ロボット運動計算論
6次元の演算を用いてロボットの運動学,動力学の計算理論を体系化することを目指す。
- 発行年月日
- 2026/05/18
- 判型
- A5
- ページ数
- 288ページ
- ISBN
- 978-4-339-04723-3
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
【本書の特徴】
本書ではおもにロボットの運動計算理論に焦点をあて,日本語のロボティクスの教科書では扱われることが少ない6次元の速度,加速度,力のベクトルの演算を用いることでロボットの運動学,動力学の計算理論を体系化することを目指す。剛体の回転と並進の運動を合わせた6次元のベクトルを空間ベクトルと呼び,これによってArticulated Body Algorithm (ABA) のような高速な計算アルゴリズムを見通しよく記述できる。このような高速なアルゴリズムにより,ロボットの将来の状態を繰り返し予測することが可能となり,ヒューマノイドロボットのような大自由度を有する複雑なロボットにおいても非線形モデル予測制御が実時間に近いスピードで適用されつつある。また,アルゴリズムの高速化はGPU 上での並列実行によって加速され,現在では,GPU を搭載したラップトップPC 上においてヒューマノイドロボットの二足歩行制御器を強化学習により数十分~数時間程度で学習することが可能となりつつある。
強化学習や最適制御を筆頭に,近年,特に2020 年代以降ではロボットの制御は「運動を最適化する」問題として一般化された形で解かれつつある。このようなロボットの運動の最適化には,評価関数の勾配を計算する必要があり,そのために必要な解析的微分を計算する枠組みを提供するシミュレータは「微分可能な」シミュレータと呼ばれる。本書では発展的内容として位置・速度・加速度の計18次元の運動を包括的に扱う枠組みやそれを用いた運動最適化,ソフトロボットの力学モデルへの応用例等についても解説する。
【本書のキーワード】
ロボティクス,運動学,動力学,リー群
ロボットの運動計算理論はおよそ2000年代までにその運動学・動力学についての基礎が体系化された。多くのロボットの身体は金属などの材料で構成されることから,その運動を表すのに各身体部位を剛体とみなすリンク系のモデルが用いられ,ロボットのみならず人間の筋骨格モデルにも応用されている。現在までに数十以上の自由度をもつヒューマノイドロボットや環境との接触を伴うロボットの力学シミュレーションがリアルタイムに実行できるようになってきた。
ロボット,特にヒューマノイドロボットのような複雑なシステムの制御は,二足歩行における倒立振子モデルのような低次元化モデルにおいて制御則を考え,それを全身運動に分解する階層的な手法が成果を挙げてきた。一方で,ロボットの力学シミュレーションの高速化に伴い,近年,特に2020年代以降ではロボットの制御は「運動を最適化する」問題として一般化された形で解かれつつある。例えばヒューマノイドロボットのような大自由度を有する複雑なロボットにおいても非線形モデル予測制御が実時間に近いスピードで適用されつつある。非線形モデル予測制御もしくは最適制御問題は将来のロボットの状態をシミュレーションすることを繰り返して最適な入力を求める。これは力学シミュレーションの高速化と最適化のアルゴリズムにおいて必要となる評価関数の勾配計算によって可能になってきた。特に,剛体リンク系の速度や加速度,その一階微分である躍度といった量に関する解析的微分を計算する枠組みを提供するシミュレータは「微分可能な」シミュレータと呼ばれ,オープンソースのシミュレータがだれでも利用できるようになっている。これらのシミュレータはGPU上での並列実行によって強化学習と統合され,現在では,GPUを搭載したラップトップPC上においてヒューマノイドロボットの二足歩行制御器を強化学習により数十分~数時間程度で学習することが可能となりつつある。
このように,ロボットの制御や学習においてその運動を計算し高速にシミュレーションすること,それに基づき効率的に運動を最適化することがますます重要になってきている。そこで本書ではおもにロボットの運動計算理論に焦点をあて,日本語のロボティクスの教科書では扱われることが少ない6次元の速度,加速度,力のベクトルの演算を用いることでロボットの運動学,動力学の計算理論を体系化することを目指す。剛体の回転と並進の運動を合わせた6次元のベクトルを空間ベクトルと呼び,これによってArticulated Body Algorithm(ABA)のような高速な計算アルゴリズムを見通しよく記述できる。
なお,空間ベクトルやその座標変換の背景にはリー群という数学的な性質が存在するが,本書ではそれらについて*を付けたセクションで補足的に説明し,リー群についての知識がなくとも大学高学年~大学院生であれば読み進められるように工夫した。同様に,読み飛ばしても構わないような高度に専門的な説明の箇所には*を付けた。一方で,一般的なロボティクスの教科書で解説されるアクチュエータやセンサといったメカトロニクスや減速機などのロボットの構成要素についてはおもには扱わないため,初めてロボット工学を学ぶ人は基本的な教科書(例えば文献1)~6)など)も適宜参考にすることを推奨する。
本書の執筆に際して多くの方にご協力いただいた。青野達人氏には本書の表紙イラストを作成いただいた。東京大学力学制御システム研究室の菊竹潤氏,早見星吾氏,工藤大和氏,秋吉拓真氏には原稿の校正に協力いただいた。また,コロナ社の皆様には執筆段階から出版までご尽力いただいた。ご協力いただいた方々に深く感謝する。
最後に,長年ご指導いただいた中村仁彦先生に深く感謝申し上げます。先生の著書を通じてロボティクスの基礎を学ぶとともに,ロボットの力学・制御・知能に関する最先端の研究を通して多くの示唆をいただきました。本書は,その学びの積み重ねの上に成り立っています。
2026年3月
山本江,鮎澤光,石垣泰暉
1.ロボットの機構と運動計算の基礎
1.1 ロボットの機構
1.1.1 関節とリンク
1.1.2 多リンク系
1.2 平面2自由度マニピュレータを例にとって
1.2.1 順運動学
1.2.2 逆運動学
1.2.3 ヤコビ行列と特異姿勢
1.3 本書で用いる記号
章末問題
2.順運動学
2.1 座標系による多リンク系の運動の記述
2.1.1 世界座標系と局所座標系
2.1.2 姿勢行列とSO(3)
2.1.3 座標変換と相対姿勢
2.1.4 同次変換行列とSE(3)
2.2 運動の自由度と一般化座標
2.2.1 自由度と一般化座標
2.2.2 剛体の自由度と一般化座標
2.2.3 対偶の自由度と関節変位量
2.3 運動学
2.3.1 順運動学
2.3.2 コンフィギュレーション/タスク空間と冗長性
2.4 姿勢のそのほかの表現方法
2.4.1 オイラー角
2.4.2 剛体回転に関するオイラーの定理
2.4.3 単位クォータニオン(オイラーパラメータ)
章末問題
3.微分運動学
3.1 角速度ベクトル
3.1.1 角速度ベクトルとso(3)
3.1.2 SO(3)とso(3)
3.1.3 局所座標系から見た角速度ベクトル
3.2 速度に関する順運動学
3.2.1 座標系間の角速度・並進速度の変換
3.2.2 空間速度とse(3)
3.2.3 多リンク系の空間速度の計算
3.3 ヤコビ行列
3.3.1 ヤコビ行列と微分運動学
3.3.2 基礎ヤコビ行列
3.4 リー群
3.4.1 群と多様体
3.4.2 リー群とリー代数
3.4.3 随伴表現
章末問題
4.逆運動学
4.1 逆運動学と特異姿勢/冗長性
4.1.1 逆運動学と微分逆運動学
4.1.2 特異姿勢と冗長性
4.2 微分逆運動学
4.2.1 微分逆運動学の解
4.2.2 特異姿勢にロバストな微分逆運動学
4.3 逆運動学の数値計算
4.3.1 ニュートン・ラフソン法による逆運動学
4.3.2 非線形最適化による逆運動学
章末問題
5.剛体リンク系の運動方程式
5.1 ラグランジュの運動方程式
5.1.1 ラグランジュの運動方程式の概要
5.1.2 運動エネルギーとポテンシャルエネルギー
5.1.3 空間レンチとオイラーの運動方程式
5.2 剛体リンク系のラグランジュの運動方程式とその性質
5.2.1 ラグランジュの運動方程式の導出
5.2.2 ラグランジュの運動方程式の性質
5.3 外部環境との接触を伴う場合の運動方程式
5.3.1 仮想仕事の原理とダランベールの原理
5.3.2 浮遊リンク系の運動方程式
5.3.3 拘束を伴う運動
章末問題
6.ニュートン・オイラー運動方程式と逆動力学計算
6.1 空間加速度と空間レンチの座標変換
6.1.1 空間加速度とその座標変換
6.1.2 空間レンチの座標変換
6.2 剛体リンクのニュートン・オイラーの運動方程式
6.2.1 リンク重心座標系におけるニュートン・オイラー運動方程式
6.2.2 リンク座標系におけるニュートン・オイラー運動方程式
6.3 逆動力学計算
6.3.1 漸化的ニュートン・オイラー法
6.3.2 接触力を含む逆動力学計算
章末問題
7.順動力学シミュレーション
7.1 順動力学の数値計算アルゴリズム
7.1.1 単位ベクトル法による順動力学計算
7.1.2 Articulated Body Algorithm (ABA)
7.2 加速度・速度の数値積分
7.2.1 離散化と数値積分
7.2.2 数値積分
7.2.3 姿勢の積分
7.3 外部環境との接触を伴うシミュレーション
7.3.1 ペナルティ法
7.3.2 Operational Space Formulation (OSF)
7.3.3 完全非弾性衝突モデル
7.3.4 相補性条件
章末問題
8.ロボット制御の基礎
8.1 コンフィギュレーション空間におけるフィードバック制御
8.1.1 位置制御と力制御
8.1.2 ロボットのPD制御とその安定性
8.1.3 計算トルク法
8.2 コンプライアンス制御/インピーダンス制御
8.2.1 機械インピーダンスとコンプライアンス
8.2.2 手先のコンプライアンス
8.2.3 アドミッタンス制御
8.3 分解加速度制御とOperational Space Control
8.3.1 分解加速度制御
8.3.2 Operational Space Control (OSC)
8.3.3 分解加速度制御とOSCの関係
章末問題
9.最適化のための包括的運動計算と剛から柔への展開
9.1 運動の包括表現
9.1.1 6次元から18次元へ
9.1.2 包括運動変換行列
9.1.3 包括運動変換行列の微分
9.1.4 包括運動変換行列の数学的性質
9.2 運動の包括微分
9.2.1 運動学計算の微分
9.2.2 動力学計算の微分
9.3 運動の最適化
9.3.1 運動最適化問題
9.3.2 多リンク系の物理量に関するヤコビ行列
9.3.3 時間軌道関数
9.3.4 運動最適化の例
9.4 ソフトロボットの運動計算
9.4.1 ソフトロボットとその連続体モデル
9.4.2 区分的一定ひずみモデル(PCSモデル)
9.4.3 PCSモデルの動力学
付録
A.1 ベクトル・行列の演算に関する基礎
A.1.1 2次形式
A.1.2 行列の正定値性
A.1.3 ベクトルの微分
A.1.4 2次形式の微分
A.1.5 最適性の条件
A.1.6 特異値分解
A.2 SO(3)とSE(3)に関する性質
A.2.1 R∈SO(3)の性質
A.2.2 [𝓍x]の性質
A.2.3 [𝓍x4]と[𝓍x6]の指数写像の計算
A.2.4 角速度と角軸ベクトルの関係式
A.2.5 角加速度と角軸ベクトルの関係式
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 Jouta 様 (業界・専門分野:ロボットラーニング)】
本書は、ロボットの運動学・動力学・制御を、基礎から発展的な内容まで体系的に学ぶことができる一冊だと感じました。リンクと関節からなるロボット機構の基礎から始まり、順運動学、微分運動学、逆運動学、さらに動力学、シミュレーション、制御、運動最適化へと内容が自然につながっており、ロボットの「動き」を数理的に理解するための道筋が丁寧に整理されています。
私自身、ロボットの順運動学・逆運動学について体系的に学んだ経験が十分にあったわけではありませんが、本書では基礎的な事項から順を追って説明されているため、無理なく読み進めることができました。また、微積分と線形代数の基礎があれば数式を追いやすく、式変形の行間も丁寧に補われているため、抽象的な概念についても納得しながら理解を深めることができました。
特に印象に残ったのは、運動学や動力学の知識が理論として示されるだけでなく、順動力学シミュレーションやロボット制御、さらに運動最適化へと自然につながっていく点です。現代制御で学ぶ安定性やフィードバック制御の考え方が、ロボットの PD 制御、計算トルク法、インピーダンス制御、Operational Space Control などの具体的な制御手法と結びついており、学んだ知識を実際のロボットシステムへどのように応用できるのかを理解しやすいと感じました。
また、これまで線形代数や数値計算の知識として断片的に理解していた特異値分解や疑似逆行列が、逆運動学、ヤコビ行列、特異姿勢への対応といった場面で理論的に活用されることも印象的でした。抽象的に見えていた数学的な道具が、ロボットの動きを計算し、制御するための具体的な手段として現れることで、知識同士がつながっていく感覚がありました。
私自身はロボットラーニングの研究に取り組んでいますが、データ駆動の手法を扱う場合であっても、シミュレーション環境や制御器、学習された方策の挙動を理解するためには、背景にある運動計算や動力学の知識が重要だと感じています。本書は、その理論的な土台を整理しながら、実際の応用まで見通すうえで非常に参考になりました。
後半では、順動力学シミュレーション、Operational Space Control、運動最適化、ソフトロボットの運動計算にも触れられており、古典的なロボット工学の基礎に加えて、現代的な研究テーマとの接続も感じられます。ロボット制御を専門とする学生だけでなく、ロボットラーニングやシミュレーションを用いた研究に取り組む学生にとっても、基礎と応用をつなぐ参考書として役立つ一冊だと思います。
総じて、本書はロボットの運動計算を基礎から応用まで一貫して学びたい読者にとって、大変有用な専門書だと感じました。特に、断片的に持っていた数学や制御の知識を、実際のロボット応用へとつなげるための手がかりを与えてくれる一冊だと思います。
読者モニターレビュー【 ペンペス 様 (業界・専門分野:IT業界・統計学を専攻)】
今、世間の中心は、「AI」や「大規模言語(LLM)」に集中しています。
そんな折、中国では人型ロボットによるハーフマラソンが行われました。大会ではトラブルがあったものの、私はそこに強烈なロマンを感じました。
かつて日本には、ASIMOが階段を上り、走る姿に世間が熱狂した記憶があります。しかし今日では、ASIMOに続く象徴的な存在は見かけず、ロボットへのロマンは失われつつあるように感じます。
そんな時代、コロナ社から出版された『ロボット運動計算論』は、私に再び「ロボットへのロマン」を向けました。
本書で特筆すべき点は、その膨大な「引用・参考文献の幅広さ」です。
1980年代の基礎理論から、2025年の最新知見、さらには世界の論文や書籍までが網羅されています。
AIがいかに早い進化を遂げようとも、重力や慣性といった力学の法則は普遍です。
本書は、人類が数十年も積み上げてきた「知の結晶」だと考えます。
今後、ロボットの運動計算や物理演算にもAIが駆使されるでしょう。
しかし、AIが導き出した答えが「なぜそうなるのか」という前提、すなわち物理学の根底を知らずに、理解は得られないと考えます。
単なる利便性や効率性だけではなく、動くロボットへの回帰。
この一冊は、AI中心の現代において、私たちが忘れかけていた「ロボットというロマン」を再び燃え上がらせる火種になるのではないかと考えます。
読者モニターレビュー【 あむれあ 様(業界・専門分野:機械工学、AI、ロボティクス)】
本書は、関節とリンクの基礎から始まり、運動学・微分運動学・逆運動学、さらにラグランジアンやニュートン・オイラー法による動力学、順動力学シミュレーション、制御までを体系的に解説しています。
私はフィジカルAI、特に模倣学習ベースのエンジニアです。本書を読んで感じたのは、データ駆動でロボットを動かす場合でも、こうした理論が依然として重要である点です。例えばデータ収集時には、作業データのタスク座標をロボットのコンフィグレーション空間に変換する必要がある場合があります。そのようなケースでは(逆)運動学•(逆)動力学の理解が不可欠です。また強化学習の報酬設計でもこれらの理論に加えて、タスク空間や力学的制約を踏まえた設計が求められ、本書の知識が直接活きてきます。ブラックボックス的な学習だけでは到達しにくい性能や安定性を引き出す土台として、本書の価値を強く感じました。
ロボットの運動計算を包括的に学び、データ駆動手法と物理ベースの理解を橋渡ししたいエンジニアにとって、基盤を確実に固める一冊です。
読者モニターレビュー【 ジャンプ 様 (業界・専門分野:製造業・ロボット工学)】
ヒューマノイドロボットのように、数十もの自由度が複雑に絡み合う構造体が、生き物のように滑らかに躍動する姿には、理屈抜きに魂を揺さぶられる感動がある。
しかし、その優雅な振る舞いの裏側には、膨大な計算を処理し、運動を最適化し続ける数理の世界が広がっている。
本書は、ロボットの動きの源泉である運動計算理論に真摯に向き合い、数理が描くロボティクスの美学を鮮やかに描き出した一冊だ。
本書の最大の魅力は、一貫した数学的表現によって運動学・動力学を根底から再構築している点にある。
従来、ロボットの運動方程式を個別の事象として捉えてしまうと、計算が複雑化するほど全体像が見えにくくなるという課題があった。
しかし、本書が提示する体系的な理論に触れると、読者の頭の中に点在していた断片的な知識が次々と結びつき、各数理的処理が全体の中でどのような役割を果たすのか、その位置づけを明確に把握することができる。
この体系化がもたらす恩恵は、実用面においても計り知れない。
剛体の回転と並進の運動を合わせた6次元ベクトルである空間ベクトルによって、ロボットの運動表現は見通しの良いものとなり、アルゴリズムの高速化という確かな実利を導き出している。
さらに、2020年代以降の潮流であるロボットの制御は「運動を最適化する」問題として一般化された形で捉えるアプローチについても、発展的内容として深く掘り下げられている。
シミュレータへの正確な数式実装を見据えた計算理論の整理から、位置・速度・加速度の計18次元の運動を包括的に扱う枠組み、さらにはソフトロボティクスの連続体モデルに至るまで、網羅された知見は単なる技術解説の域を超えている。
それは読者にとって、次世代の技術を切り拓くための確かな発展への道しるべとなるはずだ。
本書は、理論レベルでロボティクスを極めようとするエンジニアや研究者はもちろん、既存の知識を統合し、最前線へ挑もうとするすべての学習者にとって、思考をアップデートするための最高のガイドとなるだろう。
あの滑らかな動きの背後にある、緻密で美しい数理の奔流を、ぜひ本書を通じて体感してほしい。
体系化された数理が導く、ロボット運動の美学を凝縮した一冊である。
読者モニターレビュー【 小川 哲男 様 (業界・専門分野:ヒューマノイドロボット)】
私は強化学習や模倣学習を用いて、ヒューマノイドロボットによる人手作業の代替化に取り組むフィジカルAI技術者です。今回献本いただいた『ロボット運動計算論』は、AIと物理世界を繋ぐ高速な力学計算や「微分可能シミュレータ」の基盤理論を真に理解するのに必要十分な情報が網羅されていました。
現在のフィジカルAI開発において、ロボットの制御は「運動の最適化問題」として一般化して解かれつつあります。非線形モデル予測制御の実時間実行や、GPU並列シミュレーションによる二足歩行制御器の強化学習には、本書で体系化されている6次元空間ベクトルを用いた高速な動力学計算(Articulated Body Algorithmなど)が不可欠です。
中でも特に興味深かったのは、第9章で述べられている「包括的運動表現」です。空間変換、速度変換、加速度変換を統合し、18次元の行列空間でロボットの運動を定義するこのアプローチは圧巻でした。この枠組みは、未知の物体操作や外部環境との接触といった、実環境特有の様々な空間的・速度的・力的な制約を伴う諸問題を、AIの学習モデルや運動最適化に的確に提示・反映させるための強力な理論的基盤となります。
データドリブンなAI制御技術を確固たる物理的基盤の底上げによって革新したいと考える全エンジニアにとって、間違いなく手元に置くべき必読の一冊です。











