バイオメカニクスと運動工学 - 運動機構と神経制御 -

バイオメカニクスと運動工学 - 運動機構と神経制御 -

ヒトの運動の理解を中心に,様々な観点から生物機能の工学モデルを学ぶことができる。

発行予定日
2024/06/上旬
判型
A5
予定ページ数
256ページ
ISBN
978-4-339-07280-8
バイオメカニクスと運動工学 - 運動機構と神経制御 -
近刊

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
  • 著者紹介

【書籍の特徴】
バイオメカニクスが対象とする範囲は広く,それらを本書の中ですべて解説することは難しい。本書では扱う範囲をヒトの運動に絞り,どのようにヒトの運動を理解するのかを中心テーマとして扱った。また,できるだけさまざまな観点からこれまで発表されている生物機能の工学モデルに言及した点も本書の特徴の一つである。

【本書の構成】
第1章では,バイオメカニクスの歴史,取り扱う範囲について解説するとともに,バイオメカニクス研究の基本的な考え方である構成的解析手法を解説した。
第2章では,人体運動器の構成と運動記述のための解剖学について学ぶ。医学,生理学の世界での運動に関する研究の歴史は古い。新しいロボット,特にヒューマノイドを研究したい読者はこの学問分野での成果を学ぶ機会が多い。そのために必要な最低限の知識をまとめた。
第3章では,人体の運動器のうち,最も理解が進んでいる股関節のバイオメカニクスを対象に,ヒトの運動理解への静力学の適用方法を解説する。
第4章では,ヒトのジョイント,すなわち関節について学ぶ。ヒトのジョイントと機械のジョイントはその動作原理から大きく異なっている。膝関節を中心にヒトのジョイントの構成原理について解説した。
第5章では,バイオメカニクスにおける動力学の適用を学ぶ。ヒトの運動を力学の問題に置き換える方法,運動解析の方法について理解を深めて欲しい。また,この章では,ヒトの歩行についても言及した。
第6章では,ヒトのアクチュエータである筋について学ぶ。筋はエンジン,電気モータにくらべて出力/重量比が高く,エネルギー効率が高いといわれている。筋収縮のメカニズムについて理解を深めて欲しい。
第7章では,バイオメカニクスの応用として,運動計測装置の計測原理,運動のシミュレーション方法を解説するとともに,筋シナジー解析,福祉分野へのバイオメカニクス応用の基礎を解説した。
第8章では,運動のコントロール機能を担うニューロンについて,その構造,発火のメカニズムから,シナプスの生理学について学ぶ。また,基本的なニューロン回路からニューロコンピューティングまでを解説する。
第9章では,脳-神経系について学ぶ。ヒトの運動のコントロールを中心に,脳・脳幹・脊髄の機能,基本的な知覚経路,運動経路,脊髄における反射機構,脊髄内の歩行パターン発生回路についても言及した。

【著者からのメッセージ】
バイオメカニクス,バイオエンジニアリングなどのヒト科学,ヒト技術は今世紀の科学技術の中心になるといわれている。ヒト科学技術を発展させるのは若い読者である。本書が読者のこれからの研究の一助になればと願っている。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

biomechanicsは「バイオメカニクス」とカタカナ表記するのが通例である。あえて日本語訳すれば,「生体力学」がふさわしい。生物を力学の観点から眺めようというのがバイオメカニクスである。

本書はロボティクス教科書シリーズの「運動のバイオメカニクス,コロナ社,2008」を改訂し,講義の経験に基づいて新たな内容を付け加えたものである。第1章で示すように,バイオメカニクスが対象とする範囲は広く,それらを本書の中ですべて解説することは難しい。本書では扱う範囲をヒトの運動に絞り,どのようにヒトの運動を理解するのかを中心テーマとして扱った。また,できるだけさまざまな観点からこれまで発表されている生物機能の工学モデルに言及した点も本書の特徴の一つである。

第1章では,バイオメカニクスの歴史,取り扱う範囲について解説するとともに,バイオメカニクス研究の基本的な考え方である構成的解析手法を解説した。

第2章では,人体運動器の構成と運動記述のための解剖学について学ぶ。医学,生理学の世界での\運動"に関する研究の歴史は古い。新しいロボット,特にヒューマノイドを研究したい読者はこの学問分野での成果を学ぶ機会が多い。そのために必要な最低限の知識をまとめた。

第3章では,人体の運動器のうち,最も理解が進んでいる股関節のバイオメカニクスを対象に,ヒトの運動理解への静力学の適用方法を解説する。

第4章では,ヒトのジョイント,すなわち関節について学ぶ。ヒトのジョイントと機械のジョイントはその動作原理から大きく異なっている。膝関節を中心にヒトのジョイントの構成原理について解説した。

第5章では,バイオメカニクスにおける動力学の適用を学ぶ。ヒトの運動を力学の問題に置き換える方法,運動解析の方法について理解を深めて欲しい。また,この章では,ヒトの歩行についても言及した。

第6章では,ヒトのアクチュエータである筋について学ぶ。筋はエンジン,電気モータにくらべて出力/重量比が高く,エネルギー効率が高いといわれている。筋収縮のメカニズムについて理解を深めて欲しい。

第7章では,バイオメカニクスの応用として,運動計測装置の計測原理,運動のシミュレーション方法を解説するとともに,筋シナジー解析,福祉分野へのバイオメカニクス応用の基礎を解説した。

第8章では,運動のコントロール機能を担うニューロンについて,その構造,発火のメカニズムから,シナプスの生理学について学ぶ。また,基本的なニューロン回路からニューロコンピューティングまでを解説する。

第9章では,脳―神経系について学ぶ。ヒトの運動のコントロールを中心に,脳・脳幹・脊髄の機能,基本的な知覚経路,運動経路,脊髄における反射機構,脊髄内の歩行パターン発生回路についても言及した。

バイオメカニクス,バイオエンジニアリングなどのヒト科学,ヒト技術は今世紀の科学技術の中心になるといわれている。ヒト科学技術を発展させるのは若い読者である。本書が読者のこれからの研究の一助になればと願っている。

2024年5月
著者を代表して 牧川方昭

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1. バイオメカニクスの立場と構成的解析手法
1.1 バイオメカニクス研究の歴史
1.2 バイオメカニクスの範囲
1.3 構成的解析手法
章末問題

2. 人体運動器の構成と運動記述のための解剖学
2.1 人体の区分,位置・方向を表す用語
2.2 人体運動器の部品,構成
2.3 運動の表現方法
 2.3.1 屈曲/伸展
 2.3.2 外転/内転
 2.3.3 外旋/内旋
 2.3.4 そのほかの運動
章末問題

3. 股関節を例とした静力学
3.1 片脚起立時の股関節における力の釣合い
3.2 股関節力を減らす二つの工夫
3.3 骨
章末問題

4. 膝関節を例としたヒトの関節の構成
4.1 骨と骨の結合
 4.1.1 線維性連結
 4.1.2 軟骨性結合
 4.1.3 滑膜性連結
4.2 関節の構成原理
4.3 生体の軟組織
4.4 不安定な関節
4.5 動きの小さな関節
章末問題

5. 人体運動の推定方法
5.1 運動に関する基本的な物理量
5.2 骨格系剛体の動力学
5.3 歩行の運動方程式
5.4 バイオメカニクスにおける運動方程式の利用
5.5 下腿骨内の応力分布の推定
5.6 歩行
5.7 走行
章末問題

6. 生体アクチュエータとしての筋
6.1 筋と機械アクチュエータの比較
6.2 筋の構造と分類
 6.2.1 筋の構造
 6.2.2 筋の分類
6.3 筋の収縮
 6.3.1 筋収縮の機序
 6.3.2 筋収縮の分類
 6.3.3 筋の力学モデル
6.4 筋収縮の神経機構
6.5 筋収縮システム
章末問題

7. バイオメカニクスの応用
7.1 運動計測機器
 7.1.1 フォースプレート
 7.1.2 モーションキャプチャ
 7.1.3 骨格推定
7.2 運動の定量理解
 7.2.1 関節トルクの解析
 7.2.2 運動シミュレータ
7.3 筋シナジー解析
7.4 福祉領域でのバイオメカニクス
章末問題

8. 生体コンピュータの基本回路としてのニューロン
8.1 ニューロンの構造
8.2 ニューロン発火のメカニズム
8.3 機能的電気刺激
8.4 ニューロン発火の等価電子回路モデル
8.5 BVPモデル
8.6 軸索上の活動電位の伝搬
8.7 シナプス
8.8 基本的なニューロン回路
8.9 シナプスの可塑性
8.10 ニューロコンピューティング
章末問題

9. 運動コントロールのソフトウェア
9.1 脳・神経系
9.2 中枢神経系
 9.2.1 大脳
 9.2.2 間脳
 9.2.3 脳幹
 9.2.4 小脳
 9.2.5 脊髄
9.3 末梢神経系
9.4 種々の神経伝導路
 9.4.1 下降性伝導路
 9.4.2 上行性伝導路
9.5 運動における小脳の役割
9.6 中枢プログラム
章末問題

おわりに

付録
A.1 非線形微分方程式の定常解の安定性
A.2 リミットサイクル
A.3 側抑制回路

引用・参考文献
章末問題解答
索引

坂上 友介(サカウエ ユウスケ)

万野 真伸(マンノ マサノブ)

吉田 正樹(ヨシダ マサキ)

小田 邦彦(オダ クニヒコ)

塩澤 成弘(シオザワ ナルヒロ)