詳解 流れの数値計算 - 有限要素法による非圧縮性流体解析の基礎 -

詳解 流れの数値計算 - 有限要素法による非圧縮性流体解析の基礎 -

流れの問題に適用される差分法と有限要素法の基礎を詳しく解説

ジャンル
発行年月日
2022/01/21
判型
A5 上製
ページ数
252ページ
ISBN
978-4-339-04676-2
詳解 流れの数値計算 - 有限要素法による非圧縮性流体解析の基礎 -
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定価

3,960(本体3,600円+税)

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本書は,主に移流拡散問題や非圧縮性流れの解法として用いられる差分法と有限要素法の基礎について解説したものである。差分法については1章(拡散方程式,移流方程式,移流拡散方程式),有限要素法については2~4章(移流拡散方程式およびNavier–Stokes方程式)で解説している。有限要素法は,差分法や有限体積法と比べて流れの解法として採用されることは少ないが,複雑な形状を有する物体との連成解析等で有用性が高く,その十分な理解は多くの研究分野で役立つはずである。

上記の内容に沿った書籍は既に数多く出版されているが,本書のこだわりは書名に含まれる「詳解」に集約される。本書では,基礎的な内容に限定するかわりに,250頁程度にわたって,それらの内容について深く詳細に解説した。著者は,他の人が書いた本を読む際に,一つでも説明不足のために腑に落ちない箇所があると先を読みたくない性格なので,せめて自分が書いた本ではそうならないように,すべての式の導出を明確に示した。初学者でも大学の初等数学の知識さえ備わっていれば本書の内容を十分に理解できると思うので,著者と同じような傾向がある読者の方にはぜひおすすめしたい。また,著者は20年以上,有限要素法を使って研究を行っているが,その過程で発見した他書には載っていないような内容や,著者が考案した手法も含めている。そのため本書は,有限要素法に習熟している研究者の方々にも,少なくない「新たな気づき」を提供しうるものとなっていることを期待している。

読者の皆様には,できれば実際に手を動かして,掲載されている式を一つひとつ確かめながら本書をお読みいただきたい。「自分が学生だったときに,こんな本に出会えていたら嬉しかった」と思えるような本を世に送り出すことを目指して本書を執筆したので,読後に「なかなかいい本だったな」と思っていただければ望外の喜びである。

本書は,流れを解くための方程式の離散化に用いられる差分法と有限要素法の基礎を解説したものである。ただし,書名の示すとおり,有限要素法の解説に重きを置いている。本書の原型は,著者の研究室に配属された学部4年生が予備知識を必要としないで差分法と有限要素法の基礎を習得できるように作成した講義ノートであり,本書はそれを大幅に加筆したものとなっている。著者が担当する大学の講義で心がけていることは,重要な式を導出する際に,その行間を省くことなく(ごまかすことなく),丁寧に解説することである。それは,理系のどの分野においても「何となくわかった気がする」といった曖昧な知識を溜め込むことが最も危険であることを知っているからである。言うまでもなく,そのような「知識」は研究や開発の現場では何の役にも立たない。

このような考えに基づいて,流れの問題に適用される差分法と有限要素法のなかでも基礎的・基本的な内容を選定し(例えば,非線形問題では非圧縮性流れに限定し),類書で説明が不足している箇所に注意しながら本書を執筆した。本のページをめくってみると式の数が多い印象を受けるかもしれないが,それはこの本が難解であることを意味するものではなく,実際に読み進めていけば,むしろその逆であることがわかるだろう。それは,ある式を用いて他の式を導出する際の過程を,より多くの情報(すなわち,式と式の間を埋める補完的役割を果たす式)を伴って明確に示しているためである。付録では,本文で示したいくつかの重要な式の導出の過程を,複数のページにわたって詳細に記している。式中にベクトルやテンソルを含む場合は,必要に応じて添字を用いた演算法を採用して目的とする式を導いている。

本書のもう一つの特徴は,非圧縮性流れの解法(4章)において,HSMAC法の技術を有限要素法に応用したGSMAC法を,さらに改良した手法について記述している点である。具体的には次のような内容を含んでいる。

1. 9節点四角形要素(あるいはQ2–Q1要素)を用いた離散化
2. 数値積分の結果とほぼ一致する結果を与える要素内積分の簡易計算法
3. 速度と圧力の同時緩和法の収束性を大きく向上させた手法

上記2,3は著者が独自に考案したものであるため,他書では解説されていない。

本書は,離散化法について言えば,1章が差分法,2~4章が有限要素法の構成になっている。有限要素法だけに興味がある読者は2章から読み始めても差し支えないが,できれば1章からじっくりと読み進めていただくと,離散化に対する理解を深めることができる(2章以降も差分法を部分的に用いることも付け加えておく)。1章と2章には,例題の形で1次元問題の数値計算例を多く示した。3章の最後の例題では,2次元問題の数値計算例も示している。それらの結果は簡単なプログラムを組んで計算することにより得られるので,プログラミングの練習も兼ねて確かめてみるとよい。例題で指定した初期条件やパラメータの値を変更して,自分だけの例題を作成してみるのもおもしろいだろう。

本書を手に取った人はご存知と思うが,流れ問題に適用される差分法や有限要素法の基礎を解説した本は既に数多く出版されている。そのため,教科書的な「綺麗にまとまっている」本を書くつもりはなく(既にそのような本はたくさんある),他書が説明を避けているような,根拠が不明瞭と思われる内容も積極的に記した。それらの内容は著者が熟慮の末に導き出したものであるが,著者の浅学のために思い違いをしている箇所があるかもしれない。そのような場合は,読者からのご指摘をいただいて改善していきたいと思っている。

近年は商用コードやオープンソースを用いて計算を行うことが一般的になりつつあり,自らプログラムを作成して計算結果を示すほうが珍しくなってきた。

「商用コードがあるのであれば,なぜ自作のプログラムにこだわるのか」という意見もあるだろう。しかし,世界的にはまだ新規の数値解析手法の開発が盛んに行われており,その成果を掲載する評価の高い海外学術雑誌も数多く挙げることができる。もし,現状が商用コード等であらゆる現象が解ける段階であるのならば,そのような学術雑誌は即廃刊になるはずである。しかし現実はそうではなく,既存の技術では満足に計算することができない物理現象はいまだ数多く存在する。日本の研究者は,概して,海外の著名な研究者が開発した手法を理解して,それをいくらか発展させることには長けているが,本当の意味で「零から一を生み出した」といえるような手法を自ら開発できる人は少ない。それを実現するためには,基礎の徹底した理解がまず必要だと確信している。これから数値計算法を学ぶ若い研究者がいずれ“Made in Japan”と呼べる新手法を開発することができるように,そのための基礎的な能力を身に付けてもらうための書となるように,限られた範囲内ではあるが著者のこれまでの経験と知識を注ぎ込んだ本を執筆したつもりである。

数値流体力学に関連する著者の研究は,慶應義塾大学の棚橋隆彦先生(現名誉教授)の研究室に入ったときから始まった。4年間,この分野に関するご指導をいただいた恩師である棚橋先生をはじめ,有限要素法に関する著者の知識の幅を広げてくださった棚橋研究室の諸氏に心から謝意を表します。また,素稿の段階で,例題のいくつかに取り組んでそれらの解答をチェックしていただいた河野研究室の大学院生の牟禮良晃氏,著者の度重なる日本語の質問に的確に答えていただいた妻の河野彩子,著者の構想(と稚拙なスケッチ)を基に素晴らしいカバーイラストを描いてくださった高宮ミンディ氏に感謝いたします。

そして,本書が企画されてから当初の予定をはるかに越える年月を要することとなったが,その間も多大なご配慮を賜り,原稿の細かい部分まで確認していただいたコロナ社に厚く御礼申し上げます。

2021年11月
河野晴彦

1. 離散化手法の基礎
1.1 1次元拡散方程式の差分法による離散化
 1.1.1 離散化式の導出
 1.1.2 陽解法を適用する場合の解の安定性
 1.1.3 陰解法を適用する場合の解の安定性
 1.1.4 陰解法を適用して数値解を求める手順
1.2 1次元移流方程式の差分法による離散化
 1.2.1 離散化式の導出
 1.2.2 中心差分を適用する場合の解の安定性
 1.2.3 風上差分を適用する場合の解の安定性
1.3 1次元移流拡散方程式の差分法による離散化
 1.3.1 離散化式の導出
 1.3.2 陽解法を適用する場合の解の安定性
1.4 高次精度時間進行法
 1.4.1 Crank-Nicolson法による離散化式の導出
 1.4.2 Crank-Nicolson法に基づく陽的反復法
 1.4.3 1次元拡散方程式への適用
 1.4.4 1次元移流方程式への適用
1.5 1章のまとめ

2. 有限要素法による流れ解析の基礎(1次元)
2.1 重み付き残差法に基づく弱形式の導出
2.2 区分線形補間を適用した定式化
 2.2.1 区分線形補間および離散化式の導出
 2.2.2 行列方程式の形成
 2.2.3 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
 2.2.4 質量行列の集中化
 2.2.5 節点平均と集中化質量行列を用いる離散化との関係
 2.2.6 差分法と有限要素法により導かれる離散化式の比較
2.3 区分2次補間を適用した定式化
 2.3.1 区分2次補間および離散化式の導出
 2.3.2 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
 2.3.3 行列方程式の形成および質量行列の集中化
2.4 Neumann境界条件を含む場合の離散化
 2.4.1 重み付き残差法に基づく離散化式の導出
 2.4.2 偏微分方程式と等価な積分方程式に基づく離散化式の導出
 2.4.3 境界条件を離散化して解く方法
2.5 周期境界条件を適用する場合の離散化
2.6 計算領域が2種類の異なる媒質を含む場合の離散化
2.7 2章のまとめ

3. 有限要素法による流れ解析の基礎(2次元)
3.1 重み付き残差法に基づく弱形式の導出
3.2 双1次補間を適用した定式化
 3.2.1 双1次補間
 3.2.2 離散化式の導出
 3.2.3 計算空間における形状関数の導出
 3.2.4 ヤコビアンの定義および計算
 3.2.5 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
 3.2.6 計算速度対メモリ使用量
3.3 双2次補間を適用した定式化
 3.3.1 離散化式の導出
 3.3.2 計算空間における形状関数の導出
 3.3.3 ヤコビアンの導出
 3.3.4 質量行列,移流行列,拡散行列の計算
3.4 数値積分
3.5 質量行列の集中化
3.6 Neumann境界条件を含む場合の離散化
3.7 3章のまとめ

4. 有限要素法による非圧縮性流れの解法
4.1 基礎方程式
4.2 時間進行法
4.3 有限要素法による運動方程式の離散化
4.4 要素内の積分の簡易計算法
4.5 速度と圧力の同時緩和法
 4.5.1 Jacobi型反復法
 4.5.2 Gauss-Seidel型反復法
 4.5.3 SOR型反復法
4.6 他の計算手法との比較
 4.6.1 SMAC法との比較
 4.6.2 GSMAC法との比較
4.7 数値計算例
 4.7.1 正方形キャビティ内流れ
 4.7.2 2次元円柱まわりの流れ
4.8 4章のまとめ

付録A 離散Fourier変換に関連する諸式の導出
付録B 余弦波の拡散を表す数値解と理論解の比較
付録C 物理空間における4節点四角形要素内の補間について
付録D 9節点四角形要素の形状関数の導出
付録E 非圧縮性流体の基礎方程式の無次元化
付録F 運動方程式の時間に関する離散化式の導出
付録G 運動方程式の離散化に必要な演算法

引用・参考文献
索引

読者モニターレビュー【S.I 様(ご専門:水処理設計)】

本書は、数学が苦手な人に特に薦めたいと感じた。自分も数学が苦手だが、本書に従って式を書きながら追いかけていくことで、数式が持つ意味について理解が深まった。

その理由として、まず途中式が詳しく紹介されていることが挙げられる。本文中で式とそれに対する操作が詳しく解説されていることに加え、付録では使用される関数の導出などが紹介されている。使用する関数の導出から追うことで、なぜその関数を使いたいのか、関数を使う意味などの理解が深まったと思う。

また、式をより深く理解するための例題も用意されている。式の意味を考察したり解析の結果を比較したりする例題を解くことで考察のポイントが分かり、式がもつ特性やその意味について考えることができた。

自分が数学を苦手に思っているのは、式がどのように物理現象を表しているのか想像がつきにくいからである。それに対して本書は、詳細な途中式と考察のポイントを示した例題を用いて橋渡しをしてくれる。数学が苦手な人におすすめしたい一冊である。

読者モニターレビュー【黒田 英夫 様 算生会(ご専門:技術計算)】

差分法から有限要素法までの数式展開を詳しく丁寧に解説されていて、流れ解析の知識や技術を習得するのに役立ちます。特に数式をきちんと理解し身に付けたい人には最適です。他方、数式が苦手な人には少し難解かもしれませんが、挑戦してみる価値はありそうです。差分法は1次元のみで、それを1次元の有限要素法に発展させ、さらに、2次元の有限要素法まで詳述されています。プログラムは、有限要素法の1次元流れ解析のFortranソースがダウンロード提供されています。非圧縮性流体解析に関しては、HSMAC法に速度・圧力の同時緩和法を工夫した独自手法が、検証データと共に説明されています。本分野で読者自身がプログラムを開発していく手助けになると思います。

河野 晴彦(コウノ ハルヒコ)

流体力学の分野では電磁流体流れ,プラズマ・核融合の分野ではシースの数値計算に取り組んでいます。詳細は,以下のリンク先を参照してください。

一般社団法人 日本機械学会 流体工学部門HP 「2021年度 新刊案内」 掲載日:2022/02/24

本書を掲載いただきました。ありがとうございます。

掲載日:2022/02/28

日刊工業新聞広告掲載(2022年2月28日)