確率的ゲーム理論

シリーズ 情報科学における確率モデル 8

確率的ゲーム理論

不確実な状況下での意思決定問題に生かせる多種多様な2人ゲームのモデルを解説

ジャンル
発行年月日
2021/10/15
判型
A5
ページ数
254ページ
ISBN
978-4-339-02838-6
確率的ゲーム理論
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定価

4,070(本体3,700円+税)

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★書籍の特徴:
不確実性下の意思決定あるいは最適化問題に対する2人ゲーム理論の応用を念頭において2人非協力ゲーム理論の基礎を述べ,例を与えたものです.具体的には,2人ゼロ和有限ゲーム,2人非ゼロ和有限ゲーム,2人無限ゲーム,2人不完備情報ゲームについて解説しています.2人ゼロ和ゲームモデルにおいては最適戦略を,2人非ゼロ和ゲームモデルにおいてはナッシュ均衡戦略を,不完備情報ゲームモデルにおいてはベイズ均衡戦略を考えています.戦略の計算に慣れ親しんでもらい,モデルの特徴を掴んでもらうために数値例や問を用意しています.例の中には,最近では話題となることが少ない,古典的な2人ゲームが含まれています.また,モデル化の参考になるようにと,いくつかの意思決定問題をいくつかの2人ゲームとして定式化してモデルのバリエーションを提案しています.

★読者対象:
不確実性下の意思決定の局面でゲーム理論を応用することに関心を持つ方の役に立つことを期待しています.線形代数,微分積分,グラフ理論,確率統計等の基礎知識を持っている方には読みやすい内容であると思います.

★著者からのメッセージ:
本書で挙がった例に限らず,意思決定の局面において2人非協力ゲーム理論の応用を検討するのに本書が参考になればありがたいです.

不確定性下の意思決定問題は競争相手のあるなしにかかわらず太古の昔から存在するといえよう。いまから45年ほど前,自身が学生であった頃,先輩がつぎのようなことを話していた。最適化モデル(意思決定者が1人)として表現された決定問題と2人ゲームとして表現された決定問題では,解の公式を見つけるのはどちらがより簡単であるか。自分自身はゲーム理論に興味があったので,いくつかの2人ゼロ和ゲームモデルの解の公式を見つけることを研究テーマの一つとしてきた。

不確実な状況での意思決定において代替案の確率的な選択が許されるならば,自然を相手プレイヤーと想定して2人ゼロ和ゲームのマクシミン戦略の応用を考えることができると思う。2人非ゼロ和ゲームモデルでは,意思決定へのナッシュ均衡点戦略の応用を検討できると思う。

本書では,2人ゲームを念頭において非協力ゲーム理論の基礎を述べ数値例を与えている。数値例は,これまでの研究を振り返りつつ,研究活動において身近で目にしてきたモデル,自身が研究したモデル,さらに,それらのバリエーションに関するものからなっている。特に,自身が研究したモデルとそのバリエーションについては,目次において∗印を付した。

身近で目にしてきたモデルは自分の判断で選択したのでモデルの数は少なく,扱っている領域も限定されている。これらのモデルを詳しく研究したわけではないので,いずれも古典的な基本モデルの紹介にとどまっている。

モデルのバリエーションは,ゼロ和ゲームモデルと非ゼロ和ゲームモデル,無限ゲームモデルと有限ゲームモデル,最適化モデルと2人ゲームモデル,という関係であり,上述のように数値例の域にとどまっている。モデルの設定の仕方の妥当性や先行研究などに関してご教示やご意見をいただければありがたいし,読者のお役に立てれば幸いである。既出と思われるものはわかる範囲で文献を紹介している。

同じタイトルを持つ項同士は互いに関連している。本文中の問や章末問題は執筆中に思い付いたものが多数含まれており,大半が数値例に関している。問のうち,難解かあるいは応用・研究の余地があるかもしれないと判断したものには(研究)のラベルを付した。また,線形代数,微分積分,グラフ理論,確率,凸集合の基礎的事項について読者は既知であると想定し,本書では触れていないが,文献リストに参考書をいくつか挙げている。

40年を超える研究活動において多数の先生方や学兄にお世話になった。この場を借りてお礼を申し上げたい。最後に,本書を書く機会を与えていただいた編集委員長の土肥正先生を始め編集委員会と,出版にたどり着くまでお世話になったコロナ社の皆様に謝意を表したい。家族にも感謝したい。

2021年10月
菊田健作

本書で使用する記号について

1.意思決定とゲーム理論
1.1 不確定性の下での意思決定
1.2 戦略型のゲーム

2.2人ゼロ和有限ゲーム
2.1 行列ゲーム
 2.1.1 ゲームの鞍点
 2.1.2 戦略の支配
 2.1.3 混合戦略
 2.1.4 ミニマックス定理
2.2 行列ゲームの解法
 2.2.1 図による解法
 2.2.2 線形計画法による解法
 2.2.3 2人定和有限ゲーム
2.3 行列ゲームの例
 2.3.1 線形計画問題(その1)
 2.3.2 立地ゲーム(その1)
 2.3.3 関門クリア問題(その1)
 2.3.4 段取りを考慮した関門クリア問題
 2.3.5 タイミングゲーム(その1)
 2.3.6 ポーカーゲーム(その1)
 2.3.7 数合わせゲーム
 2.3.8 在庫管理問題(その1)
 2.3.9 ブロットー大佐ゲーム(その1)
 2.3.10 数量割引問題(その1)
 2.3.11 侵入者捕捉問題(その1)
 2.3.12 探索と順序の問題(その1)
 2.3.13 合戦と順序付けのモデル(その1)
章末問題

3.2人非ゼロ和有限ゲーム
3.1 双行列ゲーム
3.2 双行列ゲームのナッシュ均衡
3.3 双行列ゲームと意思決定
 3.3.1 完全均衡点
 3.3.2 ランク1のゲーム
3.4 関連した話題
 3.4.1 ねじり均衡点
 3.4.2 シュタッケルベルク均衡
 3.4.3 双行列ゲームの相関均衡
 3.4.4 進化的に安定な戦略
3.5 双行列ゲームの例
 3.5.1 立地ゲーム(その2)
 3.5.2 線形計画問題(その2)
 3.5.3 タイミングゲーム(その2)
 3.5.4 在庫管理問題(その2)
 3.5.5 ブロットー大佐ゲーム(その2)
 3.5.6 数量割引の問題(その2)
 3.5.7 探索と順序の問題(その2)
 3.5.8 合戦と順序付けのモデル(その2)
章末問題

4.無限ゲーム
4.12 人ゼロ和無限ゲーム
 4.1.1 ε最適戦略
 4.1.2 マクシミン戦略
 4.1.3 単位正方形上のゲーム
 4.1.4 凹凸ゲーム
4.2 2人無限ゲームの例
 4.2.1 タイミングゲーム(その3)
 4.2.2 ポーカーゲーム(その2)
 4.2.3 ポーカーゲーム(その3)
 4.2.4 関門クリア問題(その2)
 4.2.5 資源配分ゲーム
 4.2.6 円板上のゲーム
 4.2.7 侵入者捕捉問題(その2)
 4.2.8 探索と順序の問題(その3)
4.3 タイミングゲーム(その4)
章末問題

5.展開型のゲーム
5.1 ゲームの標準化
5.2 完全情報を持つゲーム
5.3 完全記憶を持つゲーム
5.4 混合戦略と行動戦略
章末問題

6.情報不完備ゲーム
6.1 情報不完備ゲームとベイズ均衡
6.2 ベイジアンゲームの例
 6.2.1 線形計画問題(その3)
 6.2.2 立地ゲーム(その3)
 6.2.3 在庫管理問題(その3)
 6.2.4 ブロットー大佐ゲーム(その3)
 6.2.5 探索と順序の問題(その4)
 6.2.6 探索と順序の問題(その5)
章末問題

7.種々の話題
7.1 純粋戦略ナッシュ均衡を持つゲーム
 7.1.1 ポテンシャルゲーム
 7.1.2 クールノーの複占市場
7.2 多段ゲームの例
 7.2.1 確率化ゲーム
 7.2.2 生存ゲーム
 7.2.3 累積ゲーム
7.3 ランデブー探索
 7.3.1 非対称基本モデル
 7.3.2 対称ランデブー探索問題
 7.3.3 直線上の3人ミニマックスランデブー探索
 7.3.4 グラフ上のランデブー探索
章末問題

引用・参考文献
問および章末問題の解答
索引

読者モニターレビュー【 くのっち 様(ご専門:広告マーケティング戦略、デー タ解析)】

研究ではなく、実務に身をおいている身として、いつかマーケティングを実務に活かしたいという思いをこの20年近く抱いてきた。
本書は、線形代数、微積分、などの基礎知識を前提にしており、2章あたりの基本的なゲームモデルに
ついてまでは、何とか他の資料も調べながら、なんとか進めることができた。が、情報不完備ゲームなど、どんどん難易度が上がっていくと、いったんギブアップとなってしまった。
ただ、機械学習におけるXAI分野で、Shapley値が使われるなど、ゲーム理論の応用は非常に有益であると期待している。
門外の人間にも経営やマーケティングにおいて確率ゲーム理論を実践しやすい環境の普及と実務活用の広がりを期待したい。

今後Pythonでのゲーム理論系のライブラリーやPythonAPIのあるゲーム理論GUIツール Gambit(http://www.gambit-project.org/)などを利用し、本書内容をたどりなおすなど、少しずつ理解を積み上げていければと思っている。

読者モニターレビュー【 ヤマダ 様(ご専門:IT分野)】

本書は2人非協力ゲーム理論の応用に向けて、理論の基礎から解説している。
特徴としては、主に以下の3点と思料する。
①定理や命題の証明が丁寧に付されていること
②著者が研究したモデルを含む、様々なモデルが紹介されており、その特徴をつかむため、数値例や問が豊富に記載されていること
③引用・参考文献が豊富にあり、理解を深めたい読者のために、本文中にも適宜該当文献へ案内していること
読みこなすには一定程度の線形代数、微積、確率などの基礎知識が必要だが、理解を助けるための例や問が多くあるため、躓くことは少ないと思われる。
意思決定においてゲーム理論の応用に興味のある読者にとっては有益な一冊であると思う。

読者モニターレビュー【 化学系大学生 様(ご専門:化学)】

まえがきにもあったが本書を読みこなすためには微分積分,線形代数,確率などの基本事項が必須であると感じた.
さまざまなモデルを設定し,設定したモデルに関連する問題を解いていきながら確率モデルに対する理解を深めていく形式であった.
巻末には参考文献が多く示されており,本書で得たことについて更に深めたいと思う人にとっても親切なのではないかと思った.
確率モデルに興味がある人はもちろんだが,社会科学における人々の行動モデルなどに興味がある方も数学的な知識は必要であるが,一読してみると確率モデルに対する見識を得ることができるのではないかと思う.

菊田 健作(キクタ ケンサク)

日刊工業新聞 技術科学図書(2022年2月25日) 掲載日:2022/02/25

掲載日:2023/07/01

日本オペレーションズ・リサーチ学会誌「オペレーションズ・リサーチ」2023年7月号

掲載日:2022/02/01

「電子情報通信学会誌」2022年2月号広告

掲載日:2021/10/18

「数理科学」2021年11月号広告

掲載日:2021/10/14

情報処理学会誌「情報処理」2021年11月号広告

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