宇宙工学シリーズ 3
人工衛星と宇宙探査機 (増補)
衛星設計の関係者だけでなく,多くのミッション搭載機器の開発担当者にも有用な1冊
- 発行年月日
- 2022/11/30
- 判型
- A5 上製
- ページ数
- 290ページ
- ISBN
- 978-4-339-01231-6
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
宇宙開発の大きな2つの技術要素は打ち上げ機(ロケット)と宇宙機(スペースクラフト:人工衛星,宇宙探査機)です。本書は,そのうち宇宙機について記述しています。「まえがき」に述べたとおり,宇宙機の三つの基本技術である「構造設計」「軌道制御」「姿勢制御」を取り上げて,宇宙機はどのように設計・製作されるのか? どのように打ち上げられミッションを達成できるのか? また,日常生活で日々接している通信衛星・気象衛星・GPS衛星などはどのように運用されているのか? さらに,近年話題になっている小惑星のサンプルリターン(はやぶさ)や,宇宙ステーション(ISS)はどうやって実現されているのか? また今後計画されている月面探査や月面基地などは? これらの質問に,専門家から技術的にお答えするのが本書です。
本書はつぎのように構成することにしました。まず1章で軌道や打上げロケットについての基礎的な知識をわかりやすい例題とともに示します。2章でシステム設計について述べ,衛星・探査機を構成するサブシステムを概観します。そして3章,4章および5章では主要なサブシステム技術である構造設計・軌道計画・姿勢制御の3分野に論点を絞って詳細に議論します。この三つの章では基礎原理からていねいに説き起こしてその論理的な積み上げの上に現状の技術を理解できるように努めたこと,そしてそれを発展させて類書にはない新しい技術と理論について紹介していることが特徴です。
増補としては,衛星のすべてのコンポーネント・ミッション機器が軌道上でその機能を発揮する前にくぐりぬけねばならないロケット搭載時での耐環境性の考え方と証明法について説明しました。最近,大学・高専などで活発になっている小型衛星や衛星搭載機器の開発に課せられる各種の試験についても紹介しています。
増補にあたって
人工衛星の構造強度に関して,前版までは有限要素法による解析についておもに記述した。今回の増補では,新たに6章を設けて,衛星のサブシステムや搭載機器に課せられるロケット打上げ時の耐環境性のための検証試験について説明を加えた。この加筆が,構造設計の関係者だけでなく,多くのミッション搭載機器の開発担当者にも有用であることを期待している。執筆は小松が担当した。このたびの増補の出版に際しては,コロナ社はじめ多くの方々にお世話になった。心よりお礼申し上げる。
2022年9月
著者
まえがき
宇宙開発は20世紀の初頭にパイオニア的な科学者たちのグループによって始められて以来,1世紀の間に目をみはるような発展を遂げた。今日では地球を周回する人工衛星が放送・通信・気象予報・地球観測など日常の生活に不可欠なものとなっている。また月・惑星への探査機が多くの新しい科学情報をもたらし,宇宙ステーションが軌道上に建設されるなどその話題は枚挙に暇がない。
本書は宇宙開発の重要な要素である人工衛星と宇宙探査機の設計・開発に関する工学の教科書として準備されたものである。ところが,人工衛星・宇宙探査機は多くの隣接する工学分野の知識が集積されている複雑なシステムであり,計画・設計・開発・試験・打上げ・運用の長期間にわたるさまざまなフェーズを通して実現されるものである。そのため限られた紙数の中ですべてを網羅的に概説すると内容が浅くなり効果的ではなくなる。また専門家向けに単一の分野だけを扱うものでは広い実用性の要求には応えられない。
そこで本書はつぎのように構成することにした。まず1章で軌道や打上げロケットについての基礎的な知識をわかりやすい例題とともに示す。2章でシステム設計について述べ,衛星・探査機を構成するサブシステムを概観する。そして3章,4章および5章では主要なサブシステム技術である構造設計・軌道計画・姿勢制御の3分野に論点を絞って詳細に議論する。この三つの章では基礎原理からていねいに説き起こしてその論理的な積み上げの上に現状の技術を理解できるように努めたこと,そしてそれを発展させて類書にはない新しい技術と理論について紹介していることが特徴である。
特に,有限要素法,部分構造法による衛星の構造解析,衛星コンステレーション軌道,惑星間飛行の計算法,GPSによる軌道および姿勢決定,衛星の安定性と制御系設計法などについて従来扱われていなかった実用性の高い先端的な事柄を詳細に解説した。これらは学部学生・大学院生ばかりでなく宇宙開発に携わる技術者にも役立つであろうと考えている。また主要な問題については例題を設け,それらを解くために用いた計算機CADソフト(MATLAB)のソースコードを巻末に掲載して理解を助けるとともに,実際の問題にも適用できるように配慮した。
本書は3人の共同で執筆された。それぞれの章の執筆担当は1章(小松・木田),2章および3章(小松),4章(川口),5章(木田)である。出版が実現するまでには多くの方々のあたたかいご協力をいただいた。末筆ながら心より感謝したい。もし内容についてご注意,ご意見などを賜ることができれば筆者らの望外の幸せである。
2001年8月
著者
1.衛星と宇宙探査機の概要
1.1 宇宙機
1.2 宇宙機の軌道
1.3 打上げ
1.4 衛星の構成
1.5 衛星と探査機の実例
2.衛星と宇宙探査機システムの設計
2.1 構造サブシステム
2.1.1 構造設計の概要
2.1.2 衛星にかかる荷重
2.1.3 構体
2.1.4 材料
2.1.5 寸法の決定
2.1.6 展開構造物
2.2 電源系サブシステム
2.2.1 電池
2.2.2 食の計算法
2.2.3 太陽電池
2.2.4 燃料電池
2.3 熱制御系サブシステム
2.3.1 熱放射
2.3.2 放射による熱移動
2.3.3 熱伝導による熱移動
2.3.4 対流
2.3.5 ヒータとクーラ
2.3.6 衛星の熱制御例
2.4 推進系サブシステム
3.衛星の構造解析
3.1 モード解析
3.2 有限要素法プログラム
3.3 有効モード質量
3.4 部分構造法
3.5 衛星のダイナミックモデル
4.軌道計画の決定とその運用
4.1 軌道運動の基礎
4.1.1 二体問題
4.1.2 二体問題に関する力学的な性質
4.1.3 ケプラー6要素(軌道要素)
4.1.4 ケプラー方程式
4.1.5 カルテシアン要素からケプラー要素へ
4.1.6 ケプラー要素からカルテシアン要素を求める
4.1.7 軌道移行
4.1.8 ヒルの方程式(円軌道上でのランデブー)
4.2 衛星コンステレーション
4.2.1 開発の歴史
4.2.2 コンステレーションの軌道設計
4.2.3 航法精度評価
4.2.4 最近のコンステレーション検討方向
4.3 惑星間飛行の計算法
4.3.1 ランベルトの定理
4.3.2 ランベルト問題の具体的な解法
4.3.3 地球出発時の幾何学的関係と出発双曲線軌道,パーキング軌道の計算法
4.3.4 脱出軌道投入時のケプラー6要素計算法
4.3.5 目標惑星到着時の軌道関係式
4.3.6 スイングバイ
4.4 軌道決定
4.4.1 軌道誤差(変分)の伝搬
4.4.2 条件付き確率(期待値)
4.4.3 確率過程とカルマンフィルタ
4.4.4 推定共分散の最小化とカルマンフィルタ
4.4.5 最小2乗推定とバッチシーケンシャル法
4.4.6 電波による観測情報―距離と距離変化率
4.4.7 1パス内の距離,距離変化率計測による軌道推定の精度
4.4.8 軌道決定誤差の解析的評価
5.人工衛星の姿勢制御
5.1 姿勢運動の基礎
5.1.1 姿勢の表現
5.1.2 キネマティックス
5.1.3 ダイナミックス
5.2 外乱トルク
5.3 姿勢の安定化
5.3.1 スピン衛星
5.3.2 重力安定化衛星
5.4 姿勢決定
5.4.1 光学センサ
5.4.2 慣性センサ
5.4.3 姿勢決定アルゴリズム
5.5 姿勢の制御
5.5.1 制御系の構成
5.5.2 ホイールによる制御
5.5.3 CMGによる制御
5.5.4 ガスジェットによる制御
6.搭載機器の環境耐性と試験による検証
6.1 衛星の開発計画と試験モデル
6.2 荷重の設定
6.3 衛星に課せられる構造試験
6.4 正弦波振動試験
6.4.1 正弦波振動試験の条件
6.4.2 結合解析による加速度荷重の決定
6.4.3 剛性条件の緩和
6.5 音響荷重
6.6 衝撃荷重
付録
略語集
参考文献
索引
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掲載日:2023/07/05
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掲載日:2023/03/15
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掲載日:2023/01/11
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掲載日:2022/12/07
-
掲載日:2022/12/01
-
掲載日:2022/11/28
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掲載日:2022/11/21
-
掲載日:2022/10/06