イオンエンジンによる動力航行

宇宙工学シリーズ 8

イオンエンジンによる動力航行

「はやぶさ」小惑星探査機へ応用され,深宇宙動力航行に成功した「μ10イオンエンジン」を基調に,電気推進の詳細な解説を行う。電気推進は,さらにその技術を先鋭にして人類の「知」と「活躍」の地平を宇宙に拡大させるであろう。

ジャンル
発行年月日
2006/12/15
判型
A5
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-339-01228-6
イオンエンジンによる動力航行
品切・重版未定

定価

4,400(本体4,000円+税)

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「はやぶさ」小惑星探査機へ応用され,深宇宙動力航行に成功した「μ10イオンエンジン」を基調に,電気推進の詳細な解説を行う。電気推進は,さらにその技術を先鋭にして人類の「知」と「活躍」の地平を宇宙に拡大させるであろう。

イオンエンジンは80年代の停滞期を乗り越えて,「深宇宙動力航行」という活躍の場を得た。そして今日,マイクロ波放電式イオンエンジンμ10は,「はやぶさ」小惑星探査機を目的天体「いとかわ」にランデブーさせた。この新型イオンエンジンは,栗木恭一宇宙科学研究所名誉教授の指導により1980年代後半に研究着手し,多くの大学院学生の研究課題として性能改善が図られてきた。宇宙機器化にあっては,都木恭一郎教授の指揮の下,清水幸夫主任開発員・船木一幸助教授(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)・堀内康男氏(NEC東芝スペースシステム)らの献身的な努力が傾けられた。そして川口淳一郎教授の強力な主導によって「はやぶさ」の宇宙運用が遂行されている。関係者のご努力・ご協力に敬意を表したい。

本書は,はやぶさ小惑星探査機へ応用されたμ10イオンエンジンを基調に,電気推進の詳細な解説を行う。関係式の導出にはその経過も含めて説明を施した。まず,1章では,化学推進を含み電気推進の概要を述べる。2章から4章でイオンエンジンの機構や物理を解説する。ここでは,中性ガスやイオンの流れに沿って,イオン生成,静電加速,中和の順序で記す。5章では,ハードウェアの研究開発に有効となるように,地上実験技術を説明する。電気推進システムや宇宙機システムの質量特性に関して,6章で記述する。電力や質量について,システム全体に対する電気推進の占める割合が理解される。電気推進の応用が期待される軌道変換手法に関し,7章に多くのページを割いた。宇宙軌道設計を志す学生・技術者に参考になるであろう。そして,はやぶさ小惑星探査機を例に,電気推進を搭載する宇宙機システムの開発や運用の実際を,8章.9章に細述する。電気推進を利用する現場関係者には有用となろう。電気推進全般を記述した既刊本「電気推進ロケット入門」(東京大学出版会,2003年)と併せて一読いただければ,価値が高まるに違いない。

電気推進は,さらにその技術を先鋭にして,地表の柵から人類を解き放ち,「知」と「活躍」の地平を宇宙に拡大させる使命を担っている。本書が究極の宇宙推進実現に寄与できることを期待する。

「はやぶさ」小惑星探査機,「いとかわ」到着の日に記す。
2005年9月
著者

1.推進概要
1.1 宇宙飛翔と排気速度
1.2 化学推進
1.3 電気推進
 1.3.1 レジストジェット
 1.3.2 DCアークジェット
 1.3.3 MPDアークジェット
 1.3.4 PPT  
 1.3.5 ホールスラスタ
 1.3.6 イオンエンジン
 1.3.7 FEEP  
1.4 指標パラメータ
 1.4.1 推力と非推力
 1.4.2 推進効率と推力電力比
 1.4.3 トータルインパルス
1.5 歴史的経緯
1.6 はやぶさ小惑星探査機
1.7 電気推進の将来

2.イオン生成
2.1 各種イオン源と電子加速方式
 2.1.1 直流放電式イオン源
 2.1.2 高周波放電式イオン源
 2.1.3 マイクロ波放電式イオン源
2.2 磁場による電子の閉込め
2.3 励起・電離・再結合反応
 2.3.1 励起・電離
 2.3.2 イオン損失および電子損失
2.4 イオン移送
2.5 イオン生成コスト
 2.5.1 直流放電式イオン源のイオン生成コスト
 2.5.2 マイクロ波放電式イオン源のイオン生成コスト
2.6 消費電力と推進剤利用効率
2.7 内部損耗

3.静電加速
3.1 グリッドシステム
3.2 1次元イオン加速・減速解析
 3.2.1 静電加速
 3.2.2 電荷密度,電流密度および電流
 3.2.3 ポアソン方程式および空間電荷
 3.2.4 空間電荷制限則
 3.2.5 スクリーン・アクセルグリッド間電位および電界
 3.2.6 アクセル・ディセルグリッド間電位および電界
3.3 引き出し原理
 3.3.1 イオンシース
 3.3.2 イオン飽和電流密度
 3.3.3 静電加速長さ
3.4 イオンビーム
 3.4.1 グリッド形状
 3.4.2 パービアンス
 3.4.3 グリッド孔配置
3.5 中性粒子流れ
 3.5.1 自由分子流
 3.5.2 推進剤利用効率
3.6 絶縁破壊
3.7 グリッド損傷と対策
 3.7.1 スパッタリング
 3.7.2 高速イオン直撃によるアクセルグリッド損耗
 3.7.3 電荷交換イオンによるアクセルグリッド損耗
 3.7.4 グリッド材
3.8 グリッド設計
3.9 数値計算
 3.9.1 計算手法
 3.9.2 計算コード
3.10 グリッド支持部

4.中和
4.1 各種中和器
 4.1.1 フィラメント
 4.1.2 電界放出
 4.1.3 ホローカソード
 4.1.4 マイクロ波放電式中和器
4.2 イオンビーム中和
4.3 プラズマ接触
4.4 雑音
 4.4.1 マイクロ波放電式中和器の雑音
 4.4.2 雑音の発生機構

5.地上試験
5.1 イオンエンジン地上試験装置
 5.1.1 真空装置
 5.1.2 イオンエンジン駆動系
 5.1.3 自動制御系
5.2 イオンエンジン組立
 5.2.1 マイクロ波源
 5.2.2 ガス絶縁器
 5.2.3 DCブロック
 5.2.4 シールド
5.3 推力測定
 5.3.1 スラストスタンド
 5.3.2 ビーム特定化
5.4 イオン源性能

6.宇宙利用への最適比推力
6.1 最適比推力の導出
6.2 質量と電力の設計
6.3 電気推進の電力・質量の特性化

7.宇宙動力航行
7.1 座標と運動方程式
 7.1.1 座標
 7.1.2 座標変換
 7.1.3 軌道運動方程式
 7.1.4 ホーマン型軌道遷移
 7.1.5 ランベルトの定理
 7.1.6 バッティンの定理
 7.1.7 ヒル方程式
7.2 深宇宙動力航行
 7.2.1 深宇宙遷移軌道投入
 7.2.2 ΔVEGA 
 7.2.3 地球スイングバイ
 7.2.4 インパルスΔVEGA
 7.2.5 電気推進ΔVEGA
 7.2.6 火星・金星接近速度低減のためのEPΔVPGA
7.3 静止衛星の南北制御
 7.3.1 外力
 7.3.2 軌道修正の実際
 7.3.3 全電化静止衛星
7.4 軌道間輸送
 7.4.1 古典的手法
 7.4.2 円スパイラル
 7.4.3 楕円スパイラル
 7.4.4 軌道傾斜角変更
 7.4.5 軌道間輸送比較
7.5 ラグランジュ点維持

8.宇宙機システムと電気推進
8.1 宇宙機システム構成
 8.1.1 姿勢制御
 8.1.2 熱設計
 8.1.3 電力設計
 8.1.4 通信
 8.1.5 プラズマ干渉対策
8.2 電気推進システム構成
 8.2.1 電源
 8.2.2 グランド
 8.2.3 推進剤種類
 8.2.4 貯蔵タンク
 8.2.5 流量制御
 8.2.6 運転制御
8.3 開発試験
 8.3.1 耐久試験
 8.3.2 電磁干渉試験
 8.3.3 EMI地上評価試験
 8.3.4 通信波とプルームの干渉試験
 8.3.5 熱真空環境試験
 8.3.6 ビーム噴射試験
8.4 射場作業
 8.4.1 推進剤充填

9.イオンエンジンの宇宙運用
9.1 追跡管制
9.2 軌道決定
9.3 軌道計画
9.4 はやぶさ小惑星探査機の巡航運用
9.5 イオンエンジンの運転
 9.5.1 ベーキング
 9.5.2 推力測定
 9.5.3 中和器のクロストーク
 9.5.4 スロットリング
 9.5.5 電力リップルの圧縮
 9.5.6 グリッド間異物除去
 9.5.7 IESアンローディング
 9.5.8 深宇宙動力航行

付録
略語集
引用・参考文献
索引

amazonレビュー

荒川 義博(アラカワ ヨシヒロ)

國中 均(クニナカ ヒトシ)

中山 宜典(ナカヤマ ヨシノリ)

西山 和孝(ニシヤマ カズタカ)