新SI対応 ディジタル時代の電気電子計測基礎 (改訂版)
2019年5月からの新SIに対応した基礎から最新のディジタル計測までを解説した教科書
- 発行年月日
- 2020/02/13
- 判型
- A5
- ページ数
- 168ページ
- ISBN
- 978-4-339-00930-9
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- 広告掲載情報
【書籍の特徴】
本書は電気回路および電磁気を学んだ段階の学生向けに,次元,新SI,単位の正確な記載,統計,不確かさといった計測の基礎を教え,その上で演算増幅器を用いた信号処理とA/Dコンバータによる電圧,電流,抵抗,インピーダンス,電力,周波数測定を中心に説明することで,現代の計測の実情に合わせた内容としている点が特徴です。新SIの改定に関しては,単位の成り立ちや物理的な理解といった観点から旧SIの記述も残して,単位の歴史と概念を理解できるよう心がけました。また,新JIS記号や用語,マイコンを用いたディジタル計測,IoT計測への導入に向けても配慮をしました。
【各章について】
不確かさという表現はだいぶ認知されてきていますが,まだ従来の誤差という表現も社会で用いられておりこれらを2章において詳しく解説して,次元や単位表記に関しても間違いやすい点を詳しく記載をしています。また,電圧・電流・抵抗測定の後にセンサの種類と計測を入れる事で理解を深める工夫をしました。高度化するハードウェアに対して学生への教育と知識・記述の継承の在り方は大きな課題であり,高度な内容を簡略化して概念を把握させる事と現時点では消化不良であっても将来直面する技術内容を丁寧に説明して,その上で章末の課題を多くして授業内演習や宿題に活用して理解・計算力の向上を目指しました。米国の教科書を参考にできるだけ教科書による説明で自習できるように心がけ,理解度確認や計算反復練習を増やすことで学力向上と達成感を得させる形を目指しました。
【著者からのメッセージ】
雑音や演算増幅器に関して種類や実際の製品仕様,特性項目から説明して,現実の研究・製品開発などで起こる問題を提示しつつ初心者にもわかる説明を心がけました。計測の現場で出会う難解なノウハウ的な内容やΔΣ方式のA/Dコンバータなどの先進的な内容も説明をしています。計算力と論理性を伸ばしかつ実践にもつながる内容を教える事で将来第一線の企業,研究活動で活躍できる若人の素養を伸ばす事を期待しています。
本書は,大学の2年次学生を対象とした「計測工学」の授業をもとに,従来の計測工学の教科書に対する下記の動機から第1刷(2014年)を執筆した。
1)不確かさの導入,SI,次元,単位の正確な記載
2)新JIS記号・用語,ディジタル計測への対応
3)新しい授業形式への対応
1)に関しては,国際度量衡委員会の勧告を経て不確かさという表現がだいぶ認知されてきているが,まだ従来の誤差という表現も社会で用いられており,これらを2章において詳しく解説して,次元や単位表記に関しても記載をした。
2)に関しては,図面・用語の更新と同時に,可動コイル型計器の説明を減らしてA-D変換器による電圧測定と演算増幅器を用いた信号処理による電流,電力測定を中心に説明することで,現代の計測の実情に合わせた内容とした。また,電圧・電流・抵抗測定のあとに,センサの種類と計測を入れることで理解を深める工夫をした。また,コンピュータ・マイコン計測やセンサネットワークに用いられる無線計測など,今後のトレンドに関して説明を行った。
3)に関しては,章末の演習問題を多くして授業内演習や宿題に活用できるようにし,理解・計算力の向上を目指した。米国の教科書を参考に,できるだけ教科書による説明でも自習できるように心がけ,授業数の増加に対して理解度確認や計算反復練習を増やすことで学力向上と達成感を得させる形を目指した。
これらに加えて第3刷(改訂版)では
4)新SIの改訂に関して1章を大きく改訂したが,単位の成り立ちや物理的な理解といった観点から旧SIの記述も残した。
世の中の社会状況が大きく変化する中で高度化するハードウェアに対して学生への教育と知識・記述の継承が困難になっており,日本の高専・大学教育の在り方は大きな転換点に立っていると感じている。高専・大学教育になにを求めるかはいろいろな意見があるが,高度な内容を簡略化して概念を把握させることと,現時点では消化不良であっても将来直面するであろう内容を丁寧に説明することをうまくバランスさせる必要があると考える。本書の4章では簡略化した内容では理解不足や勘違いを招くと思われる演算増幅器に関しては最初から実際の製品の仕様から説明して種類や特性項目が多いことを理解させたうえで,現実のセンサ回路などで起こる問題を提示しつつ初心者にもわかる説明を心がけた。技術が高度化するなかで研究室や会社業務に役立つ技能を得るヒントになれば幸いである。また,計測の現場で出会う難解なノウハウ的内容やΔΣ方式のA-D変換器の基礎に関しても説明をした。IoT技術が普及するなかで14章に関しても内容改訂が必要であるが,これは次回か別書物で対応したい。計測工学の教科書は,すでに多くの良書が出版されているが,電気回路および電磁気を学んだ段階の学生には網羅的すぎるとも感じており,この教科書では選定した基礎内容の理解,演習から始め,徐々に電子計測を説明していく方針とした。教育の在り方の変化が理工教育や企業活動に様々な影響を与えているが,計算力と論理性を伸ばし,かつ実践にもつながる内容を教えることが将来第一線の企業,研究活動で活躍できる若人の素養を養うと考えている。以上の内容を教師が教えやすいように配慮を行ったつもりであるが,紙面の制約からやや説明を簡略化した記載や説明不足や厳密ではない部分もある。筆者の力不足の面も含め,不十分な点に関しては今後ご意見をいただき改善をしていきたい。
本書の執筆にあたって,多くの参考文献を参考にさせていただき,これらの著者に謝意を表する。最後に,本書を出版するお世話をいただいたコロナ社の方々に感謝する。
2019年12月著者
1.計測の基礎とSI
1.1 計測とは
1.2 計測の事例
1.2.1 天文と暦
1.2.2 クーロンの法則
1.3 次元と表記法
1.3.1 次元
1.3.2 量記号,単位記号の表記法
1.4 国際単位系(SI)
1.5 単位の例
1.5.1 メートル
1.5.2 秒
1.5.3 質量
1.6 電気量の標準と量子標準
1.6.1 電気量
1.6.2 量子標準
演習問題
2.測定手法と統計処理
2.1 直接測定・間接測定と偏位法・零位法
2.1.1 測定法
2.1.2 目盛
2.1.3 零位法
2.2 有効数字
2.3 不確かさと測定
2.3.1 不確かさ
2.3.2 測定と標準偏差
2.4 不確かさの伝搬
2.5 誤差
2.6 正規分布
2.6.1 ガウス分布
2.6.2 正規分布
2.6.3 標準偏差と不確かさ
2.7 最小二乗法
2.7.1 1変数最小二乗法
2.7.2 2変数最小二乗法
演習問題
3.雑音
3.1 デシベル
3.1.1 デシベルの定義
3.1.2 デシベルの演算
3.1.3 電圧を用いたデシベルの定義とdBm
3.2 熱雑音
3.3 ショット雑音,1/f雑音
3.4 外来雑音
3.5 SN比と雑音指数F
3.5.1 SN比の定義
3.5.2 雑音指数の定義
演習問題
4.演算増幅器とフィルタ
4.1 演算増幅器の原理と種類
4.1.1 演算増幅器とは
4.1.2 構成と特性
4.1.3 フィードバック
4.1.4 入力抵抗
4.2 演算増幅器を用いた各種回路
4.2.1 バッファ回路
4.2.2 加算回路
4.2.3 差動増幅回路
4.2.4 計装増幅回路
4.2.5 積分回路
4.3 フィルタ
4.3.1 フィルタの種類
4.3.2 一次低域フィルタ
4.3.3 二次低域フィルタと効果
演習問題
5.A-D変換器,電圧測定
5.1 A-D変換器の原理と種類
5.1.1 A-D変換器とディジタル
5.1.2 ビット数
5.1.3 二重積分方式(低速用)
5.1.4 逐次比較方式(中速用)
5.1.5 DR(デルタシグマ)方式(中速用)
5.1.6 内蔵用(中速用)
5.2 交流電圧の測定
5.2.1 可動鉄片型交流計器による測定
5.2.2 整流回路を用いた交流値
5.3 リアルタイムアナログ演算ユニットによる実効値の算出
5.4 基準電圧発生回路
演習問題
6.電圧型センサとマイコン計測
6.1 熱電対
6.2 ホール素子
6.3 温度IC
演習問題
7.電流測定
7.1 直流電流測定
7.2 微小電流測定
7.3 交流測定
演習問題
8.電流型センサを用いた光・放射線計測
8.1 フォトダイオード
8.2 光電子増倍管
8.3 放射線センサ
8.4 撮像素子
演習問題
9.抵抗,インピーダンス測定
9.1 間接測定と四端子法
9.1.1 抵抗の間接測定
9.1.2 ディジタルマルチメータによる抵抗測定
9.1.3 定電流回路
9.1.4 四端子法
9.2 高抵抗測定
9.3 ブリッジ回路とLCRメータ
演習問題
10.抵抗・キャパシタンス型センサ
10.1 ひずみゲージを用いた力センサ
10.2 白金測温抵抗体
10.3 サーミスタと光導電セル
10.4 キャパシタンス変化を利用した加速度センサ
演習問題
11.電力測定
11.1 直流電力
11.2 電流力計型計器
11.3 交流電力
11.3.1 交流電力の間接測定
11.3.2 3電圧計法
11.3.3 サンプリング法
11.3.4 ホール素子電力計
11.4 電力量計による測定
演習問題
12.周波数
12.1 セシウム原子時計
12.1.1 原子時計
12.1.2 周波数安定度と平均化
12.2 水晶振動子と周波数カウンタ
12.2.1 水晶振動子の構造と駆動回路
12.2.2 周波数カウンタ
12.2.3 ヘテロダイン
12.3 掛け算器と周波数の引き算
演習問題
13.オシロスコープ,記録計(ロガー)
13.1 オシロスコープの原理
13.1.1 アナログオシロスコープ
13.1.2 ディジタルオシロスコープ
13.1.3 入力プローブ
13.2 波形
13.2.1 波形の読み方
13.2.2 波形の用語
13.3 リサジューの図形
13.4 記録計
演習問題
14.コンピュータ計測とセンサ無線
14.1 計測ソフトウェア
14.2 センサ無線
14.3 センサネットワーク
演習問題
参考文献
演習問題解答
索引
-
掲載日:2020/10/30
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掲載日:2020/10/21
-
掲載日:2020/04/01
-
掲載日:2020/02/01