身体運動とロボティクス

ロボティクスシリーズ 18

身体運動とロボティクス

ロボットと身体で関連する運動の計測と解析について解説,スポーツ科学及びロボティクスの視点から運動の巧みさについて事例を紹介。

ジャンル
発行年月日
2019/05/22
判型
A5
ページ数
144ページ
ISBN
978-4-339-04529-1
身体運動とロボティクス
在庫あり

定価

2,420(本体2,200円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
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はじめにロボットと身体で関連する運動の計測と解析について説明をし,その後,スポーツ科学・運動科学からのアプローチによる運動の巧みさおよびロボティクスからのアプローチによる運動の巧みについて事例を紹介した。

ロボティクスは,学問としていまだ萌芽的発展段階にある。センサ,アクチュエータ,コンピュータの統合体として,自律的機能を生み出す原理の解明は,システム統合化の視点において,ようやくハード的にも探究できる状況となりつつある。ロボットは,人間や生物の運動・機能・知能から刺激を受け,その人工的実現を探究してきた。その中でも人間の身体運動は,ロボットの実現方法のアイディアが内在しており,つねにロボット研究者の強い興味の対象であった。一方,人間の身体運動の科学やスポーツ競技のための科学は,スポーツ科学,バイオメカニクス,リハビリテーション,医療・福祉等のさまざまな分野にまたがって,その科学と技術が研究されてきた。1980年代からロボットや人体に共通する多リンク構造の力学と制御に関する研究がロボティクス分野で発展し,その成果は身体運動科学に関わる分野でも広く利用されてきた。

近年,筋骨格構造のロボットやシミュレータが開発され,身体運動科学とロボティクスは,以前にも増して相互に刺激し合いながら発達してきている。特に,エネルギー効率の高い運動,しなやかで美しい運動,複雑な制約条件を満足する運動等の運動の巧みさについては,両分野からの研究が活発に行われている。しかし,両方の学問分野はいまだ発展段階であるので,体系的・網羅的なテキストとすることは困難と思われる。さらに,未解明な身体運動の部分に関して,教科書として既成概念のみを固定化させてしまうことに筆者らは慎重でありたいと願う。そこで,本書では,以下の内容とした。
(1) ロボットと身体で関連する運動の計測と解析法についての説明
(2) スポーツ科学・運動科学からのアプローチによる運動の巧みさ研究紹介
(3) ロボティクスからのアプローチによる運動の巧みさ研究紹介
以上のような基本的な考え方に立脚し,1章「身体運動科学とロボティクス」を川村貞夫(立命館大学)が,2章「運動学的モデルと計測」を小澤隆太(明治大学)が,3章「身体運動の力学的計測と解析」を塩澤成弘(立命館大学)が,4章「筋骨格モデルを用いた動作解析法」を吉岡伸輔(東京大学)が,5章「身体運動の巧みさの解析」をい伊坂忠夫(立命館大学)が,6章「センシングと運動の協調」を平井宏明(大阪大学)が,7章「運動学習と巧みさの発達」を宮崎文夫(大阪大学名誉教授)が担当した。1~3章までは基礎的な内容のため各章に章末問題を付けた。4~7章は専門的な内容や研究トピックスの中から本書の目的とする内容が理解できる構成とした。そのため章末問題は付けていない。

本書では「人間」の表現に,「人」や「ヒト」も用いている。一般には,人間を他の生物と同様に取り扱う場合には「ヒト」が用いられる。ただし,前述のように,身体運動科学とロボティクスは発展段階にあるので,本書では著者の判断として,統一した表現としていない。

本書は,ロボット研究者を目指す学生,院生,研究者に対して,身体運動の巧みさの研究に関する情報を提供し,また一方でスポーツ科学・バイオメカニクスの身体運動科学の研究者をめざす学生,院生,研究者にロボティクス分野からの情報提供となり,両分野に新しい成果を生み出す一助になればと期待したい。紙面の制約のみならず,筆者らの浅学非才から,多くの不十分な点を含んでいると思われる。これらの点に関しては,今後多くのご指摘を賜りたいと思っている。

2019 3月 川村貞夫

1. 身体運動科学とロボティクス
1.1 身体運動科学とロボティクスの歴史
1.2 多関節構造体の運動解析方法─形の問題と動きの問題─
1.3 運動制御─フィードバック制御とフィードフォワード制御─
1.4 身体運動の特徴
 1.4.1 冗長多関節構造
 1.4.2 筋配置構造
 1.4.3 粘弾性変化
1.5 多関節構造体の特徴─特異姿勢─
1.6 身体運動をロボティクスの視点で考える
 1.6.1 ドアまで近づきドアノブをつかむ動作
 1.6.2 指合わせ動作
1.7 モデル化
章末問題

2. 運動学的モデルと計測
2.1 身体の構造とそのモデル化
 2.1.1 身体の分節
 2.1.2 関節の動きの表現
 2.1.3 リンクの動きの表現
2.2 計測システム
 2.2.1 計測システム
 2.2.2 関節角の推定法
章末問題

3. 身体運動の力学的計測と解析
3.1 力の計測方法
 3.1.1 ロードセル(力センサ)
 3.1.2 床反力計
 3.1.3 筋電図
 3.1.4 加速度センサ
3.2 身体運動の力学
 3.2.1 骨格筋
 3.2.2 身体運動の力学モデル
 3.2.3 単関節運動の静力学
 3.2.4 単関節運動の動力学
 3.2.5 多関節運動の動力学
3.3 身体運動の解析方法
章末問題

4. 筋骨格モデルを用いた動作解析法
4.1 逆動力学を用いた筋張力の推定法
 4.1.1 解析の流れ
 4.1.2 剛体リンクモデルと筋骨格モデル
 4.1.3 筋骨格モデルのパラメータ
 4.1.4 数値最適化計算と評価関数
 4.1.5 計算時間
4.2 順動力学を用いた筋張力の推定法
 4.2.1 解析の流れ
 4.2.2 筋骨格モデル
 4.2.3 数値最適化計算と評価関数
 4.2.4 コンピュータの性能の向上と筋骨格モデルの複雑化
 4.2.5 実際の動作解析例

5. 身体運動の巧みさの解析
5.1 しなやかな動作(日本舞踊)
 5.1.1 運動学的評価
 5.1.2 筋電図による拮抗筋の共収縮評価
5.2 力強い動作(ウエイトリフティング)
 5.2.1 バーベルの軌跡
 5.2.2 床反力と筋電図の左右対称性
 5.2.3 リフティングスキルとエネルギー転移

6. センシングと運動の協調
6.1 センシングの二つの役割
6.2 センシングと運動パフォーマンス
6.3 身体運動の協調
 6.3.1 ベルンシュタイン問題
 6.3.2 ダイナミックシステムズアプローチ
 6.3.3 運動リズム・動作タイミング
6.4 運動スキルの工学的実現
 6.4.1 ジャグリングの運動スキル
 6.4.2 運動リズムの生成
 6.4.3 ロボット実験

7. 運動学習と巧みさの発達
7.1 運動スキルの分類
 7.1.1 タスクに基づいた分類
 7.1.2 運動と認知に着目した分類
 7.1.3 環境の予測性のレベルに基づいた分類
7.2 スキルを実現するための情報処理
 7.2.1 脳の中枢神経系でなされる情報処理
 7.2.2 閉ループと反応の遅れ
 7.2.3 反応の遅れを克服するための予測
 7.2.4 GMPとスキーマ
7.3 巧みな運動の学習
 7.3.1 学習によるスキルの変化
 7.3.2 コーチング
7.4 ロボットによる卓球タスクの学習
 7.4.1 ロボット本体と計測制御システム
 7.4.2 卓球タスクのためのスキル
 7.4.3 注意の操作に関する教示
 7.4.4 スキーマ(入出力マップ)の学習
 7.4.5 ラケットの操作スキルを習得するための部分追加練習
 7.4.6 卓球タスクの動作スキルの学習
 7.4.7 ロボットによる卓球タスク
 7.4.8 ヒトとロボットの卓球ラリー

引用・参考文献
章末問題解答
索引

塩澤 成弘(シオザワ ナルヒロ)

宮崎 文夫(ミヤザキ フミオ)