ロボットと解析力学

ロボティクスシリーズ 10

ロボットと解析力学

多自由度力学系を考慮した解析力学とリーマン幾何学の観点からロボット制御の基礎や設計法を習得できるよう丁寧に解説した。

ジャンル
発行年月日
2018/01/10
判型
A5
ページ数
204ページ
ISBN
978-4-339-04521-5
ロボットと解析力学
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定価

2,970(本体2,700円+税)

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本書は,解析力学を学ぶうえで必要不可欠である古典力学の知識を基礎から復習しつつ,多自由度力学系を考慮した解析力学とリーマン幾何学の観点からロボット制御の基礎や設計法を習得できるよう丁寧に解説した。

本書の出版企画が検討されて以来,すでに10年以上が過ぎてしまった。共著者の一人は,その間,外国における共同研究期間が度重なり,ほかは定年退職を経た後の空白感に圧倒され,深い思考が及ばない期間を経て,やっと2016年の春から共同執筆がはじまった。ようやく全9 章を脱稿したのは2017年2月の中頃である。

執筆者の一人は,立命館大学のロボティクス学科で「解析力学」を担当した経験がある。そのとき,日本語のみならず英語のいくつかの関連の教科書,専門書を渉猟したが,例題にロボットを取り上げたものは見つからなかった。当時になっても,多自由度の剛体系を正面から取り扱う気配は見られなかった。そもそも,オイラー–ラグランジュの運動方程式の意義を工学分野に広げ,深めようとする観点や指向,もっと直接的にいえば,運動をいかにうまく制御するか,という観点が意識下に入っていなかったのであろう。

本書の執筆時は,歴史的には,AI(人工知能)の研究と開発が絶頂期にあたるだろう。それは,ビッグデータのネットワーク表現と深層学習(deep learning)の賜物による。家庭にもロボットが登場しはじめたが,それらはコミュニケーションロボットであり,手を動かして日常作業を手助けしてくれるわけではない。ロボットの運動表現の言語はオイラー–ラグランジュの運動方程式に依拠するのが基本になる。運動方程式になんらかの制御入力を働かせる方式を通して,企図したロボット作業が遂行できるか,考えていくことが基本になる。そのための「深層学習」はどんな様式になるのであろうか。解析力学の新たな展開に則して学ばなければならないだろう。

1章から8章まで,多自由度力学系を意識して,解析力学の基礎を簡潔に著した。9章ではリーマン幾何学の観点を解析力学に導入した。オイラーの方程式の解(測地線)とラグランジュの方程式の解軌道を比較する方法論を新たに展開した。そのために,ポアッソン括弧式がラグランジュ安定に果たす役割を調べ,時定数に基づくロボット設計法を導いた。執筆は,1~3章,7章を田原,4~6章,8~9章,付録を有本が担当した。

最後に,本書の執筆に際して多大な激励をいただいたコロナ社編集部の方々に感謝する。

2017年11月 有本卓(執筆者代表)

1. ニュートンの法則
1.1 座標系と位置ベクトル
1.2 速度と加速度
1.3 ニュートンの運動の法則
章末問題

2. 質点系の運動
2.1 質点の運動の軌跡
2.2 運動量保存則
2.3 角運動量と角運動量保存則
2.4 非慣性座標系での運動表現
 2.4.1 並進加速度を持つ場合
 2.4.2 回転運動を行う場合
章末問題

3. 剛体系の運動
3.1 剛体の自由度
3.2 剛体の姿勢
 3.2.1 回転行列
 3.2.2 オイラー角による姿勢表現
 3.2.3 ロドリゲスの回転公式と等価角軸変換
 3.2.4 オイラーパラメータによる姿勢表現
3.3 剛体の回転運動
3.4 オイラーの運動方程式
章末問題

4. エネルギーと仕事量
4.1 仕事と仕事率
4.2 保存力とポテンシャル
4.3 力学的エネルギー保存則
章末問題

5. 一般化座標と仮想仕事の原理
5.1 一般化座標と自由度
5.2 仮想仕事の原理
5.3 ダランベールの原理
5.4 変分法とオイラーの方程式
5.5 一般化力とラグランジュ乗数
章末問題

6. ラグランジュの運動方程式
6.1 ラグランジュの運動方程式
6.2 ハミルトンの原理
6.3 エネルギー保存則
6.4 ケプラーの法則
6.5 ラグランジュの安定性
6.6 変分原理
章末問題

7. 多関節構造体の運動方程式
7.1 同時変換行列
7.2 DH記法による運動学表現
7.3 ラグランジアンの導出
7.4 2自由度マニピュレータの運動方程式
章末問題

8. ハミルトンの正準方程式
8.1 一般化運動量とハミルトニアン
8.2 正準方程式と保存則
8.3 ポアッソンの括弧式
8.4 正準変換
8.5 ハミルトン-ヤコビの偏微分方程式
章末問題

9. ロボット制御の基礎―解析力学とリーマン幾何学から―
9.1 一般化運動量とハミルトニアン
9.2 多関節ロボットの運動制御
9.3 ポアッソン括弧式に基づくリヤプノフ理論
9.4 リーマン計量とロボット制御系設計の基礎
9.5 ベルンシュタイン問題と冗長関節ロボットの制御
9.6 ハミルトン-ヤコビ方程式の解と最適レギュレーション
章末問題

付録
A.1 リヤプノフ安定論
A.2 モータのダイナミクスと減速比
A.3 δとkの数量的関係

引用・参考文献
章末問題解答
索引

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有本 卓(アリモト スグル)