構想設計の方法論 - ディスラプションからトランジションへ -

設計工学フロンティアシリーズ 1

構想設計の方法論 - ディスラプションからトランジションへ -

価値提供の起点としての構想設計を新たに描き出す方法論を包括的かつ実践的に論じる。

ジャンル
発行予定日
2026/03/下旬
判型
A5
ページ数
544ページ
ISBN
978-4-339-04701-1
構想設計の方法論 - ディスラプションからトランジションへ -
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定価

9,350(本体8,500円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
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本書は,価値提供の起点となる設計を“構想設計”と呼び,それに資する各種の方法とそれらの一貫した活用法を“方法論”として実践的に講じている。

【価値提供の課題】
 2001年にApple社から携帯型デジタル音楽プレイヤーiPodが登場した折,「たいしたものではない。つくろうとさえ,思えば,我々だって,つくれた。」といった声も聞こえてきた。仕様さえあれば,どんなものでも,具体を設計して製造できる。その重要性はこれからも変わらない。しかし,新たな価値提供に向けては,仕様の設定や前提となる顧客像で他に先んじなければ,何ごとも始まっていかない。
 ましてや,25年後の今日では,それらへの要請は,デジタルや人工知能などの技術による可能性の拡大,プラットフォームやネットワーク外部性に象徴されるエコシステムとしてのあり様,求められる価値のさらなる高度化や多様化を受けて,ストーリーなるものにまで広がっている。
 そもそも,価値は移ろっていくものであり,元来の論点は,単なるイノベーションに留まらず,市場のどこかで狙っていく“ディスラプション”に始まり,価値の探索や深化を通じて多方面への普及を進めていき,社会や生活の全貌に変革をもたらす“トランジション”にも及ぶ。

【包括的な論考】
 本書では,一連の課題に対して,工学の立場からの設計論,経営学に由来するマーケティングや戦略論の考え方,システム思考やデザイン思考などの各種の思考法を包括的にとらえ直して,背景に潜む理屈を学術として掘り下げつつ,前提となる考え方や各種の方法を,具体的な題材にも絡めながら,総合的かつ体系的に論じている。

【主な考え方や方法】
 経験経済,普及理論,オープンイノベーション,アジャイル,ブレインストーミング,完全製品,ペルソナ,競争優位,共通価値,ステークホルダーマップ,why-howラダー,バリューグラフ,PESTLE分析,因果ループ図,機能設計図,SWOT分析,クロスSWOT分析,顧客価値連鎖分析,ビジネスモデルキャンバス,PPM,ストーリーダイアグラム,モーフォロジカルチャート,ピューの方法,リカーリングモデル,価値相関図,QFD,コスト価値グラフ,MVP,キャズム,組織学習,SECIモデル,プロトタイピング,アーキテクチャ,DSM,MVE,プロジェクト,コンピテンシー,チーム学,両利き,MLP,ダイナミックケイパビリティ,オーケストレーション

【横串としての題材】
 製品としての掃除機,サービスにも至る電話,経験を演出する音楽再生,変革を誘導する幼稚園

【重層的な共創に向けて】
 構想設計では,直接的な担い手のみならず,価値提供を統括する方々,さらには,企業などのトップの方々がそれぞれの立場で関わっていくことが求められる。また,そのような広がりは企業間や社会との共創にまで広がってきている。つまり,構想設計は,トランジションにも至っていく大きな機会に向けて,それらの方々が協働していくことによって,はじめて,適切に進んでいく。本書が,いずれの方々に向けても,互いの役割が重なり合う方面も含めて,それぞれに,意味を持つことを期待したい。

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

本書は,価値提供の起点としての構想なるものを新たに描き出していく設計を構想設計と称した上で,その方法論を包括的かつ実践的に論じている。

持続的な価値提供に向けては,大きなビジョンを掲げ,折々のイノベーションに向けて,根本となる構想を描き出し,それぞれを具体へと展開していくことが求められる。加えて,価値の主軸が製品からサービスや経験などにも広がってきていて,つながりのもとでのストーリーを描き出すことや価値を多様に演出していくためのプラットフォームを仕込んでいくことも求められている。また,データの活用と人工知能の進展により人知を超える高度な処理が実現可能になり,デジタル技術によるつながる可能性の拡大のもとでネットワーク外部性が明示的な因子になっていて,トランスフォーメーションという漠とした言葉も漂っている。他方では,個々の取組みがエコシステムを介して相互に関連していることが顕在化し,深刻さが増しつつある各種の社会課題の解決への貢献も責務となりつつある。それらに向けた,あるいは,そのもとで折々に求められる計画の立案は,元来の意味での設計への要請である。

翻って,設計のあるべきすがたに関しては,コンカレントエンジニアリング,リエンジニアリング,リーン,フロントローディング,デザイン思考,システム思考,モデルベース,バーチャル,アジャイル,などなど,折々に片仮名のキーワードが踊って,革新が求められてきた。しかしながら,40年ほどが経過した今となっては,折々の差分を振り返っても,また,目の前のことを直視するだけでは,答えは見えてこない。そもそも,この40年来の混沌は,それに先立つ時代が築き上げてきた前提で地殻変動が進んできて,創り出すべき価値の内容が変貌したことに起因している。また,昨今の状況のもとで,その混沌はさらに根深いものになってきている。それらに対して設計が然るべき役割を担っていくには,価値提供の根本に潜んでいる構想を描き出していく設計を根源から問い直すことから始めていく必要がある。

本書では,上記の認識のもとで,トランスフォーメーションや社会変容に向けて,既定の路線を根本から超えていくディスラプション(disruption,破壊的な創造)を描き出し,それを起点として価値のありようを転換させていくトランジション(transition,新たな状況への遷移)に俯瞰的かつ機敏に向かい合っていくことが設計の新たな課題であるとの視点に立つ。そのもとで,起点となる構想設計を更地から解釈することから始めて,“ディスラプションからトランジションへ”至る設計のあるべきすがたについての試論を提示する。具体的には,一貫した体系のもとで主軸となる代表的な方法論を順序立てて活用しつつ,価値提供に向けたストーリーを一気通貫で描き出していくストーリーを論じていく。あわせて,構想設計を論じていくための学術的な基盤のみならず,構想設計を中長期的な経営の中に位置付けていく上での指針を描き出していく。

構想設計の方法論は,さまざまな専門知や総合知を超越していて,新たに体系付けるべきものである。本書を読み進めるにあたっては,自身の専門性の殻を打ち破っていき,立場すらも超えていっていただきたい。また,設計や関連するデザインについての先入観や相場観も,ひとまずは,横に置いていただきたい。

ともかくも,価値提供の起点としての構想設計は,当座のこととしてはプロジェクトとしての活動であっても,元来は組織すらも超えていく取組みである。若手は中堅のごとく俯瞰的に,中堅は役員のごとく戦略的に,役員は若手のごとく軽やかに動いていく。それらの三拍子が揃って循環してこそ,そのプロセスは進んでいく。本書がそれに向けた一助になることを願いたい。

なお,構想設計の背後に潜んでいる設計の全貌については,拙書「設計論—製品設計からシステムズイノベーションへ」(コロナ社,2023年)で包括的に論じているので,適宜,参照いただきたい。

2026年2月
藤田喜久雄

☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます

1.構想設計を要請する
1.1 本当に新しいこと 
コラム1 ディスラプション,創造的破壊,破壊的な創造
1.2 価値の基軸における広がり 
1.3 新しい製品やサービスの市場への段階的な普及 
1.4 製品やサービスを描き出す技術とその調達のオープン化 
1.5 経済活動における支配原理の変貌 
1.6 設計の多義性とプロセスとしての共通性 
1.7 設計プロセスの合理化とアジャイル性への要請 
1.8 構想設計という新たな課題と方法論 
コラム2 構想設計,Ideational Design
1.9 第1章のまとめ 
コラム3 論点を共有するための読書案内

2.構想設計を位置付ける
2.1 社会における課題を解くことと設計の潮流 
コラム4 自己成就的予言と経路依存性
2.2 システムという抽象 
2.3 システムの記述における多義性と背後に潜む複雑性 
2.4 システムに作用するイノベーション 
2.5 システムの共進化とエコシステム 
2.6 5W1Hから眺めるイノベーションの多義性 
コラム5 社会における問題のありよう
2.7 システムの重層性とイノベーション 
コラム6 変容してこそ持続していく
2.8 構想設計と経営判断 
2.9 構想設計のロードマップ 
2.10 第2章のまとめ 

3.構想なるものを規定する
3.1 当座の設計問題とその自己産出 
3.2 フレームとリフレーミング 
3.3 アーキテクチャとその周辺,プラットフォームへの展開 
コラム7 プラットフォームとディスラプション
3.4 構想と概念 
コラム8 言語化の課題と方法論の限界
3.5 概念と知識 
3.6 記憶のしくみと認識における下地 
3.7 創造性に向けた思考のありようと集団の多様性 
3.8 構想設計における発散と収束 
コラム9 発散と収束の実践についてのさまざまな流儀
3.9 構想設計における探索と深化 
3.10 第3章のまとめ 

4.起点を設ける
4.1 構想設計の起点とその要件 
4.2 価値の広がりとそのモード 
コラム10 マズローの欲求段階説の時代性
4.3 価値の多様性,相対性,可塑性 
4.4 シーンとペルソナの設定 
4.5 ペルソナ設定の潜在的な市場における位置付け 
コラム11 競争優位から共通価値へ
4.6 ステークホルダーの広がりの想定 
4.7 提供すべき価値の系統的な想定 
4.8 収益構造の基本形 
4.9 継続収益モデル 
4.10 第4章のまとめ 

5.論点を広げる
5.1 状況を取り巻く環境とその包括的な認識の課題 
コラム12 視野狭窄とガラパゴス
5.2 状況を俯瞰すること 
コラム13 過去のことや因習にとらわれない思考のあり方
5.3 ループ図による因果関係の把握 
5.4 少子化問題を考えてみる 
5.5 少子化問題をさらに考えてみる 
5.6 幼稚園の経営問題に応用してみる 
5.7 機能構造の展開と実体構造への対応付け 
5.8 変化を構想し,その効果を見定める 
コラム14 型破りだったビジネスモデル
5.9 第5章のまとめ 

6.目標を定める
6.1 目標定義の課題 
6.2 戦略立案の課題 
6.3 市場の広がりと細分化,特異点の普遍性 
6.4 戦略の策定に向けた要因の分析と選択肢の類型 
コラム15 部品メーカーの常識を覆した戦略転換とその持続可能性
6.5 顧客価値の所在 
6.6 ネットワーク外部性とビジネスモデル 
6.7 目標定義におけるゴールと目標の性格付け 
6.8 目標定義の明確化 
6.9 アジャイルな構想設計での目標定義の課題 
6.10 第6章のまとめ 

7.構想を描き出す
7.1 組合せがもたらす斬新さ 
7.2 物理的な過程についての構造の想定 
7.3 構造としてのストーリー 
7.4 代替案を創り出す 
コラム16 モーフォロジーとカスタマイゼーション
7.5 遠くの誰かと話すストーリーの場合 
7.6 音楽を聴くストーリーの場合 
7.7 幼稚園児が自ら育つストーリーの場合 
7.8 ソフトウェアへの要求の分析と定義 
7.9 代替案の構成要素を導くパターンと粒度 
7.10 第7章のまとめ 

8.構想を練り上げる
8.1 コンセプトが伴う脆弱性と収束に向けた課題 
8.2 コンセプトの頑強性と総合評価の課題 
8.3 曖昧性のもとでの絞り込み 
8.4 シーンやペルソナの再定義 
8.5 収益構造とその特定 
コラム17 ビジネスモデルの攻め口と落とし穴
8.6 サブシステムについての技術の調達 
8.7 ソフトウェアというサブシステムとその調達 
コラム18 トランスフォーメーションに潜むディスラプション
8.8 ライフサイクルに向けた事前検討 
8.9 関係性の想定と時間軸に沿った構想 
8.10 第8章のまとめ 

9.構想を展開していく
9.1 構想を展開すること 
9.2 顧客が期待する価値の技術要素への展開 
9.3 顧客が期待する価値と支払う対価との調整 
9.4 多様化における価値のモード 
9.5 本当に新しいことの普及とその課題 
9.6 最小要素システムからの段階的な拡張 
9.7 ビジネスモデルの連鎖と中間製品の品揃えによる分離 
9.8 ソフトウェアの展開とプラットフォーム化 
9.9 ピボットのタイミングとポジショニング 
コラム19 展開における協調と競争のピボット
9.10 第9章のまとめ 

10.学習を促していく
10.1 学習の多義性 
10.2 組織における学習 
10.3 構想の試行とモデル論 
10.4 プロトタイピングの方法と計画 
10.5 スケッチからプロトタイピングへ 
10.6 顧客体験のプロトタイピング 
 10.6.1 感性価値のプロトタイピング 
 10.6.2 ユーザーエクスペリエンスのプロトタイピング 
 10.6.3 ストーリーのプロトタイピング 
コラム20 市場に向けたストーリーのプロトタイピング
10.7 設計の終盤におけるプロトタイピングの課題 
10.8 事業展開の中での学習 
コラム21 最初の一歩が分かれ道
10.9 顧客による決定の合理性と学習への誘導 
コラム22 決定における合理性の限界
10.10 第10章のまとめ 

11.展開を拡大していく
11.1 規模の経済とその深層 
コラム23 互換性と標準化に至る経緯
11.2 範囲の経済とその深層 
11.3 マスカスタマイゼーションとアーキテクチャ 
11.4 アーキテクチャの設計 
11.5 モジュール構造のもとでの共通化方策の策定 
11.6 ソフトウェアのモジュール性とカスタマイゼーション 
11.7 アーキテクチャの組織戦略への組込み 
コラム24 自動車のアーキテクチャとイノベーション
11.8 エコシステムにおけるアーキテクチャの転用 
11.9 構想が循環していく様とその促進 
11.10 第11章のまとめ 

12.プロジェクトを動かしていく
12.1 プロジェクトとしての特質と求められるコンピテンシー 
12.2 プロジェクトマネジメントの基本 
コラム25 マネジメントとリーダーシップ
12.3 チームの構築における課題 
コラム26 創造性と協働を引き出す空間づくり
12.4 タスクの構造化とタイムマネジメントの課題 
12.5 対人関係の構築と集団活動の功罪 
12.6 アジャイルなプロセスの構築 
12.7 構想設計に向けた組織マネジメントの課題 
12.8 具現化設計や社会実装への接続と組織に関する課題 
12.9 ソーシャルイノベーションとその課題 
コラム27 マイクロクレジットの多面性と多様性
12.10 第12章のまとめ 

13.構想を超えていく
13.1 トランジションの深層 
13.2 組織のケイパビリティとその統合管理 
13.3 パラドックスと向かい合う構想設計 
13.4 構想をつないでいく組織マネジメント 
13.5 つながりの輪とデジタルによる加速 
コラム28 デジタルでパラドックスと向かい合う
13.6 モジュール性とアジャイル性の課題 
13.7 従業員エンゲージメントの課題 
コラム29 従業員エンゲージメントと生産性
13.8 組織構造から組織文化に至る課題とリーダーシップ 
13.9 第13章のまとめ 

14.構想設計に挑んでいく
14.1 構想設計を理解していく 
14.2 構想設計を遂行していく 
14.3 構想設計を展開していく 
14.4 構想設計に賭していく 
14.5 第14章のまとめ 

付録A. 来るべきを追及し続ける
A.1 音楽を聴くことの理想へ 
A.2 生演奏から録音という発明へ 
A.3 デバイスの進展と音楽の多様化 
 A.3.1 ラジオ放送 
 A.3.2 Walkman 
 A.3.3 CDプレーヤー 
A.4 より多く,より簡単に,より自由に 
 A.4.1 初期のiPod 
 A.4.2 iPodとiTunes 
 A.4.3 音楽ストリーミング 
A.5 音楽を聴くことのトランジション 

付録B. 構想設計力を育む
B.1 構想設計力とその醸成の課題 
B.2 省察やトランジションに接近するミニコース 
B.3 構想設計力を育むことの課題とプロジェクト型学習 
B.4 構想設計力の素地に導くプロジェクト型学習 
B.5 構想設計力を具体化するプロジェクト型学習 
B.6 構想設計力を総合化するプロジェクト型学習 
B.7 プロジェクト型学習の先にある現実 
B.8 さらにその先にある現実 

付録C. 構想設計を眺望する
C.1 40年来の混沌に至るまでの時代,その先の未来 
コラム30 技術のありようも問われ始めた1950年以降
C.2 イノベーションについてのさまざまな切り口 
C.3 一筋縄にはいかないイノベーションと社会変容という課題 
C.4 経営における組織論と戦略論への問いかけ 
コラム31 組織が発達してきた歴史とその未来
C.5 設計やその周辺への問いかけ 
コラム32 彼我のことについて
C.6 方法論への問いかけ 
C.7 構想を記述する言語という媒体の実態 
C.8 構想力と科学に満たないこその品位 
C.9 移ろいゆく構造と未来の行方 
C.10 付録Cのまとめ 

あとがき
引用・参考文献
索引
人名固有名詞索引

藤田 喜久雄(フジタ キクオ)

大阪大学教授 (大学院工学研究科機械工学専攻)。専門は設計工学。機械やシステムの設計におけるコンピューター利用による自動化や支援に取り組んできたが,昨今では,人工物と社会との関係,技術のあり様なども含め,設計そのものの考え方や方法論に関心が移ってきている。

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