電気機器学の基礎理論

電気機器学の基礎理論

昨今の講義に合わせ,最小限のステップで電気機器学全般を理解し,俯瞰できるよう構成

  • 口絵
ジャンル
発行年月日
2020/08/17
判型
A5
ページ数
242ページ
ISBN
978-4-339-00936-1
電気機器学の基礎理論
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定価

3,630(本体3,300円+税)

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  • 内容紹介
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  • 広告掲載情報

多くの電気機器はパワーエレクトロニクス技術を用い,電圧や電流を制御することで駆動される。本書ではその制御に用いられるモデルの導出を行うことを一つの目標に,機器の特性を理解する上で有用な等価回路による説明も掲載した。

◆「電気機器学」をこれから学ぶ方へ◆
電気機器学は,電磁気学から派生した実用学問の一つで,電気エネルギーの発生から利用まで,発電機や変圧器、モータなどの機器として広く利用されています。初学者にとって電磁気は目に見えないため直感的に理解がしづらいですが,モータや発電機で利用される,鉄心,空気ギャップ,巻線などから構成される磁気回路や,磁束,起磁力といった概念は比較的理解が容易です。基礎となる電磁気学の基礎法則から出発して,各種機器の原理を丁寧に説明し,初学者でも電気機器学の基礎理論が学べるように構成しました。

◆「電気機器学」の教科書をご検討中の方へ◆
本書は,カリキュラムにおいて「電気機器学」が半期の授業として組まれている場合を想定して構成されています。磁気回路から出発して,電気-機械エネルギー変換の基礎を説明し,その後,回転機の共通モデルを用いて,直流機,同期機,誘導機等を体系立てて説明しています。学習者が躓くことのないよう,なるべく丁寧にモデルを展開しています。また,パワーエレクトロニクスで制御することを前提としたモデルまで演繹的に導出しています。

◆本教科書の特徴◆
「電気機器学」の既存教科書の多くは,各種電気機器の動作原理や構造,諸得性の説明に終始しています。そこで本書では視点を変え,電気機器を現代的な側面から体系立ててまとめることとしました。ポイントとしてつぎの点を意識しました。

・現代の多くの電気機器はパワーエレクトロニクスの技術を用いて電圧や電流を制御することで駆動されています。本書では,この制御に用いられるモデルの導出を行うことを目標の一つとしました。
・はじめに基本的な回転機の理論的モデルを導出し,これを積み上げて段階的に各種モータや発電機の原理を学べる構成としました。
・種々の機器の特性を理解するうえで有用な等価回路(※)による説明を行いました。

※等価回路とは
等価回路とは,ある対象物(デバイス)について,その動作の特性を表す回路を最小限の要素で作ったものをいいます。例えば,回転機の等価回路は,抵抗やインダクタンス,起電力等で簡易的に表現することができます。これにより,実機を使った実験や試験をする前に,対象の特性をパソコン上で解析することが可能になります。電気機器の製品では,様々な要素が組み合わさった構成となっているため,現象の把握がとても困難です。これを等価回路に置き換えて解析を行うことで物理現象を把握し易くなります。

◆書籍構成・流れ◆
①「電気機器の歴史」を振り返った後,基本となる「電磁気学」と「磁気回路」について学ぶ。
②磁気回路の応用機器の一つである「変圧器」の特性について,等価回路を用いて学ぶ。
③固定部と回転部から構成される電気機器の「回転機」を学ぶ。回転型のモータや発電機といった「回転機の基本モデル」となるものを磁気回路に基づいて導出する。
④基本モデルを基礎として,「直流機」,「同期機」,「誘導機」の方程式を導出し,それをもとに等価回路を求め,各種モータや発電機の原理を学ぶ。また,同期機であるが回転子に巻線も永久磁石も用いないリラクタンス機についても学ぶ。

◆主な電気機器の用途◆
●変圧器(トランス)
ACアダプタや電圧が異なる海外で日本の電化製品を使用する際に用いる変圧器,高圧電線の電気を家庭用に変圧する柱上変圧器(電柱に取り付けられたバケツ上の機器)に使用されています。

●回転機(回転型のモータや発電機)
・直流機(直流電動機(DCモータ))
自動車のワイパーや電動シート,スマートフォンのバイブレーション駆動,コンピュータのHDDや冷却ファンなどに使用されています。

・同期機(同期電動機,同期発電機)
エアコンや冷蔵庫のコンプレッサ,洗濯機,掃除機,ハイブリット自動車や電気自動車の駆動用,一部の電気鉄道車両の駆動用,エレベータ,電気推進船のスクリュープロペラの駆動用などに使われている。同期発電機は,火力発電所のタービン発電機のほか,水力発電や風力発電でも用いられている。

・誘導機(誘導電動機)
換気扇や扇風機のファンモータ,洗濯機,電気鉄道車両の駆動用,エスカレータなどに使用されています。

・リラクタンス機(リラクタンスモータ)
同期機であるが回転子に巻線も永久磁石も用いないモータ。レアアースを含む永久磁石を使用しないなど省資源性があることで期待が高まっています。

電動機(モータ)や発電機は,いわゆる「電気機器学」として電気系のカリキュラムの中で教授されている。近年,電気系のカリキュラムは圧縮され,従来 2 コマあった電気機器学は 1 コマに削減されている学科が多い。また,電気機器学の教科書は,現代的な側面から体系立てて書かれたものが少ないのが現状である。

そこで本書では,できるだけ贅肉をそぎ落とし,学習者が最小限のステップで電気機器学全般を理解し俯瞰できるように内容を構成するとともに,基礎となる理論的モデルから開始し,これを積み上げて各種モータや発電機の原理を説明する構成とした。初学者が途中で躓くことがないように,論理の展開においては,なるべく飛躍がないように丁寧に記述した。

まず 2 章では基礎となる電磁気学について詳しく述べる。アンペールの法則やファラデーの法則,磁界に関するガウスの法則のほか,クーロン力に基づくローレンツ力の導出について説明する。また,磁性体について詳しく述べる。3章では磁気回路について,その基本的な考え方を説明する。アンペールの法則に基づいて起磁力や磁気抵抗,磁束の概念を定義し,磁気回路における相互の関係やインダクタンスや磁気エネルギー,磁気随伴エネルギー,発生力,パワーフローについて述べる。

後半の 4 章では,磁気回路の応用機器の一つである変圧器について説明する。複数巻線のある磁気回路のモデルから等価回路を導出し,その特性について述べる。5 章では,回転型のモータや発電機,すなわち,回転機の基本モデルを磁気回路に基づいて導出し,巻線電流と磁束密度分布の関係や,回転磁界について説明する。基本モデルの巻線の自己インダクタンスや相互インダクタンス,電圧方程式やトルク方程式を導出する。また回転子構造の違いにより回転機を直流機,同期機,誘導機に分類できることを示す。

6 章では,直流機の基本構造を説明し,その基本モデルから電圧方程式やトルク方程式を導出する。また,その特性について述べる。7 章では,同期機の基本構造および基本モデルから電圧方程式やトルク方程式を導出する。導出される交流モデルを直流モデルに変換する d-q 変換とよばれる座標変換について述べる。また,等価回路を用いて定常特性を説明する。8 章では,誘導機について基本構造および基本モデルから電圧方程式やトルク方程式を導出し,ほぼ線形なシステムに変換する座標変換について述べる。導出されたモデルから等価回路と定常特性について説明する。9 章では,同期機の一種であるが回転子に巻線も永久磁石も用いないリラクタンス機について,基本構造や特性を説明する。

現代の多くの電気機器はパワーエレクトロニクスの技術を用いて電圧や電流を制御することで駆動されるため,本書ではその制御に用いられるモデルの導出を行うことを目標の一つとした。一方で,機器の特性を理解するうえで有用な等価回路による説明も行っている。

また,本書に書ききれなかった例題や演習などをコロナ社 Web サイトに掲載したので活用してほしい。

なお,2~4 章は赤津が執筆を担当し,1 章,5 章~9 章は藤本が担当した。

本書が電気機器学を学ぶ一助になれば幸いである。

最後に,原稿をチェックいただき貴重なコメントをいただいた東京理科大学星伸一教授,電動機の貴重な写真をご提供いただいた富士電機株式会社松本康博士に謝意を表す。

2020年6月  著者

1.電気機器の歴史

2.電磁気学の基礎
2.1 アンペールの法則
 2.1.1 直線導体の作る磁界
 2.1.2 2本の直線導体の作る磁界
 2.1.3 (無限長)ソレノイドコイルの作る磁界
2.2 磁界と磁束密度の関係
2.3 磁束密度の定義とクーロン力
2.4 磁束密度に関するガウスの法則
 2.4.1 ガウスの法則
 2.4.2 ベクトルポテンシャル
2.5 運動系でのファラデーの法則
2.6 静止系でのファラデーの法則
2.7 回転機における速度起電力(EMF)
2.8 実際の巻線
 2.8.1 コイルエンド
 2.8.2 表皮効果と近接効果
2.9 磁性体に関する法則
 2.9.1 磁化と磁化電流
 2.9.2 磁性体中の磁界の強さ
 2.9.3 強磁性体の磁化と透磁率
 2.9.4 ヒステリシス特性(交流磁化特性)
 2.9.5 ヒステリシス損失
 2.9.6 渦電流損失
 2.9.7 二周波分離法
 2.9.8 硬磁性,軟磁性(永久磁石と電磁鋼板)
 2.9.9 硬磁性材料の特性(永久磁石の動作点計算)
章末問題

3.磁気回路
3.1 磁気回路のオームの法則
 3.1.1 起磁力(アンペールの法則から)
 3.1.2 磁気抵抗
 3.1.3 鎖交磁束数
3.2 インダクタンスと鎖交磁束数
 3.2.1 インダクタンスの定義
 3.2.2 インダクタンスの空間変化
 3.2.3 インダクタンスの飽和と微分インダクタンス
3.3 磁気エネルギーと磁気随伴エネルギー
3.4 磁気回路に働く力
 3.4.1 誘導起電力
 3.4.2 磁気回路に働く力
 3.4.3 回転機のトルク
3.5 複数巻線の磁気回路
 3.5.1 インダクタンス(自己,相互,漏れ)
 3.5.2 磁気エネルギーと磁気随伴エネルギー
 3.5.3 磁気回路に発生する力
3.6 回転子に巻線のある磁気回路
 3.6.1 電圧方程式
 3.6.2 電気-機械パワー変換
3.7 鉄損
章末問題

4.変圧器
4.1 変圧器の構成
4.2 変圧器の特性
 4.2.1 一般的等価回路
 4.2.2 理想変圧器
 4.2.3 等価回路
4.3 変圧器の試験(等価回路定数の測定)
 4.3.1 無負荷試験
 4.3.2 短絡試験
4.4 パーセントインピーダンス
4.5 変圧器のベクトル図
4.6 電圧変動率
4.7 変圧器の効率
4.8 三相変圧器
章末問題

5.回転機
5.1 固定子巻線が作る磁界による磁束密度分布
 5.1.1 単相巻線が作る磁束密度分布
 5.1.2 二相巻線に交流を流したときの磁束密度分布
 5.1.3 三相巻線に交流を流したときの磁束密度分布
 5.1.4 二相交流と三相交流の相互変換
 5.1.5 多極回転機,極対数,機械角と電気角
5.2 巻線のインダクタンス
 5.2.1 集中巻の巻線のインダクタンス
 5.2.2 分布巻の巻線のインダクタンス
5.3 電圧方程式とトルク方程式
5.4 回転機の分類
章末問題

6.直流機
6.1 直流機の基本構造
6.2 直流機の電圧方程式とトルク方程式
 6.2.1 固定子巻線1組,回転子巻線1組の場合
 6.2.2 固定子巻線1組,回転子巻線2組の場合
 6.2.3 固定子巻線1組,回転子巻線n組の場合
 6.2.4 座標変換による説明
6.3 直流機の特性
 6.3.1 電機子反作用
 6.3.2 励磁方式
 6.3.3 永久磁石直流電動機の基本特性
章末問題

7.同期機
7.1 同期機の基本構造
7.2 同期機の電圧方程式とトルク方程式
 7.2.1 回転子巻線の鎖交磁束
 7.2.2 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 7.2.3 回転子に生じるトルク
7.3 d-q軸モデル
 7.3.1 突極性のない同期機
 7.3.2 突極性のある同期機
7.4 同期機の特性
 7.4.1 等価回路と定常特性
 7.4.2 電機子反作用
章末問題

8.誘導機
8.1 誘導機の基本構造
8.2 誘導機の電圧方程式とトルク方程式
 8.2.1 回転子巻線の鎖交磁束
 8.2.2 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 8.2.3 回転子に生じるトルク
8.3 α-β軸モデル
8.4 誘導機の特性
 8.4.1 等価回路と定常特性
 8.4.2 誘導機の試験(等価回路定数の測定)
章末問題

9.リラクタンス機
9.1 リラクタンス機の基本構造
9.2 シンクロナスリラクタンスモータ
 9.2.1 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 9.2.2 回転子に生じるトルク
9.3 スイッチトリラクタンスモータ
 9.3.1 巻線に生じる誘導起電力と電圧方程式
 9.3.2 回転子に生じるトルク

付録
A.1 ローレンツ変換について
A.2 分布巻の巻線インダクタンス

引用・参考文献
章末問題略解
索引

藤本 康孝

藤本 康孝(フジモト ヤスタカ)

『電気機器学の基礎理論』発行によせて
私の専門は電気電子工学と機械工学の融合分野であるメカトロニクスで,主に特殊モータやロボットの制御に関する研究を行っています。電気エネルギーを力学的エネルギーに相互に変換する原理は物理現象として興味深いだけでなく,実用的な技術として発展し現代社会のいたるところで利用されています。ロボットを動かす要素技術の中で関節に組み込むモータはロボットの性能を決定する重要なキーデバイスの一つです。また,環境親和性を理由に様々な機械装置や輸送機器の電動化が進む中でモータに高い性能が求められるようになってきています。現在では,モータの制御にパワーエレクトロニクスの技術が用いられていますので,制御に有用な基本モデルを導くことを本書執筆の目的の一つとしました。学部2~3年生の初修者だけでなく,関連分野の技術者にも是非知っておいていただきたい内容となっています。

赤津 観

赤津 観(アカツ カン)

『電気機器学の基礎理論』発行によせて
私の専門は回転機とパワーエレクトロニクスなのですが,本著は応用分野に適用できる電磁気学と磁気回路を学んでいただきたいという気持ちから,あえて2~4章を執筆しました。
最近の回転機研究では磁性材料の知識がより必要になってきており,特に永久磁石の動作点把握などは重要事項です。従来の電気機器の教科書は磁性材料の記載が少なく,かつ回転機の基礎となるファラデーの法則についても記載が少ないものが多いため,今回は誘導起電力についての詳細と,磁性材料の使いこなしと実際の巻線など,応用技術に使える基礎知識として記載しました。
5章からは藤本先生による執筆ですが,議論を重ね,応用技術の基礎となるぜひとも知っておいてほしい基本モデルの説明を中心に記載いただいています。前半と後半の違いを楽しんでいただければ幸いです。

掲載日:2021/09/27

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掲載日:2021/05/14

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掲載日:2021/04/21

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掲載日:2020/10/21

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掲載日:2020/06/24

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