音響工学基礎論

音響工学基礎論

音響工学を初めて学ぶ際に必要な基礎的な原理を平易にかつ体系的に述べた。専門性,実用性,および新規性も兼ね備えた内容とした。

ジャンル
発行年月日
2012/03/21
判型
A5
ページ数
208ページ
ISBN
978-4-339-00830-2
音響工学基礎論
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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情報・電気・建築・機械系学生が音響工学を初めて学習する際の教科書として,基礎的な原理を平易にかつ体系的に述べた。また,研究者が課題を解決する際の参考となるよう,専門性,実用性,および新規性も兼ね備えた内容とした。

1. 音波とは何か
1.1 音の分類
1.1.1 純音
1.1.2 複合音
1.2 音波の基礎
1.2.1 音の伝搬
1.2.2 音速
1.2.3 音響インピーダンス密度
1.3 音圧と音の強さ
1.3.1 音圧
1.3.2 音の強さ
1.3.3 音のレベル
1.3.4 音圧レベルの加算と減算
1.3.5 スペクトルレベルとオクターブバンドレベル
1.4 球面波
1.5 平面波
1.6 波動方程式
1.6.1 波動方程式導出の準備
1.6.2 波動方程式の導出
1.6.3 速度ポテンシャルを用いた表現
1.6.4 平面波の波動方程式の一般解
1.7 電気・機械・音響系の対応関係
1.8 インパルス応答と伝達関数
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2. 聴覚器官
2.1 外耳の機能
2.1.1 耳介
2.1.2 外耳道
2.2 中耳の機能
2.3 内耳の機能
2.3.1 蝸牛
2.3.2 基底膜
2.3.3 有毛細胞
2.4 聴覚の伝導路
2.5 聴覚器官の信号処理モデル
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3. 音の知覚
3.1 Weber―Fechnerの法則
3.2 音の大きさの知覚
3.2.1 ラウドネス
3.2.2 両耳ラウドネス
3.3 マスキング
3.3.1 同時マスキング
3.3.2 臨界帯域
3.3.3 継時マスキング
3.4 音の高さの知覚
3.4.1 ピッチ感覚
3.4.2 メル尺度
3.4.3 ピッチの弁別閾
3.4.4 ミッシングファンダメンタル
3.4.5 音律
3.5 音色の知覚
3.6 音の方向の知覚
3.6.1 頭部伝達関数の定義
3.6.2 水平面および正中面の頭部伝達関数
3.6.3 頭部伝達関数と方向知覚
3.6.4 頭部伝達関数の個人差と個人適応
3.6.5 左右方向の知覚
3.6.6 前後・上下方向の知覚
3.6.7 方向知覚の弁別限
3.6.8 第1波面の法則
3.7 音の距離の知覚
3.7.1 音源距離と音像距離
3.7.2 距離知覚に影響を及ぼす物理的要因
3.8 音の広がりの知覚
3.8.1 広がり感の定義
3.8.2 みかけの音源の幅に影響を及ぼす物理的要因
3.9 音声の知覚
3.9.1 発声の仕組み
3.9.2 母音の調音
3.9.3 子音の調音
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4. 室内音響
4.1 音の反射・吸収・透過
4.2 音の屈折
4.3 残響
4.3.1 拡散音場
4.3.2 拡散音場における音エネルギーの成長と減衰
4.3.3 残響時間
4.3.4 Sabineの残響理論
4.3.5 Eyringの残響理論
4.3.6 残響時間の測定法
4.4 室内音響評価指標
4.4.1 音量感
4.4.2 明瞭度
4.4.3 残響感
4.4.4 みかけの音源の幅
4.4.5 暗騒音
4.5 室内音響の予測手法
4.5.1 音場のコンピュータシミュレーション
4.5.2 縮尺模型実験
4.5.3 音場の可聴化
4.6 騒音の評価
4.6.1 騒音の分類
4.6.2 騒音の伝搬
4.6.3 騒音の測定
4.6.4 騒音計の周波数補正回路
4.6.5 騒音計の時間重み特性
4.6.6 騒音の評価量
4.6.7 騒音の環境基準
4.7 遮音
4.7.1 遮音に関する質量則
4.7.2 コインシデンス効果
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5. 電気音響
5.1 マイクロホン
5.1.1 動電型マイクロホン
5.1.2 静電型マイクロホン
5.1.3 マイクロホンの感度
5.1.4 マイクロホンの指向性
5.1.5 マイクロホンアレイ
5.1.6 ダミーヘッドマイクロホン
5.2 スピーカ
5.2.1 動電直接放射型スピーカ
5.2.2 エンクロージャの影響
5.2.3 ホーン型スピーカ
5.2.4 ラインアレイスピーカ
5.3 ホールの電気音響システム
5.4 臨場感再生システム
5.4.1 ヘッドホンによる3次元音響再生
5.4.2 2個のスピーカによる3次元音響再生
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6. 音のディジタル処理
6.1 標本化・量子化
6.2 音源信号の作成
6.2.1 純音の作成
6.2.2 ホワイトノイズの作成
6.2.3 swept-sine信号の作成
6.3 フーリエ変換
6.3.1 離散フーリエ変換
6.3.2 高速フーリエ変換
6.4 畳込み積分
6.4.1 時間軸上での処理
6.4.2 周波数軸上での処理
6.4.3 オーバーラップ加算法
6.5 時間窓
6.5.1 矩形窓
6.5.2 ハニング窓
6.5.3 ハミング窓
6.5.4 ブラックマン窓
6.5.5 ブラックマン―ハリス窓
6.6 サンプリング周波数変換
6.6.1 ダウンサンプリング
6.6.2 アップサンプリング
6.6.3 サンプリング変換
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付表
1 頭部伝達関数データベースのURL
2 建築材料の吸音率
3 建築材料の透過損失
4 残響時間
5 騒音計の周波数重み特性
参考図書・引用論文
索引

まえがき より
 本書は,電気電子系,情報系,建築系,機械系などの大学生が音響工学を初めて学習する際のテキストブックとして使えるよう,音響工学の基礎的な原理,現象について平易かつ体系的に述べた。また一方で,音響工学に関わる技術者,研究者が日々の仕事で直面する技術的課題を解決する際に紐解くことができるよう,専門性,実用性,および新規性も兼ね備えた内容とした。
 本書の構成は次のようにした。まず第1章「音波とは何か」では,音波の定義を示し,音波の物理的な振舞いと,その記述方法について述べた。
 第2章「聴覚器官」では,おもに生理学的な見地からヒトの聴覚器官を概観した。ヒトの聴覚末梢器官を,外耳(耳介,外耳道,鼓膜),中耳(耳小骨)および内耳(蝸牛,前庭,三半規管)に分け,それぞれの部位の機能について述べた。
 第3章「音の知覚」では,音の大きさ,高さ,音色,方向,距離,広がりなどの要素感覚を取り上げて,その知覚現象を詳しく述べた。さらに,それぞれの要素感覚を引き起こす,あるいは対応する音の物理量について概説した。
 第4章「室内音響」では,壁などの境界面による音の反射や吸音について説明した後,それらが繰り返されることによって形成される残響について述べた。また,室内における音声の明瞭度や音楽の広がり感などの評価指標について解説し,設計時点でそれらを予測するための手法を紹介した。加えて,騒音の評価方法および遮音方法について述べた。
 第5章「電気音響」では,電気音響機器およびそのシステムについて概説した。まず,代表的な電気音響機器であるマイクロホンおよびスピーカについて,その動作原理や特徴を詳しく述べた。加えて,ホールや劇場で用いられているディジタル音響機器を概説した。さらに,臨場感の高い音場を再生する3次元音響再生システムを紹介した。
 第6章「音のディジタル処理」では,音響工学を理解し,その知識を活用するうえで必要となるディジタル信号処理の基礎を概説した。また,学習に役立つサンプルプログラムを掲載した。
 なお,各章末には,本書で基礎を学んだ後,より高いレベルに進む読者のために,「さらに理解を深めるための書籍」を掲載した。ぜひ,これらの書籍も読み進めてほしい。