機能性食品学

機能性食品学

機能性食品制度の概要,栄養の基礎,機能性食品成分と疾病の関わり,機能性食品の課題と今後の動向を安全性と絡めて平易に解説。

ジャンル
発行年月日
2017/03/03
判型
A5
ページ数
206ページ
ISBN
978-4-339-06753-8
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • レビュー
  • 著者紹介
  • 書籍紹介・書評掲載情報

機能性食品制度の概要にはじまり,栄養の基礎,機能性食品成分と疾病の関わり,機能性食品の課題と今後の動向を安全性と絡めて平易に解説。機能性食品を学ぶ学生,食品開発者はもちろん,一般消費者にも手に取ってほしい一冊。

推薦のことば
先進諸国では超高齢化社会の中で健やかに生きる健康戦略は多方面から議論されています。従来のように,病気と診断されてから治療する時代から,病気になる前にいかに病気にならないように心がけるかは非常に重要です。近年,先制医療という新しい概念が注目されてきています。先制医療とは,病気が発症する前にそれを予測して,適切に医療行為を施すことで発症を遅らせることを目指した夢のある概念です。

私は,機能性食品が,先制医療を実現するための重要な一つになると考えており,そういった意味でも本書の出版に大変期待していました。機能性食品(いわゆる健康食品を含む)は,現在多くの国民に何らかの形で摂取されていますが,実際の機能性食品の摂取に関して科学的意味を十分理解されている方はどのくらいおられるでしょうか。実際,科学的なエビデンスなく,単なる宣伝により効能を期待して摂取されている方が沢山おられます。健康食品を摂取する際には,実際に安全かどうかを個人で判断できる能力を身につけることが大切です。特に,医薬品を処方されている方は,薬との相互作用がある場合があることを忘れてはなりません。私は,機能性食品を国民が正しく理解することは,これからの社会にとって非常に大切なことだと思っています。したがって,このたび今井伸二郎博士の執筆で本書が出版の運びとなったことは大変喜ばしいと思います。

著者は,東京大学,東京医科歯科大学での基礎研究から,日清製粉グループでの製品開発のための研究まで非常に幅広い分野で活躍された第一線の分子免疫学領域の研究者であり,機能性食品を熟知しています。本書によって,読者は,機能性食品に関して必要な知識の全体像とは何かを把握することができるであろうと思います。

本書では,機能性食品の安全性,有効性についての解説から,2015年より新たに始まった機能性表示に関する内容まで,実際に著者がその開発に携わった経験をベースに執筆されていることが大きな特徴でもあります。したがって,大学,大学院での講義のテキストとして,さらには一般の方が,機能性食品の内容を理解するのに最適な意義深い本です。

多くの読者が,機能性食品の本質を理解され,周りの方々と情報共有して,健やかな生活を送るための一助となることを期待して本書を推薦させて頂きます。

2017年1月 京都大学名誉教授・藤田保健衛生大学教授・一般社団法人日本食品安全協会理事・特定非営利活動法人 医薬品適正使用推進機構理事)斉藤邦明



まえがき
2015年に機能性表示食品制度が施行され,健康食品業界は市場の拡大が進行している。本書第1 編ではこの新制度についてその実態と,今後について解説した。機能性食品を学ぼうとする読者にとって,この制度の情報は必須であろう。ぜひ本書を活用していただければ幸いである。この新制度では事業者の責任において機能性の表示ができることから,消費者にとって有益な商品が拡大するのは確かなことと思う。しかしながら,この制度に便乗し,有効性や安全性に問題がある商品もまた増加することが懸念される。新制度の導入には大きな期待が寄せられるが,このような問題点を防ぐために,新制度と関連する周辺の法整備が後手後手にならないよう,遅滞なく進めていくことも行政の責任ではないだろうか。特に安全面では事故が起こってからでは遅く,安全性に問題がありそうな商品が拡散しないよう周辺法整備の充実を期待したい。

大型薬品店の健康食品ブースは従来に比べ拡大し,並んでいる商品数も多いが,内容を見ると玉石混交の状態である。インターネットを開けば,健康食品のバナー広告が目に飛び込んでくる。テレビをつければ,通販の健康食品がこんなに効いたという体験談が流れてくる。どれも効きそうで専門家でさえ迷わされてしまいそうである。しかし,どれもがそんなに効くなら医薬品はいらなくなってしまう。実際は有効性が低い商品が多いのも事実である。賢明な消費者にあっては,自分に適する機能性食品を熟慮して選択してほしい。そして効果が体感できたら,飽きずに続けることが大切である。効果が体感できない商品はやはり効かないのが実際であることも認識してほしい。

新制度では販売業者の責任において機能性が表示できるわけだが,機能性を示す成分をインターネットで検索すればどのような方法で機能性が評価されたかが確認できる。とはいえ一般の方がその結果を解釈するのはなかなか難しい。そこで,有用な機能性食品を選びたいと思う方もぜひ本書を活用してほしい。

本書では疾患ごとにその疾患の予防に期待できる機能性食品を解説している。

機能性食品を理解する上で重要なのはやはり栄養学である。栄養学の基礎知識なしに食品の機能性を論じても,その論点がずれてしまうことが危惧される。そこで,本書ではおもな栄養素についての栄養学の基礎項目を第2 編で解説している。栄養学を十分習得している方は読み飛ばしていただき,少し復習してみようと思われる方にはぜひ第2 編も参考にしていただきたい。

第3編では各論として各種疾患の解説とそれら疾患の予防に効果が期待できる機能性食品について紹介した。それぞれの疾患には各種の発症メカニズムがあり,それらに対応した機能性食品がある。医薬品に比べればそんなに大きな期待はできないと思われる方も多いのではないかと思う。しかし,医薬品はあくまで治療が目的であるが,機能性食品の場合は予防が目的である。劇的な効果は期待できなくとも,体質改善的位置付けであれば効果が期待できる多数の成分が存在すると思う。このことは,いままで私自身が機能性食品の研究開発のみならず,医薬品の研究に携わってきた経験から導き出された正直な感想である。この点からも機能性食品の使用を考えている諸兄には,ぜひ有効な成分を含む食品を体験してほしい。

なお第4編では近未来の医療として注目されている先制医療と機能性食品との関係についても言及した。先制医療とは病気と診断されるより以前の段階,つまり何も症状がない発症以前の段階で,将来罹患する可能性の高い病気を遺伝子検査などで発見し,発病を予防しようという考えである。近年,世界各国の医学,薬学領域の研究成果により,医薬品などの医療技術は革新的に進歩を遂げ,より多くの人々が健康な生活を享受することが可能となってきた。しかし,高齢社会を迎えたわが国にとって,高額な医療費,医師不足,医療格差などの課題が山積している。従来の医療は疾患が発症してから対処する治療医学が中心であったが,今後は予防医学が台頭する必要がある。そのために必要な予防法は医薬品よりは機能性食品が適している。本来機能性食品は疾患の治療が目的ではなく,予防を目的として開発されている。いわば未病と呼ばれる疾患発症の前段階を標的としているわけである。このような観点から考えると,先制医療における予防処置にはたしかなエビデンスを持った機能性食品が多用されるべきであると思う。先制医療における機能性食品の利用が現実となるためには,機能性食品の有効性,安全性が優れていることを実証し,そのデータを積み重ね,さらに積極的に公開していく必要がある。そして,機能性食品の開発者は医療行政に携わる関係者,先制医療を実践する医療関係者に対し,機能性食品の有用性を積極的に啓発していく努力が求められる。機能性表示食品制度開始を機に,今後先制医療における機能性食品利用が活発化することを期待したい。

本書は食品の機能性を学ぶ大学生向けに執筆したが,機能性食品を開発する企業の社員はもとより,一般の消費者が有益な商品をいかに選択すべきかの指標として,その一助になっていただければ幸いである。

2017年1月今井伸二郎

第1編 機能性食品概要
1. 既存の機能性食品制度
1-1 保健機能食品
 1-1-1 特定保健用食品
 1-1-2 栄養機能食品
1-2 保健機能食品制度の問題点
コラム 化成品がすべて有害とは限らない

2. 新しく制定された機能性表示食品制度
2-1 機能性表示食品制度とは
 2-1-1 制度制定の背景
 2-1-2 制度の具体的な内容
 2-1-3 制度の運用にあたり必要な事項
 2-1-4 システマティックレビューについて
2-2 従来に比べた機能性表示食品制度の利点
2-3 機能性表示食品制度導入により期待される効果
2-4 運用当初の機能性表示食品制度の課題
2-5 機能性表示食品の表示例
コラム 天然物がすべて安全とは限らない

第2編 主要栄養素の機能
3. 主要3大栄養素
3-1 栄養素摂取の必要性
3-2 栄養の役割
3-3 栄養素の過不足が招くトラブル
3-4 食物の消化,吸収と代謝,排泄
3-5 食事摂取基準
コラム カロリー制限によるダイエット後にリバウンドするのはなぜか?

4. 糖質の代謝とその機能
4-1 糖質とは
4-2 糖質の消化,吸収,代謝
4-3 肝臓における糖代謝
4-4 糖質の食事摂取基準
コラム 人はなぜ太るのか?

5. タンパク質の代謝とその機能
5-1 タンパク質とは
5-2 栄養素としてのタンパク質
5-3 タンパク質の消化,吸収,代謝
5-4 肝臓のアミノ酸に対する役割
 5-4-1 アミノ酸の分解
 5-4-2 タンパク質合成
 5-4-3 タンパク質異化
5-5 タンパク質を摂取する上での注意点
コラム ある女子大生の会話「昨日コラーゲン入り鍋を食べたのでお肌つるつる」これって本当?

6. 脂質の代謝とその機能
6-1 脂質とは
6-2 栄養素としての脂質
6-3 脂肪酸の種類
6-4 脂質の消化,吸収,代謝
6-5 必須脂肪酸
6-6 脂質の摂取基準
コラム コレステロールの名前の由来

第3編 機能性食品成分と疾病のかかわり
7. 免疫
7-1 免疫とは
7-2 免疫疾患
7-3 アレルギー疾患
 7-3-1 アレルギーの分類
 7-3-2 アレルギー疾患の原因
 7-3-3 アレルギー疾患の治療標的
7-4 炎症
 7-4-1 急性炎症
 7-4-2 慢性炎症
 7-4-3 慢性炎症の原因
7-5 アレルギー疾患に有効と考えられている機能性食品
 7-5-1 作用メカニズムが解明されている成分
 7-5-2 青大豆の抗アレルギー効果
7-6 炎症に有効な機能性食品
 7-6-1 作用メカニズムが解明されている成分
 7-6-2 青大豆の抗炎症効果
コラム 人はどうやって最適なパートナーを見つけるのか?
コラム 怒ってばかりいると健康に悪いのか?

8. ガン・腫瘍
8-1 ガンとは
8-2 腫瘍とは
 8-2-1 腫瘍の分類
 8-2-2 腫瘍の代謝
8-3 ガン・腫瘍の原因
8-4 ガン・腫瘍の予防
8-5 ガン・腫瘍の予防に有効と考えられている機能性食品
8-6 ガン・腫瘍の予防に有効と考えられている機能性食品の作用メカニズム
 8-6-1 免疫賦活によるガン・腫瘍抑制
 8-6-2 免疫賦活による変異細胞の除去システム
 8-6-3 免疫賦活を遡及した機能性食品
コラム ガンが体に悪いのはなぜか?

9. 循環器
9-1 循環器とは
9-2 循環器疾患
 9-2-1 高血圧
 9-2-2 虚血性心疾患
 9-2-3 不整脈
9-3 高血圧に有効な食品の作用メカニズム
9-4 高血圧に有効な機能性食品
 9-4-1 c-アミノ酪酸の降圧効果
 9-4-2 ゲニポシド酸の降圧効果
9-5 虚血性心疾患に有効な機能性食品
9-6 不整脈に有効な機能性食品の作用メカニズム
9-7 不整脈に有効な機能性食品
コラム なぜ食塩を取りすぎると血圧が上がるのか?

10. 脳・神経
10-1 神経系とは
10-2 脳・神経疾患
 10-2-1 アルツハイマー型認知症
 10-2-2 パーキンソン病
 10-2-3 うつ病
 10-2-4 神経伝達物質の働き
 10-2-5 セロトニン不足の原因
10-3 アルツハイマー症に効果を示す機能性食品
10-4 パーキンソン病に効果を示す機能性食品
10-5 うつ病に効果を示す食品
コラム 物忘れと認知症の判別法

11. 糖尿病
11-1 糖尿病とは
 11-1-1 糖尿病の診断基準
 11-1-2 糖尿病合併症
 11-1-3 糖尿病の原因となる生活習慣
 11-1-4 糖尿病発症の仕組み
 11-1-5 インスリンの働き
 11-1-6 糖尿病の治療
 11-1-7 インスリン抵抗性の原因
11-2 糖尿病の予防標的
11-3 糖尿病に有効な機能性食品
 11-3-1 コーヒーの食後血糖上昇抑制効果
 11-3-2 コロソリン酸の血糖値抑制効果
 11-3-3 インスリン抵抗性改善のためのクロムイオン付加
 11-3-4 soymorphin-5の血糖抑制効果
コラム インスリンの発見

12. 骨代謝性疾患
12-1 骨代謝性疾患とは
12-2 骨粗鬆症
 12-2-1 骨粗鬆症の発症要因
 12-2-2 カルシウムの食事摂取基準
12-3 変形性関節症,変形性膝関節症
 12-3-1 変形性関節症の発症要因
 12-3-2 変形性関節症の進行
 12-3-3 変形性関節症を悪化させない生活習慣
12-4 骨の代謝
 12-4-1 ビタミンDの骨代謝に対する機能
 12-4-2 ビタミンKの骨代謝に対する機能
12-5 骨粗鬆症に有効と考えられている機能性食品
 12-5-1 カルシウムの効率的摂取
 12-5-2 b-クリプトキサンチンによる骨粗鬆症予防効果
 12-5-3 リコピンの骨粗鬆症予防効果
 12-5-4 大豆イソフラボンの骨粗鬆症に対する効果
12-6 変形性関節症に有効と考えられている機能性食品成分
コラム 5cm四方の人の骨の塊に象が乗ったら壊れてしまうのか?

13. 脂質異常症
13-1 脂質異常症とは
 13-1-1 脂質異常症の原因
 13-1-2 高脂血症診断の概略フロー
 13-1-3 リポタンパク質の種類と組成
 13-1-4 リポタンパク質の働き
13-2 脂質代謝異常肝疾患
 13-2-1 脂質代謝異常肝疾患の原因
 13-2-2 脂質代謝異常肝疾患の診断基準
13-3 肥満症
 13-3-1 肥満による合併症
 13-3-2 標準体重と肥満度
 13-3-3 肥満をもたらす生活習慣
13-4 高脂血症を改善する食材
13-5 脂質代謝異常肝疾患に有効な機能性食品
13-6 肥満症に有効な機能性食品成分
コラム 豚は肥満なのか?見た目で判断は禁物

第4編 機能性食品の課題
14. 機能性食品の安全性
14-1 機能性食品を安全に利用するには
14-2 機能性表示食品制度における安全性の要件
14-3 機能性食品による被害
14-4 有効性と副作用
14-5 機能性食品を医療利用した健康被害
14-6 消費者の認識不足
14-7 機能性食品の形状
14-8 食材の情報と成分の情報の混同
14-9 機能性成分の摂取量と生体機能
14-10 機能性食品の必要性
14-11 天然物,食経験の安全誤認
14-12 植物の有害性
14-13 加工による危険物質産生
14-14 海藻摂取と発ガンリスク
14-15 安全性の量の概念
14-16 食物と薬の相互作用
14-17 安全に対する意識
コラム 離乳食は注意が必要(食物アレルギーの原因)

15. 機能性食品の今後の動向
15-1 機能性表示食品制度の振り返り
15-2 機能性表示食品制度の変更点
15-3 機能性表示食品制度の今後の改正
15-4 機能性表示食品制度の問題点
15-5 機能性表示食品の安全性確保
15-6 消費者教育の重要性
15-7 機能性食品の被害情報
15-8 行政による検証・監視体制の整備
15-9 機能性表示食品制度の今後の要望
15-10 先制医療
15-11 先制医療と機能性食品
コラム 機能性食品の種

引用・参考文献
索引

早稲田大学人間科学学術院健康福祉科学科細胞制御学研究室 山越正汰(学部4年)、原太一(教授)

この「機能性食品学」では、機能性食品制度から始まり、栄養素に関することや具体的な疾病との関連性、今後の課題などについて触れられていた。近年巷では、盛んに機能性表示食品が持ち上げられており、今後は消費者であるわれわれが自ら、食品の安全性・機能性を吟味する力が問われることになる。本書では、機能性食品の科学的エビデンスを理解するための広範囲な知識が、分かりやすく説明されており、初学者の私にとって機能性食品学の入門書としてお勧めの一冊となった。具体的には、食品の機能性に関するメカニズムに加え、疾病の発症機序、生体調節機構など、食品科学から病態生理学までの幅広い知識を教授する内容となっており、食品がどのように生体に機能するのかを考える上で必要な、食品学と生体機能学の両方を一度に勉強したい方には是非ともお勧めです。

工学院大学先進工学部応用化学科 山田昌治 教授

 世には食の情報があふれ、手を出せば望みどおりの食品が手に入る時代である。しかしながら、テレビ・インターネットなどで流れている情報は、革新的な機能性食品から怪しげな話まで玉石混淆の状態である。筆者は食品化学を教えている立場であるが、食品という分野は、食品の化学的性質、食品の私たちの身体への摂取から代謝、健康と病気、近年では免疫との関わりなど多岐にわたっており、教えるのにポイントが絞りにくく消化不良の教育に堕する危惧をいつも感じている。
 このたび今井伸二郎先生が著した「機能性食品学」は、上述の課題を克服することができる数少ない著作である。単に食品の機能を論ずるだけではなく、栄養学の基本を押さえ、免疫系および腫瘍を始めとした様々な疾病について言及され、その中で機能性食品について論じている。さらに機能性食品のもつ課題についても踏み込んだ記述がされている。
 ところで平成27年より、新しい機能性表示食品制度が発足した。このことは周知の事実であるが、従来の特定保健用食品制度とどこが異なるのか、消費者にとっての利点は何かについて人口に膾炙しているとは言えない状況である。本書ではこの点についても詳しく解説されている。
 また、随所に盛り込まれているコラムは読んでいて楽しく、著者の造詣の深さを感じた。以上のことから、多くの学生だけではなく、一般の方々にも読んでいただけるよう本書を推薦する次第である。

日本食生活学会誌 Vol.28 No.1 2017

化学と工業 Vol70 6月号