書店様向け

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書店様向けレビュー

読者モニターレビュー【 Mizu 様 (業界・専門分野:組み込み開発)】 掲載日:2025/10/17
Pythonを使った エンジン性能シミュレーション

本書はエンジンの性能計算に焦点を当てて、数値計算を体験できる内容となっている。
長年著者が取り組んできた経験を活かし、実務に近いシミュレーションに触れることができると感じた。
使用しているPythonの機能も標準的なものに絞っており、Pythonを初めて扱う人でも十分に理解できるコードになっている。

本書は通常の数値計算の書籍と異なり、常に具体的なエンジンのモデルに対して計算を行っている。
例えば、燃焼性能や燃焼温度が挙げられており、これらに対し、どのようにモデル化しプログラムするかを経験できる。
このためどのような対象をなぜ計算しているのかがイメージでき、スムーズに学習を進められると思う。

またシミュレーション結果の解釈についても、比較や条件式による定量的な方法と直感を用いた定性的な方法が紹介されており、
エンジンに詳しくない自分のような人にも理解しやすい構成となっている。

コンピュータによるシミュレーションを行いたいが方法がわからない人や、数式をプログラムにどのように落とし込めばいいか悩んでいる人に本書を勧めたい。

読者モニターレビュー【 ZOOK 様 (業界・専門分野:建設コンサルタント)】 掲載日:2025/10/17
新 測量学 - 基礎から実践まで -

この新 測量学は前著「近代測量の理論と実践」の改訂、改題したものであるが、大学等向けのテキストや測量士補等の資格試験の参考書として書かれたものである。
特に長年建設コンサルタントとして公共工事の現場技術業務を仕事にしている私でさえ、測量の基本の原点へ戻してくれる一冊となっている。
初めて測量士補の試験を受験する方々にとっては、試験内容の全体像が掴める事ができると思う。
最近でのGNSS測量に関する記載や地図編集に関する項目があるので読んでみても興味がそそられる。
我々の業務では特に第7章の応用測量、第8章の工事測量の範囲が業務のメインとなっているが、第8章・工事測量にて丁張りの説明がとても新鮮だった。
他の測量に関する書籍では、お目見えする項目が無いのだが、きちんと図示による丁張りの説明が分かりやすい。
さらに第9章では測量業務における積算や第10章では測量機器の取扱いの解説があるのがありがたい。
ぜひ、初学者や工学系の学生にお薦めしたい一冊である。

読者モニターレビュー【 overload 様 (業界・専門分野::機械工学(特に機械工作))】 掲載日:2025/10/17
機械系のための力学通論

近年は大学等の機械系学科として卒業生にはどんな技術的職種や研究分野に進もうとも最低限必要となる機械力学(振動学)の内容をとてもコンパクトかつ平易にまとめたテキストがかなり増えてきているように感じますが、本書は、機械力学(振動学)を技術的な職務や研究でツールとして用いるのに必要な、一般的な大学の講義用教科書を超えた高度なレベルが主に扱われているという意味で、プロフェッショナル志向なテキストといえそうです。
そのような内容のため、学生というよりかは現場の設計開発等で機械力学(振動学)を使いこなす必要のある現場の技術者や、研究の過程でそのようなプロ志向の機械力学(振動学)の素養が必要になってくる大学院生向きの一冊ではありますが、大学学部までに教えきれなかった内容を教授するという意味では、大学院の機械力学(振動学)特論みたいな科目のテキストとしても使えそうです。

あとは専門科目のコマ数や時間配分が比較的恵まれていて教員の各科目における分業が大学ほど徹底していない高専(高等専門学校)では、一人の教員が初歩の力学・工業力学(高専本科2-4年程度)からそれに続く機械力学(振動学)(本科4-5年程度)、さらに続編の(機械)力学特論(専攻科)といった流れで本書を最初から最後まで通読させることも可能かと思います。数式の分量がかなり多めですが、数式展開を丁寧に行っているが故のことで、数学的補足も比較的充実しているので、力学の理解に必要な大学理系一般教養レベルの数学を専門科目と同時並行か、下手したら数学よりも先に専門の力学を履修する必要のある高専の方が本書の有難みは大きいかもしれません。

読者モニターレビュー【 MASA 様 (業界・専門分野:ロボット工学)】 掲載日:2025/10/15
部材の力学 - 設計のためのはり・板・殻の弾性力学 -

本書は梁・板・殻に関する弾性力学理論に関する書籍であり、基礎方程式の導出や応力・ひずみを求める問題を解く課程を丁寧に記載されています。
特に、基礎方程式の説明に用いられる図や説明が丁寧に記載されているため、独学者でも導出される式の意味を理解することができます。
また、著者が3Dプリンタの利用より可能になった周期的な微細構造の力学の考え方として、ハニカム構造を例に詳細に書かれており、異方性を持つ構造の力学の考え方についても記載があり、通常の材料力学の書籍では記載のない内容があるのが興味深かったです。
書籍を読んだ不明点としては、弾性力学の理論を設計に反映させるにはどうすれば良いかがわかりませんでした。
これはレビュアーが弾性力学の初学者であることも原因ですが、今後の改定時やホームページ上に具体例を示す資料を追加することで、読者が弾性力学の考え方を設計に反映させる際の手助けになると思います。

本書を読む際は、材料力学の書籍と合わせて読むと理解がしやすいと思います。私は「材料力学の基礎」(養賢堂)を参照にしました。
別途書籍を用意する場合は、著者の書籍である「機械系コアテキストシリーズ 材料力学」(コロナ社)が本書の所々で参考文献として用いられているため適切な参考文献になると思います。
本書のご購入を検討する方々に私の読書レビューがご参考になれば幸いです。

読者モニターレビュー【 miya 様 (業界・専門分野:情報系)】 掲載日:2025/10/15
アルゴリズムとデータ構造をExcel VBAで学ぶ

アルゴリズムを学ぶことがさまざまなレベルで求められる時代となった今、どこからどのように手を付けたらいいのかわからない学習者は多いことだろう。
大学入試の情報Ⅰのアルゴリズム問題の学習でも、Pythonやscratchなどで実装すればと工夫されている高校の先生も多い。
Excel VBAはPCにExcelが入っていれば使えるものなので、これを使うのは学習環境を準備するコストがかなり低くなると考える。

そしてこの本はExcel VBAでも十分にアルゴリズムとデータ構造を学習できる工夫がされている。

具体的には、Excelのセルの値が変化していったり、色の変化でアルゴリズムがどのように動いているかを見て把握できるといった点である。プログラム言語の場合、例えば配列の値がどのように変化しているのかは最後に表示させないとわからず、途中経過が見えにくい欠点がある。しかしExcelのセルに途中経過が表示される本書の工夫は、プログラム言語で学ぶのが当然と思っていた私には新鮮であった。

最後にひとつだけ。Excel VBAはいわゆる「マクロ」なので、慣れてしまうと気軽に「有効にする」をクリックしてマルウェアに感染しないよう指導を忘れずに。

読者モニターレビュー【 wiztukamotosan 様 (業界・専門分野:自動車)】 掲載日:2025/10/15
Pythonを使った エンジン性能シミュレーション

社会人最初の業務がエンジンの1Dシミュレーションの開発と運用でした。良かった点として、情報系を卒業して新卒でエンジンの1Dシミュレーションの担当になり、当時(2007年)は参考書がなく本書のような書籍が欲しかったです。この分野は各社毎にノウハウとして色々なモデルがあると思います。そのノウハウ構築のための入門としては良い書籍だと思います。改善してほしい点として、サンプルコードがfortranのコードを最低限動くようにしたpythonコードになっており非常に読みにくいです(すべての変数がglobal変数、設定ファイルがyamlやjsonでなく独自フォーマット、etc)。これであればgfortranの入門も含めて書籍に載せて、fortranのコードの方が読みやすかったです。

読者モニターレビュー【 いたち 様 (業界・専門分野:評価装置メーカー)】 掲載日:2025/10/15
電気回路素子を理解するための 電気磁気学

本書を読み終えた印象として、非常に読みやすく、分かりやすい本でした。
内容はタイトルの通り、電気回路の序盤と電磁気学の2つの観点で執筆されていたように思います。読む対象者としては、一通り微積・ベクトルを学んだ大学3年生以降くらいの内容だと思います。
読みやすさとしては、「イラストと表の多さ」・「タイトルが多く分別されており頭で整理がしやすい」のが印象的でした。また、途中式が書かれておりさっと読み進められるのもよかったです。

読者モニターレビュー【 尺取り虫 様 (業界・専門分野:哲学)】 掲載日:2025/10/15
新 測量学 - 基礎から実践まで -

本書は測量に対する教科書的に書かれた書物であるが、「測量を学問体系として学び、それを実践的な技術に展開してゆくプロセス」を学ぶと謳うように、徹底して原理から応用の理解へと進む記述で一貫しており、単なる暗記的な学習以上の学びをもたらすようになっている。また、UAV写真測量等最新のトピックも幅広く扱いながら、第9章測量業務の積算では費用の算出といった経理に至るまで、測量にまつわる広範な内容が、コンパクトにまとめられている。リモートセンシングには一章を割くなど、測量のみならず多様なジャンルへの興味を惹起し、測量の世界の奥深さを知り、次の学びへと誘う良質な入門書と言えよう。

読者モニターレビュー【 もちすけ 様 (業界・専門分野:光半導体通信)】 掲載日:2025/10/10
高効率薄膜太陽電池の物理と化学 - ペロブスカイトと有機半導体 -

太陽電池とくると半導体のエネルギーバンドから始まってPN接合が来て…という順番で半導体デバイスの教科書に光デバイスの一部として入っていることが多いですが、その扱い方ゆえに深いところへの説明をした書物は探すのに苦労しました。本書は第1章・第2章でそのかゆいところに手が届く説明がされており、もうここだけでも太陽電池について必要な知識が得られます。本書の特徴であるペロブスカイト・有機半導体太陽電池は私が太陽電池の教科書輪講を学生時代に行っていた頃はまだ扱っている書物もなく、この分野の進歩のすさまじさを実感しました。その一方で例えばペロブスカイトの説明では結晶格子の説明をきちんと含めていたり、有機半導体の方ではエネルギーバンド図をふんだんに用いて説明していたりと、電気化学や電子工学の基礎があれば十分に読み進められるのが素晴らしい点だと思いました。私は物理側から化学側の内容に触れて新たな発見がありましたが、逆も然りだと思います。巻末の比較的新しい論文も含めた参考文献リストもあるので、この分野にチャレンジする研究者・技術者の必携の一冊となるでしょう。

読者モニターレビュー【 JUDDER 様 (業界・専門分野:自動車業界)】 掲載日:2025/10/07
Pythonを使った エンジン性能シミュレーション

『Pythonを使ったエンジン性能シミュレーション』は、エンジン開発に関わっている人はもちろん、Pythonをちょっと触ったことがあるくらいの人にもおすすめしたい本です。
GT-POWERなどの専用ツールを使っている人なら、「なんとなく使ってるけど中身はよくわかってない」っていう部分があると思うんですが、この本を読むと「なるほど、こういう仕組みだったのか」と腑に落ちる瞬間がたくさんあります。
自分もエンジン性能開発の仕事をしていたとき、GT-POWERを使ってはいたものの、恥ずかしい事ながらパラメータの意味までは深く理解していませんでした。
でもこの本では、Pythonを使って自分でシミュレーションを組み立てながら、仕組みを一つ一つ確認できるので、ツールの考え方が見えてくる感じがしてすごく面白いです。
マネージメント層の人にもぜひ読んでほしいです。Pythonを使ってちょっとしたコードを変えてみるだけでも、「お、こういうことか」とにやにやしながら試せると思います。
コードをAIに読み込ませて対話しながらコードの意味を確認したり、自分で書き直してみたりするのも楽しいですし、趣味としても十分に楽しめる内容です。
エンジン開発に関わっている人なら、仕事にも趣味にも役立つ一冊だと思います。
「エンジンやPythonって難しそう」と思っている人ほど、ぜひ手に取ってみてほしいです。

読者モニターレビュー【 bon 様 (業界・専門分野:Engineering in Medicine)】 掲載日:2025/10/07
インタラクションデザイン - 生活・技術・人をつなぐデザインのかたち -

本書は、教科書で見落とされがちな試行錯誤の手つきを前景化し、生活の現場からインタラクションデザインを捉え直す実践的ガイドである。第1章は当該分野の地図を端的に示し、専門外の読者にもその意義と射程を伝えつつ、以降の学びの足場を築く。

また、生成AIを用いて案内板やユーザーインターフェースの課題を抽出する取り組みも紹介される。AIは強力な補助となる一方、指摘の妥当性が揺らぐ局面も少なくないことを踏まえ、人が学び、経験に基づいて良し悪しを判断する重要性を説く。

さらに、問題発見の姿勢や要素分解、偉大なアイデアの模倣からの学び、現場重視の観点など、多視点から未来を考える契機が随所に散りばめられている。とりわけ次世代を担う読者にとって、自ら手を動かし思考を深めるための具体的なヒントが得られるだろう。

総じて、本書の強みは、生活・技術・人を結ぶ豊富な実例と、失敗、試作、評価を往還する実践の枠組みにある。分厚い理論体系を足すより、プロトタイピングを通じて目を養う姿勢を促す書籍であり、学習から実務への橋渡し役として心強い一冊である。

読者モニターレビュー【 佐藤 希美 様 浜松未来総合専門学校 (業界・専門分野:ロボティクス,自律移動ロボット)】 掲載日:2025/10/07
身体性知能とシステム・制御

この書籍は「知能は脳の中だけに存在する」という従来の考え方とは異なり,身体と環境の相互作用を含めた知能のあり方を示している.ロボットの歩行運動や群行動,力覚制御の設計に至るまで,身体構造や環境との相互作用が生み出す知能を数理モデルを通して論理的に掘り下げている.

特に「身体性」という概念は抽象的であり,初学者にはやや難解に感じられるかもしれない.しかし,本書の関連リンクには丁寧な説明が用意されている.概念のイメージが掴めない場合は,事前にそちらを確認することを強く勧めたい.

内容は大学から大学院レベルを想定しており,数式やシミュレーションを通して理論と実装の両面を学べる点が良い.各章の終わりには章末問題が充実しており,自分自身が理解をしているか確認する機会としても活用ができそうだ.

第2章の歩行現象のモデル化や第4章のホッピングロボットの手ごたえ制御シミュレーターなど,理論を実際の動きに落とし込むことが理解を深める助けとなるだろう.付録も充実しており,概念整理の面でも非常に有用である.

読者モニターレビュー【 あっき〜 様 (業界・専門分野:品質管理)】 掲載日:2025/10/06
新 測量学 - 基礎から実践まで -

測量士試験を念頭に読み進めたが、初学者でも測量の全容をつかめる構成になっており、入門書として有用だった。各項目は数ページ程度で簡潔にまとめられ観測方程式等の数式紹介も簡潔で自習を促すスタンス。測量業務積算や測量機器の紹介など実務的な内容もあり測量全体の俯瞰に役立つと思う。初学者にとって測量を体系的に学ぶためのマイルストンとして位置づけられる一冊だと感じた。

読者モニターレビュー【 あまさん 様 (業界・専門分野:制御工学)】 掲載日:2025/10/06
身体性知能とシステム・制御

この書籍では、実在の動物の動作を制御工学的に解析し、その動作を模倣するロボットの実現方法について主に解説されています。
各章では、筋肉単位の局所的な動作の解析から始まり、全身の動作、さらには群れとしての行動まで幅広く取り上げられており、入門者でも大きな視野を得られる内容となっています。
ただし、数式の理解には制御工学や力学の基礎知識が前提となっているため、それらを身につけた上で読み進めるのが望ましいでしょう。
制御工学の一般的な視点では、ロボットは剛性を高めて外部からの影響をできる限り減らすことが重視されます。
しかし本書では、あえて剛性を低くすることで、環境からの影響を利用し、より少ない知能リソースで効率的に制御できるという興味深い知見を得ることができます。

読者モニターレビュー【 松岡 大輔 様 (業界・専門分野:プログラマ)】 掲載日:2025/10/06
インタラクションデザイン - 生活・技術・人をつなぐデザインのかたち -

本書は、なぜ我々には本質的な新しさを作り出すことができないか、という根本的な問題意識に立脚しながら、いかにして新しさを見つけ、形にしていくかについて、丁寧に言語化した書籍である。インタラクションデザインというテーマはやや限定的な印象も受けるが、インタラクション、あるいはインタフェースというテーマ設定の背景には、デザイン思考がある。デザイン思考をより現実の方に引き寄せ、現実的な現象と人の界面を具体的に考えるということである。

本質的な新しさは、定義上、既存の知識の体系ではとらえられない。とりわけ既存の知識の体系の専門家であるほど、現実的な現象との界面で新しさの芽を見つけることが難しくなる。そのとき、学問的なアプローチになにができるか、という知的な誠実さが本書の根底にあり、そこに積極的な可能性を見ているのである。

したがって、本書は理論書ではないし、体系的な知識を提供するものでもない。本書は方法の書であり、本書から学ぶというよりは、本書で得た方法を現実に適用し、日々自ら新しさを発見していくという「営み」の必要性を説くものである。我々が知りうるのはせいぜい方法であり、あとは、具体的に現実的な人生を生きていく中で絶えず発見し続けるしかないのである。

そのようなアプローチを取る際に、本書が基本的な姿勢としているのが、失敗から学ぶということである。失敗とは、既存のデザインが機能不全を起こしている現象であり、まさにその理由を考え、解消することから、新しさが生まれる。

失敗は、基本的に、経験的にしか知られない。人が実際に対象を使ってみて初めてわかるのである。たとえば生成AIを使ってインタフェースの不備を洗い出す手法も検討されているが、執筆者の結論は現時点では否定的である。つまり、人が現象と接する界面において初めて、失敗は認識されるのであり、そこからしか新しさは生まれないだろうと考える。そして、失敗の経験を抽象化して分類することから、方法が生まれる。

問題は、むしろ、認識の面にある。自発的に新しいことを試みて失敗を肯定的に経験する心理を、教育課程で抑圧されることが多い。そのマインドセットから自己を解放する方法についても検討されている。そして、精神論ではなく具体的にプロトタイプを作り続けて考える、という実践的な姿勢も特徴だろう。

本書は、コンピュータ技術以降の情報科学の進展を踏まえて、現代的なメディア環境において具体的な事例を検討している。コンピュータの汎用性を、人とのインタラクションを通じて専用性へと最適化するという視点において、テクノロジーとメディアとデザインが交差しているところが、類書と比較した場合の特徴だろう。

読者モニターレビュー【 onia 様 (業界・専門分野:振動・音響)】 掲載日:2025/10/02
部材の力学 - 設計のためのはり・板・殻の弾性力学 -

本書は、構造の最小単位であるはり・板・殻を主要な対象とし、
線形弾性から有限変位、一部の部材では座屈までを簡便化された理論で扱います。
解析解が得られる問題に限定し、設計に直結する数式とその導出が丁寧に記述されています。
演習問題も充実しており、回答はWebで公開されているため独習者にも配慮されています。
具体的な数値検討は、解析解を数値計算プログラムや表計算ソフトに落とし込むことで理解をさらに深められるでしょう。
単純な部材だけでなく、3Dプリントの普及に伴い活用の広がっている周期構造に関しても扱われ、第1章のハニカム、付録のMicropolar弾性体の話題も導入として参考になります。
実用的で分厚すぎず、必要な情報にすぐアクセスできるため、リファレンスとして手元に置いておく価値のある一冊です。

読者モニターレビュー【 yk 様 (業界・専門分野:臨床医療, 神経科学)】 掲載日:2025/10/02
身体性知能とシステム・制御

エージェントと環境の相互作用により知能的な振る舞いが創発するという考え方は、なるほど確かにそうだと思う反面、これだけではやや抽象的に過ぎる。それをどうやって定式化し検証し得るのだろうか、という疑問が真っ先に生じるのである。本書は歩行運動や群知能など具体的な問題に焦点を当て、その問いにいくつかの答えを与えてくれる。

特に印象的だったのが、純粋な力学現象として一様重力場のもとで斜面を“歩く”脚のモデル=受動歩行モデルである。運動方程式の導出からその数値積分に至るまで非常に丁寧な解説が与えられており、公開されている数値積分のpythonコードを用いて遊ぶことで身体性知能の一例を深く掘り下げることが出来る。目的の運動を得るためには初期値の微調整が必要であるという微妙な問題を実感することもできるだろう。付け加えるなら、受動歩行は力学の応用問題として非常に味わい深いものであり、物理学を専攻する学生にとっても一読する価値がある。

本書で扱われる身体性知能は、誤解を恐れずに言えば、脊髄反射により表現される類の知能なのであって、いわゆる脳の高次機能における知能とは言えない。個人的には、学習や他者とのコミュニケーションも含めた脳の高次機能を実現するロボットを作ろうと思ったときに本書の知見をどのように組み込めるだろうか、という点が気になった。中でも、本書では軽く触れるに留められているが、フリストンの自由エネルギー原理との接続がどう構成できるのか、興味あるところである。

以上は私が興味をかき立てられた事柄であるが、同様のことは全ての読者について言えるだろう。すなわち、読者は自身の専門によってそれぞれ思う所が出て来るはずであり、それは新しい研究の萌芽であり得る。本書はそれだけ多くの示唆を内包しているのであり、とりわけ境界領域に身を置く者にとって貴重な書籍であると思う。

読者モニターレビュー【 N/M 様(業界・専門分野:総合情報学[情報科学])】 掲載日:2025/09/24
アルゴリズムとデータ構造をExcel VBAで学ぶ

本書は,アルゴリズムとデータ構造について,プログラミング言語としてExcel VBA(マクロ)を用いての記述がなされている.

まず,アルゴリズムとデータ構造について学び,実際のアルゴリズムをプログラミング言語で表現する際には,C言語,Java(最近だとPython?)等が使用されることが多い.しかし本書では,VBAが採用されている.その理由としては,[まえがき]にも記載されている通り,表計算ソフトのワークシートを記憶装置(メモリ)として見立て,プログラムの実行中の処理をメモリが更新されていく様子をセルの色分けで可視化して理解できる点が本書の大きな特徴での1つである.

個人的には,3章のデバッグについて,ここまで丁寧に詳しく書かれている書籍というものが,あまりないのではないかと思った.その上,プログラムの基本的な文法に入る前にデバッグに関する解説をしっかりと記述されているという点も驚かされた.

アルゴリズムとデータ構造についての守備範囲としては,他言語を扱った類書でもよく見かける,計算量(オーダ記法),探索(線形探索,二分探索,ハッシュ法),リスト構造(スタック,キュー(待ち行列)),木構造(二分木,木の探索)等の基本的なアルゴリズムとデータ構造について解説がなされている.
 
ただ一つ気になった点は,先ほども挙げたが,本書はプログラムの実行中の処理のメモリ内での様子をセルで可視化して理解させるというアプローチを採用しているが,図8.2や図9.4,図9.7等がそれらに該当するが,背景のパターンよりも色ありの図の方が,よりイメージしやすかったように思った.本書のサポートサイトに色あり版の図版もあるといいかもしれない.
 
最後に,各章末には章末問題が数問ほど用意されている.これは,各章で身につけたことを確認できるようなプログラミングの問題を中心に記載されており,理解度チェックとして大いに活用できるだろう.

読者モニターレビュー【 たーぼー 様 (業界・専門分野:自動車部品業界・物性物理学、プラズマ物理学)】 掲載日:2025/09/18
発変電工学

本書は、電力システムの根幹をなす発電・変電の理論と技術を体系的に整理した良書である。電気エネルギーを生み出す「発電」と、電気エネルギーどうしの間でエネルギー変換を行う「変電」の解説から始まり、各種発電方式の特徴、変電設備の役割、さらには系統運用における安定性や信頼性の確保に至るまで広範に及ぶ、電力工学の基盤を理解するうえで極めて有用なものである。特筆すべきは、単なる基礎理論の記述にとどまらず、電力システムの実際的な課題や最新技術の動向にも言及している点である。例えば、変圧器や遮断器といった主要機器に関する解説では、理論的な動作原理と同時に、設計上の留意点や運用上の制約にも触れられており、研究と実務を橋渡しする視点が示されている。これにより、学術的知見を実社会に適用する際の具体的イメージを獲得できる。また近年、電力系統で重要視されるようになった電力貯蔵の持つ意味合いやその具体的な内容について述べられており、発変電工学の体系的な習得が将来的な電力ネットワークの高度化や安定化に資する研究を進めるうえで不可欠であることを認識させられる。

読者モニターレビュー【 dmatsuoka 様 (業界・専門分野:プログラマ)】 掲載日:2025/09/11
アルゴリズムとデータ構造をExcel VBAで学ぶ

本書は書名の通り、Excel VBAを用いてアルゴリズムとデータ構造について解説した教科書である。当然誰もが思うのが、なぜあえてExcel VBA? という疑問だろう。PythonやJavaでよさそうなところである。ひとつには、Excelが日常業務でも頻繁に使用されており、学習しやすいという理由が挙げられている。そして、Excelには統合開発環境VBEが組み込まれており、特殊な開発環境を構築する必要がないため利用しやすいことも、学習しやすさの要因のひとつである。

また、本書の中核であるアルゴリズムとデータ構造の解説において、Excelのワークシートが効果的に利用されていることも理由である。たとえば探索アルゴリズムの処理の過程を、Excelのワークシートのセルに色を付けて記録していくことで、探索アルゴリズムの処理過程が可視化される。

データ構造の解説では、リスト構造や木構造をワークシートのセルに対応させる。そもそもメモリはセルの集まりであり、ワークシート上のセルの集まりをメモリと見立てれば、データ構造がExcelのワークシート上で可視化できる。「セル」をキーワードに連想したようなちょっとした発明である。書籍にはワークシート上でのデータ構造の実装法のアイデアが具体的に書かれており、なかなか興味深いアーキテクチャの可視化がおこなわれている。

本書はExcel VBAの入門書や解説書ではないが、アルゴリズムとデータ構造を解説する前提として、第3章、第4章を中心にExcel VBAの導入的な説明はおこなわれている。このパートが面白いのは、デバッグの観点を重視して、間違ったコードを修正するというやり方でコーディングの解説がされているところである。プログラミングは理論上の計算とは異なり、しばしば間違い、動かなくなるものである。この点、すなわち、デバッグの必要性こそが、プログラミングのプログラミングたるゆえんであるともいえる。そして、Excel VBAというプログラミング言語は、ある意味粗く、洗練されていないがゆえに、エラーや計算間違いを誘発しやすい作りになっているともいえる。

例えば、サブプロシージャで変数alphaを宣言する。そして、プログラムの途中でalphaのつもりでalphとタイプミスをする。このまま実行しようとすると、多くの言語では実行時エラーになるだろうが、Excel VBAでは実行されてしまい、計算結果の間違いとなる。特記しなければalphが自動的に変数として扱われるからだ。こういう作りであるがゆえに、学習者は実行時エラーと計算間違いの違いや、それへの対処法により敏感になる必要がある。作りの粗さが学習には程よい素材になる。PythonやJavaではこうはいかないだろう。

ただ、第12章までの内容は大変整理されているのだが、データサイエンスを扱う第13章、AIに関する第14章の内容に関しては、やや付け足し感があることは否めない。とはいえ、全体的に「手を動かし、目で見て学ぶ」アルゴリズムとデータ構造の教科書としてまとまっており、Excel VBAという選択にも必然性が感じられた。

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