サステイナブル工学基礎 持続的に発展する社会の実現に向けて

サステイナブル工学基礎 - 持続的に発展する社会の実現に向けて -

環境やエネルギー問題の概要と,その解決に向けた各分野における技術的課題や対策例を具体的に紹介。

ジャンル
発行年月日
2018/04/23
判型
A5
ページ数
192ページ
ISBN
978-4-339-06645-6
  • 日本設計工学会 2018年度 武藤栄次賞 Valuable Publishing 賞
  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介
  • 書籍紹介・書評掲載情報

環境やエネルギー問題の概要と,その解決に向けた各分野における技術的課題や対策例を具体的に紹介。加えて,技術や製品の持続可能性を評価し,向上させる手段として,LCAや環境効率評価,各種指標,分析手法を丁寧に解説した。

人類は,大自然の恵みを享受するなかで,発見と発明を繰り返しながら科学技術を発展させ,産業を興して経済を活性化し,思想と制度を整備して豊かで高度な社会基盤を構築し,私たちの生活を便利で快適な姿に変えてきた。一方その過程においては,幾多のエネルギーを開発し,大量の地球資源を消費し,周囲の環境にさまざまな排出物を蓄積してきた。特に18世紀には,蒸気機関が実用化された英国を中心に産業革命が起こり,エネルギーや資源の消費量が飛躍的に増大した。そして「ロンドンの霧」に象徴されるように,近代社会の繁栄を横目に工業化の影響が市街や郊外の自然環境に少しずつ影を落とし始めたのである。

19世紀になると,石油の大量生産を背景とする米国を中心として工業化が急速に拡大し,同時に自然破壊も着実に進行した。その後人類は二度の世界大戦を経験したが,20世紀の中ごろには,中東諸国などから供給される安価な石油を得て世界中で工業化を進展させ,内燃機関を搭載したさまざまな輸送機械をはじめ,革新的な樹脂材料を用いた膨大な工業製品で地上を埋め尽くした。また,社会生活のあらゆる分野に電気機器が浸透したが,必要な電力のほとんどは化石燃料を熱源とする火力発電で生産されている。結果として人類は,現代の隆盛を築き上げたものの,限りある地球資源やエネルギーの枯渇,地球温暖化や大気,土壌,海洋の汚染など,深刻な環境問題に直面する事態に陥った。

こうした地球規模の課題に対処するため,20世紀後半に「サステイナブル・ディベロップメント(sustainable development)」という理念が提唱された。当初は「持続可能な開発」,最近ではおもに「持続可能な発展」と訳される人類共通のコンセプトであり,これから学ぶサステイナブル工学の根拠になる大変重要な考え方である。この「サステイナブル・ディベロップメント」は21世紀の工学者に対して最も重要な判断基準を提供するであろう。

本書は,この深甚なる理念のもとで私たちがめざすべき未来像を探究し具現化するため,サステイナブル工学がはたすべき役割を明確にしながら,課題の解決に不可欠な知識と評価手法の基礎を学ぶことを主眼としている。前半(1~6章)では,まず全体像の把握に努め,環境やエネルギー問題の概要,およびサステイナブルな材料・素材,設計・製造,システム化などに関する個別の技術課題と対策事例を紹介した。後半(7~10章)では,これらの包括的な知識を有する者が技術や人工物(工業製品) のサステイナビリティ(sustainability:持続可能性)を評価し向上させるために活用すべき手段として,「ライフサイクルアセスメント(life cycle assessment)」と「環境効率評価」,さらに関連する各種指標や分析手法を説明した。このように本書は,サステイナブル工学を学ぶ者が人類の将来を担うリーダーへと成長していくための出発点となるように構想されている。

著者らの所属する東京工科大学は,1986年の開学以来「実学主義」を教育の柱としてきた。そして2015年,サステイナブル工学を標榜する工学部を新設した。この工学部には機械工学科,電気電子工学科,応用化学科の三つの学科が設置されたが,「サステイナブル工学基礎」,「サステイナブル工学実習」「サステイナブル工学プロジェクト演習」という全学科共通の講義や演習科目が段階的に組み込まれている。さらに,各学科特有の専門領域においても「サステイナブル・ディベロップメント」を実践するために必要な多くの科目が用意されており,重層的にサステイナブル工学を学べるようカリキュラムが構成されている。

これらのなかで「サステイナブル工学基礎」は東京工科大学におけるサステイナブル工学教育の出発点と位置付けられ,工学部の学生は全員,与えられた演習課題やワークシートに取り組みながらサステイナブル工学に関する全般的な知識と分析評価手法の要点を習得していく。また,講義の中間と最終の段階では提示された課題についてグループ討議などを行い,知識の理解度を相互に確かめつつ解決策を検討する。そして,各学生が議論を通じて獲得した自身の知見や考察を個別レポートにまとめ,知識の整理と高度化を図りながらつぎの段階に進めるように工夫されている。

本書はこの「サステイナブル工学基礎」の授業を念頭に作成したものである。各章末の「理解を深めよう」はその章の内容に対する理解を深め知識の整理に役立つので,特に解答は用意していないが読者はぜひチャレンジしてほしい。

またコロナ社のweb ページにワークシートを準備したので必要に応じて活用されたい。ワークシートは2種類あるが,Worksheet─1 は6章終了時点Worksheet─2 は9章終了時点で利用するとよいだろう。東京工科大学ではこれらのワークシートの内容に基づいた課題を与えてグループ討議を実施している。学生たちが持ち寄った解答をたがいに評価し合い,より良い解答を考案するなかで,問題の本質を見極めつつさまざまな解決の可能性を追求する姿勢を習慣づけるのがねらいである。本書がこれからサステイナブル工学を学ぼうとするすべての者にとって有効で実践的な道標になることを祈念してやまない。

2018年2月吉日 芝池成人(執筆者代表)

1. サステイナブル工学入門
1-1 サステイナブル・ディベロップメント
1-2 サステイナブル社会
1-3 ライフサイクル思考
1-4 サステイナブル工学の役割
理解を深めよう

2. 環境問題の現状
2-1 環境問題の全体像
2-2 地球温暖化問題
2-3 その他の地球環境問題
理解を深めよう

3. エネルギー問題の動向
3-1 エネルギー情勢
3-2 日本のエネルギー対策
3-3 省エネルギー
理解を深めよう

4. サステイナブル材料
4-1 化学・材料産業の役割とその問題点
4-2 サステイナブルな社会づくりに役立つ材料
4-3 サステイナブルな材料の製造プロセス
4-4 サステイナブルな製造プロセスのための材料開発
理解を深めよう

5. サステイナブル設計・製造
5-1 自動車の開発と製造
5-2 自動車と環境問題
5-3 環境問題に対する自動車に関する技術開発
5-4 環境問題に対する自動車製造工場に関する技術開発
5-5 製品の環境配慮設計からサステイナブル工学へ
理解を深めよう

6. サステナイブル電気電子工学
6-1 サステイナブル電力システム
6-2 電力の利用
6-3 サステイナブル社会の実現に向けた電気電子工学
理解を深めよう

7. ライフサイクルアセスメント
7-1 LCAの概要
7-2 LCAの実施方法
7-3 調査結果の公開
理解を深めよう

8. 製品の環境効率評価
8-1 環境効率の概要
8-2 ファクターXの標準化ガイドライン
8-3 環境効率の適用
8-4 環境効率の国際標準規格
8-5 サステイナビリティ評価への拡張
理解を深めよう

9. サステイナビリティの評価
9-1 エコロジカルフットプリント
9-2 生活品質関連の評価
9-3 社会経済性の評価
9-4 評価手法と指標の総合
9-5 planet,people,prosperityの統合評価
理解を深めよう

10. サステイナブル工学の展望
10-1 サステイナブル工学と社会との関連
10-2 サステイナブル工学の課題
10-3 サステイナブル工学の実践
10-4 サステイナブル社会の構築に向けて
理解を深めよう

引用・参考文献
索引

木村 康男(キムラ ヤスオ)

高橋 秀智(タカハシ ヒデトモ)

日刊工業新聞2018年10月26日「科学図書」欄

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