優雅な振る舞いの裏側には、膨大な計算を処理し、運動を最適化し続ける数理の世界が広がっている。
本書は、ロボットの動きの源泉である運動計算理論に真摯に向き合い、数理が描くロボティクスの美学を鮮やかに描き出した一冊だ。
本書の最大の魅力は、一貫した数学的表現によって運動学・動力学を根底から再構築している点にある。
従来、ロボットの運動方程式を個別の事象として捉えてしまうと、計算が複雑化するほど全体像が見えにくくなるという課題があった。
しかし、本書が提示する体系的な理論に触れると、読者の頭の中に点在していた断片的な知識が次々と結びつき、各数理的処理が全体の中でどのような役割を果たすのか、その位置づけを明確に把握することができる。
この体系化がもたらす恩恵は、実用面においても計り知れない。
剛体の回転と並進の運動を合わせた6次元ベクトルである空間ベクトルによって、ロボットの運動表現は見通しの良いものとなり、アルゴリズムの高速化という確かな実利を導き出している。
さらに、2020年代以降の潮流であるロボットの制御は「運動を最適化する」問題として一般化された形で捉えるアプローチについても、発展的内容として深く掘り下げられている。
シミュレータへの正確な数式実装を見据えた計算理論の整理から、位置・速度・加速度の計18次元の運動を包括的に扱う枠組み、さらにはソフトロボティクスの連続体モデルに至るまで、網羅された知見は単なる技術解説の域を超えている。
それは読者にとって、次世代の技術を切り拓くための確かな発展への道しるべとなるはずだ。
本書は、理論レベルでロボティクスを極めようとするエンジニアや研究者はもちろん、既存の知識を統合し、最前線へ挑もうとするすべての学習者にとって、思考をアップデートするための最高のガイドとなるだろう。
あの滑らかな動きの背後にある、緻密で美しい数理の奔流を、ぜひ本書を通じて体感してほしい。
体系化された数理が導く、ロボット運動の美学を凝縮した一冊である。
ケモインフォマティクス
2, 3章などのバイオインフォマティクスは門外漢なので、4章以降を中心に読ませていただきました。
金子先生の書籍は数冊既に購読しており、基本的な内容や流れはかぶる部分があったのですが、最近のホットな内容(構造生成器)などの理論や詳細に触れていた部分は、非常に新鮮で勉強になりました。すでに論文等では登場しており、使用している機関はあるかと思いますが、書籍として話題に触れているものは少ないと思います。
生成AIなどが使える昨今の状況を踏まえると簡単にモデルが実装できてしまいますが、理論が理解できていないとモデルを微調整したり、比較することが難しいと思います。それが、この書籍では理論から逃げずに触れており、内容が難しいところも端折らずに記載がされていました。特にニューラルネットワークに関する基本的な理論とそれらが応用されている事例も併せて紹介されており、ニューラルネットワークの書籍や過去の金子先生の書籍には含まれていない内容で新鮮でした。
モデルを実装するときに書籍を横に置いておき、内容を確認・復習したい時に、書籍に戻って、コードを生成AIと理解しながら実装していくことができると期待しています。
今後ぜひ取り扱ってほしいこととしては、基本的な実験計画法やベイズ最適化の実装に関する書籍は既に発刊されているので、ニューラルネットワークを基本としたグラフ構造を用いたGNNの実装、VAE, Diffusionモデルといった生成モデルを実装、これらの具体的なコードの内容や解説を行っている書籍が出てくるのを楽しみにしています。
細かい点としては、せっかく表やグラフがあるので、カラー印刷の方が読みやすいかなと思いました。
ロボット運動計算論
私は強化学習や模倣学習を用いて、ヒューマノイドロボットによる人手作業の代替化に取り組むフィジカルAI技術者です。今回献本いただいた『ロボット運動計算論』は、AIと物理世界を繋ぐ高速な力学計算や「微分可能シミュレータ」の基盤理論を真に理解するのに必要十分な情報が網羅されていました。
現在のフィジカルAI開発において、ロボットの制御は「運動の最適化問題」として一般化して解かれつつあります。非線形モデル予測制御の実時間実行や、GPU並列シミュレーションによる二足歩行制御器の強化学習には、本書で体系化されている6次元空間ベクトルを用いた高速な動力学計算(Articulated Body Algorithmなど)が不可欠です。
中でも特に興味深かったのは、第9章で述べられている「包括的運動表現」です。空間変換、速度変換、加速度変換を統合し、18次元の行列空間でロボットの運動を定義するこのアプローチは圧巻でした。この枠組みは、未知の物体操作や外部環境との接触といった、実環境特有の様々な空間的・速度的・力的な制約を伴う諸問題を、AIの学習モデルや運動最適化に的確に提示・反映させるための強力な理論的基盤となります。
データドリブンなAI制御技術を確固たる物理的基盤の底上げによって革新したいと考える全エンジニアにとって、間違いなく手元に置くべき必読の一冊です。
ケモインフォマティクス
本書を通して、ケモインフォマティクスやデータ駆動型の創薬・材料設計に関する幅広いトピックを俯瞰することができた。扱われている範囲は広いが、単なる技術紹介にとどまらず、それぞれの手法がどのような場面で有効なのか、どのように研究へ応用できるのかを考えながら読める構成になっていた点が印象的だった。自分の研究に直接関係する内容も多く、読みながら「これは自分の解析にも使えそうだ」「この論文は後で読んでみたい」と思う箇所が何度もあった。特に、構造生成器とオミクス解析の章では最近の様々な研究について重要な研究の論文が紹介されており、ケモインフォに入門するうえで、どの論文から読めばよいかの見通しを得られた。また、各章において、SHAP値や適用範囲(Applicability Domain)など、曲者な用語の説明が丁寧だったり、ベイズ最適化を適用する場面や最初に行うべき実験条件は何かといった、痒いところにてが届くような解説が非常に参考になった。全体として、分野の全体像を掴みながら、自分の研究に活かせる具体的な視点も得られる、実用性の高い一冊だと感じた。
材料の数理モデリング - マルチスケール材料シミュレーション -
本書では,量子化学計算,第一原理計算,分子動力学計算,有限要素法,伝熱・凝固解析,粒子法による流体運動の計算,状態図計算という,電子からバルク材料までの各次元における数理モデリングの基礎が各論的に扱われている.「マルチスケール材料シミュレーション」という本書の副題通りの書籍である.各章は前述した各計算・解析法の各論からなる.シミュレーションのみではなく,その基礎となる理論や工業的な応用先まで述べられており,入門書として適していると感じる.
私は鉄鋼のミクロ組織と力学特性の関係について研究している.そのため,特に分子動力学計算,状態図計算,有限要素法に興味がある.本書を通読した後,本書を参考にして,早速,フリーのCALPHAD法ソフトウェアをインストールし,状態図計算を行ってみた.現在,実験やシミュレーションに基づく多元系の状態図を容易に入手することができる.しかし,手に入れた状態図が必ずしも自分の研究で使用する組成を満たしているとは限らない.簡易的にでも自分で状態図計算をできることは強力なツールとなる.有限要素法については,機械工学や建築土木分野で行われるような均質等方性材料の弾性解析の説明にとどまっている.書籍名が「材料の数理モデリング」であるので,結晶塑性有限要素法など,材料の不均一性を考慮した有限要素法の紹介があることを期待していたため,その点については残念なところがある.続編や改定がされるときには,結晶塑性有限要素法についても説明されることを期待したい.
お問い合わせ先
書籍に関するお問い合わせやご相談は、以下まで、お気軽にお問い合わせください。
- コロナ社 営業部
- TEL:03-3941-3133
- FAX:03-3941-3137
- 休業日を除く、平日の9時~17時








