ロボットハンド技術ハンドブック - その体系的理解:実用・理論・展望 -

ロボットハンド技術ハンドブック - その体系的理解:実用・理論・展望 -

ロボットハンドの新たな技術開発(学界)とその社会実装(産業界)との架け橋となる1冊!

ジャンル
発行予定日
2025/11/下旬
判型
B5
予定ページ数
304ページ
ISBN
978-4-339-04697-7
ロボットハンド技術ハンドブック - その体系的理解:実用・理論・展望 -
近刊

予定価格

11,000

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  • 内容紹介
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  • 目次
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【実用・理論・展望を網羅し,新たな技術開発から社会実装への架け橋に!】
ロボットハンドに特化した本邦初のハンドブックです。本ハンドブックでは,ロボットハンドの理論として,現在まで得られた内容を記載し,実用的視点から現状のロボットハンド例やシステムとしての実装例を説明しています。さらに,近い将来に実用化可能と予想されるさまざまなロボットハンドの開発例を紹介しています。


☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

ロボットハンドのないアームのみで実行できる作業は少ない.ところが通常,産業用ロボットメーカはハンドを搭載しない状態でロボットアームのみを販売している.作業ごとにハンドが選定され,アームや他の機器と統合されてロボットシステムとなる.選定されるロボットハンドでは,空気圧による吸着や空気圧駆動/電動のグリッパが多い.全体を統合する作業は,ロボットシステムインテグレータが受けもつ.このように,産業界のロボットでは,アームとハンドは別々に製造され,利用目的に合わせて適切な組み合わせが利用されてきた.

一方,学界ではロボット研究の草創期から手の機能の重要性は注目され.数多くの研究成果が報告されてきた.人の手の絶妙な機能に触発されて,人の手を模擬したロボットハンドも多数研究されてきた.これらのハンドは多関節構造のために一般にアクチュエータ数が多い.多数のアクチュエータ利用では高価格化,高重化を招くので,少ないアクチュエータ数のロボットハンドも研究開発されてきた.また,高分子材料によるアクチュエータもハンドとして提案されている.

産業界ではロボットハンドの機能が,作業全体で極めて重要となるにもかかわらず,利用できるハンドの種類は多くはない.学界では多くの種類のハンドは提案されているが,実用化に至る例は少ない.そこで,産業界で求められるロボットハンドのニーズが,学界や研究開発企業に伝達され,実用化に到達することが期待される.そのためには,多くの関係者が,ロボットハンドの実利用と最新の研究開発の状況を俯瞰することが有益と考えられる.1960年代からロボティクスではすでに多くのテキストが出版されている.これらの多くは,ロボットアームや移動ロボットの機構と制御を中心に記述される.ロボティクスのすべての関係分野を網羅するロボットのハンドブックなどもすでに出版されている.例えば,日本ロボット学会編「ロボット工学ハンドブック(コロナ社)」では,2005年に第1版が出版され2023年に第3版に更新されている.このようなハンドブックにもロボットハンドは,ロボットシステムの一つの要素として記載されている.ただし,全体のページ数の制約があることと,ロボットハンドに特化した記述とし難いので,ロボットハンドのみの多様な情報を得たい読者のニーズへの対応は困難と思われる.

そこで,本書ではロボットハンドに特化して,基礎理論,現場での利用法,ハード/ソフト関連技術,最新の研究開発動向などを網羅して記載することとした.さらに,今後の新しいロボットハンドの技術開発に参考となる考察を記載した.その中には,学術的考察やビジネスとしての視点も含まれる.ロボットハンドがロボットシステムにとって有用な働きをするので,本書がロボットの普及に少しでも貢献し,新しいロボットハンド開発の動機づけになれば,我々著者としては大きな喜びである.

2025年10月
ロボットハンド理論/実用ハンドブック編集委員会
監修(代表)川村貞夫

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.ロボットハンドリング現状概観
1.1 本書の目的 
1.2 人の手とロボットハンド 
1.3 エンドエフェクタ・対象物/環境・運動知能の関係 
1.4 ロボットハンドの整理 
1.5 ハンドの機能 
1.6 ロボットハンドシステム設計の重要点 
 1.6.1 ロボットアームとの関係 
 1.6.2 駆動部 
 1.6.3 センシング部 
 1.6.4 ロボットフレンドリーと人/環境フレンドリー 
1.7 ロボットハンドの代表例 
 1.7.1 吸着利用ハンド 
 1.7.2 水平開閉ハンド 
 1.7.3 空気圧駆動柔軟指ハンド 
 1.7.4 下方から重力支持ハンド 
1.8 対象物/環境の認識 
1.9 新しいロボットハンドシステム開発の方法論 
1.10 物体の把持から位置/姿勢の変化 
 1.10.1 ロボットによる把持物体の位置/姿勢制御の概要 
 1.10.2 物体の位置/姿勢の認識の整理 
 1.10.3 物体の位置/姿勢をハンドの位置/姿勢から決定する方法 
 1.10.4 一般的ハンドによる物体の位置/姿勢の認識と制御 
 1.10.5 センサから物体の位置と姿勢の推定 
1.11 本書の構成 

2.リジッドハンド
2.1 ロボットハンドの基本的な役割と分類 
 2.1.1 ロボットハンドの基本的な分類 
 2.1.2 リジッドハンドの定義と分類 
 2.1.3 静力学に基づくハンドの把持機能の分類 
 2.1.4 爪の構造 
 2.1.5 把持作業と詰め込み問題 
2.2 産業用グリッパの基本的な構造 
 2.2.1 指の構成 
 2.2.2 1自由度グリッパの伝達系の構造 
2.3 多関節指をもつリジッドハンドの構造 
 2.3.1 ハンドの基本構成 
 2.3.2 多関節指の伝達機構 
 2.3.3 指関節間の連動機構 
 2.3.4 指間の連動機構 
 2.3.5 負荷感応型伝達機構 
2.4 今後の展望 

3.ソフトハンド
3.1 ソフトハンドの意義 
3.2 ソフトハンドの分類 
 3.2.1 ソフトカバーハンド 
 3.2.2 リモート駆動ハンド 
 3.2.3 膨張膜ハンド 
 3.2.4 屈曲指ハンド 
 3.2.5 ジャミングハンド 
3.3 ソフトハンドの製作 
3.4 今後の展望 

4.吸着ハンド
4.1 本章で紹介する吸着把持の特徴とその種類 
4.2 吸着把持の概要 
 4.2.1 共通事項 
 4.2.2 負圧 
 4.2.3 磁力 
 4.2.4 静電力 
 4.2.5 分子間力 
4.3 負圧把持の設計 
 4.3.1 吸着力 
 4.3.2 負圧吸着システム全体での設計 
4.4 ベルヌーイグリッパ/チャック 
4.5 負圧把持性能の向上に向けた工夫 
 4.5.1 センサレス 
 4.5.2 センシング利用 
4.6 今後の展望 

5.システム構成
5.1 ロボットハンドのハード的接続 
 5.1.1 配線/配管の問題 
 5.1.2 ロボットアームとのハード的接続 
5.2 システム構成 
 5.2.1 概要 
 5.2.2 スタンドアローン型 
 5.2.3 ロボットコントローラ中心型 
 5.2.4 PLC中心型 
 5.2.5 産業用通信規格型 
 5.2.6 PC中心型 
5.3 複数ハンドの利用法 
 5.3.1 複数ハンドの必要性 
 5.3.2 マルチネイル方式 
 5.3.3 マルチハンド方式 
 5.3.4 ツールチェンジャ 
5.4 ハンド活用法 
 5.4.1 食器洗浄ロボットシステム 
 5.4.2 ロボットハンド 
 5.4.3 ツールチェンジャ 
 5.4.4 システム構成 
5.5 今後の展望 
 5.5.1 システム構成 
 5.5.2 ハンドとアームのシステム化 
 5.5.3 アクチュエータ数とセンサ数 
 5.5.4 ハンドとアームの協調制御 

6.アクチュエータ
6.1 ハンド用アクチュエータの要件 
 6.1.1 質量 
 6.1.2 体積 
 6.1.3 速度 
 6.1.4 現実の発生力 
 6.1.5 力の伝達 
 6.1.6 力の制御 
 6.1.7 柔軟性 
 6.1.8 システム化/運用容易性 
6.2 ハンド用アクチュエータ商品・開発例 
 6.2.1 種類 
 6.2.2 制約条件(大きさ,重さ,力強さ,速さ,精度,等) 
6.3 今後の展望 
 6.3.1 新アクチュエータの実利用 
 6.3.2 力の伝達機構 
 6.3.3 ソフトアクチュエータ 

7.センサ
7.1 ハンド用センサの要件 
7.2 光電センサ 
7.3 二次元画像センサ 
 7.3.1 カメラ 
 7.3.2 カメラモデル 
 7.3.3 カメラキャリブレーション 
7.4 三次元画像センサ 
 7.4.1 ステレオ視 
 7.4.2 ToF(Time of flight) 
 7.4.3 三次元計測手法 
 7.4.4 RGB-Dカメラ 
7.5 力覚センサ 
7.6 触覚センサ 
7.7 今後の展望 

8.認識
8.1 ハンドのための画像認識 
8.2 特定物体認識 
 8.2.1 古典的特徴点検出・記述子(非学習型) 
 8.2.2 学習型特徴点検出・記述子(事前オフライン学習型) 
 8.2.3 構造情報を用いた特徴点間の対応付け・ 
 8.2.4 オンライン追跡更新アルゴリズム 
 8.2.5 物体追跡と再同定(Re-ID) 
 8.2.6 SLAMによる対象物の三次元構造再構成 
8.3 一般物体認識 
 8.3.1 二段階検出(R-CNN系) 
 8.3.2 一段検出:SSD/YOLO系 
 8.3.3 Transformarの採用:DETR系 
 8.3.4 インスタンス・セグメンテーション 
8.4 6-DoF姿勢推定 
 8.4.1 キーポイント+PnP系 
 8.4.2 ポイントクラウド(点群)ベース 
 8.4.3 画像特徴ベースの統合型手法 
8.5 ビジュアルフィードバック 
 8.5.1 物体検出を利用したハンドリング 
 8.5.2 把持位置姿勢推定を利用したハンドリング 
 8.5.3 セグメンテーションを利用したハンドリング 
8.6 大規模言語モデルと予測符号化によるロボットハンド操作 
 8.6.1 知覚と意味理解:視覚と言語の統合による状況認識 
 8.6.2 行動の計画と分解:言語モデルによる意図理解とタスク構成 
 8.6.3 予測モデルによる行動選択:世界モデルの利用 
 8.6.4 予測に基づく運動制御:予測符号化と誤差最小化 
8.7 今後の展望 

9.ハンドリング計画
9.1 把持計画 
9.2 深層学習に基づく把持 
9.3 基盤モデルを用いた把持作業 
9.4 今後の展望 

10.ロボットハンド開発例
10.1 リジッドハンド開発例 
 10.1.1 ワイヤ駆動ハンド 
 10.1.2 ギア列駆動ハンド 
 10.1.3 バックドライブ利用型グリッパ 
 10.1.4 細線グリッパ 
 10.1.5 精密位置決めハンド 
 10.1.6 センサフィードバック制御EE 
 10.1.7 食器用劣駆動ロボットハンド 
 10.1.8 ツンモリハンド 
 10.1.9 ニードルグリッパ 
 10.1.10 接触駆動ハンド 
 10.1.11 つまみ滑りハンド 
10.2 ソフトハンド開発例 
 10.2.1 屈曲指ハンド 
 10.2.2 プレストレストハンド 
 10.2.3 包み込みハンド 
 10.2.4 膨張膜ハンド 
 10.2.5 ジャミングハンド 
 10.2.6 ベローズ駆動ソフトハンド 
 10.2.7 バインディングハンド 
 10.2.8 すくい込みバインディングハンド 
 10.2.9 受動変形ソフトハンド 
 10.2.10 可動ベルト付きハンド 
 10.2.11 フォールディンググリッパ 
 10.2.12 摩擦可変ハンド 
 10.2.13 ROSEハンド 
 10.2.14 ヘリカルハンド 
 10.2.15 飛び移り座屈ソフトハンド 
 10.2.16 引き駆動ソフトハンド 
 10.2.17 折り紙ベースすくい込みハンド 
 10.2.18 異方性剛性材料 
10.3 ロボットハンド用センサ 
 10.3.1 指内カメラ利用触覚センサ 
 10.3.2 MEMS触覚センサ 
 10.3.3 近接センサ 
 10.3.4 ポリウレタンセンサ 
 10.3.5 高分子材料を用いたひずみセンサ 
 10.3.6 柔軟曲げセンサ 
 10.3.7 柔軟近接・接触センサ 

11.産業用ロボットによる実装例
11.1 食品盛付ロボットシステム 
 11.1.1 食品業界の課題 
 11.1.2 食品ハンドリング 
 11.1.3 経済産業省ロボフレ事業で開発したロボットシステム 
 11.1.4 2021年度業界初で開発・現場導入した惣菜盛付ロボットシステム 
 11.1.5 2022年度~23年度の開発概要 
 11.1.6 今後の課題 
11.2 多品種ピッキング競技会事例の紹介 
 11.2.1 概要 
 11.2.2 多品種ピッキングにおける各種ロボットハンドの適応可能性 
 11.2.3 競技会でのハンド・システム遍歴とその後 
 11.2.4 多品種商品ピッキングシステムの事例 
 11.2.5 今後の課題 
11.3 カキフライ製造ラインにおける自動化システム 
 11.3.1 ソフトロボットハンドの食品製造への利用現状 
 11.3.2 具体的課題 
 11.3.3 グリッパ設計 
 11.3.4 有限要素シミュレーションによるグリッパの剛性設計 
 11.3.5 グリッパ把持の有限要素シミュレーション 
 11.3.6 グリッパ製作 
 11.3.7 耐久性テスト 
 11.3.8 食品適合性テスト 
 11.3.9 実証実験 
 11.3.10 まとめ 
 11.3.11 今後の展開 
11.4 食器洗浄作業における自動化システム 
 11.4.1 問題設定 
 11.4.2 設計方法 
 11.4.3 食器洗浄システムの設計準備 
 11.4.4 LEEの設計準備 
 11.4.5 LEEの製作 
 11.4.6 食器洗浄システム 
 11.4.7 今後の展開 

12.リジッドハンドの理論
12.1 接触の運動学モデル 
12.2 接触の静力学モデル 
12.3 フォーム/フォースクロージャ 
12.4 物体把持の動力学モデル 
12.5 動的把持の受動性 
12.6 動的安定把持入力 
 12.6.1 閉ループ系の受動性 
12.7 今後の展望 

13.ソフトハンドの理論
13.1 ソフトハンドの変形モデル 
 13.1.1 膨張膜のモデリング 
 13.1.2 弾性糸のモデリング 
 13.1.3 有限要素モデリング 
13.2 ソフトハンドの接触モデル 
 13.2.1 ヘルツ接触モデル 
 13.2.2 平行分布モデル 
 13.2.3 弾性糸の接触 
13.3 今後の展望 

14.今後のための課題整理
14.1 ハンドリング作業の自動化問題整理 
 14.1.1 ロボットアーム/ハンドか専用機械か? 
 14.1.2 ロボットフレンドリーか人/環境フレンドリーか? 
 14.1.3 機構か?知能か? 
 14.1.4 どのようなセンシングか? 
 14.1.5 どこをどのように柔軟にすべきか? 
 14.1.6 ロボットハンドと対象物の整理 
14.2 今後の方向性 
 14.2.1 専用機とロボットの技術開発方向 
 14.2.2 ロボットハンドビジネスからの方向性 
 14.2.3 事業化からのロボットハンドの研究開発 
 14.2.4 ロボットアームとハンドの協調制御 
14.3 おわりに 

A.付録
A 凸多面錐
A.1 凸多面錐の定義 
A.2 凸多面錐の演算 
A.3 凸多面錐の変換 
A.4 連立一次不等式 
B 有限要素法におけるエネルギーの計算
B.1 区分線形補間 
B.2 運動エネルギーの計算 
B.3 ひずみポテンシャルエネルギーの計算 
B.4 部分接続行列の計算例 
B.5 三次元変形 
索引

島田 伸敬(シマダ ノブタカ)

原口 林太郎(ハラグチ リンタロウ)