機械系コアテキストシリーズ A-2
部材の力学 - 設計のためのはり・板・殻の弾性力学 -
弾性力学の理論的枠組みを,典型的なはり・棒・板・殻の各部材に適用し,わかりやすく解説
- 発行年月日
- 2025/09/30
- 判型
- A5
- ページ数
- 260ページ
- ISBN
- 978-4-339-04532-1
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
- 広告掲載情報
本書は,飛行機や自動車の機械構造物のみならず,伝統工芸や自然の動植物に見られるはり,棒,板や殻といった部材の強度と変形を予測するための弾性力学についてまとめたものである.従来の弾性力学として理論体系された一連の基礎式を部材に対して適用し,その厳密解を求める例題も豊富に取り入れて,類似した問題を考えるヒントを与えることに主眼を置いている.厳密解が求められると,設計変数を種々に変化させたときの設計曲線が求められ,最適解を予測するための手段として活用される.機械工学のみならず,内部構造を設計し,3Dプリンターによりそれらが周期的に配置された新たな材料開発に関わる材料工学や,触媒反応を利用した自己組織膜に関わる応用化学の分野にも活用でき,系全体の弾性特性を推定することも可能になる.このように,本書は機械工学のみならず,他分野の初学者にも読みやすいように,基礎方程式の導出,例題による具体的な解の導出,そして豊富な演習問題と極力省略しないその解答(web上)を提供している.コアテキストシリーズの A-1「材料力学」の教科書と連動し,弾性力学の解と材料力学の解の関連性についても言及しているので,機械工学を学ぶ学生にはより深い固体力学の学びができるように配慮している.
最初に部材の定義と格子構造の例題について述べ,弾性力学のまとめを2章で述べている.本書は部材の力学に焦点を絞っているので,より深い弾性力学の学びは関連する書籍を参照すると良い.2章の基礎式から,はりの断面変形も求める弾性解,曲げとねじりが作用する問題,ねじりについては薄膜類似の考え方を学び,種々の断面形状を持つ中実,中空棒のねじり問題について学ぶ,板の面内変形と面外変形が連成しない微小変形の問題を取り上げ,最後の章においては,板とはりにおいてそれらが連成する大たわみ問題について述べている.これら一連の非線形問題を理解することで,弾性変形ではあるが,幾何学的な非線形性を考慮した大変形の問題についても解を理解することができる.ドーム等の殻の面内変形である膜変形と,実用的に支持構造部で面外曲げの生じる曲げ変形問題についても取り上げており,いずれの変形が主たる要因になるかの分析の指針を得ることができる.最後に,はりや板は軽量化には最適な部材である一方,圧縮力の作用する場では座屈の力学的不安定が生じる.基礎方程式の導出とともに,座屈後の変形を求める古典的なエラスティカ問題についても数値解析結果を含めた紹介をしている.厳密解が求められると数式処理を扱う関数電卓や計算機プログラム等により,簡便に設計曲線が得られるととともに,近似した特性の評価や材料力学の解との相違を理解し可視化できる.
以上のように,本書は機械工学のみならず他分野の初学者も学びやすく,設計業務等に従事している技術者にとっても学び直しのできる構成にしている.
最近,検査データの改ざんや検査項目の不履行等,ものづくりの品質保証に関わるトラブルが散見している。安全・安心に関わるので,厳格な品質管理が求められる一方,多様にカスタマイズされた仕様を満足し,短期間での製品出荷を余儀なくされた競争環境に置かれているのも事実である。強度設計に関わる工程も,その環境の中では,シミュレーションにより最適解をより迅速に見出すことが求められ,AIを活用した解析ソフトの充実がその要求に合致するようになってきた。ただ,その解の妥当性を判断できるのは,設計者や解析者の持っている経験や知識であることはいうまでもない。その経験や知識の根底には,断片的なデータベースでは捕らえられない,連続的な当該分野の学術的基礎があり,理論が示唆する客観的な根拠が,その検証と妥当性確認(V&V)を裏打ちすることになる。
本書は,そのような知識枠の一つを与えることを目的にまとめられたものである。従来より,材料力学,弾性力学,塑性力学という学術的な枠組みがあり,それに基づく書籍は数多く出版されている。その意味では,本書は弾性力学に該当するが,はりや板,殻といった部材を対象にした弾性力学の理論をまとめた内容になっている。弾性力学の体系化には,Stephen P. Timoshenko(1878~1972)の寄与が大きく
S.P. Timoshenko and J. N. Goodier:Theory of Elasticity, McGraw Hill
S.P. Timoshenko and S. Woinowsky-Krieger:Theory of Plates and Shells,McGraw Hill
S.P. Timoshenko and J.M. Gere:Theory of Elastic Stability, Dover Publications,Inc.
S. Timoshenko:Vibration Problems in Engineering, D.Van Nostrand CompanyInc.
等の弾性力学,構造力学,弾性安定論に関わる不朽の教科書があり,本書はそれらから抜粋してまとめたものにすぎない。それほど,弾性力学の理論的枠組みは完成された域に達しているといっても過言ではない。ただ,その理論を,部材と呼ばれる,形状を単純化させ,それに伴って力学的理論も簡単化され,実用性を著しく向上させた力学的な過程への適用においては,新たな学術的,技術的知見を創り出す余地は十分にある。
本書は,典型的なはり,棒,板,殻といった部材に弾性力学理論を適用した枠組みを,「部材の力学(mechanics of members)」としてまとめたものである。最近では,3Dプリンターの普及により,複雑な構造や部材,部品の創成ができるようになった。これらを周期的に配置することにより意図的な内部構造を持つメタマテリアル(metamaterial)と呼ばれる新規材料等も提案されている。金属材料にかかわらず,高分子材料も触媒等の化学反応を利用した自己組織的な構造を具備した新たな膜体も実用化されるようになった。製品としての機械構造物を構成する部材から,材料を創成する基本内部構造を構成する部材に至るまで,この力学理論の適用範囲はさらに拡がりを見せているといえる。その意味では,必ずしも機械工学を学ぶ学生のみならず,他分野の学生や技術者も学べる構成が望ましいので,本文中の式の導出や,Webページにある演習問題の解答は極力省略せずに執筆している。また,本書は,コロナ社の「機械系コアテキストシリーズ」の[A:材料と構造分野]の一環として執筆され,「A-1材料力学」(渋谷陽二・中谷彰宏 共著,2017年)とともに,学部で習得すべき一連の固体力学の基礎に位置づけられる。文中では,適宜当該書籍の「A-1材料力学」を引用しているので,あわせて学ぶことを薦める。
以上のような背景と意図を持って,本書は,学部で習う弾性力学の基礎を学び,部材の概念に展開した内容としている。著者が大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻に在職しているときに担当した,学部での材料力学,固体力学基礎(弾性力学),そして大学院における非線形構造力学の講義資料をもとにしており,その講義を受講したこれまでの学生諸氏から指摘された数多くの質問や疑問が,本書をまとめる上で大きな役割を果たしてくれたことはいうまでもない。ここに,深く感謝したい。
最後に,2024年3月で定年退職した大阪大学では25年以上に及ぶ教育研究の場を提供してもらい,研究室での活動に携わった教職員,学生,研究生の方々には感謝以外の言葉は見当たらない。本書を通じて御礼申し上げる。また,「A-1材料力学」とともに,本書の執筆に関して大変お世話になりましたコロナ社に謝意を表します。
2025年7月
渋谷陽二
1.部材の力学とは
1.1 部材とは
1.2 格子構造
1.3 ハニカム構造の力学
演習問題
2.弾性力学の基礎
2.1 変位—ひずみ関係式(ひずみの適合条件式)
2.1.1 勾配テンソル
2.1.2 ひずみテンソル
2.1.3 主ひずみ
2.1.4 適合条件式
2.2 コーシーの応力と平衡方程式
2.2.1 運動方程式
2.2.2 応力テンソル
2.2.3 平衡方程式
2.2.4 主応力
2.3 一般化フックの法則(応力-ひずみ関係式)
2.4 変位で記述された平衡方程式(ナビアの式)と応力で記述された適合条件式(ミッチェルの式)
2.4.1 変位で記述された平衡方程式(ナビアの式)
2.4.2 応力で記述された適合条件式(ベルトラミ・ミッチェルの式)
2.5 エアリーの応力関数
2.6 ひずみエネルギー
2.7 仮想仕事の原理
2.7.1 仮想変位と仮想仕事の原理
2.7.2 相補仮想仕事の原理
2.8 最小ポテンシャルエネルギーの原理
演習問題
3.はりと棒の力学
3.1 はりの変形(ベルヌーイ・オイラーの仮説)
3.2 はりの断面のゆがみ
3.2.1 y0=0の図心に横荷重が作用する場合
3.2.2 y0≠0の位置に横荷重が作用する場合
3.3 中実棒のねじり
3.3.1 楕円断面棒のねじり
3.3.2 薄膜類似
3.3.3 長方形断面棒のねじり
3.4 中空棒のねじり
3.4.1 ねじり応力関数
3.4.2 薄肉断面棒のねじり
演習問題
4.板の力学
4.1 板の基礎方程式
4.1.1 合応力
4.1.2 平衡方程式
4.1.3 キルヒホッフの仮説
4.1.4 板の支配微分方程式
4.1.5 ひずみエネルギー
4.2 長方形板の純曲げ
4.2.1 基礎方程式
4.2.2 合モーメントと曲率の変換
4.2.3 例題
4.3 分布荷重を受ける長方形板
4.4 円板の曲げ
4.4.1 極座標系での基礎方程式
4.4.2 たわみの一般解
4.4.3 軸対称問題の例題
演習問題
5.殻の膜変形
5.1 回転対称殻の基礎方程式
5.2 軸対称荷重を受ける回転対称殻
5.3 内圧や自重を受ける回転対称殻
5.3.1 内圧を受ける円筒殻
5.3.2 内圧を受ける球殻
5.3.3 内圧を受ける円錐殻
5.3.4 内圧を受ける回転楕円体殻
5.3.5 物体力(自重)を受ける球殻
5.3.6 その他の例題
5.4 膜理論における回転対称殻の変形
演習問題
6.殻の曲げ変形
6.1 回転対称殻の平衡方程式
6.2 回転対称殻の変位-ひずみ関係式
6.3 合応力および合モーメントの構成関係式
6.4 軸対称問題における基礎方程式
6.5 円筒殻の基礎方程式
6.5.1 平衡方程式
6.5.2 変位-ひずみ関係式
6.5.3 変位を用いた構成関係式
6.6 円筒殻に軸対称荷重が作用する例題
6.6.1 ドンネルの基礎方程式と一般解
6.6.2 例題
演習問題
7.はり・板の大たわみと座屈(幾何学的非線形性と力学的不安定性)
7.1 はり柱の大たわみ
7.1.1 平衡方程式
7.1.2 変位-ひずみ関係式
7.1.3 支配微分方程式
7.1.4 境界条件
7.2 はりの大たわみ問題
7.2.1 一点の引張軸力が作用する単純支持はり
7.2.2 両端回転支持の単純支持はり
7.3 板の大たわみ
7.3.1 支配微分方程式(フォン・カルマンの式)
7.3.2 円板の大たわみ
7.4 板の大たわみ問題
7.4.1 単純支持された正方形板の大たわみ
7.4.2 固定支持された円板の大たわみ
7.5 はり柱の座屈
7.5.1 軸圧縮力を受けるはり柱
7.5.2 圧縮力を受ける剛接合されたフレーム
7.5.3 座屈後のはりの挙動(エラスティカの問題)
7.6 板の座屈
7.6.1 面内圧縮力を受ける平板
7.6.2 面内圧縮力を受ける薄肉管
7.6.3 種々の境界条件を持つ面内圧縮力を受ける平板
演習問題
付録A テンソル代数学の基礎
A.1 表記法
A.2 直交デカルト座標系でのテンソル
A.2.1 座標変換
A.2.2 線形演算子
A.2.3 テンソル
A.3 ベクトルとテンソルの微積分
A.4 曲線座標系でのテンソル
A.4.1 円柱座標系
A.4.2 球座標系
A.5 テンソルの時間微分
A.6 極分解
付録B Micropolar弾性体のはり
B.1 新規な弾性特性を創造する格子構造
B.2 Micropolar理論とMicromorphic理論
B.3 はり近似と均質化有限要素定式化
B.3.1 2尺度均質化モデル
B.3.2 Micropolarはり近似と有限要素定式化
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 MASA 様 (業界・専門分野:ロボット工学)】
本書は梁・板・殻に関する弾性力学理論に関する書籍であり、基礎方程式の導出や応力・ひずみを求める問題を解く課程を丁寧に記載されています。
特に、基礎方程式の説明に用いられる図や説明が丁寧に記載されているため、独学者でも導出される式の意味を理解することができます。
また、著者が3Dプリンタの利用より可能になった周期的な微細構造の力学の考え方として、ハニカム構造を例に詳細に書かれており、異方性を持つ構造の力学の考え方についても記載があり、通常の材料力学の書籍では記載のない内容があるのが興味深かったです。
書籍を読んだ不明点としては、弾性力学の理論を設計に反映させるにはどうすれば良いかがわかりませんでした。
これはレビュアーが弾性力学の初学者であることも原因ですが、今後の改定時やホームページ上に具体例を示す資料を追加することで、読者が弾性力学の考え方を設計に反映させる際の手助けになると思います。
本書を読む際は、材料力学の書籍と合わせて読むと理解がしやすいと思います。私は「材料力学の基礎」(養賢堂)を参照にしました。
別途書籍を用意する場合は、著者の書籍である「機械系コアテキストシリーズ 材料力学」(コロナ社)が本書の所々で参考文献として用いられているため適切な参考文献になると思います。
本書のご購入を検討する方々に私の読書レビューがご参考になれば幸いです。
読者モニターレビュー【 onia 様 (業界・専門分野:振動・音響)】
本書は、構造の最小単位であるはり・板・殻を主要な対象とし、
線形弾性から有限変位、一部の部材では座屈までを簡便化された理論で扱います。
解析解が得られる問題に限定し、設計に直結する数式とその導出が丁寧に記述されています。
演習問題も充実しており、回答はWebで公開されているため独習者にも配慮されています。
具体的な数値検討は、解析解を数値計算プログラムや表計算ソフトに落とし込むことで理解をさらに深められるでしょう。
単純な部材だけでなく、3Dプリントの普及に伴い活用の広がっている周期構造に関しても扱われ、第1章のハニカム、付録のMicropolar弾性体の話題も導入として参考になります。
実用的で分厚すぎず、必要な情報にすぐアクセスできるため、リファレンスとして手元に置いておく価値のある一冊です。

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掲載日:2025/11/01
関連資料(一般)
- 『部材の力学』演習問題解答









