制御理論

制御理論

50年以上にわたって研究・教育に携わってきた著者陣の集大成となる,制御理論の入門書

ジャンル
発行年月日
2025/02/20
判型
B5
ページ数
220ページ
ISBN
978-4-339-03247-5
制御理論
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定価

3,960(本体3,600円+税)

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長年,分野を牽引してきた著者陣の豊富な経験に基づく,制御理論の入門書。制御対象の数式モデルの導出と線形時不変システムの動特性に関する記述に力を入れ,制御系設計法の動機・発想・設計に必要な視点をわかりやすく説明した。

本書は,第1著者である児玉が執筆を始め,第2著者の池田が執筆に加わり,そして第3著者の太田が加わって,3名の共著という形で完成したものである。

IFAC(International Federation of Automatic Control,国際自動制御連盟)が1957年に設立されたことが象徴しているように,制御理論の研究は1950年代後半から盛んになった。児玉は1960年頃から,池田は1960年代が終わる頃から,太田は1970年代前半から制御理論の研究に従事し,おのおので,あるいは協力して研究成果を世に出し,制御理論の発展に貢献してきた。そして,制御理論の教育に携わり,後進の育成に努めてきた。本書はそうして得られた著者らの経験に基づいている。

制御理論では動的システムを数式モデルで表し,その性質を調べることによって,システムの動特性の本質をつかみ,制御できることや,できないことを明らかにしている。その中で,著者らは「できる」,「できない」について,「なぜ」ということを強く意識してきた。そうすることにより,できないことについて,無駄な挑戦をする必要がなくなる。そして,シミュレーションや評価計算によって,できることの中でよりよいものをみつけることの意味を理解することができる。

動的システムを数式モデルで表すことは制御理論以外の分野でも一般的に行われている。それらに比べると,制御理論における数式モデルは一般に抽象度が高いと考えられる。他の分野の数式モデルが元の現実システムの変数やパラメータを用いることが多いのに対して,制御理論の数式モデルの変数やパラメータは現実のものから離れることを許している。そのような抽象化によって,解析や設計の自由度を高め,制御系設計を柔軟に行うことができる。ただし,その結果を現実世界で実現する意識をもつことを忘れてはならない。

本書の第一の特徴は,このような認識のもと,制御対象の数式モデルの導出と線形時不変シ
ステムの動特性について,かなり詳しく述べている点である。

また,本書の第二の特徴は,制御系設計法を天下り的に紹介するのではなく,その動機や発想および設計に必要な視点をできるだけわかりやすく述べようとしている点である。

数式モデルについては,実システムの要素とそれらの結合関係から状態方程式と伝達関数を導くことを基本としている。動特性については,時間応答特性,周波数応答特性,安定性にそれぞれ1章ずつを費やしている。

また,制御系の基本であるフィードバック系の性質について,そして伝達関数と状態方程式に基づくフィードバック制御系設計法についてそれぞれ1章ずつを割いている。読者がそれらの設計法の動機や発想を理解すれば,本書で示した例を参考にして,広く応用が可能になるであろうと著者らは期待している。

制御理論に関する書籍が多数ある中,本書の視点が読者の理解を深めることに役立つことを望む。


謝辞

本書の執筆には,執筆者が途中で増えたこと,そしてCOVID-19の流行による打ち合わせの中断などで,10年以上を要しました。その間,辛抱強く脱稿を待って下さったコロナ社の関係の皆様に心より感謝申し上げます。また,編集担当の方には,原稿の記述が不統一なところや論旨のわかりにくいところ等をご指摘いただき,本書をより理解しやすいものにするための多大なる支援をしていただきました。心より御礼申し上げます。

2024年12月
著者一同

1.制御と制御理論
1.1 制御とは
1.2 制御対象
1.3 制御の仕組み
1.4 制御理論
1.5 制御理論の歴史
1.6 回路網理論からの示唆
1.7 ラプラス変換
演習問題

2.システムの数式モデル
2.1 システムと数式モデル
2.2 システムの構成要素
 2.2.1 システムの基本要素
 2.2.2 基本ブロック
2.3 ブロック線図によるシステムの記述
 2.3.1 電気回路
 2.3.2 機械系
 2.3.3 タンク水位系
 2.3.4 平衡状態周りの数式モデル
2.4 入出力微分方程式
2.5 状態方程式
 2.5.1 状態方程式の導出
 2.5.2 状態方程式の変換
2.6 伝達関数
 2.6.1 伝達関数の状態方程式からの導出
 2.6.2 入出力関係から導く伝達関数
 2.6.3 システム記述式と伝達関数
 2.6.4 むだ時間要素の伝達関数
 2.6.5 ブロック線図と伝達関数
 2.6.6 ブロック線図における等価変換
 2.6.7 ブロック線図の結合における注意
演習問題

3.システムの時間応答特性
3.1 状態の応答とシステムモード
 3.1.1 状態方程式の解
 3.1.2 システムモード
 3.1.3 零入力応答と零状態応答におけるシステムモード
3.2 システムモードの安定性
3.3 可制御性と可観測性
3.4 ステップ応答とインパルス応答
3.5 伝達関数とシステムの応答
 3.5.1 有理伝達関数をもつシステムのインパルス応答とステップ応答
 3.5.2 低次系のステップ応答
 3.5.3 ステップ応答に対する指標
 3.5.4 ステップ応答に対する零点の影響
 3.5.5 ステップ応答に対する極の影響
 3.5.6 一般の入力に対する応答
3.6 定常応答と追従性
3.7 状態方程式と伝達関数の関係
 3.7.1 システム固有値と極
 3.7.2 状態方程式の実現
演習問題

4.システムの周波数応答特性
4.1 正弦波入力に対する定常応答
4.2 一般入力と周波数応答
4.3 周波数伝達関数とその表示
 4.3.1 ボード線図
 4.3.2 ベクトル軌跡
4.4 周波数伝達関数と特性近似
演習問題

5.システムの安定性
5.1 システムの安定性について
 5.1.1 内部安定性と入出力安定性
 5.1.2 安定判別法
 5.1.3 むだ時間要素を含むシステムの入出力安定性
5.2 フィードバック制御系の安定性
 5.2.1 フィードバック制御系の構成と内部安定性
 5.2.2 入出力安定性
 5.2.3 ナイキスト安定判別法
 5.2.4 むだ時間要素を含むフィードバック系の入出力安定性
 5.2.5 フィードバック制御系の安定度:ゲイン余裕と位相余裕
 5.2.6 ロバスト安定性
演習問題

6.フィードバック制御系の特性
6.1 フィードバック制御の効果
6.2 感度関数,相補感度関数とループ整形
6.3 フィードバック制御系の過渡特性
6.4 フィードバック制御系の定常特性
 6.4.1 目標値入力に対する定常偏差
 6.4.2 外乱に対する定常特性
演習問題

7.フィードバック制御系の設計:伝達関数に基づく方法
7.1 フィードバック制御系
7.2 根軌跡法
 7.2.1 根軌跡
 7.2.2 根軌跡の特性
 7.2.3 根軌跡法によるコントローラの設計
7.3 周波数応答法
 7.3.1 位相遅れ補償器の設計
 7.3.2 位相進み補償器の設計
7.4 PID補償器の設計
 7.4.1 限界感度法
 7.4.2 ステップ応答に基づく方法
7.5 2自由度制御系
演習問題

8.フィードバック制御系の設計:状態方程式に基づく方法
8.1 状態方程式に基づく設計法の特徴
8.2 状態フィードバック
 8.2.1 極指定法
 8.2.2 最適レギュレータ
8.3 オブザーバ
8.4 積分補償
 8.4.1 積分補償を付加した拡大系
 8.4.2 積分型サーボ系
8.5 2自由度サーボ系
演習問題

引用・参考文献
演習問題解答
索引

読者モニターレビュー【 おみにゃ 様(業界・専門分野:制御工学)】

本書は制御工学の初学の方から実際の実務で使っている方まで幅広く読めるように内容が多岐に渡っている。紙面もB5サイズで大きくて読みやすく、それに伴って図などが豊富な点が嬉しい。また、古典制御、現代制御の両方の内容が記載されているのが特徴である。具代的には、フィードバック制御系の設計において、伝達関数及び状態方程式のそれぞれの手法から導かれている。このとき、数式の導出過程が詳細に書かれているので初学の方でも分かりやすい。また例題や演習問題も付いており理解を深めるのに役立っている。是非、制御工学を勉強する人は書店で実際に見ていただきたい。

読者モニターレビュー【 MDG 様(業界・専門分野:制御工学)】

本書は、制御工学の基礎的な知識を学ぶことができる初心者向けの本である。主に古典制御と現代制御について解説されているが、第2章では非線形システムを線形化する過程が詳述されており、現実のシステムを解析するための重要な手法を学ぶことができる。また、第5章ではロバスト安定性に関する議論があり、設計した制御系が不確かさに対してどれだけ安定性を保てるかを学ぶことができる。そのため、中級者にとっても有益な内容となっている。
各章は非常に事細かに解説されており、特に第7章では、初心者が疑問に感じやすいフィードバック制御系の設計手順が順を追って説明されており、理論だけでなく実際のシステムへの適用方法についても理解を深めることができる。さらに、演習問題が豊富に用意されており、それぞれの問題に対する詳しい解説があるため、体系的に学ぶことができ理論と実践の両面から制御工学を身に付けられる。しかし、第8章では実用上重要な最適レギュレータやオブザーバに関する説明が不十分であり、具体的なシミュレーションの例もないため、その点については物足りなさを感じた。
以上をまとめると、本書は初心者から中級者に向けた制御工学の入門書として優れており、理論をしっかり学び、実際のシステムに応用するための土台を築くことができると考える。

読者モニターレビュー【 あま 様(業界・専門分野:制御)】

本書は、古典制御から現代制御まで幅広く学べる一冊です。まえがきにもあるように、一つ一つの事柄が丁寧に説明されており、途中式も豊富に記載されているため、数学が苦手な方でも理解しやすくなっています。特に第2章では、他の書籍で省略されがちなベクトルのラプラス変換について詳しく解説した後、伝達関数へとつなげて説明している点が非常に良いと感じました。また、第5章では、多くの書籍で一括して扱われる「内部安定性」と「入出力安定性」が、それぞれ独立した項目として取り上げられ、既約分解の観点から詳しく解説されている点が印象的です。さらに、図が多用されており、視覚的に理解しやすい構成になっています。ただし、一部の内容は定性的な説明にとどまっており、数式や図による補足があれば、より分かりやすくなったと感じました。
総じて、制御工学の理解を深めたい初心者の方におすすめの一冊です。本書の購入を検討されている方の参考になれば幸いです。

読者モニターレビュー【たかや 様(業界・専門分野:制御工学(産業応用))】

本書では,古典制御から現代制御までの制御工学に関する基礎的な知識を学ぶことができる.特に,フィードバック制御系の設計として,第7章:伝達関数に基づく方法,第8章:状態方程式に基づく方法,とそれぞれで章を割かれており,自身が取り扱う対象に応じて本書を参考にし,それぞれの方法ごとに学ぶことができるのは,非常に分かりやすいと思われる.また,本書内では式の導出が丁寧に実施されていることに加えて,図も豊富に記載されており,視覚的なイメージを持ちながら学ぶことができると感じられた.各章には演習問題が設けられており,その解答も丁寧に書かれているため,内容を振り返りつつ演習問題を解き,解答を参照することで,制御工学の理解をさらに深めることができると思われる.

レビュー,書籍紹介・書評掲載情報一覧

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