環境工学

環境工学

使われている技術の歴史背景を知り,客観的なデータに基づいて工学的な必然性を理解しよう

ジャンル
発行予定日
2026/09/下旬
判型
A5
予定ページ数
184ページ
ISBN
978-4-339-06679-1
環境工学
近刊

予定価格

2,860

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  • 内容紹介
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環境工学とは,私たちが自身の生存基盤を脅かすほどに地球に与えている負荷に対して,科学と工学の視点から具体的な解決策を見出していく学問である。本書では,社会の文脈に合わせて最も適切な選択肢を導き出す社会実装力を養う。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

私たちは古くから自然の豊かな恵みを受け,文明を発展させてきました。しかし,その過程で私たちが地球に与えてきた負荷は自然のサイクル(物質循環)を狂わせ,私たちの生存基盤を脅かす段階に到っています。環境工学は,こうした課題に対して科学の視点と工学の技術を組み合わせ,具体的な解決策を見出す重要な学問です。

しかし,環境工学が扱う技術や法制度は,ある日突然,完成された形で目の前に現れたわけではありません。そこには必ず,先人たちが直面した深刻な課題,度重なる失敗,およびそれを乗り越えようとした試行錯誤の歴史的経緯(発展のプロセス)が存在します。本書は,単に最新の環境技術や仕組みを網羅的に紹介するだけではなく,それぞれの技術がたどってきた歴史の文脈を紐解くことで,「なぜ,この技術が必要になったのか」,「なぜ,この仕組みでなければならなかったのか」という本質的な問いを読者に問いかけ,その背景にある工学的な必然性を深く理解できる構成となっています。

地球は,宇宙との間でエネルギーの出入りはあるものの,物質の移動がほとんどない閉鎖系です。本書の第1章(地球と人類と物質循環)では,まず生命や環境がよって立つ地球の形成と物質循環の起源を学びます。炭素,窒素,硫黄などの原子が,大気,水,土壌,生命の間を悠久の時をかけて循環してきたメカニズムを知ることで,なぜ現代人類の活動がこの繊細な物質循環のバランスを根底から揺るがしてしまっているのか,その根本的な「なぜ」に迫ります。

続く第2章(環境汚染と法整備)では,日本の環境対策における歴史的変遷を代表する公害の歴史を見つめます。戦後の高度経済成長期に起きた凄惨な公害問題と,そこから生まれた徹底的な環境規制や法整備のプロセスを学ぶことで,なぜ厳しい環境基準や法律による縛りが必要だったのか,そしてなぜ日本が世界に先駆けて高度な環境保全技術を築き上げることができたのかという,技術と社会制度の因果関係を主体的に考えます。

特に,私たちの命を支える水をめぐる歴史は,感染症や汚染との果てしない闘いでした。第3章(水の保全と安全な水の供給)では,明治期にコレラなどの水系感染症を克服するために近代水道システムが導入されてから,現代の高度浄水・下水処理に到る水道技術の変遷を体系的に追います。これを通じて,なぜ日本の水道水は世界で最も安全と言われる品質を維持できているのか,蛇口をひねれば当たり前に安全な水が飲めるのかその裏にある技術的な必然性を理解します。

また,公害克服後の現代において,きわめて身近な課題であるゴミや資源の問題は,世界と日本の地域的・歴史的な背景の違いによって,その対策が大きく異なります。第4章(廃棄物管理と循環型社会の構築)では,日本が歩んできた大量生産・大量消費・大量廃棄の時代と,国土の狭さゆえに直面した最終処分場(埋立地)の逼迫にいたる歴史的背景を整理します。なぜ,これまでの3R(リデュース・リユース・リサイクル)だけでは不十分で,持続可能なサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行や,製品の一生を通じた環境負荷を科学的に評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方が必要なのか,その必然的な理由を問いかけます。

高度な文明を維持するうえで避けて通れないエネルギーの問題も,歴史と地理の制約から生まれています。第5章(エネルギー資源)では,一次エネルギーのほぼ全量を海外に頼らざるを得ない資源を持たない国・日本の置かれた構造的背景を見つめます。電力の安定供給に絶対不可欠な同時同量の法則や,貯蔵・輸送に優れた液体・ガス燃料の特徴,および資源の輸入国や種類を分散させるエネルギー資源のダイバシティー(多様性)の重要性を整理し,なぜ日本において安全性,安定供給,経済性,環境適合のすべてを追求するS+3Eの原則が国の命綱であるのかを熱力学的な視点も交えて考えます。

さらに第6章(放射能・放射線と環境)では,医療や工業,農業など,私たちの見えないところで多様に進化してきた放射線利用の歴史と進展に触れます。これらが現代社会で果たしている役割と,安全に取り扱うための基礎知識(放射線の性質,生体影響,防護の原則)を整理することで,放射線を過度に恐れず正しく理解し,なぜ安全管理を徹底すべきなのかを論理的に考えます。

こうした歴史の中で高度に進化してきた技術やシステムを,将来にわたって持続可能な形で社会に実装するための,新たな設計思想を扱うのが本書の締めくくりです。第7章(グリーンケミストリーとグリーンエンジニアリング)では,過去の環境破壊への反省からアメリカ化学会(ACS)が提唱した,環境に配慮したプロセス設計の基本概念について,化学工学を学ぶうえで知っておくべき必須の教養を端的に紹介します。

情報があふれる現代,環境議論はしばしば感情的,あるいは極端な二元論に陥りがちです。しかし,皆さんに本当に必要なのは,単に環境に優しい技術を表面だけなぞることではありません。なぜ,その技術が必要とされたのかという歴史的背景を正しく理解し,客観的なデータに基づいて,社会の文脈に合わせた最も適切な選択肢を導き出す社会実装力を養うことです。過去の失敗とそれを克服した知恵を体系的に学ぶことこそが,将来読者が新たな環境課題に直面したときに,自らの頭で最適解を導き出すための強力な羅針盤となります。

本書の執筆にあたり,産業水処理に関するコラムの査読にご協力いただいたオルガノ株式会社の矢野大作氏,ならびに第5章および第6章の執筆において貴重なご指導を賜った元日本原子力研究開発機構理事の吉田信之氏(株式会社アトックス)に深く感謝いたします。

本書は,複雑に絡み合う環境諸課題を体系的に理解するための一助となるよう構成されています。各章で最新の法制度や技術動向を反映させつつ,根底にある物質循環,安全確保,リスク管理,それから社会との対話の重要性を一貫して説いています。本書が,現代における様々な環境問題を考えていく出発点となり,読者の皆さんにとって科学的な見方のヒントになれば幸いです。

2026年8月
中島江梨香

行本 正雄(ユクモト マサオ)

野々部 顕治

野々部 顕治(ノノベ ケンジ)

環境系独立技術士としてフリーで活動しています。“野々部技術士事務所株式会社”の代表取締役です。弊社のキャッチフレーズは「あなたの会社や団体の“環境にいいこと”応援します。」です。環境技術全般に対応しますが、得意なのは水質改善技術です。これまで国内だけでなく中国や韓国でも水質改善技術指導を行ってきました。

時代の要請か、最近は省エネや節水についての仕事も増えてきました。私が力を入れているのは下水処理施設の省エネ技術指導です。全国には下水処理施設が2,000基以上存在しますが、その省エネは遅々として進んでいません。ポンプやブロワの省エネ技術指導は誰にも負けない自信はあります。全力で貢献したいと考えています。