基礎材料科学

基礎材料科学

マルチスケールでの物質の見方に基づいて,材料科学の全体像を俯瞰した入門書

ジャンル
発行予定日
2020/09/上旬
判型
A5
予定ページ数
200ページ
ISBN
978-4-339-06652-4
基礎材料科学
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定価

2,860(本体2,600円+税)

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  • 内容紹介
  • まえがき
  • 目次
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本書では,材料科学を「マルチスケールにわたる物質の階層性を理解し,その特性を人々の生活に役立つもの(材料)に反映する学問」と定義し,原子サイズから宇宙のスケールまでの広い範囲にわたる物質の性質を理解するために,以下の5章構成とした。

材料の諸性質を理解するうえで,材料内部での構成原子の配列を知ることは重要である。多くの材料は原子が周期配列した結晶であり,結晶学による分類が可能であるが,一方で,周期性を持たない非晶質や結晶とは異なる秩序を持つ準結晶のような比較的新しい材料も存在する。第1章「物質の構造」では,これらの構造に関する記述法や測定法に関して概説する。
第2章「材料熱力学」では,材料のような多数粒子の集合体の巨視的な性質を,熱力学を用いることによって,個々の粒子の運動を記述することなく,少数の変数によって記述する方法を解説する。
第3章「平衡状態図と相転移」では,物質が安定に存在する領域に関する情報を視覚的に得るための方法として,状態図について解説する。状態図は材料科学において,海図のような役割を果たしてくれるので,その読み方を身に付けることで,実際の材料を扱う際の強力なツールを手に入れることができる。
第4章「拡散現象」では, 拡散現象を記述する方程式を紹介し,特に固体内拡散についての基礎理論について解説する。
最後に,電気伝導,光の吸収や放出,磁性,機械的強度などの種々の材料の性質を考える際に,その材料を構成する原子間の結合様式を考えることが有効なことがある。第5章「材料電子論」では,そのような視点に立って,原子間の結合をつかさどる電子の振る舞いの記述法である量子力学について概説し,量子力学をもとにした材料物性の考え方について説明する。

各章の最後には章末問題を設け,その略解を巻末に,詳解をコロナ社のWebページに掲載した。本書の内容の理解と,実際の材料への応用方法の習得に活用していただきたい。

★発行前情報のため若干変更されることがございます。ご了承ください。★

現在の科学文明は,さまざまな材料の開発と生産によって支えられている。理論的には飛躍的な性能が期待される工業製品も,実際には条件に見合う材料が存在しないために,実現できない場合が非常に多いのが現実である。材料科学は,実在する物質と向き合い,我々の夢を実現するために不可欠な道具であり,必然的にさまざまな知識を必要とする総合学問でもある。しかし,材料科学の基礎とはなにかという問いかけは,初学者が材料科学という分野に既存科学の寄せ集めのような印象を抱いたときに発せられることが多い。この問いかけに答えるためには,まず材料科学がどのような学問であるかというアイデンティティーを明確にする必要があるだろう。

そこで本書では,材料科学を「マルチスケールにわたる物質の階層性を理解し,その特性を人々の生活に役立つもの(材料)に反映する学問」と定義することにした。

例えば,巨大な吊り橋を構成している鉄鋼は,連続で均一なもののように見えるが,これを光学顕微鏡で見ると,多くの結晶から成り立っていることが観察される。さらに電子顕微鏡を用いれば,一つの結晶では原子が規則正しく並んでいることも観察することができる。現代科学は,すべての物質は原子からできているという認識を前提とした,原子論に立脚している。読者がこの観点に立ったとき,材料科学の基礎とは,1個の原子→原子の集合体である結晶→結晶の集合体としての材料,といったさまざまなスケール(マルチスケール)にわたって材料を理解するための知識体系であることが理解できるであろう。

本書では,原子サイズから宇宙のスケールまでの広い範囲にわたる物質の性質を理解するために,第1章:物質の構造(担当:平田),第2章:材料熱力学,第3章:平衡状態図と相転移,第4章:拡散現象(担当:伊藤),第5章:材料電子論(担当:山本)の全5章構成とした。章の番号は,その章の内容を理解するために必要な知識を通常の工学系のカリキュラムで履修する順に付けてあり,対象とするもののスケールの順ではないことにご注意いただきたい。

各章の最後には章末問題を設け,その略解を巻末に,詳解をコロナ社のWebページに掲載した。本書の内容の理解と,実際の材料への応用方法の習得に活用していただきたい。

本書の執筆にあたっては,多くの方々のお世話になった。執筆者の一人である平田が学生時代からご指導を賜り,物理的なものの見方をご教示いただいた小山泰正先生(早稲田大学教授)に深く感謝申し上げる。また、弘津禎彦先生(大阪大学名誉教授)には非晶質構造や電子顕微鏡の基礎を平田にご教示いただいた。心より感謝の意を表する。

最後に,本書の執筆者全員に材料科学への数理物理的アプローチと問題意識の持ち方をご教示くださり,つねに我々を叱咤激励してくださった,故北田韶彦先生(早稲田大学名誉教授)に心より御礼申し上げる。
2020年8月

執筆者代表 伊藤公久

★発行前情報のため若干変更されることがございます。ご了承下さい。★

1. 物質の構造
1.1 結晶構造
 1.1.1 結晶の周期的構造(並進対称性)
 1.1.2 結晶点群
 1.1.3 ブラベー格子と結晶系
 1.1.4 空間群
 1.1.5 代表的な結晶構造
1.2 回折結晶学
 1.2.1 結晶構造の観測
 1.2.2 実格子と逆格子
 1.2.3 空間格子からの回折
 1.2.4 単位胞中の原子配列からの回折
 1.2.5 結晶の大きさの効果
1.3 材料組織と格子欠陥
 1.3.1 結晶材料の組織
 1.3.2 点欠陥
 1.3.3 線欠陥
 1.3.4 面欠陥
1.4 非結晶と準結晶
 1.4.1 構造の乱れと非晶質
 1.4.2 非晶質からの回折
 1.4.3 非晶質の局所構造
 1.4.4 準結晶
章末問題
引用・参考文献

2. 材料熱力学
2.1 熱力学の諸法則
 2.1.1 系と熱平衡状態
 2.1.2 熱力学第0法則と温度の存在定理
 2.1.3 状態方程式
 2.1.4 熱力学第1法則
 2.1.5 エンタルピーと比熱
 2.1.6 膨張と圧縮
 2.1.7 熱力学第2法則
 2.1.8 カルノーサイクルと熱力学温度
 2.1.9 クラウジウスの不等式
 2.1.10 エントロピーとその性質
 2.1.11 熱力学第3法則
 2.1.12 統計力学的エントロピー
2.2 熱力学関数
 2.2.1 エンタルピー・エントロピーの計算
 2.2.2 ヘルムホルツエネルギーとギブスエネルギー
 2.2.3 自発的変化の方向と熱力学的安定性
 2.2.4 ルジャンドル変換
 2.2.5 部分モル量
 2.2.6 化学ポテンシャル
 2.2.7 物質の移動と化学ポテンシャル
2.3 溶液・固溶体の熱力学
 2.3.1 気体の化学ポテンシャルとフガシティー
 2.3.2 活量
 2.3.3 溶液・固溶体の化学ポテンシャル
 2.3.4 ラウールの法則とヘンリーの法則
 2.3.5 理想溶液と正則溶液
 2.3.6 実在溶液
2.4 化学平衡
 2.4.1 化学反応式と反応熱
 2.4.2 反応のギブスエネルギー変化
 2.4.3 平衡定数
 2.4.4 ル・シャトリエ-ブラウンの原理
2.5 界面・表面の熱力学
 2.5.1 ギブスの区分界面
 2.5.2 表面張力
 2.5.3 ヤングの式
 2.5.4 ラプラスの式
 2.5.5 ギブスの吸着式
章末問題
引用・参考文献

3. 平衡状態図と相転移
3.1 状態図の熱力学
 3.1.1 相平衡の条件
 3.1.2 ギブスの相律とデュエムの定理
 3.1.3 相変態とクラペイロンの式
 3.1.4 純物質の状態図
3.2 2成分系状態図
 3.2.1 溶液・溶体のギブスエネルギー線図
 3.2.2 全率固溶型状態図
 3.2.3 てこの法則
 3.2.4 共晶型状態図
 3.2.5 包晶型状態図
 3.2.6 偏晶型状態図
 3.2.7 化合物を含む状態図
3.3 3成分系状態図
 3.3.1 組成の求め方
 3.3.2 等温断面図と液相面投影図
 3.3.3 アルケマイド原理
 3.3.4 冷却にともなう相変化の経路
3.4 化学ポテンシャル状態図
 3.4.1 エリンガム図
 3.4.2 化学ポテンシャル状態図の作図法
3.5 相転移
 3.5.1 1次相転移
 3.5.2 高次相転移
 3.5.3 スピノーダル分解
章末問題
引用・参考文献

4. 拡散現象
4.1 フィックの法則
 4.1.1 フィックの第1法則
 4.1.2 フィックの第2法則
4.2 多成分系の拡散
 4.2.1 カーケンドール効果
 4.2.2 拡散係数の種類
 4.2.3 ダーケンの式
 4.2.4 多成分系における拡散方程式
 4.2.5 上り坂拡散
4.3 固体内の拡散
 4.3.1 拡散の物理モデル
 4.3.2 拡散係数の温度依存性
章末問題
引用・参考文献

5. 材料電子論
5.1 量子力学の導入
 5.1.1 シュレーディンガー方程式
 5.1.2 井戸型ポテンシャル中の粒子
5.2 原子軌道
 5.2.1 原子軌道関数
 5.2.2 動径関数
 5.2.3 角関数
 5.2.4 原子内の電子占有
 5.2.5 多電子原子
5.3 分子軌道
 5.3.1 分子軌道法
 5.3.2 水素分子
5.4 結晶中の電子
 5.4.1 自由電子モデル
 5.4.2 状態密度
5.5 具体的な物質の電子状態と物性の見方
 5.5.1 分子の電子状態の具体例
 5.5.2 結晶の電子状態の具体例
章末問題
参考文献

付録
章末問題の略解
索引

伊藤 公久(イトウ キミヒサ)

平田 秋彦(ヒラタ アキヒコ)