精密機器における機械振動のトラブル対策 現場でおきた機械振動問題と対処法

精密機器における機械振動のトラブル対策 - 現場でおきた機械振動問題と対処法 -

  • 涌井 伸二 東京農工大大学院教授 博士(工学)
  • 羽持 満 日本電子(株) 博士(工学)

メカトロ機器開発の境界領域といえる振動のありかを探索し,解決策を提示・実証できる技術者育成を狙い,実現可能な解決策を提案する

ジャンル
発行年月日
2019/10/21
判型
A5
ページ数
190ページ
ISBN
978-4-339-04662-5
精密機器における機械振動のトラブル対策 現場でおきた機械振動問題と対処法
在庫あり

定価

2,970(本体2,700円+税)

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【書籍の特徴】
 精密機器の開発では,機械,電気ハード,そしてソフトの専門家達が集結する。試作1号機が完成した。これを破壊しないように,徐々に,高速化させていく。ところが,機器からは悲鳴が生じて仕様を満たせない。残念なことに,専門家三集団は,互いに顔を見合わせるばかりのことが多い。機器の悲鳴は機械振動だ。専門書を紐解くと振動の数学モデルが羅列してあり,いままさに発現している機械振動を無くす手段を記載してはいない。そのため,機械振動の解決は自分達のミッションではない,と言わんばかりの様相となる。
まず,機器に手をそえて振動のありかを探索してみよう。不明ならば,触診に代えて加速度センサを使えばよい。このセンサの設置場所を変えた計測を丹念に行う。次第に,機械振動の全体像がわかる。次にどうすればよいのか。機器の弱い箇所は補強すればよい。激しく動く箇所に対しては,減衰作用を持つ部材を挿入すればよい。本書は,実例を使って,上記のアプローチを詳述している。
【各章について】
1章では,機械設計と電気設計の境界領域に機械振動の問題が位置づけられるため,解決の対応が後手に回りやすい事情を説明している。2章では,機械を打撃するあるいは手動で揺らす,そして加速度センサを使った触診によって機械振動の姿を明らかにした事例を説明する。さらに,工学的な感性を使って振動問題を解決する。3章では,機械振動の問題に対処する場合に必要な最低限の道具立てを示す。インパルスハンマが無ければ,金づちを代用してかまわないのである。4章では,ステージの位置決め,振動センサにおける振子,あるいは電子顕微鏡の鏡筒振動という実例を使って,振動問題の解決の経緯を説明する。そして,終章では,気軽に機械振動の問題と向き合って欲しい,という本書執筆の狙いを記述している。
【著者からのメッセージ】
 精密機器の研究・開発・設計者にとって一番目の優先順次は,専門分野の深耕に基づいて成果をだすことである。さらに,専門分野の裾野を拡げ,優秀な精密機器を世の中に出荷していくためには,仕様未達を招いた機械振動問題に果敢に挑戦していかねばならない。このとき,肩肘を張る必要はない。気軽に機械を打撃し,耳をすませばよい。このときの自然現象が解決の糸口を教えてくれる。

メカトロ機器の開発では,機械,電気,そしてソフト設計の専門家が集合する。開発進捗により,仕様の90%程度は即座に満たせる。しかし,仕様未達で出荷できない事象も頻繁に生じる。この場合,機械・電気ハード・電気ソフトの境界領域といえる機械振動に起因していることが多い。
 
開発者の対応は,(a) 主担当の技術分野とは無関係と判断して問題解決にまったく関与せず,自分の責任ではないとばかりにほかの技術分野の担当者に解決を任せる,(b) ろくに調べもせず思い込みによる場当たり的対策を提案し,うまくいかずに何度も試みる,(c) 振動のありかを探索し,解決策をも提示して実証する,という3種類に分類される。(a),(b) の対応が圧倒的に多いため,開発遅延やコストアップを招いている。さらに,新規開発の場面では,振動問題の解決経験がないため,知見として生かされようがない。また,振動による仕様未達は「失敗」に分類されがちであり,できれば人に報告したくない。それゆえに共有されにくいという面がある。解決されなければ出荷はできない。そのため,重要な要素技術にもかかわらず,振動が「見える」技術者は多くない。
 
本書は,上記(c) の行動がとれる技術者を多く育成する狙いを有する。具体的に,著者らが経験した機械振動のトラブルを挙げ,振動源の特定,性状の把握を踏まえることで,実現可能な解決策が発想できることを示す。それは,目を凝らして開発中のメカトロ機器を見つめ,仮説を立てて振動源を突きとめ,そして振動の性状を踏まえて解決を図るというきわめて現場的な行動なのである。
2019年8月
著者代表 涌井伸二

1.緒言
1.1 機械設計と電気・制御設計にとっての機械振動
1.2 解析という言葉
1.3 機械振動のお姿を知りたい
1.4 実験モーダル解析と双璧をなす,ありがたい振動可視化手法:ODSFRF
1.5 機械振動の原因が容易にわかる場合
1.6 機械振動の原因が容易にはわからない場合
1.7 機械振動と誤認しやすい事例(その1)~巻線コイルの振動~
1.8 機械振動と誤認しやすい事例(その2)~ビートに起因する振動~

2.機械の素性を知って特性改善
2.1 ボールねじ軸方向の共振周波数の計測で犯人捜し
2.2 構造体を支持する装置の固有振動数を知って位置決めを改善
2.3 ガルバノスキャナの支持スタンドの振動を抑える
2.4 加速度センサによる触診で大型機械の重心を知る
2.5 加速度センサによる計測で振動モードを特定し位置決めを改善
2.6 超精密位置決め機器の位置信号に振動が重畳
2.7 振動抑制のために多用するゴム
 2.7.1 とりあえずゴムを敷いてうまくいった例
 2.7.2 とりあえずゴムを敷いて失敗した例
 2.7.3 空圧アクチュエータであるノズルフラッパ型サーボバルブの機械振動低減
 2.7.4 防振ゴムの選定方法
2.8 代表的な外部外乱:床振動,騒音の伝達モデル(SEMを例にして)
2.9 音って何だっけ?騒音が装置を揺するのはなぜか?~騒音の入力モデル~
2.10 遮音構造の原理とその欠点の克服事例
2.11 超低周波音の影響と対策
2.12 静剛性と動剛性の話
2.13 パッシブとアクティブ除振装置の関係

3.振動の生成と検出のための道具
3.1 機械に打撃を与えるインパルスハンマ
3.2 機械を加振するシェーカ
3.3 機械の振動を検出する加速度センサ
3.4 実機試験を行うときのノウハウ

4.実例を通して実感できる実験モーダルとODSFRFの偉力
4.1 ステージの位置の偏差波形に紛れ込む機械振動の正体を暴く
4.2 振子の動きを矯正
4.3 長い筒の振動を止める?~耐振性向上には固有モードの高周波化が必須という思い込み~
4.4 磁場シールドの騒音振動による変動磁場の発生~ハンマリングによらないモードシェイプの可視化~
4.5 モードシェイプの節を利用した騒音振動伝達の抑制~固有振動数だけではなくモードシェイプを設計~
4.6 モードの腹に設置した広帯域動吸振器による多モード同時制振
4.7 床振動許容値と高周波床振動の伝達対策
4.8 広帯域動吸振器とモード近接の回避とによるTEM試料ホルダの耐騒音性能の向上

5.終章

参考文献
索引

読者モニターレビュー【Y.N.様(大学生)】

メカトロ機器の開発における「機械振動」を発見し、解決策を提示できる技術者育成のために書かれた本でした。
機械設計者と電気制御技術者の間など複数のステークホルダーが関わるプロジェクトを進めるにあたって、マネジメントと技術両方からトラブル対策について学べる1冊だと思いました。
「現場でおきた」とあるように実際の業務における具体事例の紹介や振動の生成・検出に用いる道具の紹介とノウハウの共有など、大学等のアカデミアと企業でエンジニアリングに長年かかわってきた著者の経験が詰め込まれた実践書だと感じました。
実例に関しても写真や図が豊富で、技術者の人はもちろん大学院などで機械系やメカトロに関連する分野を学んでいる学生も現場の様子を知れるのでおすすめです。

読者モニターレビュー【ni様,(研究・開発職,専門:機械力学)】

機械振動を扱っている技術者にとっては興味をひかれるワードが目次に並んでいますが,本書は理論中心の技術書というより,技術者向けの読み物だと感じました。
タイトル通り,著者らが直面した機械振動に関するトラブル事例と,それらにどう立ち向かったか,ということを,機械振動を扱っている(扱おうとしている)技術者向けに紹介しています。

数式は他の専門書に託しています。その代わり,文章と図で多くを説明しようとするため,現象のイメージがつきにくいという方もいるかもしれません。一方,数式一辺倒な本が苦手な方には良い読み物になると思います。
本書の良い点は,対象物の実稼働状態での振動状態の解析の重要性を説いている点で。よく手に取る理論書らではあまりお目にかかれない内容です。「ODS」と「モード」がごっちゃになっている技術者も多いのではないでしょうか。
ゆるめの閑話休題も,同分野の技術者なら「あるあるネタ」として楽しめるかもしれませんね。

羽持 満(ハモチ ミツル)

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