幾何光学的回折理論

幾何光学的回折理論

電磁波解析手法の一つである幾何光学的回折理論の考え方、使い方について応用例を含めて解説している。

ジャンル
発行年月日
2015/04/30
判型
A5
ページ数
208ページ
ISBN
978-4-339-00877-7
幾何光学的回折理論
在庫あり
2営業日以内に出荷致します。

定価

3,080(本体2,800円+税)

カートに入れる

電子版を購入

購入案内

  • 内容紹介
  • 目次
  • 著者紹介
  • 書籍紹介・書評掲載情報
  • 広告掲載情報

電磁波解析手法の一つである幾何光学的回折理論の考え方,使い方について応用例を含めて解説している。本理論は無線通信などの高周波漸近解析手法の一つで,電磁波に関する物理的な諸法則・原理と巧みな数学的取扱いにより導かれる。

1序論
1.1 光学理論
1.2 波動の散乱理論
1.3 幾何光学的回折理論の提唱
1.4 幾何光学的回折理論の展開
1.5 本書の構成

2漸近展開
2.1 関数の級数展開
2.2 部分積分による漸近展開
2.3 鞍部点法による漸近展開
2.3.1 鞍部点
2.3.2 ハンケル関数の漸近解
2.4 まとめ

3幾何光学(GO)
3.1 波源の表現
3.1.1 線波源からの放射
3.1.2 点波源からの放射
3.2 ルーネバーグ・クライン級数展開
3.3 幾何光学波の反射・透過
3.3.1 フェルマーの原理
3.3.2 2 媒質平面境界の場合
3.3.3 2 媒質境界面が曲率をもつ場合
3.4 まとめ

4物理光学(PO)
4.1 キルヒホッフ・ホイヘンスの積分表示
4.2 等価定理
4.3 キルヒホッフ(物理光学)近似
4.4 まとめ

5幾何光学的回折理論(エッジ回折)
5.1 規範問題:導体楔による散乱
5.1.1 線波源に対する散乱界
5.1.2 高周波近似界の導出
5.1.3 エッジ回折波
5.1.4 点波源に対する散乱界
5.2 エッジ回折波の表現の一般化
5.2.1 ケラーの仮定
5.2.2 多重回折波の表現
5.3 導体以外のウェッジによる回折
5.4 まとめ

6幾何光学的回折理論(表面回折)
6.1 規範問題:導体円筒による散乱
6.1.1 高周波近似界の導出
6.1.2 クリーピング波
6.2 クリーピング波の表現の一般化
6.3 まとめ

7GTDの問題点とその拡張
7.1 回折係数の発散
7.1.1 一様漸近表現の利用
7.1.2 UAT(一様漸近回折理論)
7.1.3 UTD(一様幾何光学的回折理論)
7.1.4 その他の一様漸近表現
7.2 振幅の発散
7.2.1 焦線近くの光線
7.2.2 等価端部電磁流法
7.3 高次の回折波(スロープ回折波)
7.4 まとめ

8GTDの応用例
8.1 導体ストリップによる散乱問題
8.1.1 散乱界の定式化
8.1.2 導体ストリップの全散乱幅
8.2 厚みのある半平板による回折
8.3 多角柱による散乱
8.4 円柱による散乱
8.4.1 クリーピング波による結果
8.4.2 多角形近似による円筒散乱
8.5 3 次元多面体による散乱
8.6 導波・共振構造の取扱い
8.6.1 光線・導波管モード変換
8.6.2 方形溝による散乱
8.6.3 有限長平行平板導波管キャビティによる散乱
8.7 ストリートセル伝搬予測
8.8 まとめ

付録
A.1 デルタ関数
A.1.1 超関数の定義
A.1.2 超関数のフーリエ変換
A.2 幾何光学波面の近軸近似
A.2.1 曲線の曲率半径
A.2.2 波面の近軸近似の方程式
A.3 キルヒホッフ近似積分の漸近評価
A.3.1 積分(式(4.23))の漸近評価
A.3.2 積分(式(4.33))の漸近評価
A.3.3 積分(式(4.40))の漸近評価
A.3.4 積分(式(4.46))の漸近評価
A.4 ダイアド計算
引用・参考文献
索引

「電子情報通信学会誌」書評掲載 掲載日:2017/08/02
「電子情報通信学会誌」2016年3月号269頁に書評が掲載されました。
掲載箇所PDF

電子情報通信学会誌(平成28年3月1日発行) 掲載日:2016/03/03


掲載日:2023/06/01

電子情報通信学会誌2023年6月号

 本書の内容は電磁界理論と光学の橋渡しをする理論に関するものである。電磁界の周波数が高くなると、電磁波の直進性が強くなり、粒子のように直進する光の性質(光線)が目立ってくる。このような高周波では、低周波で用いられる電磁界の数値解法は計算コストの観点から非効率的である。本書のタイトルの幾何光学的回折理論は高周波における電磁界問題の近似解法として非常に有用な手法である。「幾何光学的」というのは光の光線としての性質、「回折」は物体の裏側に電磁界が回り込む性質(光学では無視されることが多い)を意味しており、光線においても波の性質を考えようという意味である。本書では高周波電磁界を光線として近似し、さらに回折も考慮する幾何光学的回折理論について歴史的背景、数学的手法も含めてわかりやすく説明されている。

 幾何光学的回折理論を学ぶ意義は上記の高周波近似解法だけにとどまらない。マクスウェルが完成させた電磁波の基礎方程式(マクスウェル方程式)を解くと、電磁波の存在をはじめとして様々な電磁波の性質が導かれる。電磁波の速度は当時も知られていた光の速度(光速)と一致することから、マクスウェルは光もマクスウェル方程式から導出される電磁波の一部であると予言したことは有名である。もともと光は人間の目で見えることから、電磁波の発見より以前から知られており、その性質の研究や応用は進んでいた。光は電磁波の一部である以上、マクスウェルの方程式から光の性質を数学的に導くことができ、本書の前半ではその導出について歴史的な流れを交えながら説明されている。本書はこのように、マクスウェルの方程式と光学の橋渡しをする理論をわかりやすく丁寧に説明しており、電磁界理論、光学の両研究者にとって有益な一冊である。

 本書の章構成は以下のようになる。2章で数学的手法である漸近展開と鞍部点法について詳しく説明している。3章で幾何光学(GO)について述べ、4章で物理光学(PO)について述べている。5章・6章で2章の定理を用いて幾何光学的回折理論(GTD)の回折係数を導出している。7章でGTDの欠点とその拡張としてUAT, UTDについて説明している。8章でGTDの応用例について、いくつかの簡単な例題から電波伝搬への応用について説明している。


紹介者: 平野拓一 正員:シニア会員 東京工業大学大学院 理工学研究科国際開発工学専攻


電子情報通信学会誌2016年3月号269頁より抜粋
copyright(c)2016 IEICE