例題で学ぶ OR入門

例題で学ぶ OR入門

最小限の数学からなる身近な話題を例題・課題として,問題解決や意思決定,最適化の実現に必要なOR問題の本質を学べる。

ジャンル
発行年月日
2017/04/21
判型
A5
ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-02874-4
例題で学ぶ OR入門
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定価

2,750(本体2,500円+税)

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本書では,学生のモチベーションを保ちながらORの基礎を習得することを目的として,できるだけ数理的表現を使わずに,かつ学生が興味を引きそうな例題や課題を開発した。すなわち,数学が苦手な学生,特に文科系の学生にはレベルの高い数学的な課題を極力減らし,最小限の数学からなる身近な話題を例題・課題とした。例題は実際に手計算やExcelソルバーなどで解くことにより,結果を確認することができる。演習課題の解答例はWebページからダウンロードすることができ,自分で解いた解と比較し学習することができる。本書は以下の1~10章と付録で構成される。

1章「OR入門」では,ORとは何かをその歴史や応用をもとに概説する。またORの注意点についても述べる。
2章「日程計画」では,日程計画の中でその有効性から最も普及しているアローダイヤグラムを述べる。
3章「線形計画法」では,線形計画問題の中から製造・販売計画と輸送問題を例にとり,定式化から解法までを簡単に述べる。
4章「不確実性とOR」では,確率を導入し不確実性のある問題を解く方法を述べる。
5章「予測」では,過去のデータに基づき客観的な予測をする方法を述べる。
6章「在庫管理」では,在庫に関する費用を最小化する方法を述べる。
7章「ゲームの理論」では,利害の対立する者が互いの立場を考えながらより大きい利益を得る方法を述べる。
8章「AHP(物事を決めるには)」では,複数の代替案の中から合理的に最善案を求める方法を述べる。
9章「DEA(包絡分析法)」では,複数の評価項目をもつ複数案を合理的に評価する方法を述べる。
10章「組合せ最適化」では,計画,生産,物流などのマネージメントの世界で数多く現れる問題でもある,変数が連続的でない組合せ最適化問題を効率的に解く方法を述べる。

また付録A1では,本書で扱うORの例題・課題の定式化と解法に最低限必要な数学とその応用を述べる。付録A2では,ORの例題・課題を解くのに必要なExcelツールである,「ソルバー」と「分析ツール」について簡単に説明する。

本書のタイトルであるオペレーションズリサーチ(operations research,略してOR)とは,さまざまな現実上の意思決定問題を,数理的手法を用いて解決する工学の一分野である。ORは数式が並び難しい印象を受けるが,取り扱う対象は社会のあらゆる分野に及んでいる。ORの原点は第二次世界大戦中の軍事意思決定から始まり,その後経営や政策などに対象を広げながら発展してきた。

ORはもともと社会に役立つ実学志向が強いので,社会のより良い意思決定に役立たなければ意味がないと考える。ORは現実問題のモデル化と理論化をするが,それを深めるほど数学的傾向が強くなり,現実社会から離れていく。ORの成果を現場で政策決定に活用してもらうには,OR研究者が理論をわかりやすく説明し,研究成果を社会へ還元する努力が大切である。

一方,近年は深層学習をはじめとする人工知能がブームであり,自動化や最適化技術の実現が現実味を帯びてきた。しかし,これらの意思決定を人工知能で実現する場合,解法の中身がブラックボックスであり,感度解析や計画の修正の場面で人工知能の良さを発揮できない。一方,ORは意思決定に至る過程がブラックボックスではなく明示的に表現できるので,最適解ばかりではなく解周辺のさまざまな情報を得ることができる。しかし,人工知能は意思決定において強力な革新的手法であるので,今後は人工知能とOR の強みを融合した方法で,多くの意思決定問題を解決するだろう。

ORは,意思決定や最適化の実現のために必要な学問領域であるが,現在大学においてORの講義が行われている大学は少ない。しかも,従来のORの教科書は数式が多いため一見難しく,特に文系学生の勉学意欲は低下する傾向にある。すなわち,理系学生も含めどんな教え方をしても学生本人のモチベーションがなければ,ORを習得することはできない。

このための方法として,本書では次の2つの方法を考える。1つ目は,ORの問題の本質をできるだけ数理表現を用いずに説明する。2つ目は,学生がOR問題に興味や面白さを感じ,学習への意欲を引き出すことである。しかし,学生がORへのモチベーションを保ち続けるためには,興味深い例題や課題を用意することが必要である。近年,ORの教材を工夫し学生のモチベーションを保つ試みが増えてきたが,上記2つの要素を取り入れたテキストは見当たらなかった。

本書では,学生のモチベーションを保ちながらORの基礎を習得することを目的として,できるだけ数理的表現を使わずに,かつ学生が興味を引きそうな例題や課題を開発した。すなわち,数学が苦手な学生,特に文科系の学生にはレベルの高い数学的な課題を極力減らし,最小限の数学からなる身近な話題を例題・課題とした。

本書は以下の1~10章と付録で構成される。1章では,OR入門として,ORとは何かをその歴史や応用をもとに概説する。またORの注意点についても述べる。2章では,日程計画の中でその有効性から最も普及しているアローダイヤグラムを述べる。3章では,線形計画問題の中から製造・販売計画と輸送問題を例にとり,定式化から解法までを簡単に述べる。4章では,確率を導入し不確実性のある問題を解く方法を述べる。5章では,過去のデータに基づき客観的な予測をする方法を述べる。6章では,在庫に関する費用を最小化する方法を述べる。7章では,利害の対立する者が互いの立場を考えながらより大きい利益を得る方法を述べる。8章では,複数の代替案の中から合理的に最善案を求める方法を述べる。9章では,複数の評価項目をもつ複数案を合理的に評価する方法を述べる。10章では,変数が連続的でない組合せ最適化問題を効率的に解く方法を述べる。また付録A1では,本書で扱うORの例題・課題の定式化と解法に最低限必要な数学とその応用を述べる。付録A2では,ORの例題・課題を解くのに必要なExcelツールである,「ソルバー」と「分析ツール」について簡単に説明する。


本書は大学などの講義においても使用できるように,各章において例題と演習課題を用意している。例題は実際に手計算やExcelソルバーなどで解くことにより,結果を確認することができる。演習課題の解答例はWeb ページからダウンロードすることができ,自分で解いた解と比較し学習することができる(p.27参照)。

一見難しく取りつきにくいORの学習に対して,モチベーションが下がればさらに難しいものとなる。本書はモチベーションを保つ試みとして,OR問題の本質を数式を使わずに説明し,また学生が興味をもつ例題と課題を作成した。本書を読んで一人でもORが好きな学生が現れることを願ってまえがきとする。

最後に,われわれをいつも陰からサポートしてくれている妻の大堀真保子,加地祥子,穴沢三佳子に最大限の感謝の意を表したい。彼女らの支えがなければこのテキストを完成することはできなかっただろう。そして,本書の企画から完成まで,さまざまな面でご助力いただいたコロナ社の関係者の皆様に,改めて感謝申し上げる。

2017年2月 著者を代表して大堀隆文

1. OR入門
1.1 ORとは何か
1.2 ORの歴史
1.3 ORの応用
1.4 ORの注意点

2. 日程計画
2.1 アローダイヤグラム
2.2 ノード時刻
2.3 作業ごとの各種時刻
2.4 余裕時間とクリティカルパス
演習課題
補足
さらに勉強するために

3. 線形計画法
3.1 製造・販売計画
3.2 輸送問題
演習課題
さらに勉強するために

4. 不確実性とOR
4.1 データの整理
4.2 確率について
演習課題
さらに勉強するために

5. 予測
5.1 回帰分析と最小2乗法
5.2 回帰分析による予測
5.3 予測式の選択
演習課題
補足
さらに勉強するために

6. 在庫管理
6.1 在庫管理について
6.2 需要が確定的な場合
6.3 需要が不確定的な場合
演習課題
補足
さらに勉強するために

7. ゲームの理論
7.1 ゲームの理論の基本3要素
7.2 マックスミニ原理
7.3 囚人のジレンマと支配戦略
7.4 さまざまな囚人のジレンマ
7.5 囚人のジレンマの裏切り防止法
7.6 映画にみるゲームの理論
演習課題
さらに勉強するために

8. AHP(物事を決めるには)
8.1 いくつかの案から1つを選ぶ
8.2 AHPで求めてみよう
 8.2.1 一対比較表を作る
 8.2.2 評価基準の重要度を求める
 8.2.3 代替案を選び出す
8.3 一対比較は正しく行われたか(整合度の計算)
8.4 Excelを使って求めてみよう
演習課題
さらに勉強するために

9. DEA(包絡分析法)
9.1 評価とは
9.2 DEAによる評価
9.3 線形計画法によるDEAの解法
9.4 ExcelソルバーによるDEAの解法
9.5 DEAの応用
演習課題
さらに勉強するために

10. 組合せ最適化
10.1 最適なものを見つける
10.2 巡回セールスマン問題
10.3 組合せ最適化問題をいかにして解くか
10.4 いろいろな組合せ最適化問題とその定式化
10.5 整数計画問題をExcelで解いてみよう
演習課題
さらに勉強するために

付録
A1. ORのための数学
 A1.1 定数・変数・関数など
 A1.2 一次関数とその応用
 A1.3 連立一次方程式
 A1.4 数列
 A1.5 最大・最小と微分
 演習課題
A2. Excelによる計算方法
 A2.1 ソルバーによる最適化
 A2.2 分析ツールによる回帰分析

あとがき
索引

大堀 隆文(オオホリ タカフミ)

穴沢 務(アナザワ ツトム)

掲載日:2023/07/01

日本オペレーションズ・リサーチ学会誌「オペレーションズ・リサーチ」2023年7月号

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