古典制御論

古典制御論

本書は,株式会社昭晃堂から発行されていた「古典制御論」(ISBN978-4-7856-9070-0)を,コロナ社が継続して発行したものである。

ジャンル
発行年月日
2014/09/30
判型
A5
ページ数
288ページ
ISBN
978-4-339-03211-6
古典制御論
在庫あり

定価

3,300(本体3,000円+税)

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本書は,株式会社昭晃堂から発行されていた「古典制御論」(ISBN978-4-7856-9070-0)を,コロナ社が継続して発行したものである。

修正版まえがき

本書の出版から2年半が経過したが,この間の講義の経験などからぜひ改善したい点がいくつか出てきた. そこで今回,これまでに見つかった校正ミスの訂正に加えて,本書の内容をより分かりやすくするために以下のような修正を行った. これらの内主要なものはつぎの(1)~(6)である.

(1) ラプラス変換の基本的性質P11の表2. 2への追加とその説明,および関連する演習問題2. 10と略解の追加(pp. 24,28,44,258)

(2) 位相進み要素,位相遅れ要素の表現式の変更とその説明(pp. 226-227,231-232)

(3) サーボ系の設計に関する例8. 1,8. 2,8. 3,8. 4の説明,数値,図などの変更(pp. 224-226,228-230,232-234,234-235)

(4) ブロック線図の描き方に関する説明と図3. 29(a)の追加,および関連する演習問題3. 6とその略解の修正(pp. 77-79,90,259)

(5) 安定性の定義の説明変更(pp. 136)

(6) 力学系,電気系,および熱系の例題における特性導出法の説明追加(pp. 46,52-53,54,58-59,67)

これら以外にも,以下のような修正を行っている

(7) ラプラス変換の基本的性質P1およびP5の説明変更(pp. 23,25)

(8) デシベル値計算に関する表4. 1の備考の修正とそれに伴う本文の修正(pp. 97-98)

(9) ボード線図におけるゲイン余裕と位相余裕の説明の変更(pp. 176)

(10) 図3. 1の修正,表4. 3,6. 1の説明文修正と追加(pp. 46,125-126,197)

(11) 本文説明のこまかな変更,脚注追加,および索引修正(pp. 12,23,24,25,31,49,53,54,57,59,60-61,65,71-72,86,87,92,97,103,120,133,140,196,202,204,222,240,241,274-276)

(12) 演習問題2. 9,4. 1,4. 2,8. 1の修正,および演習問題2. 9,3. 5,3. 7,4. 1,4. 2,7. 3の略解の修正(pp. 44,132-133,253,258-262,271)

なお校正ミスに関しては,京都大学助教授横小路泰義氏から多くのご指摘をいただいた. 記して感謝の意を表す.

2006年11月
著者しるす


まえがき

各種の工学システムを制御するための理論であるいわゆる制御理論のうちで,伝達関数という周波数領域での概念に基づいて体系化されたものを古典制御理論と呼ぶ. 本書の目的はこの古典制御理論の基礎をわかりやすく体系的に講述することである.

まず制御理論とはどのようなものであるかについて簡単に述べよう. 人類は文明の発達とともに種々の装置を作ってきた. 身の回りを見渡しても,飛行機,鉄道,自動車,ロケット,洗濯機,冷蔵庫,炊飯器,テープレコーダ,複写機,自動化製造ライン,ロボット,化学プラント,など枚挙にいとまがない. これらにはなんらかの制御機能がついており,それなしでは装置としての機能を十分に発揮できないという場合がほとんどである. このような制御機能がはっきりとした形で装備され,装置がその機能を発揮できるためには制御系としての十分な検討が必要であることが一般に認識されるようになったのは,18世紀後半の産業革命期に開発された蒸気機関の調速器においてであると考えられる. これを契機として,サーボ機構などの制御系の研究が盛んとなり,その解析や設計のための方法論の集積がしだいに制御理論(ないし制御工学)として整備されてきた.

制御理論はおおまかに,古典制御理論と現代制御理論に分けられる. 古典制御理論は伝達関数という周波数領域におけるシステムの表現手法に基づいており,1870年頃から1950年頃までの間に一応の体系化が行われたものである. 他方,現代制御理論は,状態方程式という時間領域におけるシステムの表現手法に基づいており,1960年頃から新たに展開されてきた制御系設計の方法論である. 現代制御理論は数学的色彩が強く,実用化が難しいと言われてきたが,近年のディジタル計算機技術の発展にともなって,その実用的価値が認められるようになった. しかしながら,古典制御理論は,現在でも多くの制御系の解析や設計において用いられており,実用面において重要な役割を果たしている. また,現代制御理論を用いる場合でも,周波数領域における制御特性の検討において古典制御理論の種々の概念が役立っている.

冒頭にも述べたように,本書の目的はこのような古典制御理論の最も基礎となる事項を厳選して,初心者にわかりやすく,また体系的に講述することである. そのために,重要な概念や結果を取り上げる場合には,その物理的および直感的な意味あいの説明,ならびにそのような結果がどうして成立するのかという根拠の説明をていねいに行うとともに,できる限り数値例を挙げて,それらの理解が容易となるようにつとめた. また各章,各節で取り上げた内容の相互関係についてもできる限り説明を加えることにした. これらによって古典制御理論体系の論理的な透明性をなるべく保つように配慮したつもりである. さらに他の数学などの参考書を見なくても読み進めるように,本書で必要となる数学的な事項の要点を本書に含めるようにした.

さらに以下のような私なりの工夫も加えている. 実は学生時代以来,古典制御理論を学習した時に,いくつか混乱した点があったことを記憶している. またその後講義をするようになってからも気になる点や説明が明快で、ないと感じる点がいくつかあった. 本書では,これらの点について以下のようにして,わかりやすくなるように配慮した.

(1) 零点あり2次要素を基本的要素のーつとして取り上げた. これによって,2次系の取り扱いに一貫性が得られるとともに,高次の系が基本的要素の組み合わせで表現できることをより明確に表現できるようになった.
(2) 周波数伝達特性の位相の多価性について,簡明な説明を行った.
(3) 位相進み,位相遅れ補償による制御系の設計が容易に行えるように,位相進み要素および位相遅れ要素のわかりよいパラメータ表現を採用した.
(4) 根軌跡法において,一巡伝達関数の形と根軌跡の形状の関係をより明確に説明し,根軌跡の形状分類をより体系的に理解できるようにした.
(5) むだ時間要素を含む制御系について,安定性の定義やナイキストの安定判別法がどこまで有効なのかを理解しやすくするために,むだ時間要素は例外的に扱える要素であるとして,話の主な流れとは少し区別して記述することにした.
(6) これまでのほとんどの教科書ではラウスの安定判別法およびフルピッツの安定判別法の証明がまったく省略されていて,なぜこの方法が得られるのか想像もつかなかった. 本書では最近発表されたより簡単な証明の成果をもとに,わかりやすい証明を加えた. またラウスの安定判別法においてラウス表の第1列の要素が0となる場合の扱いが不明確であった. これを明確にしその根拠も与えた. さらにその記述法もわかりよいように工夫を加えた.
(7) ボードの定理の証明をわかりやすい形で与えた.

これら以外にもこまかな点になるが
(8) 単位インパルス関数の物理的意味と,そのラプラス変換における扱いをていねいに説明した. これによってラプラス変換における初期値の取扱いや制御系のインパルス応答の理解が容易になると考える.
(9) 角度を表す変数の単位がラジアン(rad)なのか度(deg)なのかを明確にするために,本書ではラジアンを基本とし,ラジアン表示の変数φに対応する度表示の変数には下付き添字degを付けてφ_degとすることにした.
(10) 制御系設計のための様々な評価指標を一つの章にまとめるなど,内容の主な流れができるだけ整理された形になるように配慮した.

なお,これらの事項の多くは本書で初めて行われたというものではなく他の教科書にも散見されるが,本書ではそれらをよりわかりやすくなるように改善したつもりである. 筆者は,これらの工夫によって読者がより容易に古典制御理論を一貫した体系として理解できるようになったのではないかと考えている.

本書は,著者が京都大学工学部で主として機械系の学部3年の学生を対象として講義してきた内容をまとめたものであり,大学学部の第3学年,第4学年の学生用の教科書としての性格をもっている. しかし,本書で取り上げた事項はすべてていねいに説明してあるので,古典制御理論を応用しようとする現場の技術者が独習したり,復習したりするための参考書としても,適していると考えている. なお,第2. 5節,第4. 2. 2項,第5. 2. 2項,第5. 3. 2項および第5. 3. 3項は付録として扱ってもよい内容であり,初めて制御工学を学習される読者は省略して先に進まれでも差し支えない. また本書は,著者らがやはり昭晃堂から出版した「現代制御論」(吉川恒夫,井村順一著,1994)の前段階の内容であることを意識してまとめている. この本を終えた読者の方々には,次のステップとして「現代制御論」に進まれることをお勧めする.

出版にあたっては多くの方々にお世話になった. 東京工業大学・井村順一助教授ならびに神戸大学・大須賀公一教授には原稿を読んでいただき,多くの貴重なコメントを寄せていただいた. 京都大学・片山徹教授にはラウスの安定判別法の証明に関する文献27)をご教示いただいた. 研究室の大学院学生・菊植亮君(現在名古屋工業大学助手)および渡辺忠幸君には,図面の作成などでご協力いただいた. また講義を受けた学生諸君には,まちがいの多い講義プリントでずいぶんご迷惑をおかけしたことと思う. この場を借りて心からお札を申し上げる.

2004年1月
著者


本書を発行していただいていた昭晃堂が2014年6月に解散したことに伴い,この度,コロナ社より継続出版していただくことになった. 昭晃堂において2004年3月の1刷発行から11刷までに至ったが,引き続き多くの方にご拝読いただき役に立つならば,著者としてこの上ない喜びである.

2014年8月
著者

1.古典制御論序説
1.1 制御の概念と適用例
1.2 制御工学とは
1.3 制御系の基本構成
1.4 本書の内容
演習問題

2.ラプラス変換
2.1 ラプラス変換の意義
2.2 ラプラス変換の定義
 2.2.1 複素数と複素指数関数
 2.2.2 単位インパルス関数
 2.2.3 ラプラス変換の定義,公式,性質
2.3 逆ラプラス変換
2.4 微分方程式の解法への応用
2.5 ラプラス変換の物理的意味
演習問題

3.伝達関数
3.1 システム特性の伝達関数表現
3.2 基本的な要素の特性と伝達関数
 3.2.1 1次遅れ要素
 3.2.2 積分要素
 3.2.3 2次遅れ要素
 3.2.4 零点あり2次要素
 3.2.5 比例要素
 3.2.6 微分要素
 3.2.7 無駄時間要素
3.3 ブロック線図
3.4 高次系の特性
演習問題

4.周波数応答特性
4.1 周波数応答と周波数伝達関数
4.2 周波数特性の表現法
 4.2.1 ボード線図
 4.2.2 ボードの定理の証明と補足
 4.2.3 ベクトル軌跡
 4.2.4 ゲイン位相線図
4.3 閉ループ系の周波数特性
 4.3.1 M-α線図
 4.3.2 ニコルス線図
演習問題

5.安定性
5.1 安定性の定義
5.2 代数的安定判別法
 5.2.1 ラウスの安定判別法
 5.2.2 ラウスの安定判別法の証明と補足
 5.2.3 フルビッツの安定判別法
 5.2.4 極零相殺と安定化
5.3 フィードバック制御系の安定判別法
 5.3.1 ナイキストの安定判別法
 5.3.2 ナイキストの安定判別法の証明
 5.3.3 むだ時間要素を含むシステムへの適用
5.4 フィードバック制御系の安定度評価
演習問題

6.根軌跡法
6.1 根軌跡の概念と定式化
6.2 ゲイン条件と位相条件
6.3 根軌跡の性質
6.4 根軌跡の形状分類
演習問題

7.制御系の評価指数
7.1 過渡特性
 7.1.1 時間領域の指数
 7.1.2 周波数領域の指数
 7.1.3 指標間の関係
 7.1.4 代表極
7.2 定常特性
演習問題

8.制御系の設計
8.1 制御系の分類
8.2 サーボ系
 8.2.1 ゲイン調整
 8.2.2 位相進み補償
 8.2.3 位相遅れ補償
 8.2.4 位相進み遅れ補償
 8.2.5 フィードバック補償
8.3 プロセス制御系
 8.3.1 P制御
 8.3.2 PI制御
 8.3.3 PD制御
 8.3.4 PID制御
 8.3.5 PIDゲインの選定
8.4 高度化設計法
 8.4.1 2自由度制御系
 8.4.2 感度関数と相補感度関数
 8.4.3 I+PD制御
演習問題

参考文献
演習問題略解
索引

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