電気・電子計測工学 (改訂版) - 新SI対応 -

電気・電子系 教科書シリーズ 5

電気・電子計測工学 (改訂版)- 新SI対応 -

  • 吉澤 昌純 都立産業技術高専校長 博士(工学) 編著
  • 降矢 典雄 都立産業技術高専名誉教授 博士(医学)
  • 福田 恵子 都立産業技術高専教授 博士(工学)
  • 吉村 拓巳 都立産業技術高専教授 博士(工学)
  • 高崎 和之 都立産業技術高専准教授 博士(工学)
  • 西山 明彦 モンゴル高専教育センターNGO理事・都立高専名誉教授・モンゴル工業技術大名誉教授 工博

2019年5月のSI改訂に伴い,基本単位の物理定数による新定義について解説した。

ジャンル
発行年月日
2020/03/23
判型
A5
ページ数
222ページ
ISBN
978-4-339-01215-6
電気・電子計測工学 (改訂版) - 新SI対応 -
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定価

3,080(本体2,800円+税)

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計測の基礎的な知識や解析技術,測定値の不確かさについての解説に加え,2019年5月のSI改訂に伴う基礎物理定数にもとづいた再定義と,それによる測定精度の向上等についても簡単に説明した。

人はなにかを感じて記録したり,なにかに利用するために言葉や絵,記号(文字,数値)を用いて表現したりしようと試みる。この行為が「はかる」の始まりである。

紀元前500年頃(ギリシャ時代),琥珀は装飾品として使われていたが,当時の哲学者ターレスは琥珀を摩擦するとちり塵など軽いものを引き付ける現象に強く惹かれ,琥珀をelectrum(ギリシャ語で引くもの)と名付けた。また,BC10世紀以前の中国や古代ギリシャ時代では,ある種の石(天然マグネタイト)に鉄を吸い付けるなどの性質があることを理解していたようで,漢代には占盤に使われていた。「はかる(計る・測る)」という行為は「他者との違いを認識(観察)することから始まる」と大きく捉えると,静電気や磁気の現象についての認識は,定量的な扱いとはいえないが,「測った」ことになる。科学史上はじめての定量的な扱いは,1600年に発行されたイギリスの物理学者ウィリアム・ギルバート(William Gilbert)の電気,磁気に関する著書『磁石について』まで待つことになる。
ギルバートは実験を行って,当時の電気,磁気に関する知識をまとめている。また,琥珀を帯電させて静電気の研究も行い,electrumからelectricity(電気)という言葉をはじめてつくった。電子計測分野でのこうした歴史は脈々と引き継がれ,電子回路の進展にともなって高度化してきている。

そして現在,アナログとディジタルの相互変換器の高速化,低価格化に代表される電子技術およびセンサの発達に従い,多くの物理量が電気的に計測され,それをディジタル値として扱うように変わってきている。これは,計測が機械的より電気的なほうが高精度な割に構造が簡単で安価にできるようになってきたことに加え,電圧や電流のかたちで計測した物理量を用いてコンピュータにより対象物を制御したり,計測データをコンピュータ処理して必要な情報を得たりできるためである。また,CD,DVDやブルーレイディスクのように多くの情報を記録したメディアから,正確に情報を読み取ることも計測技術の一面である。このように,われわれの生活において,ディジタル化された多くの計測技術が用いられており,知らず知らずにこれらの恩恵にあずかっていることになる。したがって,現在の計測技術者には,指針形の電圧計や電流計の原理や取扱いなどの計測の基礎技術だけでなく,ディジタル化された計測システムを構築でき,計測された信号から必要な情報を抜き出す能力が求められる。

一方,企業で開発された計測機器,計測制御機器の信頼性を評価する,あるいは測定値を保証する必要がある。また,企業にて作製された製品の品質保証や製造ロットごとの品質管理のためのデータ取得には,さまざまな計測技術が用いられている。これらの際,計測機器の信頼性あるいは測定値の保証のために測定結果の評価が行われている。ところで,電圧計と電流計を用いた電圧降下法により抵抗の値を測定する場合,計器の内部抵抗の影響で,計器の接続によっては抵抗値に非常に大きな誤差が生じることがある。このため,抵抗値の大きさに応じて接続法を変える,あるいは内部抵抗を考慮して測定値を補正する必要がある。このように,計測手法が適切かどうかを検討するうえで,誤差による議論は非常に有効である。従来は測定結果の評価の際にも,その値がどの程度正しいのかを測定値がどれだけ真の値に近いかという誤差で評価してきた。しかし,誤差は真の値からのずれであるが,そもそも計測では真の値は求められず,求められるのは最確値にすぎない。測定値には偏りもばらつきも生じ,すべての偏りの要因が特定できるとは限らない。このため,統計的手法を用いて偏りもばらつきとして捉えるべきである。計測された値のまわりに真の値の候補が広がっているため,指定された区間にどの程度の確率で測定値が存在するか,信頼区間で表現すべきとの提案があり,トレーサビリティーを考慮した測定結果の質の保証を行う観点から「測定の不確かさ」の概念が測定結果の評価に導入された。近年,評価過程の透明性をはかり,計測機器や測定値の信頼性を保証するための評価表現が,誤差から不確かさへと大きく変化してきている。したがって,不確かさについての知識が,製品の品質保証や品質管理に不可欠となる。

このように,計測がコンピュータを中心としたディジタル計測に移行し,また,測定結果の評価表現が変化している現在,電気・電子計測技術を学ぶ際には,従来の範囲に加え,センサ,アナログとディジタルの相互変換,データのコンピュータへの取込み,信号処理や計測データの評価におよぶ全体像を見わたした考え方が必要となる。そこで本書では,不確かさを含む計測の基礎から,センサを用いたディジタル計測の基本,つまり,センサからのアナログ信号を,雑音をできるだけ少なく伝送し,ディジタル化してコンピュータに取り込み,そして計測データから情報を抽出する信号処理手法の一部までを記載した。これは,学びの際だけでなく,社会に出てからの実践的な場面でも,まずは本書を見て,そこから必要に応じてさらに詳細な情報を調べる手がかりを得られるように配慮したためである。

このため記載が多岐にわたっており,限られた時間数での計測の授業に使用する際は,必要に応じて章や節をとばしてほしい。そして,授業が終わっても,末永く手もとに置いて利用していただきたい。

また,本書は1章と4章を降矢が,2章と5章を吉村が,3章を福田が,6章を高﨑が,7章~10章を𠮷澤が分担して執筆したため,文章表現に個性がある点はご容赦願いたい。なお,ここに,西山の草稿を受け,まえがきと1章の一部,ならびに付録が執筆されたことも加えて記したい。最後に,長きにわたり諦めずに粘り強く執筆を促してくださったコロナ社に感謝の意を表し,ここに筆を置きたい。

2016年5月著者

1.計測と測定
1.1 SI単位
1.2 SI接頭語
1.3 固有名称をもつSI組立単位
1.4 電気標準
 1.4.1 ジョセフソン効果を用いた電圧標準
 1.4.2 量子ホール効果を利用した抵抗標準
 1.4.3 量子電流標準
1.5 校正とトレーサビリティー
1.6 測定法の分類
 1.6.1 直接測定と間接測定
 1.6.2 絶対測定と比較測定
 1.6.3 受動的測定と能動的測定
 1.6.4 偏位法と零位法
1.7 測定値の扱い
 1.7.1 母集団と標本
 1.7.2 誤差の定義
 1.7.3 偶然誤差と系統誤差
 1.7.4 正確さと精密さ
 1.7.5 統計処理
 1.7.6 間接測定における誤差の伝搬
 1.7.7 測定値間の関係
1.8 測定値の保証と計測の信頼性
 1.8.1 不確かさの評価
 1.8.2 タイプAの評価法
 1.8.3 タイプBの評価法
 1.8.4 合成標準不確かさ
 1.8.5 包含係数kの決定と拡張不確かさU
 1.8.6 不確かさの報告
演習問題

2.センサ
2.1 センサとは
2.2 光センサ
 2.2.1 ホトダイオード
 2.2.2 CdS
 2.2.3 太陽電池
2.3 温度センサ
 2.3.1 サーミスタ
 2.3.2 白金温度計
 2.3.3 熱電対
2.4 ひずみセンサ
2.5 圧力センサ
2.6 加速度センサ
 2.6.1 抵抗形加速度センサ
 2.6.2 圧電形加速度センサ
 2.6.3 静電容量形加速度センサ
演習問題

3.電圧・電流・電力の測定
3.1 アナログ指示計器
 3.1.1 指示計器とは
 3.1.2 指示計器の構成と動作
 3.1.3 おもな指示計器とその用法
3.2 直流計測
 3.2.1 電圧・電流の計測
 3.2.2 分流器と倍率器
3.3 電圧・電流の指示値
 3.3.1 電圧・電流の大きさの表現方法
 3.3.2 電子計測
 3.3.3 波形の測定
3.4 電力の測定
 3.4.1 電力の定義
 3.4.2 平均(有効)電力の計測
演習問題

4.回路素子定数の測定
4.1 抵抗の測定
 4.1.1 電圧降下法による抵抗の測定
 4.1.2 ホイートストンブリッジによる抵抗の測定
 4.1.3 低抵抗の測定
 4.1.4 高抵抗の測定
4.2 インピーダンスの測定
 4.2.1 交流ブリッジを用いたインピーダンス測定
 4.2.2 Qメータを用いたインピーダンス測定
 4.2.3 電子回路技術を取り入れたインピーダンス計測法
演習問題

5.磁気量の測定
5.1 ヒステリシス特性と透磁率の測定
 5.1.1 ヒステリシスループ
 5.1.2 透磁率の測定
5.2 ホール効果
5.3 SQUID磁束計
 5.3.1 ジョセフソン効果
 5.3.2 SQUID磁束計の原理
5.4 核磁気共鳴の測定
 5.4.1 核磁気共鳴の原理
 5.4.2 プロトン磁力計
 5.4.3 核磁気共鳴画像法
演習問題

6.高周波計測
6.1 高周波の定義
6.2 分布定数回路
6.3 高周波におけるインピーダンスの測定
6.4 高周波電力の測定
 6.4.1 高周波電力測定の概要
 6.4.2 高周波電力の測定方法
 6.4.3 不整合誤差
6.5 周波数の測定
6.6 EMC,EMI,EMSの測定
 6.6.1 EMIの測定
 6.6.2 EMI発生源の簡易的な特定方法
 6.6.3 EMSの測定
演習問題

7.雑音源と信号
7.1 雑音源
 7.1.1 内部雑音と外部雑音
 7.1.2 統計的性質による分類
 7.1.3 周波数特性による分類
 7.1.4 発生メカニズムによる分類
7.2 信号と雑音の評価
 7.2.1 SN比
 7.2.2 雑音指数
 7.2.3 等価雑音電力
 7.2.4 ダイナミックレンジ
演習問題

8.信号の伝送と雑音対策
8.1 信号源としてのセンサ
 8.1.1 理想信号源と実際の信号源
 8.1.2 インピーダンスマッチング
 8.1.3 信号源インピーダンスと雑音
8.2 計測信号の伝送と雑音対策
 8.2.1 信号の伝送形態
 8.2.2 信号の変換
 8.2.3 センサとインピーダンスマッチング
 8.2.4 ノーマルモード伝送とコモンモード伝送
 8.2.5 コモンモード伝送する雑音の除去
8.3 シールドとアース
 8.3.1 電磁環境両立性と電磁干渉対策
 8.3.2 静電シールド
 8.3.3 電磁シールド
 8.3.4 アースと信号の伝送線
演習問題

9.ディジタル計測
9.1 信号のディジタル化
 9.1.1 アナログ信号のディジタル化
 9.1.2 量子化
 9.1.3 A-D変換
 9.1.4 D-A変換
9.2 ディジタル信号のパソコンへの転送
 9.2.1 A-D変換ボード
 9.2.2 ディジタルオシロスコープとコンピュータの接続
 9.2.3 ネットワークによる遠隔計測
演習問題

10.周波数解析と雑音処理
10.1 周波数解析
 10.1.1 スペクトルの概念
 10.1.2 フーリエ変換とスペクトル
 10.1.3 パワースペクトル密度
 10.1.4 離散フーリエ変換と高速フーリエ変換
 10.1.5 離散フーリエ変換,高速フーリエ変換の問題点と窓関数
 10.1.6 短時間フーリエ変換とウェーブレット変換
 10.1.7 そのほかの周波数変換法
10.2 雑音処理
 10.2.1 ローパスフィルタ
 10.2.2 移動平均法
 10.2.3 積算平均化処理
演習問題

引用・参考文献
演習問題解答
索引

吉澤 昌純(ヨシザワ マサスミ)

降矢 典雄(フルヤ ノリオ)

福田 恵子(フクダ ケイコ)

吉村 拓巳(ヨシムラ タクミ)

高崎 和之(タカサキ カズユキ)

西山 明彦(ニシヤマ ハルヒコ)

掲載日:2020/10/30

「電子情報通信学会誌」2020年11月号広告

掲載日:2020/10/21

「電気学会誌」2020年11月号

掲載日:2020/04/01

「電子情報通信学会誌」2020年4月号広告

掲載日:2020/03/02

「電子情報通信学会誌」2020年3月号広告