ディジタル通信・放送の変復調技術

ディジタル通信・放送の変復調技術

ディジタル通信・放送の根幹をなす最新のディジタル変復調技術について,複雑な数式はなるべく使用せずわかりやすく解説した。また,基本的な通信方式である単一キャリア変調方式とマルチキャリアのOFDMを同時に解説している。

ジャンル
発行年月日
2008/04/10
判型
A5
ページ数
208ページ
ISBN
978-4-339-00796-1
ディジタル通信・放送の変復調技術
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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ディジタル通信・放送の根幹をなす最新のディジタル変復調技術について,複雑な数式はなるべく使用せずわかりやすく解説した。また,基本的な通信方式である単一キャリア変調方式とマルチキャリアのOFDMを同時に解説している。

通信・放送分野においては,アナログ伝送からディジタル伝送への移行が急速に進んでいる。携帯電話,コードレスなど通信分野のディジタル化の流れから放送分野でのディジタル化は当然予想されていたが,伝送に関してはこれまでディジタル化があまり進まず,アナログ方式が主流となっていた。

これは,放送の場合,情報羅が多い画像を高品質でディジタル伝送するためには広い帯域が要求されることと複雑な構成の受伯機が必要となることが原因である。しかしながら,近年の帯域圧縮技術とLSI(large scale integration,大規模集積回路)技術の進展により,現在使用しているアナログ伝送帯域幅をそのまま利用してもディジタル伝送が可能となるとともに,受信機も低コスト化できるようになった。さらに,ディジタル変復調技術とLSI技術の進展に伴い,地上放送における最大の課題であるマルチパスフェージングに強いOFDM(orthogonal frequency division multiplexing,直交周波数分割多重)変調技術の実用化が可能となったことも大きい。

OFDMを用いた地上ディジタルテレビ放送は,2003年から関東,近畿,中京地区で開始され,しだいにそのサービスエリアを広げつつあるが,このディジタル放送においては,最新のディジタル変復調技術が多く取り入れられている。

本書では,ディジタル通信・放送システムの根幹をなすディジタル変復調技術について複雑な数式はなるべく使用せず,電子情報通信系学部生・初心者でもその本質を十分理解できるようわかりやすく解説している。また,基本的な通信方式であるシングルキャリヤ変調方式とマルチキャリヤのOFDMを同時に取り扱っている点も大きな特徴といえる。

ページ配分としては,まずベースバンドにおけるディジタル伝送を説明した後,シングルキャリヤを用いた基本的な変調方式を述べる。つぎに,複雑な多重方式であるOFDMについてふれた後,その応用としてOFDMを用いた地上ディジタルテレビ放送について変復調・伝送面を中心に説明する。最後に地上ディジタルテレビ放送における技術的な課題とそれを解決するための新技術についてOFDMに関連する事項を中心に紹介する。

なお,本書の執筆にあたっては,NHK放送技術研究所の斉藤知弘氏,高田政幸氏,土田健一氏,(株)東芝の三木信之氏,アンリツ(株)の後藤剛秀氏,松下電器産業(株)の影山定司氏,広島市立大学情報科学部の神尾武司氏,安昌俊氏,藤坂尚登氏をはじめ,多くの方々からご協力をいただいた。この場を借りて厚く御礼申し上げる。終わりにコロナ社の方々のご尽力に謝意を表する次第である。

2008年2月
著者

1.ディジタル伝送の基礎
1.1 ディジタル伝送の基本構成
1.2 ベースバンドディジタル信号の種類
1.3 ベースバンド伝送における符号間干渉と誤り率
1.4 伝送路の雑音特性と誤り率
 1.4.1 雑音特性
 1.4.2 雑音による誤りの発生
1.5 無ひずみ伝送条件
1.6 シンボルレートおよびビットレートと帯域幅の関係
演習問題

2.ディジタル変復調の基本方式
2.1 ディジタル変調方式
 2.1.1 ASK変調方式
 2.1.2 PSK変調方式
 2.1.3 信号間距離を同じにするための信号電力比較
 2.1.4 変調波伝送に必要な帯域幅
 2.1.5 PSK信号を帯域制限したときに生じる非線形ひずみ
2.2 ディジタル復調方式
 2.2.1 同期検波方式
 2.2.2 差動符号化と差動検波
2.3 PSKおよびQAM変調方式の誤り率特性
 2.3.1 誤り率の係数k1の算出
 2.3.2 誤り率の係数k2および誤り率の算出
2.4 CNRとSNRおよびEb・N0との関係
 2.4.1 CNRとSNR
 2.4.2 CNRとEb・N0および周波数利用効率の関係
 2.4.3 CNRとEb・N0の使い分け
2.5 その他の変調方式
 2.5.1 VSB方式
 2.5.2 OQPSK
 2.5.3 π・4シフトQPSK
 2.5.4 FSK・MSK系変調方式
2.6 周波数利用効率と振幅変化の面から見た各変調方式の評価
2.7 誤り訂正符号
 2.7.1 ブロック符号
 2.7.2 畳込み符号
2.8 符号化変調方式
演習問題

3.OFDM変復調方式
3.1 OFDM変調の歴史と特徴
3.2 OFDM信号波形
3.3 OFDMの直交性
3.4 OFDM変復調器の基本構成
3.5 OFDM信号の式表示と伝送
 3.5.1 基本式
 3.5.2 複素OFDM信号の伝送と復調
 3.5.3 周波数変換の具体例
 3.5.4 OFDMと差動検波
3.6 マルチパス干渉による信号劣化とガードインターバル
 3.6.1 マルチパスによる信号劣化
 3.6.2 ガードインターバルの付加
3.7 マルチパス干渉および周波数ずれによる信号劣化と波形等化
 3.7.1 波形等化の必要性
 3.7.2 マルチパスによる信号劣化と等化
 3.7.3 周波数ずれによる信号劣化と等化
3.8 符号化とインタリーブ
 3.8.1 時間インタリーブ
 3.8.2 周波数インタリーブ
3.9 OFDM波の同期技術
 3.9.1 シンボル同期
 3.9.2 キャリヤ周波数同期
3.10 OFDM波増幅時の課題
 3.10.1 非直線ひずみがOFDM波に与える影響
 3.10.2 直線性がよい電力増幅器が必要な理由
演習問題

4.OFDMを用いた地上ディジタルテレビ放送の変復調技術
4.1 地上ディジタル放送システムの概要
 4.1.1 地上ディジタル放送のキーテクノロジー
 4.1.2 日本,ヨーロッパおよびアメリカの放送方式比較
 4.1.3 日本の地上ディジタルテレビ放送方式の特長
 4.1.4 アナログ放送とディジタル放送の比較
 4.1.5 伝送パラメータ
 4.1.6 実際の運用モード
4.2 地上ディジタル放送の変復調技術
 4.2.1 送受信システムの系統
 4.2.2 携帯受信端末の系統
 4.2.3 地上ディジタル放送の伝送速度(ビットレート)
 4.2.4 SFN
 4.2.5 OFDM波の復調技術
4.3 地上ディジタル放送の伝送特性
 4.3.1 復調器における所要CNR
 4.3.2 キャリヤ周波数の許容偏差
 4.3.3 OFDMキャリヤ周波数の測定
 4.3.4 OFDM波の伝送と干渉・混信妨害
 4.3.5 所要電界強度を求めるための回線設計
演習問題

5.地上ディジタル放送におけるOFDM波の伝送および受信と監視のための新技術
5.1 SFNネットワーク実現のための技術
 5.1.1 回り込み波キャンセラ
 5.1.2 光変調器を用いた送受分離中継局用信号伝送システム
 5.1.3 SFN環境下における長距離遅延プロファイル測定装置
5.2 OFDM波の増幅技術
 5.2.1 ディジタルプリディストーション方式MCPA
 5.2.2 GaN・HEMTを用いたPA
 5.2.3 番組伝送用マイクロ波帯高効率電力増幅器
5.3 OFDM波の監視技術
 5.3.1 MERを用いた監視技術
 5.3.2 放送中にBER測定が可能な監視装置
5.4 OFDM波を多段伝送したときの課題と対策
5.5 OFDM波の海上移動受信
 5.5.1 海面反射波による影響
 5.5.2 ガードインターバル超えのマルチパスの影響
 5.5.3 客室内における複数波再送信による干渉
 5.5.4 再送信波の受信アンテナへの回り込みによる発振寸前の現象
5.6 まとめおよび今後の展開
引用・参考文献
演習問題解答
索引

生岩 量久(ハエイワ カズヒサ)