
Pythonを使ったエンジン性能シミュレーション
シミュレーションを行う際に必要なエンジンのモデル化,化学平衡計算の基本を詳述
- 発行予定日
- 2025/09/下旬
- 判型
- A5
- 予定ページ数
- 270ページ
- ISBN
- 978-4-339-04695-3

- 内容紹介
- まえがき
- 目次
エンジンの性能評価のための燃焼モデルの構築と燃焼温度の導出に必要な化学平衡計算について解説する。本書では,インタープリタ型言語であるPythonを使い,性能評価のためのシミュレーションの進め方をわかりやすく説明した.
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
今日では,CAEを利用して工業製品を開発することが当たり前の時代になっており,幸いにも1980年頃の学生時代から定年退職を迎えるまでの40年間に渡って,計算機を使ったエンジン性能の予測に携わってきた筆者は,昨今の充実した開発環境に隔世の感を覚える。
安価なPC(personal computer)を使って,お気に入りの音楽を聴いて,計算を走らせながら,快適に本書を執筆している。そんな強力なツールをInternetの閲覧,文書やプレゼン資料の作成,表計算ソフトを利用するだけではもったいないと思い,物理現象に興味がある技術者が,計算コードの作成を通して理解を深められるように,これまで作成してきた計算コードを紹介したいと考えた。
本書では,エアクリーナ,サージタンク,触媒とマフラを容器に見立て,これらを管で繋いだ単気筒のエンジンモデルを取り上げて,エンジン性能の計算方法と計算コードの中身を解説する。燃焼については,単純にシリンダにエネルギーを与える一領域燃焼モデルに加え,既燃部と未燃部の二つの領域を取り扱う二領域燃焼モデル,最後に,二領域燃焼モデルに一酸化窒素(NO)生成モデルを加えた計算方法について解説する。また,二領域燃焼モデルの肝になる燃焼温度を求めるための化学平衡計算については,紙面を割いて詳しく述べる。
これまでの業務では,プログラム言語にFORTRAN77をおもに使ってきたが,本書では,手軽に入手できるPythonを使って計算コードを作成した。計算コードは,なるべくシンプルにまとめることに心掛け,四則演算,組込関数(ルート(sqrt)やログ(log)など),forループと条件文(if文)のみを使っているので,数値計算プログラム初心者の方でも容易に理解できると思う。ただし,Python言語の入出力の書式は独特なので,初めてPythonに接する方は,まずは本書に記載したままの形で覚えて欲しい。なお,計算コードでキーになる部分については,なるべく詳しく説明するように心掛けている。
Pythonの開発環境は下記のURLからダウンロードして,指示に従って操作すれば,利用できるように設定できる。不慣れな方は,詳しく解説している良書が多数販売されているので,そちらを参考にしてもらうとして,ここではPythonの設定や使用方法に関する説明は控える。なお,本書の計算コードはバージョンPython3.10.11で作成している。
本書で紹介した計算コードは下記のURLからダウンロードできるので,実際に計算を走らせて,いろいろな角度から計算結果を観察して欲しい。計算結果は,CSVファイルで出力するようにしており,Excelなどの表計算ソフトで作図できる。本書の計算コードを,読者の好きなプログラム言語に移行して,読者が必要とする改良を加えて発展させてもらえることを心より願っている。
2025年6月
北田泰造
☆発行前情報のため,一部変更となる場合がございます
1.エンジン性能シミュレータ
☕体積効率と充填効率
2.吸排気脈動計算
2.1 一次元吸排気脈動の計算方法
2.2 管の摩擦損失と熱伝達率の計算式
2.3 衝撃波管の実験データを使った計算の評価
2.4 開放端と閉塞端の境界モデル
2.5 脈動計算コードの解説
2.6 脈動計算の時間刻み自動設定機能
2.7 流量評価用の2容器モデル
2.7.1 容積境界の計算方法
2.7.2 体積フラックスの補正
2.8 等エントロピー流れ
2.8.1 等エントロピー流れの関係式
2.8.2 圧縮性流体のノズルの式
2.8.3 音速の式
2.9 2容器モデルの計算コード
2.9.1 メイン部(flowcheck.py)
2.9.2 入力関連(read_data.py)
2.10 2容器モデルの計算結果
2.10.1 流量の整合性評価
2.10.2 ノズルの式との比較
3.エンジン性能計算
3.1 ピストン変位量の計算
3.2 ピストンによる充填ガスの圧縮・膨張の計算
3.2.1 比熱比で計算する方法
3.2.2 内部エネルギーを使って計算する方法
3.2.3 エンタルピーを使って計算する方法
3.3 熱発生パターンを使った発熱量の設定
3.4 吸排気弁の有効通気面積の求め方
3.5 スロットルの計算方法
3.6 一領域燃焼モデルのエンジン性能計算コード
3.6.1 計算コードの解説
3.6.2 入出力ファイルの解説
3.6.3 リスタートデータの利用方法
3.7 エンジン性能計算の計算結果
3.7.1 流量と充填量の整合性確認
3.7.2 エンジン回転数を固定して計算した結果
3.7.3 エンジン回転数可変と固定の計算結果の比較
☕図示平均有効圧とトルクの関係
3.7.4 体積効率が高いエンジン回転数の圧力脈動の特徴
3.8 エンジン性能計算の利用例
3.8.1 吸気管の長さと体積効率の関係
3.8.2 排気管の長さと体積効率の関係
3.8.3 吸気バルブタイミングと体積効率の関係
3.8.4 スロットル時のエンジン性能
4.化学平衡計算
4.1 化学平衡計算とは
4.2 化学平衡を考慮した排出ガス組成の見積り
4.2.1 計算方法
4.2.2 計算コード
4.2.3 計算結果
4.3 Gibbsの自由エネルギーと化学平衡
☕二次方程式の解の公式
4.4 燃焼時の化学平衡組成の計算
4.4.1 計算方法
4.4.2 計算例:当量比の影響
4.4.3 計算例:温度の影響
4.4.4 計算例:圧力の影響
4.4.5 計算コードの解説
4.5 定圧燃焼温度の計算
4.5.1 計算方法
4.5.2 計算コード
4.5.3 計算例:当量比と燃焼温度の関係
4.5.4 計算例:初期温度による燃焼温度の変化
4.5.5 計算例:圧力による燃焼温度の変化
☕燃焼による圧力増大率
4.6 定容燃焼温度の計算
4.6.1 計算方法
4.6.2 計算コード
4.6.3 計算例:当量比と燃焼温度の関係
4.7 一酸化窒素を除いた化学平衡組成の計算
4.7.1 計算方法
4.7.2 計算コード
4.7.3 計算例:当量比による化学種の変化
5.Gibbs自由エネルギー極小化法による化学平衡計算
5.1 Gibbs自由エネルギー極小化法の計算理論
5.2 Gibbs自由エネルギー極小化法の計算方法
5.3 Newton-Raphson法
5.4 Newton-Raphson法を使ったGibbs自由エネルギー極小化法の解法
5.4.1 化学平衡組成の計算方法
5.4.2 化学平衡組成の計算コード
5.4.3 計算結果:当量比の影響
5.5 Gibbs自由エネルギー極小化法による定圧燃焼温度の計算
5.5.1 定圧燃焼温度の計算方法
5.5.2 定圧燃焼温度の計算コード
5.5.3 計算結果:当量比と燃焼温度の関係
5.6 Gibbs自由エネルギー極小化法による定容燃焼温度の計算
5.6.1 定容燃焼温度の計算方法
5.6.2 定容燃焼温度の計算コード
5.6.3 部分平衡による計算結果との比較
6.燃焼サイクル計算
6.1 二領域燃焼モデル
6.2 熱損失の計算
6.3 エンジン性能計算とのリンク方法
6.3.1 吸気弁閉時(エンジン性能計算→燃焼サイクル計算)のリンク
6.3.2 排気弁開時(燃焼サイクル計算→エンジン性能計算)のリンク
6.3.3 内部EGRの設定(脈動計算→燃焼サイクル計算)
6.3.4 エンジン性能計算でのガス定数の取扱い
6.4 燃焼サイクル計算とリンクしたエンジン性能計算の計算コード
6.4.1 計算コードの構成
6.4.2 エンジン性能計算(メイン部)の計算コード
6.4.3 二領域燃焼モデルを含む燃焼サイクル計算のコード
6.4.4 燃焼関係の計算コード(buSub2.py)
6.4.5 化学関係の計算コード(chSub3.py)
6.4.6 熱力学データのコード(chData3.py)
6.4.7 燃焼サイクル計算の出力ファイル
6.5 二領域燃焼計算を使ったエンジン性能計算の計算結果
6.5.1 一領域燃焼計算を使ったエンジン性能計算との比較
6.5.2 熱発生開始時期の影響
6.5.3 当量比の影響
☕CO2とH2Oの解離熱
7.一酸化窒素を含めた燃焼サイクルの計算
7.1 一酸化窒素の化学反応式と計算方法
7.2 一酸化窒素生成量の計算方法
7.3 一酸化窒素を含む燃焼サイクル計算の計算コード
7.3.1 エンジン性能計算(メイン部)の計算コード(waveEng3.py)
☕一酸化窒素NOの生成熱
7.3.2 NOを含む二領域燃焼モデルの燃焼サイクル計算コード(engCycle3.py)
7.3.3 燃焼関係(含むNO)の計算コード(buSub3.py)
7.3.4 二領域燃焼モデル(含むNO)の化学関係の関数(chSub4.py)
7.4 一酸化窒素の生成を含めた計算結果
7.4.1 一酸化窒素NOなしとの計算結果の比較
7.4.2 熱発生開始時期の影響
7.4.3 当量比の影響
付録
A. 管内の摩擦損失
B. 管とシリンダ壁面の熱伝達
B.1 円管の熱伝達
B.2 エンジンのシリンダからの熱伝達
C. 等エントロピー流れの式
D. 圧縮性流体のノズルの式と音速の関係
E. ピストン変位のマクローリン展開
F. 断熱変化の式
G. 関数カムのバルブリフト設計方法
G.1 上り側の計算
G.2 下り側の計算
H. 熱発生率の計算式
I. 熱力学データの多項式
I.1 最小二乗法とは
I.2 次元への展開と定圧比熱の多項式(四次式)
I.3 定圧比熱の多項式(四次式)の計算コード
I.4 定圧比熱の多項式(四次式)の計算結果
J. 変数nを使って化学種のモル数を表す式
K. Newton-Raphson法
L. 等容度の計算方法
M. 計算結果処理コード
M.1 サイクル平均化コード(Ave.py)
M.2 指定サイクルのデータ抽出コード(pick_cycle.py)
参考文献
あとがき
索引