空間音響学

音響サイエンスシリーズ 2

空間音響学

本書は,音の空間特性に関する知覚メカニズムを物理的,心理的側面から解明し,さらに音場の空間特性の収録・再生方法あるいは制御方法を探究する空間音響学について,体系的かつ詳細に最新の研究成果を盛り込んでまとめた。

ジャンル
発行年月日
2010/08/27
判型
A5
ページ数
176ページ
ISBN
978-4-339-01322-1
空間音響学
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定価

2,640(本体2,400円+税)

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本書は,音の空間特性に関する知覚メカニズムを物理的,心理的側面から解明し,さらに音場の空間特性の収録・再生方法あるいは制御方法を探究する空間音響学について,体系的かつ詳細に最新の研究成果を盛り込んでまとめた。

第1章 空間音響学について
1.1 音環境評価システムと空間音響学
1.2 空間音響における音源と音像
1.3 空間音響シミュレーション
1.4 座標系
引用・参考文献

第2章 空間音響の基礎
2.1 空間音響と頭部伝達関数
2.1.1 頭部伝達関数の定義
2.1.2 頭部伝達関数の測定法
2.1.3 水平面および正中面の頭部伝達関数
2.1.4 頭部伝達関数と方向知覚
2.1.5 頭部伝達関数の個人差と個人適応
2.2 方向知覚
2.2.1 左右方向の知覚
2.2.2 前後・上下方向の知覚
2.2.3 方向知覚の弁別限
2.2.4 第1波面の法則
2.3 距離知覚
2.3.1 音源距離と音像距離
2.3.2 距離知覚に影響を及ぼす物理的要因
2.4 広がり知覚
2.4.1 広がり感の定義
2.4.2 みかけの音源の幅(ASW)に影響を及ぼす物理的要因
2.4.3 両耳間相関度によるASWの評価
2.4.4 音に包まれた感じ(LEV)に影響を及ぼす物理的要因
引用・参考文献

第3章 空間音響の収録
3.1 空間音響収録の基礎
3.1.1 自由空間で両耳に届く音の特性
3.1.2 自由空間に置かれた球状頭(球バフル)による音の回折
3.1.3 耳道だけが付いている球状頭に届く音の特性
3.1.4 反射音が存在する空間で両耳に届く音の特性
3.1.5 聴き手の位置が想定できる場合の空間音響の収録問題
3.1.6 回折数値計算で求めた球状頭(「点の耳」付き)のインパルス応答
3.2 ダミーヘッド収録
3.2.1 最初のダミーヘッド収録再生実験
3.2.2 ダミーヘッドステレオフォニー
3.2.3 標準化ダミーヘッドでの収録
3.2.4 特定の人から型取り製作したダミーヘッドでの収録
3.3 実頭収録
3.3.1 実頭での頭部インパルス応答の測定(無響室)
3.3.2 実頭での頭部インパルス応答の測定と収録(有響室)
3.4 マルチマイクロホン収録
3.4.1 空間内の音波を観察・収録するには
3.4.2 音場空間から一部の空間を丸ごと収録する原理
3.4.3 wave field synthesis(波動場合成)とマルチマイクロホン収録
引用・参考文献

第4章 空間音響の再生
4.1 ヘッドホンによる空間音響の再生
4.1.1 耳入力信号の再現
4.1.2 空間知覚の手がかりの再現
4.2 2チャネルスピーカによる空間音響の再生
4.3 多チャネルスピーカによる空間音響の再生
4.3.1 2チャネルスピーカによる空間音響の再生の拡張
4.3.2 多点音圧制御および波面合成
引用・参考文献

第5章 音源方向推定・音源分離
5.1 音源方向推定の基礎的な考え方とその分類
5.2 両耳間時間差(両耳間位相差)・両耳間レベル差の基本特性
5.3 両耳聴モデルの例
5.3.1 両耳間相互相関を用いた古典的モデル
5.3.2 カクテル・パーティ・プロセッサ
5.3.3 周波数領域両耳聴モデル
5.4 左右方向の探査
5.4.1 両耳間相互相関を用いた古典的モデルによる探査
5.4.2 カクテル・パーティ・プロセッサによる探査
5.4.3 周波数領域両耳聴モデルによる探査
5.5 前後・上下方向の探査
5.6 複数音源の探査
5.7 マイクロホンアレイによる音源方向推定・音源分離
引用・参考文献

索引

福留 公利(フクドメ キミトシ)

宇佐川 毅(ウサガワ ツヨシ)

「電子情報通信学会誌」2011年3月号 掲載日:2011/04/20

小特集:これからの医工連携

掲載日:2021/12/27

「日本音響学会誌」2022年1月号広告

【まえがき】より
 ヒトは,2つの耳で受け取った音響信号から,その音源の方向や距離をどのようにして知覚しているのだろうか。また,コンサートホールなどで音楽を聴く際,音の広がりをどのようなメカニズムで感じ取っているのだろうか。さらに,このような音環境を時間特性や周波数特性だけでなく空間特性も含めて再現,あるいは制御するにはどうしたらいいのだろうか。
 本書は,音の空間特性に関する知覚メカニズムを物理的,心理的側面から解明し,さらに空間特性の再現あるいは制御方法を探究する“空間音響学”について,体系的かつ詳細に述べることを目的としている。
 空間音響の研究は,20世紀中頃,とりわけ1950年代頃から急速な進歩を遂げた。当時の研究成果の集大成として,ルール大学(ドイツ)のブラウエルト教授は“RÄUMLICHES HÖREN”を著した。1974年のことである。この著作は,後に英語版“Spatial Hearing”が出版され,改訂を重ねた。また,日本の研究成果を増補した“空間音響(イェンス ブラウエルト・森本政之・後藤敏幸 編著)”が1986年に出版された。しかし,1990年代以降の空間音響の研究の進展は目を見張るものがあり,この分野の研究者,あるいは,新たにこの分野の研究を始めようとする人が学んでおくべき研究成果を体系的に再構築する必要が出てきた。
 本書は,空間音響の原理と応用について,著者らの知見の及ぶ範囲で,国際的な観点から2010年時点での最新の研究成果を盛り込んでまとめたものである。具体的には,音環境評価と空間音響の関わり,方向感,距離感,広がり感を中心とした空間特性に関する聴覚事象の基礎的な知見と知覚メカニズム,音場の空間特性の収録方法,再生方法,さらに,2つの耳に入力した音響信号から音源方向を推定する方法,複数の音源から特定の音源を分離抽出する方法などについて,目次に示すような内容,および構成でまとめた。
 空間音響学は,かつてはヒトの空間知覚メカニズムの解明が中心テーマであり,研究成果が工学的な応用に直結することは多くはなかったが,近年のディジタル信号処理技術の進展と相まって,3次元音響再生,臨場感通信,ロボット聴覚などへの展開が期待される研究分野となってきた。応用研究の進歩はこれからますます加速されるであろう。