制御系設計論
古典制御と現代制御の制御系設計論に加え,ロバスト制御やディジタル制御の基礎理論を解説
- ジャンル
- 発行年月日
- 2022/01/11
- 判型
- A5
- ページ数
- 240ページ
- ISBN
- 978-4-339-03237-6
- 内容紹介
- まえがき
- 目次
- レビュー
- 書籍紹介・書評掲載情報
- 広告掲載情報
本書は,モノの動きをデザインするための方法をまとめた制御工学の教科書である。制御工学のスペシャリストとしての素養を身につけたい,断片的に知っている制御工学の知識を整理したい,辞書的な書籍を手元においておきたい,そんな人におすすめの一冊である。
ロボットを賢く動かしたい,機械・電気システムを安心安全に使えるようにしたい,そういった要求に応えるためには,制御システムを適切に設計する方法を知っておく必要がある。しかし,設計方法は一通りではない。制御対象のモデル表現として,伝達関数と状態方程式のどちらを選ぶかや,制御器の構造をどのように選ぶか,周波数領域と時間領域のどちらに注目して設計するかなど,多くの選択肢がある。そのため,直面する制御問題に対してベストな方法を選択できるように,さまざまな手法を学習し,それらの長短を理解しておくことが肝要である。
本書では,「制御系設計」をメインテーマとして,高専・大学・大学院で学習するさまざまな設計論を解説している。本書の構成は,以下の通りである。第1章では,「制御系設計論」というタイトルの意味を解きほぐすところから始め,制御系設計の勘所を説明する。第2章~第5章では,制御系設計で必要となるモデリングと制御系解析の重要な項目をまとめている。第6章では,制御系設計の仕様を整理しており,それに続く第7章~第14章では,伝達関数をベースとした古典制御論,状態方程式をベースとした現代制御論,ロバスト制御やディジタル制御の基礎理論を紹介している。
本書の特徴をいくつか紹介しておく。まず,読者が制御系設計論を体験できるように,例題をできるだけ取り入れるようにした。それから,対象を1入力1出力系に限定し,記述をすっきりさせることで,制御系設計のエッセンスを伝えるようにした。さらに,制御系設計手法の一つとして強化学習を紹介している点も新しい試みである。また,巻末には「Laplace変換」や「行列とベクトル」の基本性質のまとめや,制御工学の理解を深めるために有効な参考文献も記載してあるので,参考にしてほしい。なお,本書の章末問題の詳細な解答や補助教材をサポートページで公開している。
「対象物の動きをデザインしたい」この要請に応えるキーテクノロジーが制御工学である。制御工学の歴史を簡単に振り返ると,まず,1950年代に伝達関数をベースとする古典制御論が整備された。そして,1960年頃に状態方程式をベースとする現代制御論が登場し,1980年頃から,古典制御論と現代制御論の強みを生かしたロバスト制御論が整備されていった。現在では,幅広い分野の対象について,制御論が議論されており,制御工学は進化し続けている。
制御工学は,対象物のモデリング,解析,そして設計からなる。その中で「動きのデザイン」に直結するのが制御系設計であり,その方法はさまざまである。例えば,制御対象のモデル表現として伝達関数と状態方程式のどちらを選ぶかや,制御器の構造をどのように選ぶか,設計において周波数領域と時間領域のどちらに注目するかなど,多くの選択肢がある。直面している制御問題に対して,ベストな方法を選択できることが望ましいが,そのためには,さまざまな手法の長短を理解しておく必要がある。
本書では,「制御系設計」をメインテーマとして,古典制御と現代制御の制御系設計論に加えて,ロバスト制御やディジタル制御の基礎理論を解説している。本書の構成は,図のようになっている。第1章では制御系設計の「気持ち」と勘所を述べ,第2章~第5章では,モデリングと制御系解析の重要な項目をまとめる。第6章では,制御系の設計仕様を整理し,それに続く第7章~第14章では,さまざまな制御系設計手法を説明する。
本書の特徴をいくつか紹介しておく。まず,制御系設計の例や例題をできるだけ多く取り入れるようにした。それから,対象を1入力1出力システムに限定し,記述をすっきりさせることで,制御系設計のエッセンスを伝えるようにした。さらに,人物名やそれに由来する用語は,カタカナ表記のゆれを防ぐため,英語表記に統一した。
本書を執筆するにあたり著者が痛感したことは,制御工学の奥深さである。勉強するたびに新しい発見がある。その制御工学のすべてを限られたページ数で伝えるというのは,無理な話である。本書では,制御系設計手法の紹介に注力したが,すべてをカバーしきれていない。厳密さを欠いている部分も多々ある。是非,巻末の文献をはじめ,ほかの書籍を参考にしながら,制御工学に対する理解を深めていただきたい。なお,本書の章末問題の解答や補足内容,補助教材をサポートページ
https://y373.sakura.ne.jp/minami/csd
で公開している。ご活用いただければ幸いである。
本書をまとめるにあたり,さまざまな方にお世話になった。日頃からお世話になっている大阪大学の大須賀公一先生をはじめとする「チームコントロール」の先生方にお礼申し上げる。また,原稿をチェックしていただいた熊本大学の岡島寛先生や大阪大学石川・南研究室の鈴木朱羅先生,高木勇樹君,吉田侑史君,荻尾優吾君,宮下和大君,田中健太君に感謝の意を表したい。最後に,自宅で執筆する著者らをあたたかく見守ってくれた妻と娘に感謝する。
2021年11月
南裕樹,石川将人
1. 制御系設計論とは
1.1 どのような学問か
1.1.1 動詞の学問
1.1.2 制御系設計論の「気持ち」
1.2 制御系設計論の勘所
1.2.1 ダイナミクス-システムの「記憶」-
1.2.2 因果性
1.2.3 フィードバック
1.2.4 不確実性
1.2.5 トレードオフ
章末問題
2. 動的システムの表現
2.1 常微分方程式
2.1.1 常微分方程式によるモデリング
2.1.2 常微分方程式を「解く」とは
2.2 状態空間表現
2.2.1 常微分方程式から状態方程式へ
2.2.2 状態方程式の一般形
2.3 伝達関数表現
2.3.1 常微分方程式から伝達関数へ
2.3.2 システムの結合とブロック線図
2.3.3 状態空間表現と伝達関数表現の相互変換
2.4 非線形状態方程式と近似線形化
章末問題
3. 線形システムの特性
3.1 伝達関数の時間応答
3.1.1 インパルス応答
3.1.2 ステップ応答
3.1.3 1次系の時間応答
3.1.4 2次系の時間応答
3.2 状態方程式の時間応答
3.2.1 状態方程式の解と遷移行列
3.2.2 不変部分空間
3.2.3 2次系の固有値と解の振る舞い
3.3 周波数特性の解析
3.3.1 正弦波応答
3.3.2 周波数応答
3.3.3 基本的なシステムの周波数応答
章末問題
4. 線形システムの構造
4.1 可制御性(可安定性)
4.2 可観測性(可検出性)と双対性
4.3 等価変換
4.4 可制御正準形と可観測正準形
4.5 状態空間の構造とKalmanの正準分解
章末問題
5. 安定性
5.1 安定性の定義
5.1.1 (伝達関数の)入出力安定性
5.1.2 (状態方程式の)内部安定性
5.2 Routh-Hurwitzの安定判別法
5.3 Lyapunovの安定判別法
5.4 フィードバック系の内部安定性
5.4.1 フィードバック結合と内部安定性
5.4.2 Nyquistの安定判別法
5.4.3 安定余裕
章末問題
6. 制御系の設計仕様
6.1 制御系の性能評価指標
6.1.1 時間領域の指標
6.1.2 周波数領域の指標
6.1.3 s領域の指標
6.2 閉ループ系と開ループ系の設計仕様の関係
6.3 各特性に関する設計仕様
6.3.1 過渡特性に関する設計仕様
6.3.2 定常特性に関する設計仕様
6.4 評価関数
章末問題
7. PID制御
7.1 PID制御則
7.1.1 P制御
7.1.2 PI制御
7.1.3 PID制御
7.2 限界感度法
7.3 ステップ応答法
7.4 モデルマッチング法
7.5 2自由度制御系
章末問題
8. 状態フィードバック制御
8.1 状態フィードバック制御則
8.2 極配置法
8.3 Ackermannの極配置アルゴリズム
章末問題
9. 最適制御
9.1 線形システムの最適制御問題
9.2 動的計画法
9.3 最適レギュレータ
9.4 Riccati方程式の数値解法
9.5 最適レギュレータのロバスト性
章末問題
10. サーボ系
10.1 フィードフォワードによる目標値追従制御
10.2 内部モデル原理
10.3 積分型サーボ系
10.4 最適サーボ系
章末問題
11. 状態推定
11.1 同一次元オブザーバ
11.2 閉ループ系の解析
11.3 最小次元オブザーバ
11.4 線形関数オブザーバ
11.5 最適オブザーバ
章末問題
12. ループ整形法
12.1 ループ整形の考え方
12.2 PID制御
12.2.1 PI制御
12.2.2 PD制御
12.3 位相遅れ・進み補償
12.3.1 位相遅れ補償
12.3.2 位相進み補償
章末問題
13. ロバスト制御
13.1 不確かさの記述
13.2 H_{∞}ノルムとスモールゲイン定理
13.3 ロバスト安定化問題
13.4 混合感度問題
13.5 安定化制御器のパラメータ化
13.6 一般化制御対象とH_{∞}制御問題
章末問題
14. 離散時間システムの制御
14.1 制御器のディジタル実装
14.2 Z変換とパルス伝達関数
14.3 連続時間システムの離散化
14.3.1 0次ホールドによる離散化
14.3.2 双一次変換による離散化
14.4 安定性と状態フィードバック制御
14.5 最適制御
14.6 強化学習
章末問題
付録
引用・参考文献
索引
読者モニターレビュー【 けんぴまる 様(業界・専門分野:鉄鋼業界・制御設計)】
本書は制御工学初学者から大学などで一度は学んだことのある者まで幅広く網羅されていると感じました。
というのも本書のまえがき欄に本書の構成について記載があり、
①標準的な学習の流れ②発展的な内容への挑戦
と読者のレベルに応じた2つのフローに沿って学習することができるからです。
これにより初学者は無理なく体系的に学習を進めることができ、
一方で習熟者も発展的な内容の学習を中心に効率的な学習が可能となります。
以上の点から「制御工学の基礎から応用まで学びたい!」という方に手にとっていただきたい一冊となっています。
読者モニターレビュー【北岡 知大 様 トヨタ自動車(ご専門:自動車、制御工学)】
まるで大学時代のノートそのものを見返しているかのような感覚になった.
本書に記載された内容をマスターすれば制御系設計の基礎を十二分に身につけられると感じた.以下に私が感じた本書の良い点・悪い点をまとめた.
よかった点
・制御系設計に必要な知識を網羅
→この本をマスターすれば制御系設計に必要な知識を一通り身につけることができる.システムの表現兵法からコントローラの設計まで幅広い内容をカバー
・グラフやイラストが豊富で読み進めやすい
→内容は決して優しくないが,ほぼ全てのページに記載されている豊富なイラストやグラフが理解を助けてくれる.
・サポートページのコンテンツが豊富
→webのサポートページには,演習問題の解答解説だけでなく,著者らによる解説動画や本書のグラフ作成時のコードが公開されており,自ら手を動かしながら理解を深めたい人をサポートする思いが伝わる.
悪かった点
・初学者にはやや難しい内容かもしれない.
→制御系設計論という学問の背景や制御工学の基礎的な知識を抑えているものの読者の中には内容が難しいと感じる人もいるかもしれないと感じた.まえがきにも記載されているように,本書だけではなく,必要に応じて他の書籍で知識をサポートしながら読み進める必要がある.ただし,サポートページには丁寧な解説や補足もあるため,自ら積極的に学ぶには,サポート環境も充実した最高の一冊.
読者モニターレビュー【村野 健一 様 村野D&D技術士事務所(ご専門:振動制御、ロボット)】
本書は、対象のシステムとしての、表現(2章 動的システムの表現)、特性(3章 線形システムの特性)、構造(4章 線形システムの構造)を示していき、安定性について解説(5章 安定性)をしたのち、制御系の設計仕様を時間領域と周波数領域での指標と、目標の特性についての一般論を述べている。そして7章から14章にて古典制御(PID)から現代制御理論(状態フィードバック、最適制御、状態推定)、さらにロバスト制御、離散系の考え方を解説をしている。
読者は、初学者でも教科書としてなら問題ないが、場合によって参考文献に挙げられている図書を併用するのが早道かもしれない。付録を入れて224ページの図書であり、ページ数に対しての内容は盛りだくさんの感があるので、現代制御、ロバスト制御などは別途専門解説の図書の助けがあった方が良い。
教科書的な使い方ではなく、「設計論」として考えると、設計者は、制御系は対象システムの特性が明確になって、その表現をどうするのか、あいまいなパラメータがないのか、安定性が補償されるのか、非線形性はどうか などを議論し、それに応じた適切な制御系を設計していくのであるが、対象の特性と制御系の相性といった視点では本書は構成されていない。例えば古典制御と現代制御の得失を示すような解説があっても良かったのではないかと思う。
ただ、たぶんそのような観点で踏み込んで考える人や、Z世代の人たちの助けとなるのはサポートページである。python、matlabのコードが、演習問題、例題について公開されている。対象のシステムが表現されていれば、簡単に制御性能を試すことが可能であり、さらに実際に設計する立場や、論文を書く段階になる学生などには重宝すると思われる。もちろん教科書としての使い方で、演習問題を実習させていく際にはサポートページが非常に役に立つことは言うまでもない。
amazonレビュー
MathWorks様にプロモーション用ページを制作いただきました。
-
掲載日:2023/11/13
-
掲載日:2022/11/14
-
掲載日:2022/10/06
-
掲載日:2022/07/11
-
掲載日:2022/03/09
-
掲載日:2022/02/01
-
掲載日:2021/12/13